鈴歌達と無事に合流して探索を開始した直後、俺達はまず探索面においての目標を立てる事にした。その理由は二つ、一つは
「さて……まずはここの地図を手に入れたいですよね」
「そうだね。そして、出来れば人数分欲しいところだが、ドリーマーがそこまで親切かどうかは分からないし、とりあえず一枚は確実に手に入れたいかな」
「地図……ありそうなのは、昇降口か職員室だと思いますけど、どうして二人揃ってそんなに地図を重要視してるんですか? 探索してる内にどこにどの教室があるかなんて覚えちゃう気がするのに……」
「鈴歌の言う通り、この校内の様子は探索してる内に覚えられるかもしれない。けど、ドリーマーが言う謎解きがある以上、地図の存在はかなり重要になるんだよ」
「えっと……つまり、どういう事……?」
鈴歌が不思議そうに小首を傾げる中、俺は自分が考えている地図の重要性について鈴歌に話した。
「まず、地図がある事で助かる理由の一つ目は、ドリーマーの力が及ばない限り、どんな状況に陥ろうとも迷う事が無くなる事だ。この場合のドリーマーの力というのは、この『深淵高校』にある教室の位置を入れ替えたり教室自体を無くしたりみたいな物だな。もっとも、さっきのアルヴィンさんの仮説を借りるなら、ドリーマー自身はこれをゲームだと考えているはずだから、何かしらの違反行動を取らない限り、参加者達やゲーム自体に介入してこないだろうけどな。
続いて二つ目、二つ目は情報の整理や共有がし易い事だ。こういうタイプのゲームで手に入る地図は、基本的に紙の地図が多い。だから、どこかの教室でペンも手に入れる事で、地図に各教室の情報を書き込む事も出来る。もっとも、携帯なんかに地図データがインストールされるパターンも無くはないだろうけど、ゲームの開始前と開始直後にその話が無かった事を考えると、このゲーム内で手に入る地図は、紙製の物なんだと思う」
「なるほど……でも、話してなかっただけで、実はって事もあるんじゃない? ほら、携帯もこうして手元にあるわけだし」
鈴歌は立ち止まった後、スカートのポケットから携帯を取り出しながら言ったが、それに対してアルヴィンさんは哀しそうに首を横に振った。
「いや、どうやらその可能性は無いみたいなんだ」
「え、それって……?」
「……
「あ、はい」
「分かりました」
アルヴィンさんの言葉に従って制服のポケットに入っていた携帯を取り出し、何も考えずに携帯の電源スイッチを押した後に画面を確認した。すると、そこに映っていたのは――。
「……何だ、これ……!」
「嘘……どういう事なの!?」
画面にはいつもの待受画面とは違い、青い背景に白い文字で大きく書かれた『D』の文字、そして電話とメールとブラウザの三つだけが表示されており、どれだけ他の画面に移動してみてもそれは変わらなかった。
「電話とメール、そしてブラウザ……これ以外は、この『エンドレスドリーム』内では必要ないから使えないという事ですね」
「恐らくそうだろう。ゲーム開始直後、私も鈴歌さんと同じ事を考え、すぐに携帯電話を取り出し、今君達がやったように電源を入れてみた。しかし、私の携帯電話も同じ状態だった上、この『深淵高校』の地図データがメールで送られてくる事は無かった。つまり、暖士君が予想した通り、ここで手に入る地図は紙媒体の物に限られるのだろうね」
「そっか……それじゃあやっぱり探索中に地図を見つけるしか――あ、でもどうしてここでインターネットが使えるんでしょうね?」
「それなんだけどね……二人とも、これを見てくれるかな?」
そう言いながらアルヴィンさんが取りだした携帯の画面には、とあるページが表示されていた。
「インターネットは繋がるけれど、このサイト以外には行く事が出来ないみたいなんだ」
「これは……遊園地のホームページみたいですね。名前は……『ドリームアイランド』?」
「あれ……? この名前、どこかで聞いた事があるような……」
「そう言われれば……でも、どこで聞いたんだっけ……?」
鈴歌と揃ってその遊園地の事について記憶を引っ張り出していたその時、記憶の奥底から『ドリームアイランド』に関する記憶が突然見つかり、「「……あっ!」」と俺達は同時に声を上げた。そして、同時に声を上げた事に対して少し気恥ずかしさを感じながら揃ってクスリと笑った後、俺は見つける事が出来た記憶について話を始めた。
「俺……この遊園地に行った事があるみたいです。10年前、テレビか何かで特集をしていたのを偶然見て、母さんと一緒に行ってみたいねって話してたら、父さんが週末に連れて行ってくれて……」
「え、暖士も? 私もこの遊園地に行った事があるよ、同じく10年前に……」
「そう……なのか?」
「うん。でも、流石に同じ日かは分からないから、出会ってないかもしれないけどね」
「まあ、そうだよな。因みに……アルヴィンさんは、この『ドリームアイランド』に行った事はありますか?」
「……ああ、あるよ。今までに何度か行った事はあるけど、私も同じく10年前にも行った記憶はあるよ」
「なるほど……つまり、少なくともこの三人は
「だね。となると……他の三人も『ドリームアイランド』に行った事があるのかな?」
「そこまでは分からない。けど、もしそうだとすれば、ドリーマーが言っていた共通点はそれという事になるね」
「10年前に『ドリームアイランド』に行った事がある六人……でも、10年前に何か特別なイベントとかキャンペーンとかがあったような記憶は無いけどな……?」
「そうだよね……もし、何かイベントでもあって、それに関係してるならまだ分かるけど、そうじゃなかったら10年前の来場者から無作為で選んだ事になるし……」
「……ああ、そうだね。つまり、ドリーマーが言っていた共通点は、それだけじゃなくて他にもあるという事になるね。そして、ドリーマーは放送の中で出口や鍵を探す時は、
「共通点のヒント……それが攻略に使えるのかは分かりませんけど、こうなったらそれも探してみた方が良さそうですね」
「ああ。このまま謎にしておくと、モヤッとしたままで終わってしまうからね。二人とも、探索中は謎解きや攻略に使えるアイテム以外にもこの事についても探してみる事にしよう」
「「はい」」
アルヴィンさんの言葉に頷きながら返事をしていたその時、俺達の視界にもう一つの階段が入り、俺達はそこでひとまず立ち止まった。階段は俺が予想していたような崩れた物では無く、最初に見つけた階段と同じようにしっかりと1階と3階の両方にいけるようになっている物だったため、その事に対して心の中でホッとしていた。
「階段……ここまで来る間に職員室らしい部屋が無かった事を考えると、1階か3階のどちらかにあると見て良いみたいですね」
「そうだね。そして、二人と合流する前に3階も一応見て回ってみたけれど、それらしい部屋は無かった。つまり、職員室は1階にあるという事になるかな」
「1階……それなら、昇降口も一緒に調べてみましょうか。もちろん、ドアが開くわけは無いですけど、下駄箱にも何かアイテムかヒントがあるかもしれませんし」
「ああ、そうだね。よし……それじゃあそろそろ1階へ降りてみようか」
「「はい」」
そして、ゆっくり1階へ降りた後、軽く周囲を見回してみると、向かって右側には2階で通ってきたような廊下が続き、左側には一枚の引き戸がある他、その向こうには渡り廊下のような物が見えていた。
「渡り廊下があるという事は、その向こうには体育館みたいな物がありそうですね」
「体育館かぁ……こんな時じゃなかったら、思う存分運動したいけど、今はそれどころじゃないもんね」
「まあ、そうだけど……そう言うって事は、運動が好きなのか?」
「うん! 私、こう見えてもバスケ部だからね。言ってみれば、体育館は私のホームみたいな物かな?」
「そっか。俺はサッカー部だから、どちらかと言えばグラウンドがホームになるかな?」
「ふふ、そうかもね。そういえば……アルヴィンさんは、学生時代は何部でしたか?」
「そうだね……私はあまり運動は得意じゃなかったから、二人とは違って文化部だったよ」
「あ、そうだったんですね。何だか運動が出来そうなイメージだったので、ちょっと意外です」
「あはは、学生時代はよく言われたよ。ただ、その分謎解きでは活躍できるように頑張るつもりだから、期待していてくれ」
「分かりました。俺も謎解きは得意な方だと思うので、いざという時には頼って下さいね」
「ああ、そうさせてもらうよ。もちろん、鈴歌さんにもね」
アルヴィンさんがニコリと笑いながら答える中、それを聞いていた鈴歌が少し申し訳なさそうな様子を見せた。
「あ……えっと、二人には申し訳ないんだけど、実はあまり謎解きとかクイズとかは得意じゃないんだよね……」
「え、そうなのか?」
「うん……運動とか歌うのとかは得意だから、体育や音楽の成績は良いんだけど、5教科の方があまり良くなくてね……。あ、でもその分私は探索面で活躍できるように頑張るつもりだから、そっちは任せてね」
「ああ、そうさせてもらうよ。まあ、それぞれ得意不得意はあって当然だから、本当はあまり気にしなくても良いと思うけどな」
「それはそうなんだけど……やっぱり活躍出来ないタイミングがあるのは、何だか悔しいでしょ? 自分は他の面で頑張れば良いって思っててもどこか辛いっていうか……」
「うーん……その気持ちは分からなくは無いけど、やっぱりどの面でも活躍出来る万能な奴なんてそうそういないだろ? 俺は謎解きみたいな頭使う事でも探索面でも力にはなれるけど、二人みたいにどっちかに特化してるわけじゃないから、その分どこかで活躍出来ないタイミングが出てくると思う。だから、ここはそれぞれの得意分野で活躍出来る事に誇りを持っていくのが一番なんだよ。そして、自分の欠点は生きて帰ってから克服していく。俺はそれで良いと思ってるぜ?」
「自分の得意分野で活躍出来る事に誇りを持つ、か……うん、そうだね。このままくよくよしててもしょうがないし、今は生きて帰る事が一番だもんね」
「ああ、そうだ。それに、バスケもサッカーも今だってチームワークや役割分担が大事だろ? まあ、それと比べるのはちょっと違うかもしれないけどさ」
頬をポリポリと掻きながら言うと、鈴歌は目を閉じながら首を横に振った。
「ううん、暖士の言う通りだよ。お互いの苦手分野をカバーしあってこそのチームだもん。その中で出来る事があるなら、今はそれに対して全力でやるだけ。だから、私はこの運動神経を活かして二人の役に立てるように頑張っていくよ。それが今の私に出来る事だからね」
「鈴歌……ああ、分かった。けど、無理だけはするなよ? 大事な仲間を失うのはとても辛いからな」
「うん、分かってるよ。でも、それは君だって同じなんだからね? 大事な大事な私達のリーダーさん?」
「リーダーって……俺はそういう器じゃないんだけど?」
「ううん、私達のリーダーは暖士にしか務まらないよ。アルヴィンさんもそう思いますよね?」
「うん、そうだね。年上である私が言うのもアレだが、暖士君のその人をまとめ上げる能力や人柄は、私よりも遙かに優れていると思っている。だから、このチームのリーダーは暖士君にこそ相応しいと私も感じているよ」
「アルヴィンさんまで……はあ、分かりました。そこまで言われて嫌だとも言えませんし、言っている時間もありませんから。けど、あくまでもリーダーなのは役割としてなので、謎解きや探索面の相談なんかは普通にさせてもらいますからね」
「ああ、もちろんだ。リーダーを君に任せる以上、鈴歌さん同様全力で君のサポートをさせてもらうよ」
「はい、お願いします。あ、それと……今の内に、それぞれの連絡先を交換しておきませんか? どういう原理かは分かりませんけど、電波も入っていて電話やメールが使えるとなった以上、連絡手段があるならそれを使わない手は無いと思うので」
「ふむ……それもそうだね。はぐれても大丈夫なように探索面の目標は立てているとは言え、必ずしも合流出来るわけでは無いし、はぐれた先で何かを見つけた時にすぐに報せあえるからね」
「それに、お互いの安否が分かるならそれに越した事は無いからね」
「そういう事。という事で……そろそろ探索も再開した方が良いし、早速やっていこうか」
「うん!」
「ああ」
そして、しっかりとお互いの連絡先を交換した後、俺達は横に一列に並びながら1階の探索を始めた。さっきまでいた2階は、二年生の教室が並んでいたが、この1階には一年生の教室が並んでおり、当然だがどの教室もシーンと静まりかえっていた。
「ここは……どうやら教室棟だったみたいですね」
「ああ。となると、どこかに特別教室棟に繋がる道があるのかもしれないね」
「教室棟に特別教室棟……それに体育館まであるって事は、この『深淵高校』の敷地は結構広いのかもね」
「そうだな。ただ、これで旧校舎なんてのもあったらと思うと、結構キツいけどな」
「う……確かにそうだね。そうなると、探索エリアが四箇所になるから、尚更連絡手段が必要になってくるね」
「確かにな……ん? もしかして、携帯が使えるのはそういう理由があるからなのかな? 例えば、各ステージの行動できる範囲が広いからとか連絡手段が必要になるタイミングがあるからとか」
「なるほど……それは一理あるね――っと、二人とも、どうやら着いたみたいだよ」
アルヴィンさんの声で立ち止まり、ゆっくりと右の方へ体を向けると、そこには『職員室』と書かれたプレートが嵌まった部屋があり、目の前にある引き戸に軽く力を入れてみると、どうやら鍵は掛かっていなかったらしく、引き戸はいとも簡単に開いた。
「鍵が掛かっていない……って事は、ここは本当に最初の頃に必ず来る事になる場所だったみたいだな」
「みたいだね。でも、職員室の中に罠が仕掛けられてる可能性はあるし、慎重に進んでいこう」
「ああ、そうだな。よし……それじゃあそろそろ中に入ろう」
「う、うん……!」
「ああ」
そして、揃って中へ入ってみると、職員室の中には各教師の机の他に様々な本が収まった本棚やコピー機などの機材、そして各教室や特別教室の鍵がしまわれているであろうキーボックスなどがあった。
「職員室……普段なら世話になる事は少ないけど、今回ばかりは何度も世話になりそうだな」
「そうだけど……私、この職員室の独特な雰囲気があまり好きじゃないんだよね。特に怒られる事をしたわけじゃないのに、スゴく入りづらいし緊張もするから……」
「あ……なんか分かる気がするな、それ。職員室って普段はあまり用が無い分、入る時にはスゴく緊張するし肩に力が入るんだよな」
「そうそう。それで、出る時には肩の力がスーッと抜けて、それと一緒に緊張も解れるんだよね」
「だな。因みに、アルヴィンさんは学生時代に職員室に入る時って緊張はしてましたか?」
「そうだね……していた事はしていたけど、授業で分からなかったところをよく訊きに行っていたせいか、途中から職員室の雰囲気で緊張する事は減っていたかな?」
「な、なるほど……」
「……分からなかったところを自分から訊きに行くなんて、今まで一回もやった事が無いかも……」
「あれ……そうかな? 周りにはそういう生徒が多かったから、それが普通だと思っていたんだが……?」
不思議そうに首を傾げるアルヴィンさんの姿に、俺と鈴歌は苦笑いを浮かべた。
「……この様子だと、アルヴィンさんが通ってた学校って、たぶん……」
「うん……私達が通ってるところよりも絶対にレベルが高いところだよね」
「……だよな。まあ、それはさておき……まずはどこから探そうか?」
「そうだね……地図があるとすれば、あの本棚か他の棚のどれかだろうけど、キーボックスも気になるところかな? ここに来るまでに教室内は確認してないけど、たぶん鍵が無いと開かない教室もあったと思うし」
「だな。それじゃあここは――」
職員室内の探索についての指示を出そうとしたその時、職員室内に置かれていた黒電話が突然鳴り出し、俺達の視線は一斉に黒電話へと注がれた。
「……このパターンは、もしかして……」
「……ああ。私達の予想が合っているとすれば、いつでも逃げられる準備はしておいた方が良いだろうね」
「逃げられる準備って……まさか!?」
「……ああ、この『職員室に入る』という行動が、エネミー出現のスイッチだったかもしれないって事だ……!」
こういう時に出て来る敵は、この部屋の中でしか追いかけてこない事が多い気がする。けれど、そういう時に多いのは敵から一定時間逃げ切らないとドアに掛かった鍵が開かないパターンだ。つまり、本当にエネミーが出て来るなら、この逃げづらい室内で三人が逃げ切るための工夫が必要になるのだ。
……でも、電話に出ないわけにはいかないし、ここは覚悟を決めて出てしまうのが一番かもしれないな。
ただ大きな音で鳴り響く電話の音に薄らと恐怖を感じながらも俺は電話を取る覚悟を決め、鈴歌とアルヴィンさんに目配せで逃げられる準備を整えてるように指示を出した後、一度深呼吸をしてから静かに受話器を取った。
「……もしもし?」
『ククク……ごきげんよう、
「……その声は、ドリーマー……か?」
『
「……褒められても素直には喜べないな。それで、この電話はただそれだけのために掛けてきたのか?」
『ああ。君達はこの電話が合図となって、エネミーが出現すると思っていたようだが、エネミーはここでは無い別の場所にいるよ。ただ、彼は結構寂しがりだからね……もし、君達が会いに行ってくれたら、彼は君達の事を大歓迎してくれるだろう。親愛のハグや挨拶のための握手でね』
「……大歓迎じゃなく、親愛の情を込めた殺人の間違いだろ? ところで、さっき言っていたとある事っていうのは、『ドリームアイランド』の事か?」
『そうだ。『ドリームアイランド』はとても良い遊園地だったのだが、残念ながらもう閉園してしまっているのだよ。まあ、それはあのページを更に下の方まで見ていけば分かる事だがね。そして、君達が考えている六人の共通点は
「俺達三人の繋がり……? それって――」
『おっと、それ以上は流石に答えられないな。ここから先は、探索を進める中で見つけてくれたまえ。尚、君達が探している地図は、いずれかの教師の机の上にあり、キーボックスにはしっかりとダイヤル錠が掛かっている。だから、当面の課題はキーボックスのダイヤル錠を外す事になるだろうね』
電話の向こうでドリーマーが楽しそうに話す中、俺はドリーマーとの会話の内容に違和感を覚えていた。
「……いやに親切だな。そんなにヒントを与えていたら、ゲームにならないんじゃないのか?」
『いや、なるさ。これはあくまでも君達へのボーナス特典だからね。さて……それでは、そろそろ電話を切るとしよう。これ以上、君達の探索の邪魔をするのは良くないからね。では、また会える時を楽しみにしているよ、
その言葉を最後にドリーマーからの電話は切れ、俺はそれと同時に受話器を静かに置いた。
俺達三人の繋がり……? 俺達には何か共通点とは違う何かがあるというのか……?
ドリーマーとの会話で新たに浮かんだ疑問について考えていると、不意に肩を軽くポンポンと叩かれ、それに対して「え?」と言いながら振り向くと、そこには不安そうな表情を浮かべる鈴歌がいた。そしてよく見てみると、その手には地図のような紙を三枚と小さなプレートが付いた鍵が一つあり、俺達の会話が鈴歌達にもしっかりと聞こえていた事が分かった。
「鈴歌……どうした?」
「暖士、さっきの会話の時もそうだったけど、何だか怖い顔をしてたよ?」
「怖い顔って、そんなにか?」
「えっと……顔自体はそんなに怖いわけでは無いけど、何だか雰囲気が怖かったせいか、顔も少し怖い感じに見えた……かな」
「……そっか、ゴメンな」
「ううん、別に良いよ。でも、ドリーマーの話について考え過ぎるのは、今は止めておいた方が良いと思う。ドリーマーが言っていた私達三人の繋がりっていうのが気にならないって言ったら嘘になるけど、それに意識を向けすぎても今度はこのゲームを突破する事が出来なくなるかもしれないから。だから、それはもう少し探索を進めてから一緒に考えよ?」
「……うん、そうだな。このヒントや証拠が少ない中で考えてもしょうがないし、今はこのゲームを攻略する方に集中した方が良いからな。鈴歌……本当にありがとうな」
「……ふふっ、どういたしまして」
ようやく安心したような笑みを浮かべる鈴歌に対して微笑み返した時、それを静かに見ていたアルヴィンさんがクスリと笑いながら話し掛けてきた。
「さて……それでは、そろそろ探索を再開しようか。先程、地図と一緒に『渡り廊下の鍵』が置いてあったから、次は渡り廊下の先を探索するのが一番だろうね。それと、キーボックスにはドリーマーが言っていた通り、
「そうですね。ただ……ドリーマーがわざわざエネミーの事を話題にした事を考えると、エネミーがいるのはもしかしたら……」
「渡り廊下の先、って事になるよね……」
「ああ。だけど、とりあえず全力で逃げてしまえば大丈夫なはずだ。それと……無事に逃げ切れた後は、この職員室に集合しよう。当面はキーボックスを開ける事が目標になるから、そのためにも全員で協力しながら進めて行きたいからな」
「うん、分かったよ、暖士」
「ああ、了解したよ、暖士君」
鈴歌達が頷きながら答えるのに対して頷き返した後、俺は鈴歌から地図を一枚と『渡り廊下の鍵』を受け取った。
「……よし、それじゃあ早速渡り廊下の方へ行こう」
「うん!」
「ああ」
鈴歌達の声に頼もしさを感じ、小さくクスリと笑った後、俺は鈴歌達と一緒に次の目的地である渡り廊下へ行くべく、職員室を後にした。
第3話、いかがでしたでしょうか? 今回はエネミーを出すまではいけませんでしたが、次回はエネミーを出す予定なので、お楽しみに。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けるととても嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。