とある提督の決断   作:とうや

3 / 3
イベント海域で粘ってたら、もうこんなに日数が。
それでも突破できないE4と入手できない三式弾。
そろそろ諦めた方が良い気がしてきたよ……(バケツが残り少ないし

ちなみに、今回で提督の出身地がおおよそ分かりますが、提督の名前は未だに不明です。
もういっそこのまま名無しで行っても良いんじゃないだろうか?
いわゆる『俺提督』って奴で


03:奇襲強襲は常套手段

 

=>Admiral view

 

身に纏ったアーマードスーツの試作品の着心地を確かめつつ、口を開く。

アーマードスーツやパワードスーツは、薄手のコンバットスーツの上に、背中に基礎骨格(ベ-スフレーム)、更に鎧となる胴体部分で前面と背面の防御を固め、脚部は基礎骨格に接続して装着者の脚を外側から覆うように固定され、腕部も同様に基礎骨格に接続し、こちらは腕に覆うのではなく機械腕として独立稼動して射撃や姿勢制御サポート、或いはマニュアル操作で格闘も出来る。

最後に頭部は防御能力もそうだが、複合カメラ機能と通信機能、水中行動の為の酸素供給が30分は可能、後は意味も無く『ブンッ』と光るカメラアイ機能。

おい、技術班、お前ら遊びいれすぎだろう……不覚にもかっこいいと思ってしまったけど。

基本的には前面装甲が厚めで、多少前のめりになる様に見えるが、背面に可動式ブースターユニット2基があり、これで前、と左右への高速移動、更に跳躍補助も出来る。

……飛行は不可能で、その理由は単純にブースターユニットの能力に対して重量オーバーだからだそうだ。

更に、武装ハンガーラックも兼ねており、アーマードスーツ用のロケットランチャー、近接防御用大刀がハンガーに装着されており、今回手に持っているのは大型ライフル。

一応、余裕で戦車装甲もぶち抜ける代物で有効射程は1300mとある。

 

「これ、本当に大分変わったんだな」

 

ちなみに、以前俺が陸軍に居た時に開発されたスーツは、コンバットスーツを鎧武者っぽくした装甲とその重量をカバーする為の動作補助、重火力で撃つ方が怯まない為の姿勢制御機能程度のスーツだ。

これだけでも凄いと思ってたんだけど、今回のはより『ハイスピードロボットアクションゲームに出てきそう』な見た目だった。

 

『水上と陸上をホバー移動したい、という誰かさんの意見を採用させてもらった。幸いにも近年の技術の発展度合いは良い感じでな。ホバークラフトの発展系の技術となるよ、それは』

 

あ、それ俺だ。

以前浅瀬移動する時に、パワードスーツだと移動が面倒だったんだよ……転んだりした時、水攻め状態で。

後、基本歩兵と同じで移動は歩行だった。

だが、幾ら補助があると言っても全身に鎧を纏っての歩行は稼動範囲が狭い上に負荷からくるちょっとしたストレスで、戦闘が長引くほどに正直やってられるか、と言うのが多い。

だから、脚部に付けられたその機能は単純にありがたい。

 

「なるほど。大佐、注意点は?」

『ホバーを使用した移動中は跳躍が困難な上に、段差の移動が面倒くさいものとなる。適宜ホバーと歩行モードを切り替えると良いだろう』

「なるほど。水上で転覆した場合はどうなる?」

 

一番怖いのがこれだ。

水中で身動きできません、は海のど真ん中で戦う海軍としてはイコールで死だ。

 

『その時は姿勢制御やその他諸々の機能で浮上した上で再度立ち上がる事が出来るが、その辺りの基本は自動操縦だ。転覆すれば大きな隙を作るという事を意識しろ』

「これで基本速度が陸上時速70kmで水上が38ノットか……水上の方が遅いのは何故?」

 

基本的なことだが、一番気になるところ。

歩兵の基本は機動力!イカに早く展開できるかがかぎとなる。

 

『簡単だ、水上でのバランス維持にや安全の為に出力制御を自動で行うから陸上ほどの速度をだせないのだ。だが、水上移動速度は艦娘最速の駆逐艦、島風にやや劣る程度だ。十分な速度だといえよう。それに運動性能も十分高い。後は貴様の腕次第だ……そろそろ作戦領域だな』

 

確かに、言われてみるとそうか。

 

『洋上からの強襲実戦でのテストは今回が初だ。貴様の戦果とデータを期待するぞ』

「了解。出撃する!」

 

輸送艦から飛び出し、ホバーとブースターを同時に稼動。

俺は一直線に深海棲艦の巣へと殴りこみをかけた。

何キロもありそうだった小島はあっという間にその姿が大きくなり、そこに屯する深海棲艦と、犠牲者の姿が見える。

 

「攻撃目標を発見、駆逐する!」

 

手近に見える敵深海棲艦たちに、早速ライフルとロケットランチャーを乱射し奇襲を仕掛ける。

 

=>Sazanami view

 

今、私達はあのぐるぐる廻った羅針盤に不安を抱きつつも、任務を全うすべく進んだ……は良いんだけれど。

見事に今居る場所が何処なのかいまいち分からなかった。

 

「うーん、本当にこっちで大丈夫?」

「けど、今気にしてもしょうがない!ある程度見回ったら来た方向を戻れば良いのよ」

 

イカちゃんは、ポジティブだなぁ。

まぁ、言う事ももっともだし、頑張りますかぁ~。

 

そう思っていた所で、聞き覚えのある唐突に風切り音。

直後、私とイカちゃんの手前10メートル地点に着弾。

強烈な飛沫が全身を濡らす。

 

「敵砲雷撃っ!!」

「どこから!?」

 

後ろからの砲撃は無いだろう、つまり前方か左右のどちらかの方向から。

波の音にかすかに紛れる異音…。

 

「漣ッ、挟撃よ左右から来るわ!!」

「右は駆逐2!!」

「左は軽巡1、駆逐1!!」

 

気付けば自然と背中合わせに立ってる。

この状況がまずい事は理解できる。

 

打開策としては、逃走だけど、今すぐ逃げても後ろから集中砲火を受けしつこく追いかけられる。

相手が駆逐、軽巡なのだから、速力は互角と見ても良いかもしれない。

けど、数はこちらの倍……。

更に、下手に逃げれば追っ手は増える可能性もある。

 

「……雷ちゃん、距離を保ちつつ一戦交えて、夜の闇に紛れて戦線離脱、良いよね?」

「わかったわ。折角着任したのに、初日で轟沈とか、考えたくも無いもの。念の為に、持たされてた救難信号を無線機で流してるけど……何処まで頼れたものか」

 

私達に唯一ツキがあるとすれば、それはきっと今が夕刻ということだ。

後、1時間もしない内に夜の闇が私達を覆い隠してくれる。

夜闇にさえ紛れられれば、後は救難信号を待つだけで大丈夫、そのはず。

 

覚悟を決めて私達は砲撃戦に移った。

 

「漣の本気、見せてあげる!」

「ってー!」

 

元より数で劣る戦い、けれど相手は本能だけで戦う深海棲艦の駆逐艦と本の僅かばかりの理性しか持たない軽巡洋艦。

ならば、戦い様はある筈よね!

 

「イカちゃん、後退しつつ牽制砲撃!余裕があったら敵駆逐艦を沈めましょ!」

「って、またイカちゃん扱い?!あーもう!とにかく分かったわ。後、互いに少し距離をとって回避行動しやすくするわよ!」

 

連装砲、1番2番、撃てッ!

──1番2番撃ちました。

──ハズレです。直撃無しですが僅かに相手に打撃を与えた模様。

続けて、左右両脚の1番2番連装魚雷順次発射!

──左右両脚の魚雷、1番2番、発射しました!

──右1番2番、左1番全弾ハズレ!左2番が2発敵深海棲艦駆逐ロ級に命中!

  しかし撃沈ならず!中破程度!!

 

妖精さん達との声なき会話で指示と報告が行きかう。

その合間にも、少し離れた位置にいるイカちゃんと鎮守府から支給された無線機で通話している。

 

「あー……そういえば、私達が艦艇だった時ってぇ、接触、衝突事故で事故って大破したり轟沈した子も居たわよねぇ」

 

イカちゃんの方に軽巡ホ級と駆逐ハ級。

あちらは軽巡もあるせいか、駆逐だけよりも弾幕が厚いが、イカちゃんも相手への牽制と回避に専念している為に直撃は今の所無い。

 

「……それ、電には絶対言わないでね?」

「わかってるわよ。デンちゃんには言わないから…ってあぶな?!」

 

拙い、読み間違えたかもッ!

深海棲艦ってば、ダメージ受けたせいで余計好戦的になってる!

 

「ちょっと漣。あいつら怯むどころか、気にせず突っ込んでるわよ!?」

「こ、こいつぁー拙いかも、ですねぇ」

 

 

 

=>Admiral view

 

奇襲に成功し、4体の敵駆逐級と1体の軽巡級を初手で葬った。

この影響であろうか、敵深海棲艦は浮き足立って見える。

 

「ホバー、小刻みにブーストッ!距離を詰めて……斬る!!」

 

言葉にすれば簡単だが、高速で飛来する砲弾を避けつつ、実行するのは中々に難儀だ。

だが、アーマードスーツの性能はそれを可能にした。

 

気のせいでなければ、1秒の体感時間と実際の時間の感覚がずれてる、良い意味でだ。

詰まる所、思考速度の加速による反射の上昇とでも思えば良いのだろう。

お陰で『撃たれてから避けるの簡単でした』と言えるレベルだ。

いや、強がり言った。だが、撃たれたのを察知してからでも対処する事が出来るレベルだ。

 

さて、避けて、距離詰めて、避けて、大きく振りかぶって上段からの袈裟切り。

返す刀で接近してきたもう一体の駆逐級を斬り伏せる。

今更だが斬ると言うよりは斬り潰すが正しい、等と思考をそらしつつも即座に回避機動を取りながら次の獲物を見定める。

開幕で盛大に弾を使ったので、近接戦闘で仕留めたい所だが相手は奇襲強襲と続けたせいで深海棲艦が警戒して接近が困難になる。

しかしそれでも駆逐イ、ロ、ハ級をそれぞれ誤射すらも誘導し倒すのは存外苦労はしなかった。

浅瀬、や陸上だから、と言うのもあるだろうが、それ以上にスーツの性能が思ったよりも高く、こちらの理想道理に動く。

とはいえ、Gの負担はその性能に比例して高くなるので、疲労も一気に溜まる。

 

「コイツを纏った状態で長時間の戦闘は無理だな。負担が多過ぎる。一度の出撃でよくて30分から1時間程度の任務で装着者は限界って所だろう」

『なるほど、その辺りは他の装着者の意見と同じですね』

 

回避を続けているが、埒が明かないと判断して斃したばかりの深海棲艦を持ち上げ盾にする。

本来、深海棲艦は一番小さな駆逐級であっても大抵が相当重い。

だから以前のパワードスーツでは盾として持ち上げる程度は出来たがそれ以上は出来なかった。

だが、アーマードスーツの出力はそれ以上を可能にした。

 

「防いで終わりって思ったか?残念!投げるんだよぉ!!」

「「!!」」

 

駆逐イ級を投げ飛ばし、それを打ち落とそうとする軽巡ホ級の一体。

他のも突飛な行動に驚いて一瞬だが注目が駆逐イ級の残骸に集まる。

その間に、ライフルとロケットを再度装備し順に一斉射撃でホ級を潰そうと企むが、一体だけ潰せて、もう一体は我に帰ったお陰で再び弾幕。

イ級を投げつけられたホ級は当たり所が悪かったのか大爆発してそのまま果てた。

そういや、イ級は腐っても駆逐艦だ。

積んでた魚雷が爆発したんだろうな。

 

「ホォォォ!!」

「これならゲームの弾幕回避の方が難しい位だ!」

 

最後は機動性で翻弄しつつ一気に距離を詰めて大刀で切るだけの簡単なお仕事だった。

 

『ふむ、今回の任務は完了だ。試作機の実践テストとしては上々の結果だ。高速連絡艇に乗って帰還しろ』

「了解。これより帰還する」

 

しかし、アーマードスーツの性能は凄いな。

パワードスーツだったら、確実に俺の方がミンチになってたよ。

 

「で、これは輸送艇に戻ったら脱いでも良いのか?」

『えぇ、問題はあ……失礼。脱ぐのは後回しだ。再出撃の準備を。予備の弾薬があるから早急に補給を済ませろ。これより、近海で追い詰められている友軍の援護に向かう』

「なに?……仕方あるまい」

 

=>Sazanami View

 

撤退戦をする、と言うのはやっぱり苦しい。

ましてや、状況が次第に悪化してきているとなれば余計にだ。

 

─機関出力低下!

─以前に受けた衝撃によるダメージが影響してます!

うそ!以前って言うと……煙突に当たったあれ!?

 

「漣、脚が鈍っているわよ!」

「ご、ごめんイカちゃん。先に行って!」

 

こうなれば、漣も覚悟を決めるしかない。

 

「ちょ、ちょっと何を言ってるの!」

「実は、漣の機関部にちょっと異常が出ちゃってまして。まぁー残念ながら落伍という事になっちゃいます」

「だ、ダメよ!!漣を失うわけには行かないわ!!」

 

直後、砲撃。

敵が追いついてきたのだ。

 

「助けるわ!」

 

そう言ってイカちゃんが漣の前に出て防御装甲を構える。

 

本来は魚雷への被弾による暴発を防ぐ為の装甲だけど、こういう使い方もあるのか、と少し感心しつつ艤装内部の妖精に攻撃可能武装と応急修理の有無を問い合わせる。

 

──連装砲、まだうてます!けど残弾少数!

──こちら機関室。これ以上の修理は現状不可能です!寧ろ、何時駄目になってもおかしくないよ!

 

「ッたー…思ったより痺れるわね」

「イカちゃん…思ったより無茶するね」

「なによもう、雷は大丈夫なんだからー!」

 

若干涙目で強がりを言ってるけど、取り敢えずまだ大丈夫そう。

けど、現状はより悪化しつつある。

 

『こちら、メガフロート『阿夫利(あふり)』鎮守府所属の提督だ。これより、そちらを攻撃する敵勢力の殲滅行動に移る』

 

メガフロート『阿夫利』。

間違いなく、漣たちが鎮守府にしている人工島の名前だ。

命名は提督が着任前に行ったんだときいたっけ。

確か、地元が神奈川の大山(別名:阿夫利山)の麓にある町だって聞いたけど。

そして、そこの提督となると、今の通信の相手が誰かと言うのも直ぐに答えが分かる。

 

「この声、もしかしてご主人様?」

「え?!何でウチの提督が?!」

 

そうして暫くもしない内に、バーナー音を響かせながら、白黒の鋼鉄の塊が砲弾をばら撒きながら戦線に加わった。

そして、漣たちの前に壁になるように立つ。

 

『……敵駆逐艦2、撃破を確認!』

『こちらでも確認した。残るは軽巡と駆逐が1ずつ。余り時間をかけるなよ?こちらまで攻撃されては、対処が出来ん』

『了解。これより敵勢力を殲滅する』

 

「あの、ご主人様……ですか?」

「あぁ。だが、話は後だ。お前たちは俺が敵を引き付ける間に後方の連絡艇に退避。なに、あの程度なら以前戦った飛行場姫と比べれば楽勝だ」

 

そう言ってご主人様は身に纏った鋼の翼で火炎を噴かせて一直線に深海棲艦の元に向かっていった。

 

「あれが、私……達の提督なのね」

「そうね……ってうん?」

 

イカちゃん、貴女よく見るとなんだか顔が赤い上にポーっとしてなんか様子がおかしいけど、もしかしてもしかした?

─サザナミ=サン、イカヅチ=サンから例のアレな匂いを感じますです!

─艦橋のヨウセイ=サン、例のアレとはもしかしなくても例のアレでしょうか。

 

 

その後、暫くしない内に提督は私達が苦戦した敵を実にあっさり、被弾無しで倒してしまったが、その後連絡艇に戻ってくるとそのままダウンして翌朝まで起きてこなかった。

その事を通信で提督の上官らしき太った男のヒトに伝えると。

 

『ふむ、奴に送った装備は奴の戦術特性に合わせてあるとはいえ、やはり肉体への負荷が大きいか。奴には有事と演習以外では使用を禁ずると伝えておけ』

 

と言われた。

話を聞くに、元々試作装備であった上にそもそも負担が大きいらしいパワードスーツの発展型。

更にそれよりも負荷が大きくかかる水陸両用高機動装備と言うものらしくて体への負担がとんでもなく大きいらしい。

詰まり、今回みたいに助けられる事はそう何度も無いだろう、と言うことだ。

 

「ご主人様。漣はもうご主人様にご迷惑をおかけしない用に、無理しない程度に頑張りますね!」

「雷もなんだから!もう前みたいにはならないんだから!……だからもーっと私に頼っていいのよ!」

 

漣もイカちゃんも、提督に無理してもらわないで済む様に頑張ります!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。