Dreams   作:九戸政景

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どうも、片倉政実です。それでは、第2話をどうぞ


第1章 深淵高校
第2話 合流


 

「あ、あれ……ここは……?」

 目を開けると、俺はさっきまでいた空間では無く、どこかの建物の廊下の真ん中に一人で立っていた。そして、周囲の物音などに注意を向けながら見回してみると、近くには横に開くタイプの扉が付いた大きな部屋と少し大きめな窓があり、部屋の中には綺麗に並べられた机の椅子が見え、それを見た瞬間にここがどこなのかを理解した。

「……もしかして、ここは学校か……?」

 呟くようにそう疑問を口にしたその時、聞き慣れたチャイムの音が突然鳴り響き、チャイムの音が鳴り終えると同時に、このゲームを仕掛けてきた人物――ドリーマーの楽しそうな声が聞こえてきた。

『ようこそ、諸君。ここがファーストステージの『深淵高校』だ。この『深淵高校』は、見ての通り廃校をモチーフとしたホラーハウスなのだが、この『深淵高校』には諸君らの行く手を阻む様々な謎とエネミー達が待ち構えている。謎が解けない事で死ぬ事は無いが、エネミー達に見つかり捕まってしまったら最後、諸君らは無残な屍へと姿を変える事になる。充分に注意をしてくれたまえ。そして、ここのクリア条件は単純で簡単だ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ただそれだけだ。そのため、脱出の定員人数などはこのステージには設けていない。ただ、出口も鍵もすぐには見つからない場所にあるため、隅々まで念入りに探す事をオススメするよ。

 さて……そろそろ放送を終えるとしよう。では、諸君らの健闘を祈っているよ』

 ブツリという音と共にその放送が終わると、廊下は再び静寂に包まれたが、さっきの放送の効果もあってか、その静寂が俺にとってはとても怖い物に思えた。

 ……隠された鍵と出口、襲ってくるエネミー、そして謎か……。運動は好きだから探索するのは問題ないし、謎解きは結構得意な方だけど、問題はそのエネミーっていうのが何かだよな……。

「……仕方ない。とりあえず今俺がいるのが何階なのかを確認して、それから鈴歌(れいか)とアルヴィンさんと合流しよう。それと……ここの地図も必要だけど、それは二人と合流してからでもまだ間に合うだろうし、まずは少しでも探索をしてみよう」

 当面の動きについて口に出しながら確認をし、自分を奮い立たせるためにコクンと頷いた後、俺は異様な雰囲気が立ちこめる『深淵高校』の中を一人で歩き始めた。

 

 

 

 

 歩き始めてから数分後、目の端に上下に繋がる階段のような物を見つけ、息を潜めながらそこへと近付くと、階段の近くに『2F』と書かれたプレートが見えた。

「2F……つまり、ここは2階か。よし……しばらくはここを拠点にしておこう。ここならドリーマーが言うエネミーって奴に追われても1階や3階に逃げ込む事が出来るし、いざとなれば向こう側から別の階に行く事も出来そうだしな」

 まだ向こう側に別の階に続く階段があるのは確認していないし、たとえあっても階段が途切れている可能性もまだあるけれど、とりあえずはここを拠点にするのが安全な気がする。このゲームは、()()()()()()も残機も無いという正真正銘一回きりのゲームだから、慎重に動くのが一番だ。

 生きて帰ると決めたからには、絶対に生きて帰りたいからな。だから、このファーストステージで(つまず)いてるわけにはいかないんだ。

「さて……ここを拠点にするのは確定として、次はどう動いたものか……」

 次の動きについて考え始めたその時、1階に続く階段からコツコツコツという足音が聞こえ、俺は再び息を潜めた。そして、その足音の主の正体を探るために階段の陰に身を潜め、足音の主が近付いてくるのをジッと待っていたその時、「うぅ……ここ、結構怖いなぁ……」という少し震えた声が聞こえた。

 この声……もしかして、鈴歌か?

 声だけを聞けば、ほぼ間違いなく鈴歌なのだが、ドリーマーが仕向けてきたエネミーが鈴歌の声をコピーしている可能性もあったため、その声の主が2階へ上がってくるのをただ待っていた。そして、足音がすぐ近くで聞こえたと感じた瞬間、俺は足音がした方へ向かって「……鈴歌か?」と声を掛けた。すると、「ひうっ!?」という声が聞こえると同時に、パタンッという大きめな足音が静寂に包まれた廊下に鳴り響き、俺はそれに多少慌てながら周囲の物音に注意を向けた。しかし、運が良かったのかエネミーはおろか、誰かが近付いてくるような音は聞こえず、それに対してホッと胸を撫で下ろしながら小さな声で話し掛けた。

「鈴歌……俺だよ、暖士だ」

「だ、暖士……?」

 声を震わせながら声の主――神月鈴歌(しんづきれいか)はこちらを覗き込むと、安心と怒りが半々といった表情を浮かべながら小さな声で話し掛けてきた。

「暖士……もう、驚かさないでよ……!」

「ゴメンゴメン。けど、エネミーっていう奴の正体が分からない以上、こうやって陰に潜まないとどうにもならないからさ」

「それはそうだけど……でも、こうやって合流できたのは本当に嬉しいよ。例のエネミーがいるような様子は無かったけど、少し歩いてみても誰かがいるような気配すらしなかったから、怖かったし心細かったんだよね……」

「そうだろうな。でも、ここからは大丈夫だ。俺がお前の傍についてるし、何かあった時には守ってやるからさ」

「暖士……うん、ありがとうね」

「どういたしまして」

 安心感に満ちた様子の鈴歌と笑い合っていたその時、廊下の向こうから何やら怒鳴り声のような物が近付いてくるのが聞こえ、俺達は頷き合った後に3階に上がる階段の陰に身を潜めた。そして、怒鳴り声は近付いてくる度に徐々にその声量が増していき、すぐ近くまで来た頃には、思わず耳を塞いでしまうほどだった。

「くそっ! あのドリーマーという男は、本当に何なのだ!? この私をこんな薄汚い暗闇に閉じ込めた挙げ句、謎解きだの出口を探せだのふざけた事を言いよって! 私がこのゲームをクリアした暁には、あの男の正体を暴いた上で訴えを起こしてやる!」

 丑三さんは怒り狂った様子で俺達の目の前を通っていくと、そのまま1階へと大きな足音を立てながら降りていった。そして、足音が遠ざかっていった後、俺達は1階へ繋がる階段を覗き込みながら同時に溜息をついた。

「……丑三さん、同じ階にいたんだな……」

「そうみたいだね。はあ……さっき暖士に会えたのは、本当に良かったかもしれない。あのまま1階にいたら、エネミーに捕まる前にあの傲慢親父に捕まって、アイツの代わりに鍵を探さないといけなくなってたかもしれないし……」

「それは……まあ、ありそうだよな。というか、あの人は最悪の場合他の参加者を犠牲にしてでも生き残ろうとしそうだよな。自分は他の奴らよりも価値のある人間だからとか愚民は自分の言う事に従ってればいいとか言ってさ」

「……うん、そうだね。はあ……そう考えると、あの傲慢親父は味方というよりは、ある意味エネミーよりも厄介な敵かもしれないね」

「まったくだな……」

 そして、俺達はまた同時に溜息をついた。

 本当ならそういう事を言わずに丑三さんとも協力すべきなんだろうけど、さっきまでの言動から考えると、丑三さんと協力し合うには相当な努力と覚悟が必要な上に丑三さんが冷静になっていないといけないため、それの実現まではもう少し時間が掛かりそうだった。

 さて……それについてはとりあえず置いておく事にして、今はアルヴィンさんとの合流を最優先に――。

 そう思いながら再び2階に上がろうとしたその時、今度は3階の方からコツコツコツという足音が聞こえ、俺達は頷き合った後にそのまま1階へ下りる階段の陰に身を潜めた。そして、3階から降りてくる足音が近付いてくるのをジッと待ち、コツンという音と共に足音の主が2階に降りてきたと感じた瞬間、「……あれ? 誰もいない……?」と不思議そうに言う声が聞こえ、その声に俺と鈴歌は顔を見合わせた。

「この声ってもしかして……」

「ああ、そうだと思う。よし……とりあえず鈴歌の時と同じように声を掛けてみよう」

「うん」

 決意を固めた様子で頷く鈴歌に対して頷き返した後、俺は少しだけ体を前に出し、声が聞こえた方へと話し掛けた。

「……アルヴィンさん、ですか?」

「……え? その声は……暖士君かい?」

「そうです。今、階段の陰に隠れてるので、こっちに来てもらえますか?」

「……分かった」

 声の主――アルヴィン・タイさんは静かに答えると、そのまま俺達がいる方へと歩いてきた。そして、俺達の姿を確認すると、とてもホッとした様子を見せ、ニコリと笑いながら話し掛けてきた。

「良かった……二人とも無事だったんだね」

「はい、何とか……アルヴィンさんもご無事で何よりです」

「ふふ、ありがとう。ところで、さっき丑三さんの声が聞こえたような気がしたんだが、丑三さんは一緒じゃないんだね?」

「あ、はい。丑三さんを見掛けた事は見掛けたんですけど、3階の陰に隠れていた俺達の目の前を怒鳴り声を上げながら通りすぎっていって、そのまま1階へ下りていってしまったので、それ以降の事はサッパリですね……」

「あの声はスゴく大きかったから、それでエネミーがこっちに来たらどうしようかと思いましたよ」

「ははっ、それはそうだろうね。けど、たぶんそれは大丈夫じゃないかな?」

「というと?」

「今のところ、まだ誰もエネミーに襲われていないからだよ」

「誰もエネミーに襲われていないから、ですか?」

「ああ。ドリーマーが言っていたエネミーが、このステージ内を徘徊(はいかい)するモノだとすれば、今鈴歌さんが言った通り丑三さんの声を聞きつけてこっちに寄ってきたと思う。まあ、この『深淵高校』の広さなんかはまだ分かっていないけど、さっきの丑三さんの声は3階にいた私にも聞こえてくるほど大きな物だった。なのに、エネミーが寄ってこないという事は、少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事になる。ドリーマーがあくまでもこれを()()()だと言うのなら、スタート直後に参加者がエネミーに襲われて死亡するという展開は、あまり好ましい物ではないはず。もし、エネミーがスタート位置やその周辺にいたならば、危険を考えずに大声を上げる丑三さんや気の弱さから動き出すまでに時間が掛かってしまう九鬼(くき)さんのような人がすぐに捕まってしまうからね。もっとも、こういったホラーを扱ったゲームだと、物語の開始時には敵がすでに動いていてそれが出した音なんかをプレイヤーか誰かが聞きつけるなんて事もある。けれど、さっき上げた理由から今回のゲームのエネミーは()()()()()()()()()()()()()なんじゃないかと私は思っているよ」

「何らかの条件……良くあるのは、()()()()()()()()()()()とか()()()()()()()()とかですよね」

「そうだね。だから、今のところはまだ大丈夫だと思うけど、探索中は怪しい物や部屋が無いか注意をしながらした方が良いかもしれない。ドリーマーの考えがまだ明確に分からない以上、どこに謎解きや攻略に必要なアイテムがあるかは分からないが、罠が仕掛けられている可能性も無くはないからね」

「そうですね。後は他の参加者達との情報共有や探索中の協力ですけど、これも慎重に行った方が良いですよね?」

「……彼らには申し訳ないが、その方が良いだろうね。彼らも私達と同じ参加者ではあるが、ドリーマーがクリアの報酬を事を口にした瞬間の彼らの反応を見る限り、脱出の定員人数が無いとは言え、私達を出し抜いて犠牲にしてでも生き残ろうとする可能性も考えられる。だから、彼らの言動にも注意をしておいた方が良いね」

「「分かりました」」

 アルヴィンさんの言葉に対して鈴歌と一緒に頷きながら答えた後、俺達は再び薄暗い『深淵高校』の廊下へと視線を移した。ここに飛ばされた直後は、この薄暗さと静けさ、そして異様な雰囲気に少し怖じ気づきそうにはなったが、鈴歌とアルヴィンさんと合流した今となっては、その怖さも薄らいだような気がした。

「さてと……それじゃあそろそろ探索を始めよう。探索の方針なんかは……歩きながら決める事にしても良いですよね?」

「そうだね。先に方針を決めても良いけど、歩きながらの方が情報が集まりやすいだろうからね」

「ですね。よし……それじゃあ早速出発しよう」

「うん」

「ああ」

 鈴歌達の返事を聞いた後、俺達はファーストステージである『深淵高校』の中をゆっくりと歩き始めた。




第2話、いかがでしたでしょうか。今回は合流するまででしたが、次回からはエネミーや様々な謎も出していきたいと思っています。
そして最後に、今作品に関しての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けたらとても嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。
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