とりあえず一言だけ……平成ありがとう!
光輝「こ、こんにちは?光輝だ。なんか、いきなり連れてこられたんだけど……」
ハジメ「おうナル之河、テメェ随分と前回主人公ムーブしてたじゃねえか」肩に手を回す
光輝「南雲!?いや、流石に俺も反省したっていうか……」
シュウジ「おうコラ勇者(笑)くん、お前どのツラ下げてきやがった。ここが前書きのメタ部屋じゃなかったらブッ殺してるとこだぜ☆」肩に手を回す
光輝「わ、悪かったって!?謝るから笑顔でナイフ首に当てるのやめて!?」
ハジメ「おうおう?」
シュウジ「おうおうおうおう?」
光輝「ちょっ、たす、たすけ、ぎゃー!」
ネルファ「うふふふ、これが見たかったんですわ」
ルイネ「相変わらず悪趣味だな……今回はこの章最後の話だ。楽しんでいただけると助かる。それではせーの、」
四人「「「「「さてさてどうなる再会編!」」」」」
光輝「ギャー!」
ギシ……
ふと、何か聞こえた。
「…………?」
久し振りに深い眠りに沈んでいた意識がゆっくりと浮上していき、やけに重たい瞼を気怠く感じながら開ける。
すると、薄暗い暗闇に包まれた寝室が視界に映り込んだ。一番近い真っ白なシーツは、ほのかに輝いているように見える。
「ん〜……」
まだ深夜であることを察して、もう一度眠りにつこうと抱き枕にしていたシューの腕を取ろうと……
「………あれ?」
回そうとした両手は空を切り、ぽすんと間抜けな音を立ててベッドに落ちた。
そこでようやく、愛しの彼がいないことを知る。
一体どういうことかともう一度めを見開くと、白いシーツが目に移った。そう、私以外誰もいないベッドに被せられたシーツが。
数秒見つめて、勢いよく体を起こす。一糸まとわぬ体からはらりとブランケットが滑り落ちた。
そんなことも気にせず、はっきりした両目で部屋の中を探すが……
「いない?」
シューの姿が、どこにもなかった。
おかしい、眠るまではしっかりとあの熱を感じていたのに。
ここはシューの作ったコテージの、寝室の一つ。異空間があるからと野宿用に作ったものらしく、最初に見たときは驚いた。
それはともかく、久し振りの再会ということで、今夜はルイネさんは気を利かせてシューと二人きりにしてもらった。
そして愛を確かめて、そのまま寝たの……だが。
「あら?」
しばらく室内を見渡していると、わずかにドアが開いていることがわかった。見えづらくて気付くのが遅れたのね。
ベッドの周りに散乱している服を着なおして、部屋の外に出る。
それと同時にがちゃん、という音が聞こえた。一階だ。
「外に出たのかしら」
他の部屋の人たちを起こさないよう……南雲くんの部屋の前を通った時のユエさんたちのアレな声はスルーした……忍び足で廊下を進む。
軽く無拍子を使って階段を降りて、広々とした玄関に出る。今更だけど、これじゃコテージっていうよりちょっとした屋敷よ。
「また開いてる……」
ちょっとだけ開いていた寝室のドアに対して、玄関のドアは半分以上開いていた。風で不気味な軋み音を立てている。
あのシューがドアを閉め忘れるなんて、私たちもいるのにありえない。とすると、何かあってドアを閉めるのを忘れたか。
心に一抹の不安がよぎって、外に出る。森の中に設置されたため、うっすらと黒みがかった緑の海が視界に飛び込んできた。
ガサッ……
「っ!」
ネビュラガスで強化された聴覚が、茂みの向こうの微かな音をキャッチした。
「こんな深夜に散歩か?」
音のした方に進もうとして、耳元で囁かれた声にとっさに手刀を背後にいるものめがけて放った。
が、あっさりときめ細やかな感触の手のひらで受け止められた。手の主であるルイネさんはふ、と面白そうに笑う。
「いい反応だ」
「貴女こそ……聞いた?」
「ああ」
端的な質問に、小声で答えるルイネさん。どうやら彼女も、シューが出て行ったのを知っているようだ。
小さく頷きあうと、気配を遮断した上でルイネさんの魔法によって足音や匂いを消し、シューと思われる誰かを追跡する。
ルイネさんの魔法で足跡をたどり……その際眉をひそめていた……小走りで森の中を駆けた。
夜の森はかなり暗くて不気味で、ルイネさんの先導がなければ迷ってしまいそう。そこかしこから見られているような気さえする。
けれど長年鍛えた健脚には、この程度なんでもない。二人とも速度を落とすことなく、ただ前だけを見る。
おまけにシューは随分早いスピードで移動したみたいで、軽く追いかけただけでかなり森の奥まで入っていった。
ちらりと少し先を走るルイネさんを見る。相変わらず綺麗な横顔には、どこか硬さがあるように思えた。
「……ねえ、なんでさっきあんな顔したの?」
無意識に疑問が口から出る。彼女は一瞬こちらに目を向けて、すぐに前に戻した。
「あの人がたとえ敵がいなくても、足跡を残すなど前代未聞だ。それに……」
立ち止まって、木の一つを見やるルイネ。私も一旦止まり、彼女の視線の先に意識を向ける。
すると、木の幹に大きな爪痕がついてるのがわかった。
近づいて見てみると、凡そ動物の仕業とは思えない太さと深さだ。
「これって……」
「カーネイジ、だろうな」
また、顔を見合わせる。
深刻そうな顔のルイネさんの真紅の目には、きっと同じ顔の私が写っていることだろう。
一体、何があったのか。不安はより大きなものとなって、ほぼ同時にさらに森の奥へと走り込んだ。
引き続きルイネさんについていくと、だんだんその道筋が左右にブレていく。しまいにはあらぬ方向へ曲がってしまった。
「……っ! 止まれ」
15分ほど走った時だろうか。鋭く飛んだ声にブレーキをかけ、一番近くにあった木の陰に隠れる。
すぐ近くの木に隠れたルイネさんが、口に人差し指を当てる。目で頷くと彼女も首肯し、そのまま指を木の向こう側に向けた。
「ぐ……ぅ…………」
それに従い、半分だけ顔を木陰から覗かせると──少し開けた木々の間、月光が照らす中でシューがうずくまっていた。
「……!」
「………………」
目を見開き、思わず飛び出そうとするとルイネさんに強い目線で止められる。ハッとして出しかけた足を引っ込めた。
止められたことに安堵の息を吐きつつ、もう一回覗く。
「が……ぁ……」
小さくうめき声を漏らすシューの後ろ姿は、とても苦しそうだ。おまけに断続的に痙攣していて、尋常な様子ではない。
やっぱり飛び出そうか、と思ったその瞬間──不意にシューが顔を上げた。
「ガァアアアァァアァァアアアァァアァァアアアァァァァア────────────────ッッッ!!!!!」
●◯●
「っ!?」
それはまるで、獣のような咆哮。月に向かって吠える様は、満月の夜に吠える狼人間のようだ。
いや、それよりも──まただ。また、シューの姿がブレる。知らない何人もの誰かが、シューに重なって月に吠える。
赤い外套を纏った褐色の男。
頭頂部が黒い灰髪の男。
金色の獣。
茶色いトレンチコートの男。
そして、汚れた……黒いローブの男。
以前より一人、増えている。いいや違う、まるで見えていなかっただけで、元からいたかのような──
「が、ぁあッ、っ、ぎ、あがっ、ぐぅ…………!」
怪奇的な光景に見入っているうちに、シューは咆哮をやめた。顔には滝のような汗を流し、胸を押さえて苦しむ。
胸が激しく締め付けられる。今すぐ走り寄って抱きしめてあげたい。
でもルイネさんがかぶりを振って、唇を噛んで見ていることしかできなかった。
「ち……しょ……や……な…………」
何かをつぶやいているが……小さすぎて聞こえない。強化された聴覚でも聞き取れないとは、かなり小さい声で呟いてるみたいね。
さてどうしようかと思っていると、不意に耳に違和感を感じた。触ってみると、何かに覆われている気がする。
『今、私の耳とリンクした。龍の耳ならば聞き取れるだろう』
頭の中に、ルイネさんの声が響く。彼女を見ると、鋭くなった耳をトントンと叩いていた。
こくりと頷いて、これ幸いとシューに意識を向けてつぶやきを聴く。シューは一体、なんで苦しんで……
「──このままじゃ、いつか食い殺されかねんな」
……………………………………え?
どういう、こと? 何かが、シューを食べようとしている?
もしかして、あの時の赤黒い塊?いや、でもあれはコントロールしているように見えたし、ならもっと別のもの?
冷静に努めようとすればするほど、混乱した思考はさらにこんがらがり、複雑さを増していく。より現実がわからなくなる。
ぐるぐると回る思考が、いよいよ限界に達しかけた時。
シューの体から赤い塊が分離して、木の一本に背中を預けるエボルトになった。
「…………平気か?」
「これが平気に見えんなら眼科に行けい…………あ、でも宇宙人専門の眼科とかあんのかね?」
「冗談言えんなら平気だな、って感じでもねえか。せいぜいやせ我慢がいいとこか?」
「よくおわかりで」
奥歯を噛み締めて、無理やり笑うシュー。痛いほどに締め付けられる胸に手を添えて、涙をこらえる。
「そんなに強いのか、それは」
「……生半可なもんじゃねえよ。なにせ
「……!?」
世界を創造した力の片割れ? それって一体どういう……
私の疑問に答えるように、シューはステータスプレートを取り出す。淡く輝いたプレートに指を当て、シューは何かを表示した。
ここからでは見えない、と思った瞬間目にまで違和感が走る。どうやらまたルイネさんがリンクしてくれたみたいだ。
『普段目を凝らすような感覚で、見たいものを注視してくれ。龍の目は特別性だ』
『わかったわ』
言われた通り、目に力を込める。するとゲームで視点をズームするように、シューのプレートの内容が見えた。
《 抹消 》
システムβ。創始であるαに対する破壊プログラムにして生命の原初、その一つ。
輪廻を妨げるものを排除し、世界構成機構の記憶領域から一切を無情報を削除する。
輪廻の輪を乱す生命体は運営システムのバグの集合であり、〝世界の殺意〟はこれを抹殺する使命および権限を持つ。
……なによ、これ?
「そいつがお前がひた隠しにする、最大の秘密ってわけか」
「ああ。ったく、昔の自分に戻るどころか厄介なもんまで復活しやがった」
呆然としていると、シューは右手の手のひらを表す。するとそこには、見たことのない紋章が浮かんでいた。
見ているだけで心臓が早鐘を打つそれが光ると、どこからともなく白い光が集まり──あの時使おうとしていたナイフが現れる。
「それは……」
「俺たちを狩人たらしめる牙にして、最強の暗殺者たることの証明であり……世界の道具になることの、契約印さ」
維持しているのも体力を使うのか、ふっと歪んでいた指から力が抜けた途端霧散するナイフ。紋章からも光が消える。
そうするとまた、苦しそうな顔に戻る。
龍の目でよく見てみれば、紋章からヒビのような線が腕に向かって広がっていた。
まるで侵食しているようなそれが、シューの状態の理由だと悟る。同時に、あのシューがどうしようもないほどの力だと。
「制御できるのか?」
「これは、そういう次元の力じゃ、ない。人の手に余る、世界のシステムの一部である、〝世界の殺意〟を継承して、初めて耐えられる、力だ……!」
もはや、話すことすら辛いのか。
エボルトも真剣な顔で、そんなシューに目を細めてわずかに口元を歪める。
私は、どんどん肝が冷えていく感覚がした。
見れば、ルイネさんも口元を手で覆って険しい表情をしているように見える。
そんな力を抱えて、シューはどうなってしまうの……?
そんな不安を抱きながら、私は二人の会話に耳を傾けた。
「覚えてる限り、使いこなしたのは歴代ん中でも相性が最高だった先代だけだ」
「そうか……で、今はそれに馴染もうとしてるのか?」
「それが間に合ってないからこのザマだ。どっちにしろご遠慮願いたいが……ま、そのうち
負ける。
その言葉の意味を、混乱しきった頭はなぜかすぐに理解した。してしまった。
「俺の再生能力があってもか?」
「ああ、こいつは汚れた魂を食らうからな。世界意思の庇護がない今、俺の魂なんざ大好物のご馳走にめいいっぱいのトッピングとデザードぶっかけた特上品だ」
「つまり食われないためには他を食わせるしかない、か」
「ああ……だから、これからも殺さないと」
「っ…………!」
紋章の刻まれた手を抑えながら、決意を目に宿すシュー。
それがとても辛くって、喉から嗚咽が漏れそうになる。
必死に口を押さえている間にも、木の向こう側でシューとエボルトの会話は続く。
侵食を止めるには、誰か悪人を殺すしかないと。
しばらくして、ようやく痛みが治まったのか。表情を楽にしたシューは立ち上がって、エボルトに向かい合う。
「ふー……こっちに来てから相当殺したが、もう半分以上食われちまった。早く《計画》を進めないとな」
「予定を見直す必要があるか。ったく、とんだイレギュラーだ」
「嘘こけ、俺の記憶見てもしもの時にって色々やってんだろ。遠藤のこと、知らなかったぞ」
「おっと、報告してなかったな」
「うっわー白々しぃー」
遠藤くん……? 遠藤くんがどうかしたのかしら。いえ、それより計画って、もしかしてシューはエボルトのことを知って…………?
新しい情報に思考が動き出そうとするが、それをとどめて会話を聞くのに集中する。すると、ちょうどシューが真剣な顔になっていた。
「エボルト、この事は誰にも言うな。力のことも、俺の体のことも」
「……ハジメたちにもか? バレたときにゃ殺されるぞ」
挑発するように言うエボルトに、シューはカラカラと乾いた笑いを上げる。
「いいんだよ。これは今回雫に慰められたのとはわけが違う……………あいつらに、知られるわけにはいかねぇ。絶対にな」
その言葉とともに見えたシューの空虚な瞳に、私は目を背けた。
これ以上は、耐えられない。
●◯●
それからすぐ、二人は気分転換に散歩といって森の奥に消えていった。それは、今の私にとって幸いだった。
足音が完全に消えたところで、その場で崩れ落ちる。
が、ルイネさんに支えられた。
「っと、大丈夫か?」
「ルイネ、さん……」
見上げると、彼女はさっと目をそらした。よっぽど私の顔はひどいことになっているんだろう。
「……帰ろう」
「……ええ」
支えられながら立ち上がり、行きに比べてひどく重い足取りで歩き出す。
帰りの道、会話はなかった。
どちらとも話す気になんてなれなくて、重苦しい雰囲気の中木々の間をただひたすらに足を動かす。
こんな気分なのに……いや、こんな気分だからか、やけに時間が進むのは遅く感じて、結局コテージについたのは体感で一時間後くらい。
玄関のドアを開けて、変わらず重い足で階段を上がり、部屋の前でお礼を言って肩に回していた手を外す。
「「……………………………………………………」」
また、沈黙が舞い降りた。
何を話していいのか、わからない。決して聞いてはいけないことを聞いて、心がこんがらがってる。
不安、悲しみ、色々な暗い気持ちが糸のように絡まって、喉を締め付けられるような感覚に襲われていた。
「…………このことは、私達だけの秘密にしよう」
だから彼女がその言葉を言ったとき、私は救われたような気持ちになってしまった。
「……そう、ね。それがいいと思うわ」
「ああ。ではまた明日、な」
踵を返して、ルイネさんはリベルちゃんの待つ自室へと入っていった。
金縛りにあったように、彼女が扉を閉めるまで見送る。そうすると私も、誰もいない寝室に戻った。
ふらふらとした足取りでベッドに近づき、やけに邪魔に感じる服を脱ぎ捨てて、最初に起きた時の状態で寝転がる。
「…………………………」
一人で天井を見つめていると、先ほどまでなんとか抑えていた色々な思考が蘇ってきてしまった。
聞いてしまった秘密、シューの苦しみ、それを隠されたことへの悲しさ。
「……私は、どうしたらいいのかしら」
わからない。
これまでならどんな悩みでも寄り添ってきたし、これからもそのつもりでいたけれど。
これは、シュー自身が言っていたようにこれだけは違う。あんなこと、とても怖くて口にできない。
だって、もし口にしてしまえば──シューがどこかに、消えてなくなってしまいそうだから。
「せっかく、また会えたのに……!」
怖い。
家族と同じか……いや、それ以上に愛する人が、シューがいなくなることなんて、到底耐えられない。
そして何もできない自分が、どうしようもなく恨めしい。恐怖と悲しさがごちゃまぜになって、わけがわからなくなる。
結局、それから眠りにつくまで……この胸がすっきりとすることは、なかった。
かなり重要な回ですが、我ながら厨二がすぎる……
登場人物紹介やって、次の章です。
感想カモーン!