Dreams   作:九戸政景

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どうも、片倉政実です。それでは、第6話をどうぞ。


第6話 恐怖の涙と蘇る記憶

 職員室を出て渡り廊下とは逆の方へ向かって廊下を歩いていた時、隣を歩いているアルヴィンさんが、ふと何かを思い出した様子で「……あ、そういえば」と声を上げた事で、俺達は同時にその場で立ち止まった。

「アルヴィンさん、どうしたんですか?」

「ブラウザを開いた時に見る事が出来る『ドリームアイランド』のサイトの事で、少し気になる点があってね」

「気になる点……ですか?」

「ああ。職員室で掛かってきたドリーマーからの電話の中で、『ドリームアイランド』が閉園した事やそれらについての情報がサイト内に書かれていると、彼は言っていただろう? だから、何か他にも隠されているような気がするから、後で落ち着いた時にでももう一度サイトを見てみようと思ってね」

「……そうですね。サイト内にある情報から、俺達の共通点を新しく導き出せる可能性も充分にありますし、もう少し探索を進めてこの『深淵高校』のどこかにあるかもしれないヒントも手に入れた頃にでも、あのサイトをまた見てみる必要はありそうですね」

「うん、それに『ドリームアイランド』は私達の記憶の中にある物の中で、今のところ唯一共通してる物だもんね。だから、私達が忘れてるだけで、たぶん『ドリームアイランド』には私達三人が繋がる何かがあるんだよ」

「ああ、そうだな。それに、他の二人と丑三さんにはまだ『ドリームアイランド』については訊いてないけど、ドリーマーが電話の中で、俺達が考えていた六人の共通点が『半分は合っている』と言っていたから、10年前に行った事が無かったとしても、少なくともあの三人も『ドリームアイランド』に何らかの関係があるのは間違いないはずだ」

「ああ。だから、さっき職員室内で話したように、次に会った時にでもそれとなく訊いてみるのが良いだろう。もし、本当に『ドリームアイランド』と彼らとの間にも何らかの関係があるのならば、ゲームの直接的な攻略には繋がらなくとも何かしらの謎を解く手掛かりくらいにはなるかもしれないからね」

「はい。となると……そういう物が隠されていてもおかしくは無さそうな図書室や資料室も探索する時には念入りに見てみた方が良さそうですね」

「ああ、そうするとしよう。さて……歩みを止めてしまってすまなかったね。そろそろまた歩き出すとしよう」

「「はい」」

 そして、再び歩き出してから数分後、地図に目を向けていた鈴歌から「うーん……」といった声が聞こえた。

「鈴歌、どうした?」

「あ……えっとね、この教室棟に図書室とか資料室が無いかなと思って地図を見てたんだけど、資料室はこの1階にあるみたい。ただ、図書室はこの教室棟の端にある通路から行ける特別教室棟にしか無いみたいなんだよね」

「どれどれ……あ、本当だ。地図を見る限り、階段の手前にある通路から行くみたいだな」

「ふむ……となると、先に資料室から調べた方が良さそうだね」

「ですね。えーと、資料室は――あ、ここか」

 視線を横に向けると、上の方に『資料室』と書かれているプレートが差し込まれた部屋があり、俺は引き戸の取っ手に手を掛けて軽く力を加えた。すると、引き戸はいとも簡単に開いたため、俺達は『傲慢(プライド)』の気配に気をつけながら資料室の中へと入った。資料室の中は、様々は資料が収まった本棚や書き物をするためと思われる机があり、少し警戒をしながら近付いてみると、机の上には万年筆とメモ帳や懐中電灯のような物が置いてあった。

「ペンとメモ帳……それに懐中電灯か」

「懐中電灯は……うぅ、電池切れかぁ……」

「となると、どこかで電池を見つけないといけないね。職員室の中は、暖士君が来る前に九鬼さんも交えて軽く探索をしてみたが、それらしい物や他の鍵などは無かったから、また別の場所にあるのだろう」

「ですね。そして、後はこの万年筆とメモ帳ですけど……」

 俺は視線を移しながら携帯のライトで万年筆とメモ帳を照らした。万年筆はこれといって特別そうな物では無かったが、何となくとても使い込まれた一品のような感じがし、メモ帳には恐らく万年筆を使って書かれたと思われる日本語の文章が何ページにも渡って記されていた。

「日本語のメモ……でも、一体誰が……?」

「それは分からないけど……とりあえず読んでみれば分かるんじゃないかな?」

「そうだな」

 鈴歌の言葉に答えた後、俺は書かれていたメモの内容を読み上げた。

「『『ドリームアイランド』、あの夢の場所が閉園を迎えてからそろそろ半年が過ぎようとしている。あの場所は、様々な人々の心に楽しさや喜び、幸せなどをもたらしていたと今でも思っており、私自身もあの場所での思い出が心に強く残っている一人だ。少しだけ日常の退屈さを感じていた私に、ある出会いを与えてくれた上、これからの毎日を生きる上での希望や目標が出来るきっかけとなったあの場所は、私にとって掛け替えのない大事な場所だ。

 だからこそ、私は絶対に許すことは出来ない。様々な人々の夢を終わらせたあの忌々しい奴らの事を。たとえ、私が悪魔に魂を売る事になっても将来何かしらの形で奴らには自身の罪を思い知ってもらう事になるだろう。これは『ドリームアイランド』の関係者だからというわけではなく、私自身が行いたくて行う孤独な復讐。そう、夢を与える側になるはずだった私が、悪夢を与える側として行う一人だけの復讐なのだ』……」

「……このメモを書いた人は、本当に『ドリームアイランド』が好きだったんだね」

「ああ。わざわざ『掛け替えのない大事な場所』と書いている事を考えると、このメモを書いた人物にとっては、『ドリームアイランド』は本当に夢の場所だったのかもしれないね」

「そうですね。でも……後半部分の内容は、結構内容が暗い感じですよね。復讐だとか罪を思い知ってもらうだとか書いてますし……」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……その前の方に『ドリームアイランド』の関係者だからというわけではなくって書いてある事も考えると、このメモを書いた人は少なからず『ドリームアイランド』の運営に携わっていた人か当時のスタッフって事になるよね?」

「ああ……そして、職員室でドリーマーから掛かってきた電話の内容や『ドリームアイランド』への反応も考えるならこのメモを書いたのは、ドリーマーなんだろう」

「ドリーマーと名乗っている辺り、暖士君の言う通りなのだろうね。ただ……このメモに書いてある出会いや奴らと呼ばれている人達の事は、まだ分かりそうもないかな」

「そうですね。けど、このメモは大事な物だと思いますし、まだページも残っているみたいですから、このまま万年筆と懐中電灯と一緒に持っていってみましょうか」

「それが良いだろうね。さて……次は、この本棚を調べたいところだが……」

 アルヴィンさんが言うのに合わせて本棚に視線を戻しながら万年筆などをポケットにしまった後、本棚に収められている本や資料の数に俺達は小さく溜息をついた。

「……やっぱり多いですよね、これ……」

「うーん……これ、手分けをしても流石に全部は調べられないよね……」

「……まあ、軽く捲る程度に留める形でも良いから、とりあえず調べてみるしか無いだろうね。だが、いつ『傲慢』が来ても良いように廊下からの物音にも気をつける事にしよう。調べ物に集中していて気付いた時には背後に立っていた、なんていう事態は避けたいからね」

「そうですね。それじゃあ――」

 調べ始めましょう、と言おうとしたその時、廊下の方からハアハアという息苦しそうな息遣いが聞こえ、俺達の間に緊張が走った。

 今の声……間違いない、『傲慢』だ……!

 その瞬間、『傲慢』に追いかけられていた時の記憶が蘇り、心臓が早鐘のように鳴り出したが、一度『傲慢』から逃げ切ったという事実を思い出しながら右手を心臓の辺りにあてた事で、心臓の鼓動は少しずつ静まっていった。

 ふう……どうにか落ち着いたな。けど、どうする……『傲慢』から逃げるために今この部屋から出るのは、流石にリスクが高い。かと言って、このままこの部屋でアイツが通り過ぎるのを息を潜めながら待つというのも……。

 徐々に近付いてくる『傲慢』の息遣いを聞きながらどうしたら良いか考えていたその時、不意に俺の左手が何かに握られ、俺はそれに驚きながらも声を上げずに視線だけをそちらに向けた。すると、視界に入ってきたのはじんわりと汗が滲んだ鈴歌の右手と恐怖の色が浮かんだ鈴歌の怯えた顔だった。

 ……そうだ、俺が迷っていたってしょうがない。今の俺に出来るのは、このチームのリーダーとして鈴歌とアルヴィンさんの安全を考えながらこの状況をどうにかする事なんだ。だから、いざとなったらあの時みたいに俺が囮になるとして、今は最善の手段を取るしか無い……!

 すぐ近くから聞こえてくる鈴歌とアルヴィンさんの緊張した息遣いと心臓の鼓動、そして左手に伝わってくる鈴歌の体温と汗を感じながら覚悟を決めた後、鈴歌の右手を強く握り小声でアルヴィンに話し掛けた。

「……アルヴィンさん、こっちまで来てもらえますか?」

「暖士君……一体何を……?」

「説明は後でします。だから……お願いします」

「……分かった」

 アルヴィンさんの答えに頷いた後、「それじゃあこっちに……!」と言いながら鈴歌の手を引いて資料室の隅へと向かった。そして、ちょうど隠れられそうな暗がりに見つけた後、そこに鈴歌を隠すような形で立つと、鈴歌は不安そうな声で話し掛けてきた。

「だ、暖士……」

「……大丈夫だ。お前の事はもちろん、アルヴィンさんの事も絶対に守ってみせる。だから、今はそのまま息を潜めて待っててくれ」

「う、うん……分かった……」

 未だ不安そうな表情を浮かべる鈴歌の頭を右手で軽く撫でた後、緊張した面持ちで隣に立っているアルヴィンさんに声を掛けた。

「アルヴィンさん、いざとなったら鈴歌をお願いします。アイツがもし入ってきても、本棚を倒すなりして一度アイツの動きを封じる事は出来そうなので、俺が引きつけている間に二人でそのまま逃げて下さい」

「……分かった。けど、その時は絶対に逃げ切ってくれよ?」

「……もちろんです」

 アルヴィンさんとの小声での会話を終えた瞬間、突然「ウ……ウゥーッ……!!」という『傲慢』の苦しそうな声が聞こえ、俺達は暗がりの中から一斉に資料室のドアの方へ視線を向けた。そして、いつ『傲慢』が入って来ても良いように心の準備をしながら廊下の物音に耳を澄ませていると、『傲慢』は「ウゥ……グゥッ、ガァーッ……!!」という咆哮のような唸り声を上げ、その音の波動で廊下の窓がガタガタッとまるで悲鳴を上げるように鳴り出した。『傲慢』の唸り声と窓の振動音、その二つが合わさる事で生まれた不快な音に耳を塞ぎたかったが、耳を塞いでしまっては『傲慢』が入ってきた時にすぐに行動をする事が出来ないため、俺は顔を顰めながらそれを必死に耐えた。それから数分もの間、『傲慢』は唸り声を上げ続けていたが、その声は突然ピタリと止み、その事について不思議に思っていると、再び「ウゥ……」という声を上げながらゆっくりと歩き出す足音が聞こえた。そして、そのまま『傲慢』が歩き去っていくまで待った後、気配がしない事を確認してから俺は安心感から大きく息を吐き、「鈴歌、もう大丈夫だからな」と言いながら鈴歌の方へ向いた瞬間、涙で目を潤ませた鈴歌の顔が目に入って来た。

「鈴歌……」

「ご、ゴメンね……でも、やっぱりちょっと……こわ、くて……!」

「……ああ、分かってる」

 語りかけるような声で答えながら握っていた手を離し、鈴歌を落ち着かせるために軽く抱き締めるような形を取った後、そのままの声で話し掛けた。

「こんなところであんなのに殺されるかもって思ったら、怖いのは当然だ。だから、怖いと思った時は今みたいに正直に言って良いし、泣きたい時は本当に泣いても良いからな」

「うん……うん……!」

 涙交じりで答える鈴歌の声に軽く頷き、鈴歌から聞こえ始めた嗚咽を聞きながら俺は背中を静かにポンポンと叩いた。形としては、真央の時と同じなのかもしれないが、今だけはあの時とは違って鈴歌を落ち着かせてやらないといけないという思いが俺の中には確かにあった。

 でも、本当に不思議だな……真央の時は困惑とか苦手意識とかがあったのに鈴歌に限ってはそれが無いし、ちゃんと守ってやらないといけないという思いで満ち溢れているなんて……。

 その二人に対して感じている思いや気持ちの差が不思議ではあったが、鈴歌から感じる穏やかな体温と心の奥から感じるポカポカとした暖かさの二つが、今の俺にはとても心地良く、それと同時に鈴歌の事は絶対に守らないといけないという強い思いが俺の中に沸き起こってきていた。そして、しばらくそうしている内に鈴歌から聞こえていた嗚咽の声が止み、俺がスッと鈴歌から離れると、鈴歌は目を赤くしながらも少し気恥ずかしそうに小さな笑みを浮かべていた。

「えへへ……なんだか恥ずかしいところを見せちゃったね。でも、暖士がああしてくれたおかげでスゴく安心したよ。ありがとうね、暖士」

「どういたしまして。でも、もう大丈夫なのか?」

「うん、それはバッチリだよ。だから、暖士に助けてもらった分、今度は私が頼りにされるように精一杯頑張るね」

「ああ、よろしくな、鈴歌」

「うん!」

 満面の笑みを浮かべる鈴歌の様子に強い安心感を覚えていたその時、突然アルヴィンさんがクスクスと笑い始めた。

「やはり、二人の姿はとても絵になるね。涙を浮かべる鈴歌さんを優しく語りかけ、泣いている鈴歌さんの事を軽く抱き締めながら静かに背中を叩く暖士君……うん、ここに絵筆とキャンバスがあって、こんな状況では無かったら、本当に絵を描きたいところだったよ」

「……アルヴィンさん、それは勘弁して下さい……」

「そ、そうですよ……!」

「ははっ、それは残念だ。けど、さっきの姿から二人がお似合いの男女だとは思ったよ」

「お、お似合いって……」

「ふふ、それにさっきの行動だって二人がお互いの事を信頼しているから、取った行動だと思うよ。人にはパーソナルスペースという物があると聞いた事があるが、恐怖や緊張といった要素があったとしてもあそこまで自然に手を繋げるのは、お互いがお互いの事を少なからず好ましいと思っていないと出来ないはず。そうじゃないかな?」

「それは……まあ、そうなのかもしれませんね。真央と偶然出会った時にも一応同じような形にはなりましたけど、あの時にはあった困惑とか苦手意識とかが、今はまったくありませんでしたし、鈴歌の事を泣き止ませている時に心の奥がなんだかポカポカとしていた気がしますから」

「そう言われれば、私もそうだった……かな? あ、それと……暖士の手を握っていた時、暖士から伝わってくる体温の温かさを感じた瞬間に昔あった事を思い出しましたよ」

「へえ……それで、何を思い出したんだ?」

「えっとね……私がまだ小さかった頃、どこかで迷子になっちゃったんだけど、父さん達が近くにいない心細さとか知らない人達がいっぱいいる怖さからその場で泣き出しちゃったんだ。でも、その時に『大丈夫?』って声を掛けてくれた上、一緒に父さん達を捜そうとしてくれた子がいて、あの時の暖士がその子と重なって見えたんだ。顔とか声とかはもうボンヤリとしか思い出せないけど、雰囲気がさっきの暖士と同じだったのだけは覚えてる。スゴく頼りになってとてもカッコいい――なんて、こうして言葉にするのはスゴく恥ずかしいけどね……」

「そ、そっか……」

 女子に正面からカッコいいとか頼りになるとか言われた事が無かったため、俺は鈴歌の言葉に軽く気恥ずかしさを覚え、少しだけ顔が熱くなっていた。けれど、こうして頼りにされている事を確認出来たため、それを言葉にはしなかったが心からの嬉しさを感じていた。

 鈴歌からはもちろん、アルヴィンさんからも頼りにされているわけだし、二人からの期待にしっかり応えられるようにこれからも二人の安全に気を配りながら精一杯頑張っていかないとな。

 鈴歌とアルヴィンさん、二人の仲間達の顔を見ながら改めて決意を固めた後、再び本棚の方へと視線を戻した。

「さてと……『傲慢』もいなくなった事だし、今度こそ本棚や資料室の探索を始めようか」

「うん!」

「ああ」

 そして、俺達は手分けをして本棚に収められている本の中をパラパラと捲ったり、万年筆などを見つけた机の引き出しを開けたりしながら資料室の中の探索を始めた。しかし、俺が探している箇所からは、特にめぼしい物は見つからず、手に持っていた本を閉じながらはぁと軽く落胆の溜息をついていたその時、「……あれ、これって……?」という鈴歌の声が聞こえ、そちらへ顔を向けながらそのまま声を掛けた。

「鈴歌、何か見つかったのか?」

「うん、机の引き出しを開けてたら暗号みたいなのが書かれた紙とちょっと変な五十音表が出てきたよ」

「暗号みたいなのが書かれた紙にちょっと変な五十音表……?」

「うん、えーと……紙の方には『下に描かれた色達には、それぞれの名前に沿って数が当てはめられている。しかし、色達は皆が一桁の数だけを好むため、当てはめられた数字をまとめると、一桁の数字へと変えてしまった。さて……諸君らは、それぞれの色が持つ一桁の数字を導き出し、鍵の在処へと辿り着けるかな?』って書いてあって、その下には何色かの四角で出来た数式が書いてあるね。それで、五十音表の方が……五十音表自体は普通なんだけど、下の方に変なスペースがあって、そこに幾つか掛け算が書いてあるかな」

「何色かの四角で出来た数式と五十音表の掛け算……鈴歌、その紙と五十音表を見せてもらって良いか?」

「うん、ちょっと待っててね」

 鈴歌はゆっくりと俺の方へ体を向けると、「はい、どうぞ」と言いながら件の紙と五十音表を渡してくれた。そして、「うん、ありがとう」と言ってそれを受け取り、俺は携帯のライトで照らしながらそれらに目を通した。

「えっと……数式の方が、『赤色の四角+青色の四角=9』と『黄色の四角+紫色の四角』=5、それと『赤色の四角+紫色の四角=4』か……。それで、五十音表の掛け算が『10×1=わ』と『3×5=そ』、それと『5×4=ね』だな」

「四角の数式が書いてある紙の方の文章とその掛け算がヒントなんだろうけど、私にはさっぱりなんだよね……」

「まあ、謎解きは俺とアルヴィンさんで担当する事にはしてるから、これに関しては任せてくれ。因みに、これ以外には何かあったか?」

「ううん、何も無かったよ。それに、それがあったのは最後の引き出しだったからね」

「そっか……うん、分かった。ありがとうな、鈴歌」

「どういたしまして」

 そんな会話を交わしていたその時、「おや……何か見つかったのかな?」と尋ねるアルヴィンさんの声が聞こえたため、揃ってそちらへ顔を向けた。すると、いつの間にか近付いてきていたアルヴィンさんの手に何かがあるのが見え、俺はそれを指差した。

「アルヴィンさん、それは……?」

「ああ、調べていた本の中に挟まっていた写真だよ。場所までは流石に特定できないが、被写体は小学生くらいの女の子だね」

「写真……ちょっと見せてもらっても良いですか?」

「ああ、もちろん」

 そして、アルヴィンさんから数枚の写真を受け取り、俺と鈴歌はその写真に目を通した。背景が少しぼやけていたため、アルヴィンさんの言う通り、場所を特定する事は出来なかったが、被写体である薄い緑色のワンピースを着た黒いポニーテールの女の子の姿は、しっかりと写っており、その満面の笑みは見ているこっちまでなんだか楽しくなってくる程、とても良い笑顔だった。

「この子、なんだかスゴく楽しそうな感じだけど、背景がぼやけてるからなんで楽しそうなのかまでは分からないな」

「うん、そうだ――あれ? この女の子、どこかで見たような気がする……」

「うーん、鈴歌の友達の小学生時代とか鈴歌の家の近所の子とかじゃないのか?」

「ううん、たぶん違う。それに……この緑色のワンピースも見覚えがあるような……」

 鈴歌は写真を見ながらこの女の子について必死に記憶の中を探っていたが、程なく嬉しそうな様子で両手を軽くポンと打ち合わせると、写真の中の女の子を指差しながらとても嬉しそうに話し掛けてきた。

「これ……小学校の頃の私だよ! わぁ……なんだか懐かしいなぁ……!」

「へー……鈴歌の小学生時代は、こんな感じだったんだな」

「ふふ……昔からとても可愛らしいお嬢さんだったようだね」

「可愛らしいって……もう、そんな事無いですよ。でも、どうして私の小学生の時の写真がこんなところに……?」

 鈴歌は写真を指差しながら不思議そうに小首を傾げていたが、俺にはその答えが何となく分かったような気がした。

「たぶんそれは……この写真の場所が、『ドリームアイランド』だから、そして写真を撮ったのがドリーマーだからだと思う」

「え、どういう事……?」

「今のところ、俺達には10年前に『ドリームアイランド』に行った事があるという共通点がある。そして、まだ予測に過ぎないけど、ドリーマーは『ドリームアイランド』の関係者だと俺達は考えている。つまり、この写真は鈴歌が『ドリームアイランド』に行った時の写真で、『ドリームアイランド』の関係者であるドリーマーが撮った写真だから、この『エンドレスドリーム』内に写真があった。そう考えるのが自然だと思う」

「でもそうなると……私は1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()って事になるけど、皆と一緒にドリーマーの姿を見た時、まったく見覚えが無かったよ……?」

「それはたぶん、会ったのが10年前の一度きりだったから記憶が薄れている上、ドリーマー自身が仮面やシルクハットで顔などを隠していたからだと思う。何の狙いがあって鈴歌をここに連れてきたかは分からないけど、ドリーマーとしては最後の最後まで鈴歌に自分の正体を悟られたくはなかった。だから、仮面を付けたりシルクハットを被ったりする事で、鈴歌が思い出すきっかけになりそうな自分の特徴を隠したんだよ。まあ、何でバレたくないかまでは、さっぱり分からないけどな」

「そうだね……でも、本当にドリーマーの正体が、私が10年前に会った事がある人なのかは確かめたい。もちろん、生きて帰るのが一番の目的だけど、このままモヤッとした状態にしておくのは、流石に嫌だからね」

「そうだな」

 鈴歌の言葉に頷きながら答えた後、俺はさっき鈴歌が見つけた暗号と五十音表をアルヴィンさんに見せた。

「アルヴィンさん、鈴歌が机の引き出しから見つけてくれた物なんですけど、どうやら何かの暗号になっているみたいなんです」

「暗号か……ふむ、なるほどなるほど……」

 アルヴィンさんは暗号の紙と五十音表を交互に見比べながら考え込むような素振りを見せた後、「……ああ、そういう事か」と納得した様子でクスリと笑っていると、鈴歌はとても驚いた様子を見せた。

「え、もう分かったんですか?」

「ああ、ヒントなら充分にあったからね。暖士君、君はどうかな?」

「そうですね……」

 そう言いながらもう一度暗号と五十音表に視線を落とし、文章や掛け算などをじっくりと眺め、五十音表に視線を移したその時、俺はある事に気が付いた。

「ん……あ、そういう事か。という事は、これがこうなるから……」

 そして、ヒントなどを元に色々考え、答えらしい物に辿り着いた瞬間、頭の中でカチリとパズルが嵌まるような音が聞こえた気がした。

「……よし、解けた気がする」

「え……暖士も!?」

「ああ、一応な。アルヴィンさん、もしかしてですけど、職員室のキーボックスのダイヤル錠って……」

「ああ、君が考えている通り、()()に色付けされていたよ」

「となると、次に向かうべきは……」

「職員室、という事になるね」

 俺とアルヴィンさんで笑い合いながら話をしていると、まだ一人だけ答えが分かっていない鈴歌が困惑した表情を浮かべながら俺達に話し掛けてきた。

「ねえ、この暗号の答えって結局なんなの?」

「……それは、職員室に行ったらちゃんと話すよ」

「だから、まずは一緒に職員室に行こう。 『傲慢』が来ない内に、キーボックスから様々な部屋の鍵を取っておきたいからね」

「……分かりました」

 鈴歌が諦めたように頷きながら答えた後、俺達は職員室のキーボックスを開けるために資料室を後にした。




第6話、いかがでしたでしょうか。作中に出てきた暗号は、一応内容が破綻しないよう作ったつもりですが、ここがおかしいという箇所がありましたら、感想欄にコメントをして頂けるとありがたいです。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けるととても嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。
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