「納得できません!」
「まだ言っているのか…?」
「お姉ちゃん…?」
第一高校入学式の日、だがまだ開会式の2時間前の朝。入学式の会場となる講堂の前にして、真新しい制服に身を包んだ男女三人、正確に言えば男二人、女一人が何やら言い争っていた。
「何故お兄様と冬夜が補欠なのですか?入試の成績は二人ともトップだったじゃありませんか!」
「なんで入試結果を知ってるんだ?」
「僕に聞かれても知らないよ…」
「本来ならばお兄様か冬夜のどちらかが新入生総代を務めるべきですのに!」
「まぁまぁお姉ちゃん、魔法科高校なんだから、魔法実技が優先されるのは当然だよ。僕はともかく、お兄ちゃんは仕方がないよ。」
「冬夜の言う通りだ。俺の実技能力は深雪もよく知っているだろう?自分じゃあ、二科生徒とはいえよくここに受かったものだと、驚いているんだけどね。」
激しい口調で食いかかる女子生徒を、男子生徒二人がなんとか宥めようとしている構図だった。女子生徒が「お兄様」と「冬夜」と呼んでいるところから察するに兄弟なのだろう。
「そんな覇気のないことでどうしますか!勉学も体術もお兄様と冬夜には勝てる者などいないというのに!魔法だって本当なら『深雪(お姉ちゃん)!』……申し訳ございません」
「お前の気持ちは嬉しいよ。でもこの結果に変わりはない。例えお前が答辞を辞退しても、俺か冬夜が代わりに選ばれることは絶対ない。この土壇場で辞退したりすれば、お前の評価が損なわれることは避けられない。」
「そうだよお姉ちゃん。僕達はお姉ちゃんの答辞を楽しみにしているんだ。お姉ちゃんの可愛い晴れ姿を、僕達に見せてよ!」
「お兄様…冬夜…。分かりました。我侭を言って、申し訳ありませんでした。」
「謝ることでもないし、我侭だなんて思ってないさ。」
「そうだよ!」
「それでは、行って参ります。見ていてくださいね、お兄様、冬夜。」
「ああ」「うん!」
では、と会釈した少女の姿が講堂へと消えたのを確認して、二人はやれやれと溜息をついた。
「さてお兄ちゃん。これからどうする?僕はテキトーに魔法の作成をするつもりだけど。」
「そうだな、俺は読書をしようとしていたから、あそこのベンチに座るか。」
二人は近くのベンチに腰を掛け、各々の作業をし始めた。兄と思われる男子生徒は携帯端末を開いてお気に入りの書籍サイトへアクセスし、読書を始めた。一方弟と思われる男子生徒は今の時代じゃちょっとばかし古いパーソナルコンピューターを開き、カタカタと操作をし始めた。その間、近くを通り過ぎた、左胸に八枚花弁のエンブレムをつけた生徒たちが二人のことを蔑んでいたが、二人とも集中をしていて気づいていない。何故そんなことを言われたのか。それは二人にはその八枚花弁のエンブレムが無い、『二科生《ウィード》』だからだ。この第一高校では、一科生のことを《ブルーム》、二科生のことを《ウィード》といって区別している。これ以上は説明がめんどくさいのでここら辺でやめる。←おい
「あれ、もうこんな時間か」
「ん、そうだな。そろそろ講堂に行こうか。」
時計を見ると入学式まであと30分となっていた。
「新入生ですね?開場の時間ですよ」
端末とパーソナルコンピューターをしまい、立ち上がろうとしたちょうどその時、二人の頭上から声が降ってきた。
「ありがとうございま…あれ?」
冬夜は声をかけた女子生徒に既視感を覚えた。
「あら….どうかしましたか?」
「もしかして…七草真由美さん?」
「私のこと知っているの?」
「え、覚えてない?ほら!冬夜だよ、まゆちゃん!」
「え!?ふゆちゃん!ふゆちゃんなの!」
「そうだよ!8年前によく一緒に遊んでた!あの司波冬夜だよ!」
「きゃー!久しぶりね!分からなかったわ!」
「…冬夜、この方は?」
兄の方は置いてけぼりにされていたようだ。
「あ、そうだね。お兄ちゃんは知らないもんね。じゃあ紹介するよ。七草真由美さん。この第一高校の生徒会長であり、僕の婚約者だよ。」
「そうか……………………………は?」
この瞬間、兄である司波達也は人生で初めて思考がフリーズした。
初めまして。史思明と言います。この度はこの作品に目を止めて、さらにはご閲覧くださり、誠にありがとうございます。もし「これからが楽しみだ!」と思われたら、ご感想をお聞かせください。