無表情のこころさんがつきまとって来るんだが!? 作:白亜霧雨
「ねぇ、もしも無人島に好きな物を一つだけ持っていけるとすればあなたは何を持っていくの?」
「………。」
またベタな問題を出して来たな。
質問をして来たのは秦こころ。俺の幼馴染だ。
まあ、タイトルを見たらわかるように無表情だ。笑顔の一つ見せない。みんなには顔だけ死んでるとか凍ってるとか言われているが、特に気にしていないらしい。
そして、質問を受けた俺の名前は……
「ねーねー、聞いているの? 小谷祐也くん。本当は聞いていないんじゃない? 一年E組出席番号11番の小谷祐也くん」
「ええい、うるさい! 今いい感じの流れで自己紹介できそうだったじゃないか! 邪魔すんなや! それにいつもそんな風に呼ばないだろう!」
「自己紹介? はて? ここには幼馴染で可愛い秦こころちゃんしかいないのに、どうしてそんなかしこまって自己紹介する必要があるんだい?」
「いや、それは……その………」
これを読んでる読者に自己紹介してるんだよ。
とは言えない。
話が急にメタくなってしまう。
なんて返そうか迷っているとこころが話し始めた。
「まあいいや。君が読者に自己紹介しようとしていることはさておいて」
「おくなや……って待て! お前知っててこんなことしてたのか!?」
「はて、なんのことやら、それで、最初の問題に戻るんだけど、無人島に一つだけ物を持っていけるとしたら何を持っていくの?」
「………。」
何を持っていく。か。
やっぱり無人島で必要といえばナイフ……だよな?
「ナイ……」
いや待て、そもそもどうして無人島にいるんだ?
別に無人島に行きたくないんだけど!?
「あー、あー、そうかいそうかい。やっぱり君も男だもんね」
「は?」
「たしかにオカズは必要だよね」
「いや、ちょっと待って?」
「エ○本は君の生活の一部と化しているもんね」
「ちょ!? たしかに否定はしないけれども! 何も無人島に行ってまでしたいとは思わねーよ!?」
「したい? 一体何をしたいのかな? 私には一体『ナニ』がしたいのかわからないな」
「お前絶対知ってるだろ……じゃなくて! 俺はそもそも無人島に行きたくないんだって!」
「……。ではこういうことにします。あなたが乗っている飛行機が墜落して無人島に来た。これならどうでしょう?」
「……まあ、それならいいか、いいのか?」
でもやっぱりナイフだよな。
サバイバルナイフ。
サバイバルって名前についていることだし。
「サバイバルナイフで」
「ではシュミレーションしてみましょう」
「え? なんで?」
「手荷物検査を行わせていただきます」
なんか始まった。
「お客様? 手荷物を預からせてもらいます」
「あ、はい」
バッグはロッカーの中だからエアでこころに渡す。
「お手数おかけします。ビッービッービッー」
こころが壊れたラジオのように呟き始めた。
無表情で、無表情で!
「な、なにしてんの? それ?」
「お客様、金属探知機に反応がございます。バッグの中身、確認してもよろしいでしょうか?」
「え? はい、わかりました」
そもそもバッグがないのだが、こころはそこにバッグがあるかのようにジッパーを開けていく、しかし、金属探知機に反応があったのはなんでだ? 俺はなにも………。
「お客様、このナイフはなんですか?」
「やっぱりかーーッ!」
持ってたもんな。
ナイフ。
と、とりあえず、空港の保安検査官が怪しんでいる。
なんとかはぐらかさないと。
「きょ、今日はいい天気ですね」
「今日はあいにくの雨ですが?」
「それだったら飛行機飛ばねーだろ。お前実は飛行機乗ったことねーな?」
俺もないけどさ。
「はぐらかさないでください。どうしてナイフがしまわれていたんですか? 場合によれば警察に連絡をしなければなりません」
「え、えと、その、飛行機が、墜落するので無人島で生活できるようにと持ち込みました」
「そんな事例はありませんが?」
「で、ですよね。すいません」
なんだろう。
すっごい焦る。
授業中に携帯の着信が鳴った時くらい焦る。
こころの演技が上手いからか?
顔だけ大根役者だけど。
すると、怪しむこころの目が一気に穏やかになった。
「と、まあこんな風にそもそも飛行機に乗せることができないと思います。なので、何か一つ持っていけてなおかつ飛行機のチェックを通過できる物を持ってきてください」
「……。」
それを言うだけならシミュレーションしなくてもよかったんじゃ……?
「じ、じゃあ。食べ物とか?」
「そう、それなら問題ないかもね」
「なんだそれ。じゃあお前はなにを持っていくんだ?」
「まあ、どれを持って行っても生き残れるのか、と言う漠然とした疑問は残るのだけれど、強いて言うなら」
ここでこころは一呼吸置いて、
「君かな」
と言った。
こいつ、無人島生活に俺を巻き込むつもりだ!
「やめろや! 俺を巻き込むな! 一人でサバイバルしてろ!」
「どうして? 私はか弱い女の子だよ? 男手の一つや二つ欲しいじゃないか」
「だからって、なんで俺を連れてくんだ」
「……。君にしか、頼まないから」
なんかすごいときめきそうな言葉を言ってきたが、ただ無人島で肉体労働をさせたいだけなんだよなぁ。
と、こんなことを思っていると、学校のチャイムが鳴った。
「あーあー、やめやめ! 帰るわ」
「そう。じゃ、さよなら」
「じゃあな」
教室のドアを開け、すぐさま帰る俺を尻目にこころは一人でなおかつ誰にも聞こえないくらい小さな声で話した。
「ふむ。なんら関係のない質問から頼られている、君にしか頼めないと、男がドキドキするような言葉を言ってみたけど、失敗したのかな」
と。