初回なので殆どが説明に費やされてます。
メガフロート、要するに、人工物のデカイ浮遊物。
相当な資材を必要とするが、その反面作りはそれほど難しいものではなく、基礎だけならばその規模に反して比較的安価に建造可能。
それを利用して海洋に前線基地とし、更に造船工廠など様々な設備を設営して立派な鎮守府を作り上げる計画が進行中らしい。
このメガフロートは、かつて90年代辺りにも浮上した事があったが、当時の土建屋やら各方面に顔の効く政治家の国益を軽視したやり取りの末。
お見事なまでに白紙にされたアイディアだ。
そんな計画が、利権云々を言ってる場合じゃなくなった2013年10月に日本の国防計画として再度浮上した。
理由は単純だ、深海凄艦といういわゆる『悪霊』にでも分類されるらしい『軍艦』が世界各地の海洋で突如発生。
これが、2013年5月。
瞬く間に人類VS深海凄艦の構図が出来上がり、海洋国家のうち軍事力、防衛能力の低い幾つもの国がこれらに『喰われた』。
戦慄する間もなく、当時正体不明のナニカであった深海凄艦が次々と人類に襲い掛かる。
当然、反撃は行われたが、海洋に出現する敵(全長1メートル未満)に対して各国の軍艦ではサイズ差の都合からそもそも攻撃が当たらない。
逆に向こうからすれば大きな的なので当て放題の構図だ。
では、兵士による白兵戦だ!と銃火器やロケットランチャーを装備して挑む者も居たが、ロケットランチャーレベルならば効果があったものの、殆どのアサルトライフル程度の携行装備は意味を成さず、まさに豆鉄砲。
更に、向こうの攻撃は見た目が小粒な銃撃かと思えば、威力が5インチ砲と同レベルであり、合金や強化プラスチックの盾で防ごうとした兵士は、或いは塹壕でやり過ごそうとした兵士も一様に砲撃で殺されていった。
ちなみに、この間1週間のハイスピード進撃である。
戦線が深刻化する中、更なる悪い報告が舞い込んだ。
敵性体の中に指揮官に相当すると思われる女性型の化け物を発見。
圧倒的火力にて重巡洋艦が会戦まもなく轟沈。
乗組員の救助もままならないまま次々と艦隊が撃沈され、脚の早い駆逐艦一隻だけがほうほうの体で帰還した、と。
更に悪いニュースは続くもので、敵指揮官と思われる女性体が複数種類存在を確認され、その内に幾つかが、謎の飛行物体を使役し、航空機を撃墜する事態が発生した。
更に更に、敵生態に侵略され滅んでしまった地域は敵の巣となり、生き残りの生存は絶望的だというのが某国のスパイ衛星からの監視で判明した。
そして、巣となった地点を橋頭堡に、数を増やして別の地域への侵攻を陸海同時に行っている事がわかった。
この頃、普段は腰の重い日本、流石に危機には敏感になったのか自衛隊と在日米軍が防衛線を構築し、なんとか防衛を行っていたが、かなり分が悪くジリ貧の戦いを強いられていた。
在日米軍においては本国への旗艦希望者も多かったが、それ以上に『下手に動いて海洋のど真ん中で完全包囲されてなぶり殺しにされる』という分かりやすいビジョンを本の数日前に厨国と北朝鮮がこの混乱を利用して日本に侵攻しようとした際にやらかしたのを見てよく理解している。
中国は装備だけは立派になっても、練度が圧倒的に悪かったせいかあっという間に囲まれ、艦も船員も海の藻屑どころか、敵性体の餌にしかならなかったのだ。
そして、何時の頃からか遠距離の通信が通じなくなった。
詰まり、日本…どころか世界各国が互いの情報のやり取りが出来なくなったのだ。
そんな危機感に晒され、誰もが焦燥に駆られていた時期に、とある報告が舞い込んだ。
「海で化け物とかわいい女の子が戦ってる」
「化け物側の女の子とまともに遣り合ってる女の子たちがいる」
「てか、あれ小学生ぐらいの子もいないか?」
「あ、あの傘持ってる美人の子、なんかすっごいの背負ってんだけど。しかも、敵の指揮官一撃で沈んでね?」
等などである。
寝耳に水の事態であるが、味方かも知れない、と言うのはジリ貧の防衛戦闘に参加していた者達にとってまさに地獄に仏。
そんな彼女たちの目的地は、なんと日本だった。
正式には『大日本帝国』だと言った。
意思疎通が出来たのも驚きだが、それ以上に発言が問題だった。
当初、聞き間違えかと思った兵士たちだが、彼女たちの言動で段々と一部のネジがぶっ飛んでるオタク自衛隊員を中心に理解が進んだ。
彼女たちの言と、一部のオタク自衛隊の意見を合わせると以下の見解が出てきた。
・彼女たちは旧日本帝国海軍の艦艇が擬人化したもの。或いは九十九神的な何か。
・敵もまた艦艇の何かである可能性があり、あっちは悪霊みたいなもの。
・取り敢えず、彼女たちは味方だが、在日米軍の兵士たちにはかなり喧嘩腰……歴史を鑑みれば仕方ないものと思われる。
と言うものだった。
何でうら若い女性の姿形ばかりなのか、と言う疑問もあったが本人達もわからないと答えた。
何はともあれ、彼女達、通称『艦娘(かんむす)』はあっという間に日本国民に認知された。
そのお陰か、ご時勢もあってか自衛隊改め、日本軍が再編された。
これに関しては国防に大きく貢献する艦娘達の意思を汲んだ形となる。
勿論、在日米軍も良い顔をしなかったが、それでも彼女たちの有用さを考えると押し黙るしかなかった。
彼らとて、妙な意地を張って死ぬ気は無いのだ、当然の選択だろう。
次に、軍事関係の雇用が増えた。
これは特に増えたのが陸軍兵士だ。
希望者の大半は海軍であったが、その殆どが不純であり、また、上陸戦を見据えるとどれだけ陸軍兵士が居ても不安は多い。
次に増えたのが軍需産業関係者の雇用だ。
先ず、艦娘専用の堅牢な高速輸送艇の再設計、大改修が急がれた。
何故か、と問えば理由は簡単だ。
彼女たちは大分小さくなっている上にだいぶ形も変わっているが自身の名前と同じ艦艇がモデルの艤装を装備している。
駆逐艦達ですら曲がり角で背負う艤装がぶつかる事があるので、通路にそれなり以上の広さが必要となった。
更に、戦艦級ともなれば横幅がひどい事になる。
主に超ド級戦艦の扶桑型等が良い例だ。
扶桑が普通の扉を潜ろうとすると、先ず偽装が引っかかって通れない。
その為、大型のスライドドア、若しくはシャッター式で、と言うのが最終判断だそうな。
同様の事態は重巡洋艦でも発生しているので、強ち笑えない話でもある。
彼女たちは軽々と背負ったり持ち上げているが、言うまでも無く彼女たちの装備は非常に重い。
そんなのとぶつかれば、大事故だ。
実際、何人かの人間、また艦娘同士での事故で艤装のドッグ入り、本人は入院、と言うのもあるそうな。
そういや、以前暇潰しでWW2時代の戦史を少し齧った時に、味方との衝突による轟沈や、謎の爆発で轟沈したという不慮の事故もあったそうな。
日本の看板戦艦の一つもそれで沈んだと言うのだから、本当に「慢心、油断、ダメ。ゼッタイ。」というわけだ。
グダグダと思考が脇にそれてるな。
まぁ、とにかく日本は艦娘を主戦力に軍備再編を行い、状況に対応すべく動き出したのだ。
で、各言う俺だが元はただのしがない派遣の技術職で28歳の独身男だ。
日本が戦争状態に陥った事で経済と言うか雇用状況がかなり変わって、派遣職は一部を除いて大抵が雇用元からばっさり切られた。
さもあらん事だ。
で、どうしたものかと悩んでいると軍の再編に伴い、兵士及び士官の候補生の募集がかかった。
当然、俺は士官候補生として応募するも、採用がかかったのは陸軍の兵士コースだ。
そこでみっちりと2ヶ月ほど訓練所によるブートキャンプ実習及び演習の促成栽培コースを受け、更にこの期間に採用された陸軍の新兵器の稼動試験を行った。
ペーペーの素人がこれの稼動試験をやる理由はいたって単純。
俺の経歴(様々な機器の評価試験をやってた経歴がある)を見て丁度良いとおもったらしい。
後、素人と玄人、両方がどの程度新兵器を扱えるものなのかの検証も込みのようだった。
そういえば、パワードスーツとかそう呼ばれるものの類で近年はこういうのを主題にしたアニメもあったな。
そのパワードスーツの出来栄えは正直に言えば、扱いが非常に面倒なものだ。
だが、ゲームやアニメで散々設計された事があるそれは、そういうのが好きなメカオタクやロボオタク等の本物の技術者を集めて比較的短期間で作成された代物なのだ。
敵性体、深海凄艦に対抗するには不恰好でも良いから既存の兵士よりも強く、早く、重火力を奮える必要があったのだ。
それこそ、今まで一般人だった人間に使わせて、そこそこ使える程度の新兵器が。
まぁ、実際は適正のある人間がなんとか使えるレベルで、後は本気で訓練積みまくらねば丸で実用できる気がしないと言う残念兵器だった訳だが。
それでも、無いよりは大分増し、と言う判断の元、このパワードスーツは更なる改良発展を要求された。
それを南西諸島の開放を掲げて防衛戦力を確保しつつ、カチコミを仕掛けたのが7月半ばだ。
俺も当時で陸軍少尉(新兵器は色々と箔付けの意味も込めて装着者の階級は尉官以上に上げられた)として戦場に立った。
戦力の3割に打撃を受けたものの、海軍長官(見た目二十代後半のチョイワル風味)の的確な指揮と陸軍長官(ムキムキのジー様)のお見事なまでの前線指揮で危なげなく勝利を拾った。
これにより、ある程度の資材回収拠点を獲たものの、その土地に既に『ヒト』は残っていなかった。
残っていたのは……まぁ、有体に言えばゾンビもどきだ。
深海凄艦の駆逐艦級が死体に取り付き、それを素体にして戦力として操ると言う敵しか居ない状態だ。
しかし、陸上であったからか動きは悪く勝利を得るのはそう難しい話ではなかった。
まぁ、この位出来なければあのブートキャンプを二ヶ月じゃ卒業できないしな。
そんな感じで南西諸島の開放作戦より帰還すると、何故か人事に呼び出され、異動命令が下される。
そう、海軍の提督になれ、と言う異動命令。
階級は驚きの特進で少佐に上げられた。
そのせいで佐官教育を受ける必要があるという事で俺の夏はそこで潰えた。
おのれ、コミケの企業ブース、覗きに行きたかったのに……弾幕シューティングのところ、覗きに行きたかったのに……。
まぁ、それはさておき提督である。
現代、というか艦娘が海戦の主力戦力となった今の鎮守府は非常に提督に溢れ過ぎていた。
というのも、こう言っては何だが、艦娘が多過ぎたのが原因だ。
しかも、同系艦ではなく、まったくの同一艦。
同一人物が何人もいるのだ。
駆逐艦級の艦娘が「一匹見たら……」のレベルで増えた。
どういう事かと指令本部が艦娘に問うとこう帰ってきたそうだ。
「私達帝国海軍艦艇は多くの無念を抱えて散りました。その中でも一番大きいのは国を護りきれずに朽ちるという無念です。そして、その無念を抱えつつも再び護国の為に戦いたいという想い、そして人々が私達を求めてくれるのならば、幾らでも私達は現れるのです」
という話だとか?
正直、だからどうして同じのが何人も現れるのか欠片も理解できないが、彼女たちは取り敢えず日本を護りたいから現れるらしい。
まぁ、害はないから良いか、と言うのが俺の感想だ。
さて、好い加減に現実に目を向けよう。
「幾らなんでもこれは少し酷いんでは?」
「何分、上の方でもかなり急がせてしまったようで、設備は文字通り最小限な様です」
隣に立つ、本土や出征した艦娘たちとの連絡通信やその制御を一手に引き受ける彼女は、今回道案内を兼ねて俺と一緒に本土から来た通信兵だ。
改修型高速輸送艦(艦娘ではなく、普通の艦艇だ)に乗って辿り着いたメガフロート。
そこはだだっ広く、多少の航行能力を持つ浮島(メガフロート)に、最小限も最小限、といえる規模の設備群。
後、一部に植林等が施されているのか、割と広めの公園のような一角も存在する。
しかし、それ以外には特に目に付くものが全く存在しない、というか……これで鎮守府運営できるの?っていうレベルだ。
一応、建造能力なども持たせているらしいので、ここから艦以外にも浮島の設備の必要なものも作る事が出来るらしい。
電力に関しては太陽光、風力、原子力と様々扱っているらしい……細かい所は、後でキッチリ調べよう、怖いし。
いや、新米提督の少佐にこれだけの設備を与える方が破格過ぎるんだけど……あぁ、ダメだ、訳分からん。
そんな風に思い悩んでいると、小屋の中から一人の少女が出てきた。
背の小さなセーラー服の少女だ。
髪形はツーテールで何処と無く愛らしい少女の様にしか見えないが……だが、彼女は艦娘だ。
そう思っていると、案内役が前に出て口を開く。
「あなたが秘書艦の特型駆逐艦、漣ですね?」
「はい。特型駆逐艦、漣です!」
「提督が鎮守府に着任いたしました。これより艦隊を指揮します」
「はい、りょうかいしましたー!」
「では、提督……現在、提督の指揮下にある艦は漣だけですが、ですが提督が真に護国の為に戦う兵(つわもの)足るのならば自然と艦娘たちは集まるでしょう」
え、いやちょっと待とうよ。
幾ら元陸軍所属だからって、これじゃあいくら何でもやりようが無くね?
いや、今更ごねても仕方ない。
というか、軍人になったからには上位命令に容易く逆らうわけにもいかねーよな。
「……了解した。……漣、今後貴官には苦労をかけるが宜しく頼むぞ」
「わかりました、ごしゅじんさま!」
「ご、ご主人、様……?」
いきなりこの子は何を言っていらっしゃる?!
「漣、貴女はいきなり何を言ってるの?!」
「あれ?嬉しくない??おかしいなぁ、本土に居た時、佐官候補生のお姉さんがこう呼べば男の人は喜ぶって言ってたのに」
「……いや、まぁビックリしたが構わない。好きに呼ぶと良い」
「提督、本気ですか?」
非常に胡乱気な目で見られるが、正直もう大分毒気というか気力をそがれた。
どうでも良い。
「……さぁな。マルレ、本部への無事着任の報告、頼むぞ。俺は道中で受け取った任務をこなすとしよう」
「わかりました。お任せください」
「漣、早速だが色々とやるぞ」
「はい、漣にお任せください!」
こうして、俺の提督生活が始まった。
さて、それじゃあ先ずは『建造』だな……。
建造の方法は実にシンプルで、古めかしいコンソールに四種の資材、燃料、弾薬、鉄鋼、ボーキサイトを30~999の量投入すれば良いだけだ。
ちなみに、単位はkgらしい。
ALL30指定しても120kgなので、用意するのは大変なんだろうな、とも思ったが、そんな事は無かった。
四人?の幼児位の何かが資材庫の方から電気カートでパパーッと資材毎やってきて、其々が工具を持って勝手に作業を始めたのだ。
「……漣、あれは、なんだ?」
「あれは妖精さんですよー」
一瞬、聞きなれないけど知っている単語が聞こえた。
「……すまん、なんだって?」
「だから、妖精さんですよ!私達艦娘の偽装の製作を行ってくれる工廠の妖精です。他にも鎮守府の整備を行ってくれる各種妖精が居ますよ」
「……そうか」
世界の常識は、何時からこんなファンタジー寄りになったんだ!!
「私達の艤装の中でも働いてるんですよー。かつての船員の代わりはみんな妖精さんがやってくれてるんです」
「そう……なのか」
戦争は変わったな。
いや、戦争は深海凄艦相手のものしか知らんのだけど、なんというか、なぁ。
「今は鎮守府の中なんで外してますけどー、つけたら見ます?」
「そうだな、その時に確認しよう。……さて、すまないが俺は一旦執務室に戻って部屋の片づけをする。漣は今建造している艦が完成次第、艦娘を連れて執務室に来るように。それまでは待機時間だ」
「はーい、ご主人様。それでは、失礼しますねー」
「あぁ、行って良いぞ」
可愛い笑顔でそう言ってどこかへと去っていった。
「多分、ここで一番大事なのはスルー検定一級程度の実力なんだろうな。主に、今までの常識をスルーできる様にならんといけなそうだ」
さらば、常識。
こんにちは非常識。
次回、仲間が増えるよ!やったね提督!!