ネトゲをしていたはずの後輩が異世界召喚されて尊敬する先輩の元へ帰るために魔王として頑張る話 作:銅英雄
「さて、そこの木の裏に隠れている人はそろそろ出てきたら?」
アンズは前方の木に向かって言い放つ。誰か隠れているみたいだが……。
「出てこないの?それなら無理矢理にでも出てきてもらうよ……?」ゴッ!
(っ!……さっきも感じたが、すごい闘士だな……。本当に俺より強いんじゃないのか?全く……チートすぎんだろ)
アンズが殺気を放つと誰かが怯えた様子で前方の木から飛び出した。
「くっ……!」
(あれは小物か……。成程、この依頼はコイツが何かを企んでエルフ達に変なことを吹き込んだというわけか。見かけた時は気のせいだと感じていたが、どんだけ俺が嫌いなんだよ……)
「お、おまえらはエルフ族の精鋭部隊じゃなかったのか!?この役立たず!!」
しかもセルシオ達のせいにしてるし……。救いようのないクズだな。
「おい」
「ひっ!」
「どうやらこれはおまえがけしかけたみたいだな小物」
「彼は確か昨晩ファルトラで見かけた人だね。サラマンダーを出してディアベルにオーバーキルかまされてたのは傑作だったよ」クスクス
そういえばアンズは昨日の光景が面白いものだと言ってたな……。まぁそれは置いといて。
「なんとか言ったらどうだ小物?」
「い、いや……ぼ、僕はその……エルフの王女がここに来ると教えてやっただけで……」
しどろもどろで小物が答える。言い訳にもなってねぇんだよ……。俺が呆れているとアンズが小物に問い質した。
「ディアベルのことを奴隷商人だと思っていたみたいだけど、それも君が吹き込んだことなんだよね?」
「か、勝手に勘違いしたんだ!亜人は頭が悪いからな!!」
また人(エルフ)のせいにしたよコイツ……。
「救いようのないクズだね。魔術師協会っていうのはこんなクズ共の集まりなわけ?」ギロッ!
アンズが小物を睨みつつ、俺達に魔術師協会のことを聞いてきたので俺の直感とはいえ正直に答えた。
「いや、確かにこんなくだらないことをする小物もいるが、魔術師協会の長であるセレスティーヌ・ボードレールはまともな奴のはずだ」
(まぁ二言三言くらいしか会話してないから果たして本当にそうかは定かではないが……)
「ふぅん、まぁいいや。ねぇそこの君」
「ひっ!な、なんだ!?」
「もう2度と私達に関わらないでね。もし次にこんなことがあったら……朝日は拝めないと思ってね♪」ボソッ
「あっ……がっ……うぅ……」ブルブル
アンズがなんかボソッと言ってたが何を言ったんだ?小物が矢鱈震えてるし。そう思っているとレムが小物に追い討ちをかけた。
「セレスはなんと言うでしょうね。貴方が魔術師協会の名前を語り、私達を罠にかけたと知ったら……」
「……違う。ぼ、僕は間違ってない!」ダッ!
小物は捨て台詞を吐いて逃げていった。あ~あ、なんという情けない姿。しかも転んでるし。
そう思っているとシェラがエルフ達に発言した。
「兄さん達に伝えてくれる?あたしは絶対に戻らないって。あたしは兄さんのものじゃなくて今はディアベルとレムと……それにアンズさん、オーフェリアさん、ツボミさんの仲間だから!!」
(仲間……か。俺はリアルでは先輩以外の人間には最低限にしか関わってなかった。況してや仲間、友達なんて信用してなかった……。それをさっきのアンズと言い、今のシェラと言い……俺を仲間だと言ってくれて……。俺はそれにどう応えたらいいんだ……?)
「……はい、キエラ様達にはそのように伝えておきます」
そう言ってセルシオと愉快なエルフ達は去っていった。
「さっ、早く帰ろ!おなか減っちゃったし!!」
「全く……。私はいつから仲間になったと言うんですか?」
「ええ!?さっきあたしのことを気に入ったって言ってたのに!」
「決意が嫌いではないと言っただけです」
「あれ?照れてる?頬赤くな~い?」
「こ、この馬鹿シェラ!///」
また喧嘩してるし……。まぁこの2人はこれが平常運転なのかもな。
~そして~
ファルトラに戻り、報酬もボードレールに多めにもらい(小物の件ですごく謝られた)、俺は今宿屋の外で考え事をしている。
(仲間……。シェラは俺のことを仲間だと言っていた。これは俺を信用してくれていると思ってもいいんだろうか……?レムも魔王クレブスクルムのことを話してくれてからも俺を信頼している感じだし……。あぁ!なんか色々とこんがらがっちまう!!)ガシガシ
「ディアベル、隣いい?」
頭を掻きながら悩んでいるとアンズ達が此方に来て腰を降ろし、ランドルーフェンとツボミもそれに合わせた。あの、俺まだ有無を言ってないのですが……。
「何の用事だ?」
「ん?これからの私達についてちょっとね」
「俺達の……?」
「そう、今回の依頼は私達6人で受けた……。ならその次からはどうするかってこと」
そういうことか……。
「私達としては少なくとも暫くの間はディアベル達に色々教えてほしいと思ってるよ。シェラも私達を仲間と言ってくれてたから私達がこの世界にいられる間ずっとでも構わない……。これは3人共同じ意見だった」
「此方もそれは構わないが、今回みたく6人で行動というのは少し大人数じゃないか?報酬も少なくなるだろうし……」
「そこは2つの依頼を分担して受けたりすればいいんだよ。これなら分け前が減ることはないしね」
「それにディアベルはこの世界のことを熟知しているみたいだから私達にもっとこの世界のことを教えてほしいのよ」
「私も新しい仲間が増えて嬉しいです!」
「これが私達の意見だけどディアベルはどうする?」
俺が大人数で1つの依頼を受けた時のデメリットを伝えるとアンズ、ランドルーフェン、ツボミがそれぞれメリットや気持ちを伝える。
アンズ達が仲間になるのはとても心強い。未知数ではあるがランドルーフェンとツボミもかなりの強さを持っているだろうし、レムやシェラの問題を解決するのに彼女達の力は必要になるだろう。
というよりアンズ達が敵になると色々とやばいかもしれないというのが本音だったりするんだけど……。まぁとにかく断る理由はない。
「わかった。これからよろしくな」
「うん、これからよろしくね」
「ええ、よろしくお願いするわ」
「はい、よろしくお願いします!」
「レムとシェラにも伝えておいてね」
「了解だ」
こうしてアンズ達も俺達と一緒に冒険することになった。
そしてランドルーフェンにはこれからオーフェリアと呼ぶように言われた。何故1度も口に出したことないのにわかったのか……。
今回はここまでです。
次回、シェラがある決意をする……?