アタランテに憑依した愛を知らない男   作:海・海

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アタランテとの会話

「こたえよ。なんじはなにものだ?」

 

……俺は今、アタランテ(推定五歳)に見つかって問い詰められている。

 

では、なぜそんなことになったのか回想に入ろうと思う。

 

 

 

~回想~

 

 

あれはいつも通り、熊の母乳を吸っているときのことだった。

 

「おい!なんだあれは!?」

「熊が人間を育てているのか!?」

「もしや、あれが聖獣様では!?」

 

急に人がやってきたと思ったら勝手に騒ぎだして、勝手に俺を引き取ることになった。

 

寝る場所が洞窟の硬い地べたから草のベットになったのは良かった。毎晩苦痛だったから。

 

引き取られて数ヶ月までは無邪気な赤ん坊としてふるまっていたが、時が経つうちにアタランテの自我が成長したので、幽体離脱して体を動かすのはアタランテに任せた。

 

そして俺は霊体の時は誰にも見えないことをいいことに集落を見て回ったり、動物を間近で観察したりと暇をつぶしながら、夜はアタランテの肉体に戻って寝るを繰り返していたわけなのだが…………

 

 

 

~回想終了~

 

 

 

動物を観察しているときに見つかって今に至る。

 

 

というかなぜアタランテには俺が見えているんだ?今は霊体だぞ俺。

 

まあ、それについてはなんとなくわかっている。おそらく俺とアタランテを繋ぐ見えないパスのようなものが原因だろう。なんか繋がってる感じがするし。いや、本当になんとなくフワッとした感覚だけど。

後、なんで俺神代のギリシャ語が理解できてるんだろう?……はっ!?転生特典か!?よし、言語理解と名付けよう。

 

「おい、いいかげんなにかしゃべったらどうだ?」

 

回想に入って無視し続けていたせいか、声には怒気が含まれている。しかし、何者かと問われてもなんて答えよう。異世界人?未来から来た人?

 

というか生のアタランテ可愛いな。子供だから余計に。舌足らずな口調で凛とした声。いい。

アタランテリリィ、なぜ生前は実装化しなかった?アルトリアもエリザベートも別側面の実装化は割とフワッとしてるからリリィを実装化してもいいじゃないか。

バサランテとか別側面として自然すぎるだろ。俺のアニメのアタランテの感想、バーサーカーよりバーサーカーしてんな~だったし。

 

「おい!いいかげんしつもんにこたえろ!」

「分かった!分かったから矢をつがえるな!」

 

無視した俺も悪いが、初対面の幽霊に矢をつがえるとか、狩人はどういう教育をしているんだ?あっ!幽体だから矢は効かないか。というか、久しぶりに声を出した気がする。話し相手いなかったから。女神におぎゃ~って助けを求めて以来声出してなかったからな。

 

「で、俺が何者かだっけ」

「ああそうだ。しゅうらくではみないかっこう、かおだち、そもそも、なんじはひとですらないだろう」

「まあ、幽霊だからな」

 

しかし、やはり幽霊は人間のカテゴリーから外れるのか。少しショック。

 

「ゆうれいならなぜわたしにはなんじがみえる?」

「それは、俺がお前に憑依してるからだな。お前の自我が確立する前はその体は俺が動かしていたんだぞ。今も主導権を奪おうと思えばいつでも奪える」

 

これは脅しではなく本当。どうやら体の主導権は俺にあるらしい。まあ、幽体離脱である程度自由に動けて、食事も必要ないならわざわざ子供の体になるなんて面倒なことしないけど。

ちなみに俺の霊体の姿は生前の俺の姿だ。アタランテの姿の霊体はアタランテ本体の成長に合わせて変化するが、こっちは何とも変化がなかった。アタランテ姿の霊体にもなってみたが、子供の霊体はなんか違和感があったので、もう少しアタランテが大人になったらアタランテ姿で活動しようと思う。

 

「それは…………おそろしいな」

 

まあ、自分の体がいつでも誰かに奪われる可能性があると聞かされて、恐怖を覚えない人間はそうそういないだろう。でもまあ、今のところは許可なく体を奪うつもりはない。なぜなら…………

 

「その体だと狩りの練習やら子供の演技やら色々面倒なことがあるから、わざわざ奪ったりしない」

「…………」

 

素直に理由を言ったら、なぜかゴミを見るような目で見られた。

 

 

「かりとはいきるためにみにつけなければいきていけぬひつようさいていげんのぎじゅつだ。そのれんしゅうすらめんどうくさがるとは、もしかしてしいんはがしなのか?」

「そういえばなんで死んだんだ俺?」

 

あとで魂魄記憶閲覧で見てみよう。

 

「なんじはなまけものなのだな。おまけにじぶんのことしかかんがえていない」

「おい、前者はともかく後者は否定させてもらおう。何を根拠にそんな結論になった?」

 

今の会話に俺がエゴイストだとバレる要素はなかったはずだが。

 

「かんたんだ。めんどうだからうばわないとは、そうではなかったらうばうということ。おまえはひつようならたにんすらつごうのいいようにりようする、わたしのきらいなタイプのにんげんだ」

 

さっきの会話だけでここまでばれるとは、本当に子供か?

 

「チッ、馬鹿なガキも嫌いだが、賢すぎるガキも考え物だな」

 

クソッ、口が悪くなってきた。それほどイラついているのか俺は。

なんでこんなにイラつく?自分がエゴイストだなんてずっと前から分かってた。それを人に指摘されたくらいで何も無いはずだろ?

そのはずだ、そのはずなのに、何か胸の奥にドロドロした物が直接注ぎ込まれるような不快感に襲われる。思考が乱れる、頭が沸騰する、今すぐ何かに八つ当たりしたくなるほどに。

 

「どうしたのだ?」

「…………気分が悪くなった。どっか行く。ついてくんな」

 

俺はすぐにその場を離れた。

 

 

子ども相手にムキになって、挙句逃げるようにその場を去る。

カッコ悪い。最低だ。自分が嫌になる。

 

 

 

 

 

 

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