Fate/Apocrypha ~星に願いを~   作:風鈴火山

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戦場(いくさば)に戦士二人

“地”のセイバー主従はシギショアラにて朝食をとっていた。

セイバーはやはり王族だからか、高級レストランでも恥ずかしくないような行儀のよい食事の様子であった。

 

「さて、食った食った。夜にはトゥリファスに向かうからな」

「…………」

「あん? どうしたセイバー。お前が言うから現代の服を買ったんだろうが」

 

今のセイバーは赤を基調としたウェスタンシャツの上に黒のライダースジャケットを羽織り、下は紺色のカーゴパンツ、といった服装である。

浮かない顔をした相棒にケルが心底不思議そうな視線を向ける。

 

「………マスター、汝がその服を買うとき店員の者になんと言われた?」

「ん? ……『お子さんにですか?』だっけか」

「不服だ! 余は偉大なるコサラの王ラーマである。天寿も全うしたというのに子供扱いは流石に酷いぞ!」

「でも今は子供みたいなもんだろ。つーかここで真名を口に出すな」

 

ケルは服を買う際お節介な店員ににこやかにそう問われたのだ。

この問いにケルは『まあ……誕生日プレゼントに』と答え、そこから店員に根掘り葉掘り聞かれてはあることないこと答えたのである。

顔を自身の髪のように真っ赤に染めながらセイバーが抗議するもケルの態度は完全に駄々をこねる子供に相対する大人のそれだった。

 

「マスターも何故あそこで肯定したのだ!」

「仕方ないだろ、あの質問にどう答えればよかったんだ。サプライズプレゼントにでもしねぇと怪しさ満点だろうが」

「むぅ………余は、余はぁ……」

 

サーヴァントは全盛期の姿で生前の全ての記憶を持って召喚されるという。

少年の頃の精神が老年並の知識に追いついていない故の弊害だろう。

しかし傍から見てると完全に『もう子供じゃないのに……』といじける子供である。可愛い。

セイバーが機嫌を直すのにケルはしばらく手を焼くことになる。

 

 

 

 

 

 

シギショアラの教会。

大きく開け放たれた窓から一羽の鳩がやってきて、“地”のキャスターの腕に優しくとまった。

 

「──ふむ。マスターよ、セイバーの主従はトゥリファスに潜入するようだぞ」

「この行動力、流石ですね。トライフと言えば戦士の血を引く家系だと聞きましたが、真ということですね」

「それで、どうするつもりだ?」

 

キャスターの報告を微笑みながら聞くシロウに貴志が単刀直入に問う。

ちなみに彼のサーヴァントであるライダーは部屋の隅で迷い込んだ猫と戯れている。

 

「我々も動きましょうか。貴方のライダーと、そしてアーチャー、バーサーカーに協力の要請を」

 

彼ら(セイバー主従)の様子を見てから、出撃していただきます。

シロウがそう言うのに貴志はわかった、と短く返事をし、ライダーを引っ張って消えて行った。

 

「クク、精々奴らが引っ掻き回してくれればよいのだがな」

 

キャスターがそう妖艶に笑う隣で、シロウは策を巡らせる。

 

「連続殺人の犯人と目される“星”のアサシンも気になります。蛇の道は蛇。そちらは(アサシン)に動いてもらいましょうか」

「奴を動かすのか? バーサーカーは当然だが、奴も相当狂っているぞ」

「言葉を間違えなければ大丈夫です。彼はなによりマスターを大事にしています」

「……マスター、そなたも中々人が悪いな」

「おや、心外ですね」

 

唐突にキャスターにひとでなしと言われ、苦笑いしながら否定するシロウ。

キャスターは黒いドレスを揺らしながら歩み寄る。

 

「あの狂った怪人はいつ暴発するか知れぬ爆弾だ。もとより目的を達すると同時に消えるよう使い潰すつもりであろう?」

「確かに、そういう意図もないわけではありませんが、彼が願うのは果てなき恋心の具現。その一念で、もしや大立ち回りを見せてくれるかもしれませんよ?」

 

事実、私も私の一念を持ってここまでやって来ましたしね。

なんのことはない、そう言って除けるシロウの様子に嘘ではない、とわかってしまうキャスターはただただ溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 

夜の闇に包まれたトゥリファス。

中世の町並みを赤い影が疾駆する。

その正体は言わずもがな、セイバーである。

彼の後にケルが続く。

体操選手でもそうできぬ動きで町を駆ける彼らは、ちょうど一際高い建物の上に立ち止まった。

 

「マスター、汝も魔術師にしてはなかなかの身のこなしだな」

「鍛えてるんでね。手足にルーンを刻めば追いすがるくらいはできんでもないさ」

 

セイバーの称賛を受けるケルが、そう言って裾を捲り脚にいくつも刻んであるルーン文字を見せる。

 

「強化、硬化、まあ他にもあるが組み合わせでどうにでもなる」

「フム……余は魔術師ではなかった。故にあまり詳しくはないが、なかなか応用が──」

 

不意に、セイバーが言葉を切った。

ケルも体勢が変わる。すぐにでも走り出せる体勢だ。

セイバーもすぐに武装して、隙のない戦士の装いとなる。

 

「……どうする?」

「やるしかねぇだろ」

 

ぞろぞろと姿を現すのは人間性を感じさせぬ無表情の兵士──ホムンクルス達と、その彼らを二人合わせても足りぬ巨体を誇る異形の戦士。

キャスターが昆虫から作り出す使い魔『アントラー』である。

千界樹の軍団に包囲された二人に恐れはなく、ただ勇ましい笑みを浮かべていた。

 

 

「さて……お前の力、見せてもらうぜセイバー!」

 

「──ああ、承知した、マスター!」

 

 

 

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