無表情のこころさんがつきまとって来るんだが!?   作:白亜霧雨

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第四話「小谷くんの進路はなんですか?」

「秦さん! あのふざけた進路はなんですか! もう一回書き直してください!」

「どこを書き直せばいいのでしょうか……?」

「全部よ! 全部! あなた、小学生じゃないんだから、もっと真面目に考えたら?」

「私は真面目に書いたつもりですが……?」

「と、に、か、く! もう一度書き直して明日の朝また提出してください!」

 とりあえず、まあ、さっきの状況を説明するには昨日に遡る必要がある。

 昨日。

 担任の先生が将来なりたい職業を紙に書く、進路希望調査を実施したわけだ。

 私は高校1年生なので、これはあくまで目安なのだが、私だけ先生に呼び出されたのだった。

 回想終了。

 一体『小谷くんのお嫁さんになる』のどこがいけなかったのだろうか?

 それはさておき、言われたからにはもう一度書き直さないといけない。

 そう思って考えてみると、自分は将来何になりたいのだろうか……?

 お母さんは、なりたい物になりなさい。と言っていたし、お父さんは、孫がみたいから結婚してくれ。と言っていたし、一体どうすればいいのだろうか……?

 そして、考えているうちに下校時刻になった。

 

「と、言うわけなんです。小谷くん。なにか、アドバイスをください」

「……。 なんでそこで俺に頼るわけ? それに今日は学校を出たあと裏口から入ってこころが帰ったあとにまた学校を出たのに、なんで俺の隣に平然といるの?」

「まあそれは……その………に、日本のちからです」

「嘘だな」

「なぜバレたんです? わかりました本当のことを話します。実は、小谷くんの匂いをたどって来ました」

「すっごい怖いな、本当だったら」

「チッ、さすがは小谷くんですね。一回目の嘘を嘘だとわかるようにつき、そのあとの二回目の嘘をあっさり言うことでだいたいの人には本音を言わなくても済むのに」

「なにその方法。俺もこんど友達に使ってみようかな」

「て、そんなことはどうでもいいんですよ。小谷くん。進路希望調査。あなたはなんと書きましたか? 参考程度にお聞かせください」

「………。」

 まだ聞きたいことはあるんだが、なんとなく全部はぐらかされる気がする。

「えーと、俺も実は、割と適当に書いたっていうか」

「嘘ですね」

「………。」

 なんでバレたんだ? 早くない?

「はい。実は真剣に書きました。……やっぱり言うの恥ずかしいからアドバイスだけでいい?」

「まあ、いいでしょう。それで思いつくかもしれませんし、どうぞ、言ってください」

「えーと、自分がなりたいものを書くんじゃなくて、自分がなれる物を書くんだと思うよ」

「?」

「例えば、成績が悪い人が『宇宙飛行士になる』とか、サッカーやってないのに『サッカー選手になる』って言ったらどう思う?」

「お前には無理だ。諦めな、愚かな豚さんって言います」

「言い方キツくない?」

「どSこころちゃん」

「話戻すぞ? もちろん否定するよな? てな感じで、今のこころの進路も、先生たちにとっては無理があるものとして捉えられたんじゃないかな? だから、進路希望調査にはもうちょい手の届く範囲の目標に変えてみたら?」

「………。なるほど、つまり、宇宙飛行士になりたかった人はロケットの部品を生産する工場に、サッカー選手になりたかった人はシューズを作る工場に入社したい。と、書けば文句はないってことですね?」

「まあそういうことだな」

「なるほど、わかって来ました。これなら明日の提出期限に間に合いますね。ありがとうございました。小谷くんに聞いて正解でした」

「おう。ちなみになんて書いたんだ?」

「………。」

「あ、おいこら! 逃げんな!」

 なんだあいつ!? 結構早いぞ!?

 すると急に立ち止まって、

「教師」

 と、言った。

「え?」

「小谷くんの将来の夢は教師じゃないですか?」

「お前、なんでそれを知ってッーー!」

「あなたのことならなんでもお見通しです。何せ、私はあなたの幼馴染ですから」

 こころはほんの少し口角をあげてそう言った。

 

「先生書きました」

 パソコンに文字を打っている最中に、うちの生徒に声をかけられた。

 私はキリがいいところで、手を離し、そちらの方を向く。

 秦こころ。

 無表情をそのままだしたような生徒でなにを考えているのかわからない生徒だ。

「じゃあ見せてもらおうかな?」

 まあ、天才が凡人に理解されないのと一緒で、そういう生徒こそが、案外社会を作り、あげ……て……く。

「あの、秦さん……? 冗談ですよね?」

「? なにがですか? ある人の助言通り現実味のある進路にしましたが?」

「いや、前のに比べるとたしかに現実味を帯びてきたけど、進路よ? 職業、わかる? お願いだからこんどはちゃんと書いてください」

「………。」

「あ、あと。その助言した人は誰かわかりますか?」

 あの生徒は一体何を考えているのか、本当にわからない。

 

 しっかりアドバイス通りに書いたのに、何がいけなかったんでしょう。

 その紙には『小谷くんの恋人になる』と書かれていた。

「こうなったら、私も小谷くんと一緒の教師と書くしかありませんね。第三希望ですが……」

 第一希望は小谷くんと恋人になること。

 第二希望は小谷くんと のお嫁さんになること。

 第三希望は小谷くんと同じ職業につく人。

「ふふっ、さて、進路希望調査に書く内容も決まったことですし、今日も小谷くんと帰りましょうか」

 するとこころはスマートフォンを取り出し、アプリを起動した。

 そのアプリには学校の地図が表示されており、体育館の裏に赤い点が表示されている。

「なるほど、今日は小谷くんは体育館裏にいるのですか。では、すぐそちらに向かいましょう」

 今日もこころは小谷くんの元に向かうのだった。

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