無表情のこころさんがつきまとって来るんだが!?   作:白亜霧雨

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 完全に作者の事情ではありますが、夏休みが終わり学校が始まります故、投稿は1週間前後、もしくはそれ以上になるかもしれません。
 多忙という訳ではありませんが、元々暇つぶしに始めた連載でございますので、気長に待ってくれれば幸いです。


第九話「雨が止むのを待ちましょう」

 梅雨。

 それは、日本に生じる雨期である。

 実は北海道には雨期がないとか、東アジアにしかないとかあるらしいが、学生からしたら『めっちゃ雨降る』くらいの感想しか浮かばない。

 そんな中、午後から雨が降ると気象予報士さんが言っていたにも関わらず、傘を持って来ていない男子がいた。

「あっ……雨降ってる。傘持って来てないんだけど……」

 というか、それは俺だった。

 な〜んで傘持って来てねぇんだよ〜。

 とか思っていると、俺の友達が俺の肩をポンッと叩いて、

「お前…傘……忘れたのか?」

 と言ってきた。

 俗に言うイケボというやつだと思うが、ストレスしかたまらない。

「忘れたよ。つか、なんだそのうぜぇ声は……」

「知らないのか……? イケボってやつだよ」

 当たった。

「気持ち悪りぃんだよ! 元の声に戻せ元の声に! で? 傘でも貸してくれるのか?」

「いや? あいにくと傘は一本しか持ってないんだわ」

「そうか……ん? 傘ってさ、もしお前が傘の右側にいるとしたらあと一人は入れるんじゃねぇの?」

「ギクリッ。い、いや、入れねぇし? 俺の傘一人用だし? なんなら傘のど真ん中でさすし? 別に男二人で相合傘ってのはキモいとか思ってねぇし?」

「わっかりやすいやつだな、思いっきりキモいって言ってんじゃねーか!」

「………あー家の用事を思い出したー家に帰らないとー」

「嘘つけ! めっちゃ棒読みじゃねーか! って、おい!」

 俺のツッコミには目もくれず雨の中傘をさして走って行った。

 ん? よく見たらあいつ!

「傘二本持ってんじゃねーか!」

 クソッ!

 貸してくれてもいいじゃねぇか。

 

「はぁ……」

 憎き友人も行ってしまったし、やっぱ、雨が止むまで待つしかないのかなぁ。

「おっ谷くん!」

「んぁ?」

 声のする方向を見てみると、水色の髪の女子がいた。

「誰……?」

「ひっど〜い! 私だよ! わ・た・し! 小谷くんの三クラス隣の多々良小傘だよ!」

「三クラス隣って遠いわ! つか、なんで俺の名前知ってんだ!?」

「ふっふ〜ん、それはね……実は! 私、多々良小傘は! 小谷くんの幼馴染である秦こころさんの友達なのです!」

「なっなんだって〜!」

 って、驚くことでもないな。

「まあそれで! たまたま玄関でボッーとしてた小谷くんに話しかけたという訳です!」

「そうか、まあ、ただ雨が止むのを待ってただけなんだけどな……」

「ほうっほう。なぜ雨が止むのを待っているのですか?」

「ああ、それは……」

「おぉ〜と! 言わなくても結構です! 私が当てて見せましょう!」

 小傘は俺の方を向いて、まえかがみになり左手を腰に当て右手で敬礼ポーズをとりウインクをしながら言った。

「この! 名探偵小傘がね!」

「……お前が探偵なんて話、聞いたことも見たこともないぜ?」

「では食べたことと触ったことと嗅いだことはあるのですね!」

「ねぇよ! 聞いたことも見たことも、嗅いだことも食べたことも触ったこともない!」

「ふ〜む。では普通の探偵にしましょうか、この! 探偵小傘がね! なんかしっくり来ないですねぇ……」

「ん〜、そうだな。じゃあもう名探偵でいいんじゃないか?」

「そうですね! あっ、そういえば、小学校にいたときにクラスの男子が名探偵のことを『めんたんてい』と言っていたんですよ! それを初めて聞いた私は麺と牛タンのお店かと思いました!」

「男の子も男の子だけど、お前もお前だな、さしずめ麺タン亭か?」

「そうです! それで親に『麺タン亭行きたい!』と連呼して困らしたのはいい思い出です」

「ふーん、何年くらいでそれが勘違いだと気づいたんだ?」

「ん〜と、中学三年生の時でしたかね」

「結構最近だな! 15にもなってそんな勘違いをしているやつに探偵なんてなれない! 事件が謎のままで終わっちまう!」

「真実はいつも秘匿!」

「隠しちゃった…」

「では、迷う。という漢字を使って迷探偵。というのはどうでしょう?」

「おぉ…いい感じだな!」

「ムムッ! 事件の香りがします!」

「えっ? どこからですか!?」

「あなた今! ダジャレを言いましたね!」

「細かい上に事件でもなんでもねぇ!」

「いいえ! これは許された犯罪ではないですよ? 駄洒落取締法に違反します」

「ダジャレも許されない世界なんて酷すぎる!」

 

「さて、それはさておきですよ小谷くん!」

「ああ、少し盛り上がり過ぎたな迷探偵」

「おっ? また始めますか? たった一つも真実見抜けぬ迷宮しかない迷探偵!」

「始めるな始めるな!」

「では! なぜ小谷くんがここでボーちゃんのようにボーっとしているのか、当てて見せましょう」

「別にボーちゃんの真似してるわけじゃないんだけど……」

「まず一つ! 今は梅雨であること。二つ! 今日は午後から雨が降るということ。その二つから導き出される答えは一つ! 小谷くんは傘を忘れている!」

「お、おぉ〜! 当たっている! って、誰でも分かるわ!」

「そうでしょうか? もし私より先にこの結論に達していた人がいるのなら、その人に傘を貸してもらってとっくに帰っているんじゃないですか?」

「そ、それは……」

 あいつ貸してくれなかったんだけど……。

「まあ、その状況を見るにそうではなく、親の迎えを待っているのではないですか?」

「えっ?」

「ふっふっふっ。当たっていますでしょう?」

「あ、いえ、申し訳にくいんですけれど、傘、忘れただけなんです」

「えっ……?」

 あ、小傘の顔がどんどん赤くなってる。

「えっ!? じゃ、じゃあ、私の推理は間違っていたということ!? そんな! 名探偵一生の不覚! こんな難事件ならぬ軟事件を解決できないなんて!」

「だから名探偵じゃなくて迷探偵なんだろ? あと、難しいの反対は軟らかいじゃないからな?」

「えっ? そうなんですか!? これは手強い被害者ですね」

「手痛い。じゃないか? 手強いのは犯人の方だよ」

「……私たち、気が合いますね」

「ああ、俺もそう思ってた」

「友達になりましょう」

「いいよ。今日から俺らは友達だ」

 

「はてさて、そんな友達の困っている姿もみたく無いですし、私の傘を貸してあげますかね」

「その傘は二本あるのか?」

「はい? 何を言ってるんですか? 傘は一本しかありません。つまり、相合傘です」

「なるほど。しかしいいのか? 異性同士だし……」

「は? 今更性別のことで入るのを拒むんですか?」

「……それもそうだな。そうなのか?」

「そうなのです、私たちは友達。OK?」

「OK」

「健やかなる時も、病めるときも、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、友であり、共に分かち合うことを誓いますか?」

「なんで覚えてんだよ! それに結婚式の時に神父さんが言ってるやつじゃないか!」

 あれが何かは知らない。

「誓いの言葉ですよ。そういえば私、神父さんのことを、昔はそのまま神様の父親なのだと思ってました! それで、親戚の結婚式に行った時に神父さんを見て、なんて言ったと思います?」

「……ただのおじさんじゃん!」

「ブッブー! 違います! 神父さんを見た私は言ったんです! 『シンプルな人だね』って!」

「あっ! そのダジャレは駄洒落取締法に違反している!」

「しまった! まだ覚えられていたなんて!」

 かくして俺は、多々良小傘という元気な女子と友達になったのである。




 世の学生は夏休みの終わりが来るというのに小谷くんと来たら……はぁ、羨ましい……
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