ある日突然、超能力など、非日常的な能力が使えるようになっていたら、みんなならどうするだろうか。
例えば、透視。
女子のお風呂を覗く?なんとも変態チックだ。
そういう俺も能力に目覚めるまではそんな考えだっただろう。
そう、あの日までは。
―――2030年4月
「桜…」
春、出会いと別れのの季節。
4月にもなれば、出会いの季節が正しいだろう。
新入生、新社会人、クラス替えもその一つであろうか。
憂鬱に悩まされる事もあるだろうが、俺は関係ない。
「陽瑠!」
友人が俺を呼んでいる。
俺は、春が嫌いだ。
花粉症ならともかく、この季節が嫌いなのだ。
「何一人で呟いてんの。」
俺に追いついてきた友人が、問いかける。
「何もないさ。今のところは。」
「はぁ?」
怪訝そうな顔で俺の顔を覗き込む友人A。
「その友人Aっていうのやめてくれ。俺には和治って名前があんの。」
知っている。
佐藤和治(さとう かずはる)。友人Aだ。
こいつとは幼馴染、腐れ縁、いろいろ言い方はあると思うが、幼稚園からの付き合いだ。
「ところで、生徒会の話だが…」
生徒会長。俺はそういう位置づけだ。
リーダーのような人格ではないのだが、副会長がしっかりしているため、俺でも成り立つ。
むしろ副会長が会長をしてくれ。
そうならなかったのも、副会長が、俺を会長に指名したからだ。
「私、会長は嫌。陽瑠、やりなさい。」
なんて、悪魔のような綺麗な眼差しを向けられたら、断るものも断れない。
仕方なく、会長になったのだ。
和治は書記を勤めている。
さて、学校が休みにも関わらず制服を着て、学校に向かっているのはほかでもない。
副会長からの呼び出し。それも生徒会全員で。
俺としては、家で休みたい気分なのだがな。
「陽瑠さん。おはようございます。」
なんて一人で考えてるのも束の間。
俺は満点爽やかスマイルで後ろを振り返る。
「なんて顔してるんですか。」
俺、どんな顔してたんだろう。
「陽瑠さんは、いつものクールな表情がいいんですよ。無理しないでください。」
「そうなのか。」
普段の顔はさておき、こいつは生徒会会計、二文字弥生(にもんじ やよい)。
普段から敬語なのだが、一応タメ。同い年だ。
「おっす、弥生。」
和治も挨拶が済んだところで、ちょうど学校についた。
「時間通り、といったところかしら。陽瑠?」
生徒会室のドアを開けると凛とした雰囲気で腕組み、そして、腰にカーディガンを巻いている副会長の姿があった。
「遅れるよりはいいだろう?」
俺も答える。
それぞれの席に荷物を置き、椅子に座ったところで、
「集まってもらったのは、生徒総会のことについてなの。」
と、副会長からの提案があった。
会議が、しっかりと進んでいる間に、俺と副会長についてだ。
俺、雪村陽瑠(ゆきむらはる)は、小学校の頃に副会長、桜庭真冬(さくらばまふゆ)に出会った。
教室で読書なんてして、みんなと一緒にいなかった俺は、真冬のターゲットだった。
「陽瑠!みんな外にいるよ!」
「陽瑠!移動教室一緒に行こう!」
事あるごとに俺に絡んできた。
その関係は中学でも一緒だった。
いつからか、真冬が隣にいるのが当たり前になっていたのだ。
そして、高校の生徒会選挙。
役職に就く事も頭になかった俺が、教室でぼーっとしている時に、真冬がきた。
あとは前述したとおり、悪魔のような、天使のような、どちらとも言い難い眼差しで、
「陽瑠、あなたを会長に任命したわ。先生の許可も得ています。」
真冬の視線と周りからの視線が熱いが…
「なぜ、俺なんだ?」
そう、真冬に言う。
「私の右腕はあなたしか居ないわ…」
昔からの付き合いだ、なんとなくわかる。
「私、陽瑠が一緒じゃなきゃヤダ」
大方こんな具合だっただろう。
「ところで、」
真冬がみんなを見ながら言う。
「このあとはみんな暇なのかしら?」
少しの沈黙の後に、
「俺は暇だぜ!」
和治が言う。続いて、
「私も。」
弥生も言った。
とりたてやりたいことも本を読む以外なかったので、
「俺も暇だ。」
と、返した。
「そう、よかった。駅前に新しくカフェができたみたいなの。知ってるかしら?」
知らなかった。
「当然、陽瑠なら知ってると思ったけど。」
知らなかった。
「その様子だと知ってそうね。」
いたずらな笑顔で俺に向かって視線を飛ばす。
「俺の無言は肯定なのか?」
そう返すが、
「あら、無言は肯定よ、誰かが言ってたわ。」
あっさり論破された。
「一人で行くのも悲しいから一緒に行ってくれるでしょ?」
真冬はこうなれば意地でも連れて行くだろう。
「行きます!」
「行くぞ!」
弥生、和治は行く気満々のようだ。
「奢れよ?」
「イヤよ?」
即答で断られた。
さて、時間は飛んでカフェでケーキでも満喫した後。
「では、また今度。」
弥生が帰り、
「じゃあな!陽瑠!」
和治も、帰ったあと。
「陽瑠、なんか、機嫌悪い?」
真冬が拗ねた顔で聞いてきた。
「別に…」
顔は見ないで返事をした。
「そう、明日は何か用事あるかしら?」
特に用事もないが、一応スケジュールを確認するフリをした。
「特にな…」
「本当!明日見たい映画があるの!一緒に行きましょう!」
食いつき方が魚そのものだが、
「わかった、付き合うよ、真冬。」
その後の帰りは、真冬はニコニコ…いや、ニマニマしながら俺と話をしていた。
和治と出会う前の話に遡ろう。
俺は春が嫌いだと。
その理由は簡単だ。
名前が陽瑠だから。
小学校の頃。
この時期になると名前でいじられた。
女の子の名前だからというのもあるのかもしれない。
それが、俺が孤立した原因の一つでもある。
だが、真冬は気にせず俺と接してくれた。
真冬には返しても返しきれない恩がある。
ありとあらゆる事に対して助けられた。
俺も真冬を助けないといけない場面が来るんだろうな。
そう思いながらベットに入った。
―――熱い。
街が燃えている。
人が悲鳴をあげ、子どもは泣き、足元には瓦礫かわからないものも落ちている。
これは何だ?夢か?
ふと、ある人物が俺の目に止まった。
「…っ!」
真冬だった。
建物の下敷きになり、助けを求めている。
真冬!
叫ぼうとしたが、声が出ない。
何度呼んでも同じ。
火の手が真冬の近くまで襲いかかる。
足取りがゾンビのように遅くなる。
真冬がこっちに気づく。
「助けて…っ」
そう叫んでいるのが聞こえる。
待ってろ!
思うだけで声には出ない。
ああ、夢ってなんてもどかしいんだろう。
真冬が手を伸ばし、苦痛な表情で俺を見る。
やめてくれ…
そんな目で
俺を見ないで…
―――「真冬っ!!」
耐え切れなくなったところで目が覚めた。
なんだこの汗。
本当に夢なのか?
疑問に思ったところで解決策は見つからない。
再び眠りにつくが、
「あんな夢見たあとじゃ、寝れないよな…」
目を瞑っても、寝れそうにない。
携帯に目をやると、メールが来ていた。
内容は、
「なんだ、これ…」
「おめでとうございます。あなたは『参加権』を得ました。
なお、参加しても参加しなくても自由ですが、ゲームの参加者は貴方のことを殺しに来ます。」
参加権?ゲーム?一体なんのことだ?
「うっ…」
頭が痛い。
なんだこれ、何なんだ?
夢といい、現実といい、意味がわからない。
「うわああああ!」
叫んだところで、頭痛は収まった。
もう一度メールを見る。
「あれ?」
そこに映し出されていた文字は最初とは違っていた。
「スキルを身に付け、ゲームの頂点に立ちましょう。
これは、未来を賭けた戦い」
また意味がわからなかった。
メールを受け取った次の日。
この日から日常は非日常に変わった。
プロローグにしては長すぎたか。
しかし、以上のことはプロローグに過ぎなかったのだ。
翌日から起こる、数日間。
俺は、忘れることはないだろう。