無表情のこころさんがつきまとって来るんだが!? 作:白亜霧雨
今俺は家に帰っている。
いつも帰っている気がするが、いつもの帰り道とは一味違う。
こころがいないのである。
あいつがいないだけでこんなに穏やかに帰れるものなのか。
「♪〜、♪〜♪〜」
つい鼻歌を歌っているが、次の曲がり角を曲がった時に口ずさむことができなくなった。ていうか、鼻歌を口ずさむって何? 鼻なの? それとも口なの?
曲がった先にはこころがいたのだが、どうも様子が変だ。
何か話してはいるのだが、俺に話しかけていない。それどころかしゃがんで道路を見ている構図になっている。
「よしよし、可愛いなお前は」
独り言か? だれに対して言ってるんだ?
「よしきめた。お前の名前はゴンザレスだ」
「ネーミングセンスどうかしてんな!」
「え?」
「あっ」
やべぇバレた。
「小谷くん。いたんですか、それよりみてください捨て猫のゴンザレスですよ」
言われた方向を見ると、拾ってくださいと書かれた段ボールに灰色の子猫がいた。その猫はとても小さくぬいぐるみのように……うん。ちょっと待って?
「え? お前こんな可愛い子猫にゴンザレスとかいうゴツい名前をつけたのか?」
「? それが何か?」
「お前、なんかもっとマシな名前つけてやれよ」
「例えばどんなのですか?」
「み、みーちゃんとか」
恥ずかしい恥ずかしい。
何が悲しくてこころの前でみーちゃんなんて言わなきゃならんのだ。
「すいませんが却下します」
「え! なんでだ? ありきたりだろ?」
「いえ、名前がみーちゃんだと、私が名前を呼ぶときにみーちゃんちゃんになってしまうからです」
「その、名前はみーでいいよ? あれ? ちょっと待って、もしかしてだけど、ゴンザレスって名前にもちゃん付けしようとしてた?」
「それがどうしたんですか?」
「うっそだろお前! ゴンザレスだぞ! ちゃん付けしたらゴンザレスちゃんだぞ!」
「えー、でもみーが名前って言うのも可哀想だと思いませんか?」
「えっ?」
言われてみれば、俺だって小谷祐也から小谷ゆーになったら………究極にダサいな死にたくなる。
「じ、じゃあタマとか?」
「なんですかその日曜日に働く某社畜海産物アニメで飼われているような名前は」
「いや、定番だろ?」
「定番でつけられる猫の気持ちを考えてください」
「じゃあゴンザレスって名前をつけられそうな猫の気持ちも考えてあげてください」
「「………。」」
可愛い子猫のためなのでお互い一向に引く気配がない。
猫の前で睨み合っている(こころは無表情だが)二人は異様な光景で、
「ママー、あそこに変な人がいるよ〜?」
「みちゃダメよ!」
と、親子に逃げられたときにお互い恥ずかしくなった。
割とマジで。
「わかりました。では二人の意見を足して新しい名前にしましょう」
「……まあ、それなら………」
「では、名前はゴンザレスみーにしましょう。よしよし、ゴンザレスみーちゃん」
「いやちょっと待ってちょっと待って。え本当に足しただけ!? もうちょっとひねろうよ」
「………う〜ん。では、二つの名前を混ぜてゴみはどうでしょう?」
「ひでぇ。たしかに混ざったけど」
「ごはカタカナで、みはひらがなで発音するのがポイントです」
「知らないよ!」
めちゃくちゃだ。
本当は飼う気がないんじゃないか?
「お前本当は飼う気ないだろ?」
「ええ、ありません。うちには猫アレルギーの桂木がいますからね」
「………。」
………誰!!
「ごめん。桂木って誰?」
「ああ、私の家に使用人です。桂木啓介」
「そうなんだ……」
使用人いるんだ。
さすがだな。
「でも、飼うことができなくても可愛がることはできますから、いつまでも猫だとかわいそうでしょう」
「そうか。そうだよな。じゃあもう少しちゃんと考えなきゃな」
「はいそうでs………」
「あ! やっとみつけた!」
なにやら声がしたのでそちらを見ると、帽子を被った少年が走ってきた。
「お兄さんたちが守ってくれてたんだよね! ありがとう!」
「へっ?」
「斎藤は段ボール箱に入るのが好きだから入っちゃったのかな?」
「ち、ちょっと待ってくれ、その猫はお前の飼い猫か?」
「? そうだけど? 子猫の斎藤ひろし。まだこいつがお腹の中だった時に名付けたらメスが産まれちゃって変な感じだけど、僕の家族だよ!」
「そ、そうか」
この時二人は思った。
斎藤ひろしは無いわー、と。
「じゃ、ありがとね! お兄さんたち!」
少年は去っていった。
俺たちに残されたのは、今までなにをしていたんだろう。と思う気持ちだった。
「なあこころ」
「なんですか?」
「俺、今日を通して一つわかったことがある」
「奇遇ですね。私もです」
「「名前はちゃんと考えること」」
一話分書いてボツにするとかがザラにあるので投稿頻度は低めです。申し訳ありません