Dry heart   作:草賀魔裟斗

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ディケイドテイストの物語を書きたくてとりあえず書きました
これはすぐ終わる予定です(^^;


幻想の黒い羽

この世の創作作品にはバグが起こる場合がある

ここでのバグとは本来、進む筈であった物語の線を外れ、全く別の物語になってしまう現象だ

メタ的にいうと"IF世界線の二次創作"である

キャラが変わる、物語が変わる…エトセトラ…

作者や読者に取ってはほんの些細な変更だがそこに住む住人は困惑し混乱する

そして終いにはそこの住人の運命が壊れてしまう

壊れてしまうとはいえ、その運命は変革されたエンディングを迎えると元の世界線へ戻っていくものだ

だが、たまにだが、バグを起こしたまま

世界のエンディングも迎える事もなく

壊れた運命を繰り返してしまう世界がある

それを人は特異点と呼んだ

その特異点を消し、世界をあるべきエンディングへと向かわせる姉妹がいる

これはその姉妹の物語…

 

幻想郷 旧人里

瓦礫と化した人里と終わることのない夕暮れを繰り返す世界…

そんな世界でどこからともなく小さな少女が何かから逃げようとしていた

「はぁ…はぁ…そん…な…!」

「逃がさないよ」

赤いレースのリボンと同色のスカートが少女を追い詰めていく

「あのコの死を喜んだ世界なんて要らないや…もうBBAも居ないしさ…好きにしてもいいよ…ね!」

赤いレースは火球を放った

少女は砕け散り物言わぬ肉塊と化してしまった

「さぁ…ワタシとフュージョンしましょうよ…そして終わらぬ憎しみのワルツを踊りましょう」

赤いレースの壊れたラジオのような笑い声が廃墟に響く

 

「…お、」

赤髪の少女が廃墟に立った

閃光と共に唐突に現れたように見える

「…んー?…ここは…」

この少女は平世雨兎<たいらよ うと>

バグを起こし特異点になった世界を元に戻す姉妹の内の姉の方

長くツインテールに整えてある赤い髪と白いセーラー服が特徴だ

「姉さん…」

「おー、戦夏ー無事だった?…どこいんの?」

「無事じゃない…姉さんの下だから」

「おっとごめんね」

そんな雨兎の下敷きになっていたのは

平世戦夏<たいらよ せんか>

姉とは対照的に青い短い髪で頭にはカチューシャがついている

服装は姉と同じセーラー服だ

コンプレックスは男みたいな名前

ちなみに二人とも大きなリュックサックを持っている

二人とも、特異点出身なんだが…どこかというと…その内わかる

「特異点はここで良いっぽいね」

「でしょう…だってどう見たって滅ぼされかけてるよ…この世界」

「そーだにゃ…とりあえず、主人公を探すかね」

「うん」

すると旧人里の地面から白骨と思われる物体が起き上がった

特異点では良くあることだ

世界が特異点であり続けると運命が壊れ

死すらもあやふやになってしまう

「…ひゃう!!!」

戦夏は雨兎の後ろに隠れてしまった

「おー、よしよし、大丈夫だよ…大丈夫だからねー」

白骨は二人狙って走ってきた

「よっ!と」

雨兎のハイキックを受けて大きくのけぞる

「いいねー、あんたは…だってこんなにも美少女な私のパンツみて死ぬんだよ?」

のけぞった白骨の首を思いっきり上に引き抜いた

白骨の頭部は体と離れ行動を止めた

「慣れないねぇ…アンデット系は相変わらず」

「とか良いながら頭もぐ姉さんかっこいい…」

「ふふん…誉めたって何もでないわよ♪」

周囲に多くの白骨が動き始めた

「さてと…弱りましたな…」

「う…うみゃ~…」

「…多いなぁ…」

雨兎がリュックサックに手を伸ばそうとした

「伏せろ!」

二人の物ではない声が廃墟に響く

「!、戦夏!」

雨兎は戦夏の頭を押さえ込む

「恋符!マスタースパーク!!」

白い光線で白骨は全て焼かれていった

雨兎の口笛が少し聞こえたが他は音は聞こえない

「おい!こっちだ!」

件の声は次に指示をだした

「どう?姉さん」

「従うしかなさそうね…OK、今行くよー!」

 

魔法使いの帽子を被った金髪少女がいた

「大丈夫か?」

少女は二人に問いた

「え?あ、はい…」

苦笑いを浮かべながら頷いた

「よし…じゃ、安全な場所にいこうぜ…そこで話聞かせてくれや」

「あの…待って…」

戦夏が言い切るまえに雨兎が呟いた

「…可愛い…」

「はぁ?」

「可愛い!可愛い!なにこの人!金髪魔女とか何!?尊すぎる…国宝だよ!?国宝!!」

戦夏が隠す仕草もなく大きくため息をついた

「あー、姉さんの病気です…気にしなくて…結構です!!」

妹の容赦のない腹パンが姉を襲う

「ぐふぅっ!!!…あ…戦夏…つおいを(´;ω;`)…」

雨兎は気を失ってしまった

「話が進まないので適当に気絶させました…あ、お構い無くお話の続きを」

「お、おう…んじゃ…お前の姉さん担げ…ちょっと移動すっから」

少女と雨兎を担いだ戦夏が廃墟を後にする

 

旧地獄

「おー、賑やかですね」

旧地獄は栄えている様子だった

「まぁな…ついだぜ、ここだ」

霧雨魔法店と大きく書かれた建物に少女は入って行った

しばらく戦夏は立っていたがしばらくすると少女に促され建物内に入った

建物内の応接間に通された

応接間は少し拾い部屋でソファーが向かい合わせに2つ、その間にガラスのテーブルがある

壁には絵画が何枚か飾っている

例えると校長室のような部屋だ

少女はそこのソファーに座った

「あ、お前の姉さんどうすよ?」

「しばらくしたら目が覚めると思うのでそこら辺で寝かせときます」

戦夏はほぼ投げるように雨兎を寝かせ?た

「では、この世界の状況をお聞かせくださいますね?」

「世界つーことは…やっぱり特異点か?ここは…で、お前らがかの有名な平世姉妹ってわけだ」

戦夏の目が鋭くなった

「特異点を認識するということは…貴方は…主人公ですか?」

 

特異点は誰しもが感じ取れる訳ではない

殆どの場合、モブと呼ばれる一般人では特異点は感じとる事はできない

自分のいる世界が特異点であると気づけるのは殆どの場合、主人公かよそ者くらいである

しかも雨兎や戦夏の事を知る人物なんて主人公に限られる

 

「そうだ…オレは霧雨魔理沙…この世界の主人公の一人だ」

「…そうだったんですね」

「主人公特有だよね、この尊さ」

ソファーの後ろから雨兎が顔を出した

「うぉ!?いつの間に…」

「さっき~いやぁ、戦夏のボディーブローはいつも効くね…数分は意識が飛ぶよ」

「はぁ…姉さんが美少女をナンパさえしなければ私も殴らなくてもいいんだけどね…魔理沙さん、きにせず続きを」

「妹がちゅめたい」

魔理沙は調子を崩されて口角を痙攣させていたが一つ咳き込んで精神を整えた

「…でだ、バグだが…13代目博麗の巫女である、博麗霊夢が…ちょっとな…あいつの起こした異変のせいで今は人間も妖怪も旧地獄でしか生活できねぇんだ」

「博麗の巫女…なるほど…」

雨兎が考える素振りを見せた

「霊夢は二年前、とある異変を解決したんだ…あー、さっきからいってる異変つーのは、人間や妖怪が引き起こす、両者のバランスの均衡を崩し兼ねない事件の事だぜ」

「…へ?」

戦夏が首を傾げた

「さっき、町を見た時に妖怪をみた…多分、この世界は妖怪と人間のバランスの均衡を守って来たんだろう…ま、それも博麗の巫女の力が大きいんでしょうけど…で?その巫女がどうしたの?まさかボイコットって訳じゃないでしょ?」

「それは…」

魔理沙が口ごもった瞬間、ドアが開く音がした

「魔理沙さん!娘は見つかりましたか!?」

「ッ!…」

母親とおぼしき女性が魔理沙にすがり付くように聞いた

「…あぁ…名札見つけた…悪い」

「あああぁ…そんな…」

魔理沙は女性に焦げた名札を渡した

「…そんな…こんなことが…」

「…なにやってんだよ…あいつは…ッ!」

魔理沙が家を飛び出した

「あ、魔理沙!…あれはヤバい目だ…戦夏、あの女の人をお願い!」

「うん!姉さん気を付けて!」

「おうさ!」

雨兎が魔理沙の後を追う

 

旧博麗神社

「……ん」

「霊夢!!」

昨晩、少女を消し炭にした赤いレースが立ち上がった

「また来たの…魔理沙」

「何度だって来てやるよ…おらぁてめえの親友だからよ」

「…まぁいいけどさ…で?何用?」

「てめえをぶっ飛ばして正気に戻すために決まってんだろうが!」

霊夢が立ち上がった

右腕にはなにやらキャノンのようなものが填まっている

そして左腕には緑のレースリボンが括られていた

「…霊夢…ッ!!」

「ワタシとフュージョンしましょうよ、そして終わらぬ憎しみのワルツを躍り続けましょう」

「それは真っ平だぜ…オレはワルツは知らないんだ…!」

火球が数個放たれる

魔理沙は転がりつつ交わし八卦炉を構えた

「マスター…スパーク!」

「…ぬるい!」

霊夢は目の前に結界を発生させ、マスタースパークを防ぐ

「しまった…はぁ?」

魔理沙はすっとんきょうな声を出した

魔理沙の体が宙に浮いたからだ

理由は単純、雨兎が持ち上げたからだ

「見つけたよ…愛しのターゲットちゃん。大丈夫かい?魔理沙ちゃん」

「お、おう…」

「幻想郷って狭いねぇ…兎の速さだったらすぐ追い付けたよ」

雨兎は魔理沙を下ろして構えた

「抑止力…なんでこんな辺境地にまでくる必要があるわけ…?」

「個人的嗜好さ…気にするな 」

雨兎はリュックサックから三つの機械を取り出した

一つは2つの何かを嵌めれるような形状の機械で巨大な歯車とハンドルが特徴的だ

二個目は赤いボタンのような機械で危険な物を表す黄色と黒色のパターンがある

三つ目は棒のような機械で2つに折れるような形状をしている

「さーてと…正義の味方…爆誕と行きますかー!」

一つ目の機械を腰に当てるとベルト部分が雨兎に巻き付いた。そのあと2つ目の機械を一つ目の機械に装着する

そのあと、更に三つ目の機械を2つに折り曲げ一つ目の機械の穴に装着した

[マックス!ハザードオン!!ラビットアンドラビット!ドンテカンドンテンカンドンテカンドンテンカン!!…ガタガタゴットンズッタンズタン…ガタガタゴットンズッタンズタン…アーユーレディ?]

「はーいよ…変身」

[紅のスピーディージャンパー、ラビットラビット!ヤベェーイ!ハエーイ!]

少し賑やかな音が鳴り、その音が止むと

雨兎は紅の鎧を身にまとっていた

それは兎のようなデザインが各所にある

「さぁてと…実験を始めましょうか」

「お、おまえ…」

「説明はあとあと、今はちょっと彼女の実力を見て逃げるよ」

雨兎が霊夢に殴りかからんと接近する

霊夢は相変わらず火球を飛ばしそれを阻止する

「あっつ!あちち…」

雨兎はギリギリ、その火球を避けたが熱気は伝わったようだ

「凄い熱量…当たったらひとたまりも無さそうだ…その力を使って世界を滅ぼそうとしてるわけね、この黒髪レースは…なんでかな…恋人が死んだとかはどうよ?ドラマチックじゃない?百合なら最高」

「…勘の良いガキは嫌いなんだけど」

「あらあら図星ぃ?…それとざーんねん、多分、あんたよりも年上よ、私、子供っぽいから低く見られがちだけどね。まぁ若く見られるのは喜ぶべきか…な!」

霊夢の背から黒い翼が展開し空を飛んで雨兎の渾身の殴打をかわした

これには雨兎も自然と声が出る

「博麗の巫女って人間か?それとも妖怪?」

「人間だよ…少なくともあいつはな…いや、人間だった…が正しいかもな…妖怪でもない…例えるなら生ゾンビなんてとこかな…」

「何その化け物…初耳だよ」

霊夢は夕暮れに人差し指を掲げた

「もういい?暇じゃないんだよ、ワタシも」

「何…吸い寄せられる…ッ!」

「七符…セプテントリオン」

太陽のような熱を帯びた火球の周りを霊力を帯びた玉が回っている

太陽火球には多少、引力があるようで体が太陽火球に引き寄せられる

「ぐ…き…こうなったら奥の手よ」

「奥の手があんのかよ」

「おうよ…奥義!逃げること脱兎の如し!」

雨兎は魔理沙を抱えて逃げだした

「へ?」

「逃げるんだよおおおおおお!!すもおおおおきいいいいいいい!!」

「スモーキーって誰だあああ!!」

「逃がすか」

霊夢は太陽火球を雨兎目掛けて放った

「へんだ!紅のスピーディージャンパー嘗めんな!こんな鈍い玉…魔理沙を担いでもよけれるもんねー!」

その言葉を体現しながら雨兎と魔理沙は霊夢の視界から消えていった

「………まぁいいでしょう………魔理沙とは昔のよしみだ…殺すのは最後にしてあげましょう…ね…」

霊夢は雨兎が去った方角を見ながらいとおしそうに自分の翼をゆっくりと撫でた

 

魔理沙の家

「ぜぇ…ぜぇ…はー…はー」

「大丈夫か…?」

雨兎は顔を真っ青にして踞っている

「姉さんなら大丈夫ですよ…これもいつもの事なので」

「そ、そうか…」

魔理沙が口ごもった

「…事の本末…教えてくださいますか?」

「…あぁ…そうだな…その前に…オレを麻縄で縛っといてくれ」

「え?」

「今にもこの状況からにげてしまいそうだ…頼む…もう逃げたくはない…」

「そんな事しなくても…あ、姉さん、入り口にたっててくれます?、死んでるところ悪いんですが」

「お、いいぞ、私はここで美少女を待ち構えれば良いんだにゃ…ぎゅへへへ…こっち来たらどうしてやろうかね~」

雨兎が指をいやらしく動かしながら魔理沙にジリジリ近づいてきた

「オレの貞操が危ない」

「貞操か、逃避か…この状況なら逃げれませんよね」

「あんた…優しそうな顔してわりと悪魔だな…まぁ逃げれなくていいけどさ」

魔理沙がソファーに座り煙草を手に取った

「わりぃが吸っていいか?」

「はい」

「ライターはいるかい?」

「いや、結構、火なら間に合ってる」

八卦炉の上の部分から火が出た

それを煙草に引火させ紫煙を吐き出す

「二年前…地霊異変という異変が起こった…元凶は霊烏路空…霊夢の大切な妖怪だった…相思相愛ってやつだな…ただ相思相愛が過ぎて霊夢は自分より早死にするという事実に絶望した結果、異変を起こしちまうんだがな…異変自体はそこまで深刻な結果は残さず終わったが…博麗の力の内の一つ…対妖の力が空の中で強く発現してしまった…妖怪でいう癌のような物さ…それは徐々に空を飲み込み…そして空は苦しみながら死んだ…霊夢は最期には立ち会えなかったらしい…そこから霊夢はおかしくなった…空の幻影を見たり食事も取らなくなっていった…終いには狂乱に陥り…人里を一晩で滅ぼしてしまった…そのあとは堕ちるのは早かった…空の遺体から空の力の源の胸のコア…翼…あと力を制御するための制御棒を取り出して自身に装着した…そして自らを空の墓標として…空を奪った世界を滅ぼし、そして自らも滅びようとしている…」

「…言っちゃ悪いが…自業自得じゃないか?博麗の力が妖怪にどのような被害をもたらすか…分からないわけもないでしょ」

雨兎の言葉に魔理沙はまた口ごもった

「そう言われればぐうの音もでないが…ただ霊夢は逃げたいだけなのかもな…今のオレと一緒さ…狂乱に堕ちた奴からではなく、今の霊夢は…どこかおかしい…今までもちょくちょく変な言動は取っていたが…今のははっきり言って異常だぜ」

「バグは災害です…恐らく魔理沙さんが感じる違和感は特異点によるものだと思います…」

「そしてここを元に戻す方法も解ったね…戦夏…」

戦夏は目を伏せた

「お、おい、まさか霊夢を殺すのか!?」

「特異点の中でもバグった登場人物は運命の癌でしかない…切除するしかないのよ…どちらにしても話し合いでなんとかなっていればもう、なんとかなってるでしょ…?」

「そうだが…」

魔理沙は隠さずに歯ぎしりをした

「…オレは…あいつの事を好きだった…異変を解決するために奔走して華麗に解決する…戦いかたも弾幕も綺麗でさ…何よりあいつの顔が整ってて綺麗なんだよ」

「…つまり殺してほしくないと?」

「…あいつを殺すなら…オレをあいつに殺させてからにしてくれないか?」

「はぁ!?」

戦夏がすっとんきょうな声をあげる

魔理沙は淡々と続けた

「…バグを感じた時点でオレは半ば霊夢の救済を”諦めた”…救世主と呼ばれるあんたら平世姉妹が来ることを祈ることしかできなかった…そんなオレが初恋の相手を殺さないでくれ…世界は滅んだっていい…なんて虫が良すぎる…そうだろ?…でもあいつの居ない世界を生きるのなんて真っ平だ…どうせなら初恋の相手に殺された方が…あっちで幸せかもな…なんて思っただけだ」

「…ああそう…見上げた一途さね…かえって腹が立つわ…」

雨兎が吐き捨てるように言った

「…どうも…悪いな」

「……恋に死ぬ人はこうだから嫌いなんだ…自分の死がまるで…美しい物みたいに言うんだもん…」

「そんなの…間違ってますよ!!だって…魔理沙さんは…」

「皆まで言うな…戦夏…こう言うやつは頑固なのさ…」

「姉さん!でも…私は納得いきません!魔理沙さんは…」

「…いや、雨兎の言うとおりだ」

魔理沙の静止に戦夏は口を閉ざす

「みなまで言わないでくれ…オレは霊夢がああなって…とっくの昔に死んだ…」

 

夜 とある建物の天井

地下である旧地獄だが

時間というものは存在している

夜になると人間に変わって町を妖怪が闊歩するようになる

そんな町を魔理沙はただ見据えていた

「…戦夏…隠れてないで出てこいよ」

戦夏が多少申し訳無さそうに出てきた

「横…いいですか?」

「いいぜ…丁度、お前らの事聞きたかったしな」

「話せる事は少ないですよ」

「無いよりかは幾分ましだろ…冥土の土産にでもするぜ」

戦夏が魔理沙の横に座った

「…私と姉さんは…”気付いたら”この世に居たんです…どの世界にも属さない霧のなかで…だから”気付いた時”以前の記憶はないんです…その時、このビルドドライバーとかは持っていました…恐らくはどちらのフォームにも変身可能な機械なんでしょうが…私たちのフルフルラビットタンクボトルは片方にしか変身できないんです…私がタンクタンク、姉さんがラビットラビット…私同様に壊れてるんでしょうね…」

戦夏が空を見上げて言い切った

「ビルドドライバーっていうんだな、その機械…あの鎧の名前はなんだ?」

「仮面ライダービルドです…私や姉さんの使命の欠片でもあります」

「使命…?」

「仮面ライダーって…ヒーローなんです…とある世界で聞かされたんですけどね…ヒーローなら目の前で困ってる人を助けないといけない…それは私たちにしかできないことで私たちの使命なんですよ」

「そっか…お前らはそれでいいかよ?…どっかの世界で定住するとか…考えないのか?」

戦夏はふふっと笑って見せた

「今更…私たちに家は要りませんよ…帰る場所なんて守れないものが増えるだけです…」

魔理沙 はそうかと短く返事をした

「私からは霊夢さんの事…聞いてもいいですか?」

「…あぁいいぜ…」

魔理沙はまた煙草に火を着けた

「あからさまですね」

「…あぁ…悪いな…忘れたい過去でもあるんでね…あまりにも眩しくて…」

魔理沙が夜空に紫煙をバラ蒔いた

「…あいつは…どこか冷静な奴だった…自分のことさえも客観的に見て、観察して…そして最良の決断を下す…そんな奴でな…そして何より。殺しが嫌いな奴だったんだ…あいつの巫女の力は対妖であり…殺妖ではなかった…例外はあるがな…だからあいつは狂乱に落ちるまで空以外殺した事はない…あくまでも退治だ…そんな奴なのに…なんで…」

魔理沙はため息に乗せて紫煙を吐いた

「創世の神様とやらがいるのなら…そいつはとんだ悪魔だな…」

「そうですね…きっと、どんな悪魔より悪魔です…」

魔理沙が煙草の吸い殻を町に向かって投げ捨てた

「さてとオレは行くぜ…オレの大切な奴のとこへ…あとはお前らに任せてもいいな」

「…はい」

煮え切らないようすの戦夏に魔理沙は何かを言おうとしたが口を閉ざして

二回ポンポンと頭を優しく叩いてその場を去った

「……どうして……」

 

雨兎はそのようすを遠目で見ていた

口には煙草、紫煙は無い夜空に上り消えた

「…地下は雨が降らないから嫌いだ…」

紫煙を吐きながらその場を去ろうとした時、気配に振り返った

「?…あんたは…」

 

旧博麗神社

霊夢は屋根に鎮座していた

自らが滅ぼした人里を眺めながら

その手には制御棒はなかった

「よぉ…霊夢」

声に下を向く

「…魔理沙…なんなの…あんたは」

「なぁに、ちょっと気さくな魔法使いさ…そしてあんたの親友でもある」

霊夢は今までみたこと無いような凄みをみせながら低く告げた

「あんたでしょ?"私たち"が行けないからって旧地獄にあいつらを移したのは」

「そうだぜ?どうだ?被害は最小限だろ?」

「目障りよ…本当に目障り!最後でもいいと思ってたけど…今ここで死んでもらうわ!」

霊夢が制御棒を左腕に装着する

胸に赤く光る目のようなコアが露出した

「本望!望むところだぜ!」

魔理沙はニヤケ面で八卦炉を構えた

霊夢は屋根から月に向かい人差し指を伸ばした

人差し指の先から太陽が発現する

あたりは夜から一転、昼になった

(さぁ…霊夢…お前が死ぬ前に…オレを殺せ…!)

 

「残念だけど、それはできないよ」

人影と雨兎が会話している

人影はかなりご立腹の様子だ

「それはあいつの覚悟を踏みにじる行為だ…それに約束を破る行為でもある…私は約束だけは破らないんだよ」

次の人影の一言に雨兎は困ったように後頭部を掻く

「…そんなこと言われたって…困るな…」

雨兎の煮え切らないようすに人影の苛立ちが募る

「理解してるのかい?それでもしかしたら世界が崩壊するかもなんだよ?」

人影が雨兎の胸ぐらを掴み上げた

 

魔理沙はというと案の定、かなりの劣勢を強いられていたとはいえ

致命傷はおろか火傷すらも疎らだ

「やれやれ…簡単に殺されるなんて言ったが…こりゃ苦労しそうだな…」

「…なぜ…なんで、あいつの攻撃にはためらいが生まれるの…もうそんなの…私がワタシになったときに捨てたのに…ッ!」

霊夢が隠そうともせず歯ぎしりをする

「_気づいてんのさお前は…自分の間違いに…で苦しんでいるのさ…お前は良心の塊だからな」

「知ったような口聞かないでよ…ワタシは!あんたの知る!私じゃないのよ!」

「いや!霊夢は霊夢さ…オレの知る、優しい霊夢だ!」

霊夢は今まで見たことのないような巨大さの太陽火球を産み出した

「黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!黙れぇぇぇぇぇぇ!

七星霊符"北斗大封印"!!」

北斗七星の形にその巨大な太陽火球は並び魔理沙に向かってくる

「こいつは…まずいな」

内心に安らぎを覚えながら口とは裏腹に魔理沙は回避はせずその攻撃を受け止めようとした

「オレはお前の悲しみを受け止められなかった…だからせめて…これは受け止めようか…」

太陽火球の中に魔理沙は消えた

 

「…姉さんは動かない…魔理沙さんは一人で霊夢さんのもとへ行った…なら私しかいけない…迷ったけど…約束を破りたくないけど…私は…私は…!」

戦夏はリュックサックから変身道具一式を抱えた

「魔理沙さんの為じゃない…私が私であるために!」

戦夏は博麗神社の方面へ走り出した

 

「はぁ…解った、解ったよ、私の負けだ…どうせ、この世界を救いに来たんだ…遅かれ早かれ、霊夢とは戦う…」

雨兎がそういうと人影はそっと雨兎を下ろした

(戦夏は…多分行ったね…なら行くっきゃなくなったかもな…)

「変身」

[紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベェーイ!ハエーイ!]

ラビットラビットに変身して人影に告げる

「間に合うとは思うが飛ばすよ…紅のスピーディージャンパーを嘗めないでよね」

 

戦夏が到着すると土煙が辺りに充満していた

「魔理沙さん…!」

その土煙の奥でボサボサの金髪が見えた

「魔理沙さん!!」

「戦…夏…結局来たのな…まぁタイミングはバッチリだぜ…見ての通り死にかけさ」

魔理沙は右腕が消し飛んでいた

その熱せられた血液が目に入ったのだろう眼球も焼けたように爛れている

「遅かった…んですね」

「ああ…悔いはねぇよ…」

「…敵は取ります…それと…冥土の土産に持っていってください」

ビルドドライバーを腰に巻き

姉と同じ手順を手際よくこなす

「霊夢さん!」

「……今度は…何よ」

「次は私が相手です…」

フルフルラビットタンクボトルをベルトに挿し込むと

小さな戦車がどこからともなく現れ

霊夢に向かい発砲した

ターゲットにされた霊夢は軽く怯み隙ができた

「な…!?」

[Are you ready?]

「勿論です!変身!」

[鋼鉄のブルーウォーリアー!タンクタンク!ヤベェーイ!ツエーイ!]

小さな戦車は変形しタンクタンクフォームの装甲になった

ラビットラビットが兎デザインだったよつにタンクタンクは戦車デザインだ

鋼鉄のブルーウォーリアーの名の通り

ラビットラビットにはない重厚さがある

「それが…戦夏の変身…」

変身した姿を見るや否や気絶してしまった

「…行きます!」

戦夏は霊夢に急接近した

「くるな!」

霊夢は拒絶するように火球を放つ

しかしタンクタンクの装甲の前に無力化された

「…ッ!ワタシに…私に…近づくな!」

霊夢は凄まじい速度で太陽火球を練り上げた

「太陽火球は無理ですね」

戦夏は太陽火球に身を離す

そこにすかさず霊夢がスペルカードを取り出す

「七星符"北斗大封印"!!」

太陽火球が先程と同じく北斗七星の形に並ぶ

「え…は!?」

戦夏の体が低くながら宙に浮いた

「ふぃ…間に合ったよ…」

「姉さん…!?」

理由は簡単、雨兎に担がれたからである

「魔理沙!!!!」

金髪の手入れされたショートが見えた

「同姓にモテるね~魔理沙も」

「あんたがグタグタ言わずに早く行っていれば…ッ!」

「まぁー…すまん…アリスさん」

「謝ってる暇があったらこれ以上傷つけないためにもここから遠くへ運んであげなさい、まだ死んでないわ」

「あーいよ」

雨兎が魔理沙を運んで行くのを見送ったあと、アリスと呼ばれた少女はキリッと霊夢を睨み付けた

「…」

「…何よ」

「魔理沙に手を掛けたのよ…あんた…いつまでこんなこと続ける気よ!」

「あんたには関係ない!ワタシの苦悩も知らない癖に…ワタシの事も何も知らない癖に!!」

霊夢がもう一度、北斗大封印の構えを取った

「消えろ消えろ消え失せろ!ワタシの目の前から居なくなれ!」

「あっちゃ…魔理沙に手を掛けたのよほどショックなんだったんだね…混乱してる…」

アリスの周りで糸がギリギリと鳴る音がした

「跳ね返せるかい?アリス」

「やってやるわよ…あいつをギャフンと言わせてやるんだから!」

七つの太陽火球はアリスの前で糸のような物で憚れた

「なっ!」

「七色の人形遣い嘗めるんじゃないわよ…!この糸は特別製よ、あらゆる力を通さない物質で出来てるのよ!あんたの博麗結界の応用よ!あんたの太陽の熱量も力であるかぎり、私までは届かない!そして!」

霊夢の左右に戦夏と雨兎が現れた

「今、終わらせるからね!」

「歯を食縛ってください!」

大剣のような武器にフルフルラビットタンクボトルを入れる

[フルフルマッチでーす!]

戦夏は大砲のように持ち雨兎は大剣のように持った

[フルフルマッチブレイク!]

戦夏から球体のエネルギー弾が

雨兎からは斬激波風のエネルギーが放たれ霊夢にぶつかった

霊夢の長い叫び声が聞こえ姿は土煙に消える

「あ…」

「…まるで蝋の翼をもがれたイカロスだな」

霊夢は屋根から境内に落ちた

霊夢の背から翼がもげ近くに生っぽい音の鳴った

神経まで繋がっていた様子で霊夢の背と胸から流血している

それの比では無いほどの出血が全身からある

「ぐ…が…お、…空…ッ!」

「あんたもバカな女ね…まぁ、あいつも…か…」

アリスが倒れた霊夢に近づいた

「…死ぬのか…な…ワタシ…私は…お空の所にいける…かな?」

「…かもね…少なくとも私は助けないわ…貴方を助けるのは…私のエゴでしょ?」

「…あぁ…そうかもね…」

霊夢は少し苦しそうに空を見上げた

「魔理沙に…悪いこと…」

「魔理沙はあんたのこと好きなのよ…この程度で嫌うわけないわ」

「そっか…ぁあ…空に…あのコの羽が見える…このまま…死ぬなら…ありかな…お空…笑っ………て………」

霊夢が力尽きて腕を落とした

「…あんたらも帰るのね」

雨兎と戦夏の体が光り始めていた

「まぁね」

「…私は…どうすればいいの?」

「この世界は今までの事を無かったことにして正しいエンディングへ向かうだろう…そこならきっと…霊夢や空って人も幸せだと思う…でもこの運命も刻まれる…変わった運命のつけはどこかの幻想郷がこれと同じ末路を辿ることで払われる…でもあんたらはこれでハッピーエンドさ」

アリスはそうと短く返事した

そのあと、アリスは雨兎に2つボトルを投げた

「…昔、道端で拾ったやつよ、あんたのお陰で魔理沙を救えた…あんたらの事もきっと忘れるのだろうけど…そのボトルが貴方と私の繋がりって事で」

「…そう言うことならありがたくうけとっとくよ…アリス、またな」

そして二人は光の粒となって消えた

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