アバズレばっかでもう死にそう   作:杜甫kuresu

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この世の地獄を書きました、ご査収ください。
タイトルめっちゃ苦悩したけど俺が書くギャグの女ってやっぱアバズレばっかなんだわマジで。


おクスリキメときますね

「ようこそ。こんな所を見に来るとはアンタも変人だな」

「指揮官、誰に喋っているんだ?」

 

 誰って言うなら、まあ客人だな。

 流れでスムーズに紹介なんて柄でもないので手早く済ませよう。指揮官、歳は20過ぎ、身長体重ともに平均的で健康。顔は悪くないが良いかと言われてもオレには判別がつかない。

 

 さて、オレは平常運転で書類に追われていた。運動不足になりかねない程度には溜まる書類作業は嫌いな仕事であり、同時にオレに出来る最大の仕事という悲しいジレンマ。辛いご時世だ。

 

「まあそれより、何の話だっけ。確か長門ちゃん採用の重桜艦隊の話?」

「そこまで正確に覚えているなら私に聞くまでもないだろう」

 

 まあ恒例行事だ、分かってないヤツ(読者)も居ることだし。

 さっきからオレの奇行に置いてけぼりを食らっている銀髪の彼女がエンタープライズ。ここでも付き合いが一番長くて、恐らく一番強くて、オレが最後に頼る命綱になるユニオンのヨークタウン型航空母艦のセカンド。

 

 長く美しい銀髪のストレートロングと紫水晶の瞳が眩しい美女とも言う。チェスターコートから露出の少なくない格好は厭らしくないどころか可愛らしくも有る辺り、センスも頼りになるのかもしれない。

 

「今日の艦隊戦では、一航戦を採用することで今までとは別次元の殲滅力を見せたようだ。ミス三笠のタイプでは戦艦を優先して採用してしまうからな、其処の違いが大きいのかもしれない」

 

 さて、では三笠と長門の違いをざっくりと説明しよう。

 三笠は軍神とも呼ばれる重桜戦艦で、重桜そのものを牽引するリーダー格だ。彼女の特徴として、重桜艦隊の戦闘力を底上げする旗艦としての能力が有る。

 

 以前はコレに頼って重桜の攻めの強さを活かした押して押し倒す戦法をやっていたのだが、長門が来てから少しばかり事情が変わった。

 長門も三笠と同じ重桜艦隊の底上げができる戦艦なのだが、三笠は特に僚艦を戦艦にすることでより強い力を発揮するタイプだ。

 

 長門は空母を強化する。更に言うなら三笠に比べると当人の性能も低くない、まあ三笠が旧型すぎる故の弱点だな。

 という訳でオレ達はこの二隻の性能を比べて採用パターンについて考えていたというわけだ。

 

「一航戦が強化されるのは強みだな。長門ちゃん自身も単体で強みが有る、やはりこっちに軍配が挙がるか…………」

 

 オレの総評に軍帽を被り直したエンタープライズが異を唱える。

 

「確かに数の多い艦隊戦ではそれが事実だが、ミス三笠は少数精鋭に強い。一概にこちらとは言えないだろう」

「まあそうか。なら、海域の敵数を見て切り替える方針にしよう」

「そうするべきだろうな」

 

 案件終わり。まとめを書き記して次に移る。

――――待てよ。

 

「ちょっと待て」

「どうした、指揮官?」

「じゃあ一航戦――――――赤城は?」

「報告を聞いたのは先程というわけでもない。もうすぐ帰って――――――」

 

 扉がバタァンと明らかに傷む音を立てて開くのと同時に机の下に緊急避難した。

 件の女の弾む声が木霊する。

 

「指揮官様! 第一艦隊僚艦の赤城、只今帰投致しました!?」

「…………」

 

 エンタープライズは目線も合わせず後ろでOKサインを出してくれた。有り難い、オレも命は惜しい。

 赤城はエンタープライズの顔でも見たのだろうか、ムッと明らかに不機嫌そうな声を出すとツカツカと迫ってくる。

 

「…………エンタープライズ。指揮官様はどこかしら?」

「さあな。何時も通りサボって消えてしまったよ、私も書類が溜まっててんてこ舞いだ」

 

 赤城がすかさず鼻を鳴らす。

 

「嘘おっしゃい、私が指揮官様の匂いも分からない女だとでも?」

 

 すぐにエンタープライズのジェスチャーが

 

『勘弁してくれ、流石に彼女の尋問には耐えられない』

 

 とかなり切羽詰った様子で嘆願するので仕方なく顔を出す。

 赤城はパアっと花でも咲いたように顔を輝かせるが、オレは其れを見て更にげんなりする。そりゃそうだ、これから嵐に飛び込むわけなんだから。

 

「指揮官様!? 赤城の活躍、お聞きになりましたか!?」

「ああー、うん。赤城というか第一艦隊の戦績は聞いたぞ。無事で何よりだ」

 

 そんなお言葉勿体無いですわ、だとか抜かして両肩を抱いて身を捩らせる赤城。昼間から飛ばすよなあ、コイツ。

 

「無事なのは当然の事、本当ならば無傷完勝で指揮官様の正妻として恥じぬ働きを――――」

「いや正妻ではないよねアンタ」

「そう恥ずかしがらなくても構いませんのに……………でもそういう所も好き……」

 

 あー、えっと。説明できるところはない。コレはこういう存在だ、オレの中でとうに生物的な概念に当てはめていない。天災の類だ。

 赤城。重桜航空戦隊が「一航戦」の片翼。彼女は立ち位置で言えば姉に当たる。

 

 黒い羽織や艶やかで長い黒髪のせいで真っ黒な印象を持ちやすいが、個人的には赤色の瞳が一番恐ろしい。何を考えているか分からんというか、底が知れないというか。

 服装はミニスカートに胸元の開いたインナーとどうしても目のやり場に困る、オレには幾ら見られても平気だというがそういう問題ではだな…………。

 

 狐のような耳と尻尾を盛んに揺らして目を見つめてくる。

 

「ところで指揮官様、どうしてお隠れになっていたのですか?」

「えっ、あいやそれはだな」

 

 不味い。赤城の笑い方が危ない方向に走ってる。

 予想通り、元より昏い瞳が更に帳を下ろしていく。

 

「いえ指揮官様がまさか私からお逃げになるなどとそれ程赤城も殿方を疑って掛かるような女ではありませんわですがだというなら誰かに脅されているというのが必定であるわけで状況証拠としてはエンタープライズ――――――この女しか、居ませんよね?

「えーあー、その。エンタープライズちゃん、ガンバ」

「指揮官!?」

 

 百面相よろしくに怒気を放った笑顔でエンタープライズに詰め寄っていく。眉一つ動かさずに戦火の中に活路を見出してきたその薄紫の瞳が恐怖に揺れている。

 

 赤城はそれ程なのだ。

 

「どういうつもりかしら、私から指揮官様を奪おうだなんて」

「ま、待て赤城。私は別に奪おうなどとは」

「ではどういうつもりなのかしら、説明してくださ――――――――ハッ!」

 

 なにかに気づいたように目を見開く赤城。こりゃあ相当面倒なモードに入ったな。

 少し俯いて呪詛じみた勢いで何かを呟いた後、息の掛かる距離までエンタープライズに詰め寄る。

 

「お前――――――ッ! まさか指揮官様を脅してあんな事やそんな事をしようとしていたのかしら!?」

「はぁ!? 真面目に何を言っているのか分からないぞ赤城! やはり私にはあなたが手に負えない!」

「オレにだって手に負えないからな?」

 

 まるでオレなら多少制御ができてるみたいな。オレもさっぱり出来てないから。

 早くも絶望と狂気の渦に飲まれたオレ達の会話はスルスルと明後日の方向に漂流していく。今どきロビンソン・クルーソーだってここまで漂流しない。

 

「だってそうとしか思えないわ!? 指揮官様を匿ってお前に何の得があるのかしら、無いでしょう!?」

「私がやらせた訳ではない方向性では考えられないのか赤城!?」

「考えられないわ! 指揮官様が私を拒否するなんて――――――ねえ? 指揮官様?」

 

 何処か濁った瞳がオレに同意を強要する。

 本能のままに首だけをコクコクと動かした。

 

「じゃあお前がやらせた以外に何か可能性があるかしら!?」

「うーんもう良い分かった私が悪いんだな!!!!!!!!!!」

 

 エンタープライズがとうとう投げてしまった。でもオレだって赤城に逆らえるほど強靭な精神は持ち合わせないからな、許してくれ。

 赤城が詰め寄るのにエンタープライズは為されるがままだ。この死んだ表情の少女の何処にグレイゴーストなどという異名を付けられるだろう、いや一応死んでるからゴーストか。

 

 オレにはどうすることも出来ないことが悟れてしまったので、取り敢えず殴られウサギみたいになってるエンタープライズを放置して次の書類をチェックする。

 

「デザートの在庫が足りないか…………しゃあねえ、自費だな――――」

 

 溜息を吐いた直後に真上から妙な音と埃が落ちてくる。

 

「杏仁豆腐を買ってくれるだって!? 観察してる場合じゃねえ!」

「あの――――加賀さん? 何で天井裏から登場してるんだ?」

 

 フフフフ、と気色悪い笑い声と共に板をぶち抜いて加賀がご登場。白いボブカットのやべーやつ。

 さっき紹介した一航戦のもう片翼。妹、戦闘狂、見ての通り馬鹿。姉譲りのスタイルと服装には色々と文句を言うべき所であるが、まあ赤城よりはずっと話が通じるせいかそこまで咎めようという気が起きない。

 

 加賀が頭だけを見せたまま会話を続けようとする。

 

「それで具体的には」

「分かった、話はしてやるからそんな埃っぽいところから出てきなさい。咳が出るぞ」

「心配性なやつめ…………よいしょっ、と」

 

 スムーズに天井からぶら下がってアクロバティック着地を決める加賀。ところでよいしょ、とかつい言っちゃうの若干可愛いな。

 ちゃんとオレから距離を取って服をはたくと、続いて尻尾をはたき始めた辺りからコッチをジーっと見つめてくる。早く話せとな、せっかちな空母はモテないぞ。

 

「まあ今はアイスの人気が偏ってる。そっちが何とかなったら杏仁豆腐も増やしておこうか?」

「是非ッ! お願い申し上げるッ!」

 

 キャラが保てていない、どれだけ杏仁豆腐が好きなんだ。いや食嗜好にガタガタ言うつもりはないけど…………。

 鼻息荒くオレに尻尾をバシバシ当ててくる加賀。手を握るな作業ができん。

 

「分かった、分かった! やるだけやってみるから手と尻尾を退けてくれ! 作業が出来ないだろうが!?」

「いや、それは良いが――――姉さまは止めないのか?」

「お前逆に聞くけどオレに赤城が止められると?」

「思わないな」

「だろ?」

 

 ちらりと横を見ると、相変わらず赤城に胸ぐらを掴まれたエンタープライズがボロ布みたいに振り回されている。アイツ段々気分悪くなってきてるみたいだな、可哀想に。顔が青い。

 

 加賀と一緒に安らかな眠り(気絶)を願って手を合わせていると、扉が開くと同時に消耗しきった荒い息が聞こえてくる。

 

「はぁ……はぁ…………やはり此処であったか」

「ああ、長門か。そう言えば置いてきていた」

「長門ちゃん可哀想すぎる」

 

 仮にも旗艦だぞあの娘。お前らには敬意とか規律とか無いのかよ。

 

 息を整えながら歩いてくる長門に加賀が肩を貸してやる。何故その優しさを最初から見せられないのか、コレガワカラナイ。

 ようやくと言った体でオレの前に立った長門は、据わった目ではっきりと

 

「もうやだ。余出撃しない、やだ」

 

 オレに吐き捨てた。もうゴメンとしか。

 席から立って頭を撫でてやる、労いとしては不十分だがコレぐらいしか出来ないからな。

 

「ゴメンな、大人がバカだと付き合わされる方は大変だもんな…………ッ!」

「指揮官、妙に力が籠もっているが心当たりでも有ったか?」

 

 まあ昔に色々有ってな。

 目頭を熱くしていると長門は男泣き手前のオレに申し訳なくなってきたのだろう、シュンとしてしまった。

 

「す、すまぬ。我儘であったな…………」

「子供が遠慮すんなよ長門ちゃん! 良いんだよ、君は真っ当な権利を行使してるだけだ! オレも赤城と出撃とか絶対イヤだからな!」

「指揮官様ぁ?」

 

 あ、死ぬわ。

 

――いや、違った。赤城まで佇まいに力が無くなってしまう。

 

「あーあ、指揮官が姉さまいーじめた~」

「お前なぁ…………いや、赤城? これはだな」

「いえ……人には好き嫌いがありますもの、強要など出来るものではありません。夫婦(めおと)とて例外ではない、仕方ないことです」

「夫婦じゃねえ」

 

 というかさっきオレに同調を強要していたような。多分今言ったら駄目か? コレ。

 さっきまで死んだ顔だったエンタープライズが生気のない赤城の手を握る。

 

「…………何ですか、慰めのつもり?」

「違う、私は一応赤城のことを応援しているのだぞ?」

 

 いや応援しないで欲しい。やっぱりコレも言ったら駄目なんだろうな…………。

 

「指揮官は私のものだが、共有するのは悪くない」

「は? アイツもイカれてんのかよ、此処はぶっ飛んでんな~…………長門ちゃん!? 一緒に駆け落ちしてくれ!?

「え!? えぇ、余にも心の準備というものがだな…………いや、拒否しようというのではないのだぞ?」

 

 オレに安寧の地などなかったらしい。逃げよう、今すぐ。

 何時も通りの何ら狂気を感じない爽やかな笑顔のままエンタープライズが続ける。

 

「あなたは私の背負うものを分かち合ってくれる人だ…………そう易々と逃さない

「うーん何を言ってるのかオレにはちょっと」

 

 何というか、狂ってると言うより何かの前提がズレてるみたいだな。何で冷静なんだオレ。

 黙っていなかったのは赤城だった。再び胸ぐらを掴んで敵意むき出しの笑顔で睨めつける。

 

「随分大きく出てくれるわねえ、グレイゴーストォ!」

「ははっ、別に独占しようという訳ではないじゃないか。私は赤城の恋路を邪魔するつもりはない」

「意味不明ですよ! お前にとって指揮官様は何なのよ!?」

 

 凄いな、赤城に意味不明と言わしめたか。もうどんなやつにも理解不能だな。

 

「くどいぞ!! 誰を愛そうがどれ程汚れようが構うものか、最後にこのエンタープライズの横にいれば良いだけのこと!!」

「たった今お前の横に立ってやろうという気は失せた」

「そ、そんな!?」

 

 そこに私はいません。きっとお前の横にいることはない。

 よろよろと力ない歩みでオレの所まで来たかと思うと、執務服の袖をきゅっと引っ張っておろおろと倒れ伏す。

 

「捨てないでくれ…………私には指揮官の命令しか無いんだ…………私の命はあなたのもの、この力も四肢も心だってそうだ。要らないというのなら何処かへ捨ててくれ…………捨ててくれ…………」

「オレ無しで生きていってくれ「無理だ、耐えられないッ!!!!」即答かよ!?」

 

 ただもうちょっと質の良い男を見つけることをオススメするし、後その調子では一生彼氏の一人も出来ないぞお前。

 

 仕事してる時は普通なんだがなあ…………何故か時々こうなってしまう。勿体無い逸材だ。

 

――――――パシャリ!

 シャッター音。開きっぱなしの扉の向こうに視線を寄せる。

 

「撮れた! これは界隈で売れるよ!」

 

 グリッドレイだ。クソ写真家、うちでもトラブルのもとだ。

 

「指揮官として一航戦に命じる――――――あのカメラを叩き割れ。今すぐに!」

 

 号令と共に乱れた流れが凍りつき、少しの間の後にまた整然と流れ出す。

 

「了解致しましたわ~――――踊りなさい、雑兵」

「――――――何秒遊べるか、見ものだなぁッ!」

「ひぃっ!? 絶対渡さないからね!」

 

 凄まじい勢いで走って逃げていくグリッドレイ。

 馬鹿め、一航戦から逃げられるなど思い上がったか。

 

「加賀、分かっているわね!?」

「――――――現像ですね姉さま! 指揮官ドアップで!」

「本人の前でくらいそういう発言を自重してくれ!?」

 

 オレの痛烈な叫びなど何のその、およそ人型では見られないであろう車両じみた速度の二人が残像を残して消えていく。

 

「…………指揮官というのは大変な職務だな。大儀であるぞ、余が褒めてやろう」

「有難う長門ちゃん、今日も頑張れる」

「指揮官!? 何だ、何が駄目なんだ!? 何だって治す、だから――――ッ!」

「別に何も求めてないから…………」

 

 敢えて言うならオレをさっさと諦めてくれると有り難いかな。

 胃が痛い。ポケットから胃薬を取り出した、何でオレはこんなものを携帯しなくちゃならないんだろうな…………。




ぶっ飛んでるなあ、まあいつものことか。
音速投稿。二話の構想も秒で決まってしまった。
ギャグ一辺倒でゴリ押しはしないよ。そこんところ承知して楽しんでいってちょーだい。

予定内
・出来るエンプラ
・クール指揮官

予想外
・先走り暴走空母
・殴られウサギ系女子
・屋根裏エンカウント
・限界系幼女戦艦
・ラオウ系女子
・盗撮系駆逐艦
・現像系女子
・縋る激重女
・胃薬携帯男子

いい加減もう少し落ち着いたギャグしよう? な?
大体予想外じゃねえか。纏めてみるとひでえなコレ。

【余談】
普通のエンプラを書くリハビリ中、気づけば巫山戯てる。基本は常識人の予定。
地の文はだいぶスッキリしてきたけどなあ、もう一歩足りない感じ。
メインの三バカ空母が変わらないのは俺の永久の推しだからであってアバーズレーンはあんまり関係ない。
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