えらく時間がかかりました‼
彼等との出会いは結局私を変えるには至らなかった。
あれから、たっちみーに助けられ、アインズ・ウール・ゴウンの一員となり、様々な冒険をした。
恐らく8年程の年月が経ったろうか。
私は今、自らが置かれている状況をある程度まで、認識しているつもりだ。
私はどうやらユグドラシルというゲームの中にいて、
西暦は2138年とあれから随分経っている。
しかも、私が起こしたあの素晴らしい戦争が、私が愛して焦がれた戦争が、この世界の歴史に存在しないというのだ!つまりここは私がいた世界とは別の世界。異世界というやつなのだろうか、それとも政府が隠蔽したか、長い年月の間に人々が忘れ去ってしまったのか、のどれかだろう。
そして私の種族は、何の皮肉か吸血鬼になっていた。
そしてこの世界に来た時、私のレベルはMAXが100の世界でたったのレベル5だったのだが、今ではすっかり
レベル100の仲間入りだ。
当然だ、私は8年もの間、24時間365日、このユグドラシルに強制的にログインし続けているのだから
そして私の種族は吸血鬼の中でも最上位種にあたる、
不死王【ノーライフキング】になった。
なってしまった。
彼と同じ種族に、彼と同じ恐ろしく、臆病で、強大で、脆弱で、美しく、醜い化け物に成り下がってしまった。
だが、私は彼とは違う。
何故なら、私は私だからだ。
どのような身体になろうと、私の心は私のままで、
私の魂も未だ私のままだ。
故に私は私なのだ。
如何に姿形が変わろうと私の心は、私の魂は、何一つ
変わらない。
私は相変わらず化け物の様な私のままなのだ。
では、そんな私が何故ここにいるのか。
そんな事は私が聞きたい。
もう8年もいるのに未だ理解できない。
否、まだ8年だ。まだ8年しか経っていない。
後、30年程居れば何か分かるかも知れん。
そう思っていたのに、この世界は消えてしまうというのだ。後、約一時間後に。
非常に不愉快だ。どこのどいつの都合でこんな訳の分からん場所に連れてこられ、そしてそのどこのどいつの都合で終わらせられる。
冗談じゃない‼真っ平ごめんだね!
「もう、私達二人だけですね……少佐さん。」
「もう二人ではないのだよ、まだ二人もいるではないかモモンガ君
一人でなければ、それで良いじゃないか。」
弱気な事を言ってくれるな。君は仮にも私の上に立つものなのだから。
「ははっ、貴方はいつもポジティブですね」
「自慢じゃないがポジティブさだけなら私はこのギルドでもトップクラスだと自負しているよ。
いや、ペロロンチーノには流石に劣るか……
それにほら、来たじゃないか。彼が……
やぁ、ヘロヘロ君。相も変わらずの様だね」
「おっはーです。モモンガさんに少佐さん。
えーと、他のメンバーは?」
「居ない。
今現在このナザリック地下大墳墓にいるのは私とモモンガ君に今来た君の三人だ。
まぁ仕方あるまい。それぞれに進むべき先があるのだから。」
この約8年という時間の中でいくつか分かった事がある。
私が彼等の姿に恐怖しないのは、彼等の本性が人間だからではない。
彼等から一切感じない。彼の様な狂気も彼等の様な覚悟も。
「いやー、でも少佐さんはいつでもいらっしゃいますね。
私も一応毎日ログインはしていますが少佐さんに会わない日はありませんからね。」
「ハハッ、たまたま私が長い長い休暇の最中だからだよ。しかしもうすぐそれも終わる。この世界の消滅と同時に私の休暇は終わる。その後で私がどうなるかなんて事は分からんがね。」
そうだ、後20分後にはこの世界は消滅するのだろう。
その後、私はどうなってしまうのか。
また、あの時の私に戻るのだろうか。
まるで深い海の底を漂うような、自我のある様な無い様ないい加減な存在であった私に。
戦争を願い、祈る事しかできなかった弱い私に。
それだけは勘弁願いたいね!
全くもってまっぴらだ!
「うーん、思い出話に花を咲かせたいのは山々なんですけど、すいません。明日4時起きなんで、そろそろ失礼します。」
「えっ⁉あぁ、仕事じゃしょうがないですね……
ではヘロヘロさん、お体に気をつけて‼」
「はい‥すいません。最後までご一緒できなくて
最後にお二人の顔が見れて良かったです。」
「気にする事はない。君には君の、我々には我々の道があるのだから。また会える日を楽しみにしようじゃないか私の数少ない友人よ。」
あぁ、ヘロヘロが消えてしまった。いや、帰ったというべきだな。
どうしたというのだ私よ、私ともあろう者が何を落ち込んでいるというのだ。
帰れる場所がある彼を彼等を羨んでいるというのか?
この私が、あの私が。
千人の吸血鬼のカンプグルッペでロンドンを地獄に変えたこの私が、帰るべき場所のある者に対して羨望の念を抱いているというのか?馬鹿馬鹿しい‼
……しかし、それも私らしいな。
「いっちゃいましたね、ヘロヘロさん。」
「仕方あるまい……おっと、後15分か。
モモンガ君、我々も急ごう。最後くらいは玉座の間で迎えようじゃないか。せっかくだからそのスタッフも持って行ってはどうかね?」
「うーん、まぁそうですね。最後ですし
コレもきっと最後くらいは使われたいでしょうしね」
………………………………………………………………………
あぁ久しぶりに来るとやはり圧巻だな。
この玉座の間を創るのに一体どれ程の時間と労力をかけたのだろうか。
想像もつかないな。
まぁ最後を迎える場所には最適だな。
しかしこれは終わりであって終わりではない。
終わってたまるものか!
世界が終わろうと私は必ず起こすぞ。
あの戦争を、愛しく麗しい私の戦争を。
「驚いたな。
守護者統括の確か、えーと、あれだ!アルベドだったか?
彼女がワールドアイテムを所持していたとはな。
タブラ君か?
そうなんだろうな」
「まぁ、あの人ならやりかねませんね。
でも今日くらいは大目に見ましょう。」
「私に異論はないよ
君が決めたまえ。」
「じゃあ、タブラさんの独断でアルベドにワールドアイテムを所持させたことについては不問とします。」
「フフッ好きにしたまえ」
「ええ、好きにさせてもらいます。
えーとアルベドってどんな設定だったっけ?
うわっ長ァッ!!」
「ん?どれどれ……
ほぅ見事に入れ込んだものだな。
流石はタブラ・スマラグディナ君だ。
そうでなくてはね!実に彼らしいと言えば彼らしい。
しかし最後の一文がコレか」
「【ちなみにビッチである】ってタブラさん……
そういえばギャップ萌えだったっけ?タブラさんって」
「まぁコレを見る限りはそうなんだろうね」
「……」
「……」
「……あのー、少佐さん?」
「何かね?」
「このアルベドの設定の最後の一文、変えてもいい
でしょうか?」
「さぁね、私はタブラ君ではないのだから分からないな。ただ、君がそうしたければするといい。
彼はここにいないのだ。
……なら好きにすればいい。」
「では、変えてしまいましょう。
彼女も最後の最後までビッチ設定じゃあ少し可哀想ですしね」
「モモンガ君、1つ質問があるんだが?
変えると言っても、どう変えるつもりなのかね?
ビッチの一文を削除するだけなのだろうか?
それじゃあ少し寂しい気がするんだが?」
「うーん、そうですねぇ~
【モモンガを愛している】ってどうですか!?」
「ほう、君らしくないな。フフッ」
「いいじゃないですか!
彼女居ない歴=年齢の私が少しくらい夢を見たって!
ええい!ままよ!!
ふぅ……NPC一体の設定一文書き換えるのにこんなに時間を使ってしまうとは……はぁ。」
「あーモモンガ君、君が無駄な事をしている間に残り一分を切ったぞ。早く〆めたまえ。
短めに頼むよ。ギルド長。」
「えっ嘘っ!ア゛ーッ!
そんなッ!
えーっと、ゴホンッ!
少佐さん!最後の最後に貴方に会えて良かったです。
最後の最後に貴方と笑えて楽しかったです。
ありがとうございました。少佐さん。」
「フフッ、礼なら私が言うべきなんだろうね。
ありがとう。親愛なる友よ……」
残り5秒、4、3、2、1、0……
また時間がかかると思いますが、よろしくお願いいたします。