星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、ダクソ無印買った作者です。人間性足りねえ……

シュウジ「よ、シュウジだ。前回はオアシスを浄化したな」

ウサギ「ねえ、あの牙ってなんなの?」

エボルト「そいつぁ作者のみぞ知るってとこだな。具体的にいうとネタバレになるから質問厳禁」

ハジメ「メタいな」

ユエ「……今更感?」

シュウジ「なんにせよ、まだ明かさないってこった。んで、今回はハジメたちのほうだ。それじゃあせーの、」


五人「「「「「さてさてどうなる真実編!」」」」」


次は火山へ

 

 場所は変わり、北部の農業地帯。

 

 そこに水の確保に来ていた俺たちは現在、ルイネの様子を見守っていた。

 

 

 

「……はっ!」

 

 

 

 瞑目していたルイネが、突如として目を見開く。するとかざした右手から赤い波動が飛び、広大な農地に広がった。

 

 数秒静寂が訪れ、やがて地響きがどこからともなく始まる。ざわめくアンカジの兵士たちに構わず、ルイネは手を動かす。

 

 

ズッ………………!

 

 

 そして、轟音とともに地面の中から大量の黒い物体が現れた。地中にあった小さな金属の集合体だ。

 

 渦を巻くそれを頭上に集めていき、ルイネは一度深く息を吐く。

 

「ふぅ……よし」

 

 もう一方の手も金属の黒雲に向け、ルイネは両腕を踊るようにしならせた。その力に従って、金属たちが変形していく。

 

 不定形に蠢いていたものがピタリと動きを止めて、かと思えば集合・圧縮され下の部分から形を成していった。

 

 数分もすると、半分ほど完成してなんなのかわかるようになる。球状の貯水タンクだ。それも通常より10倍も巨大な。

 

「いつみても、すごい」

「ん、今の私が重力魔法を使ってもあんなことはできない」

「あいつ自身の固有能力だったっけな」

 

 ルイネが使うのは、〝鎧を作り出す力〟。普段は燃費が良くないとのことであまり使っていないが、その力の幅はすさまじい。

 

 コテージの鉄骨もそうだが、〝自分の身を守る〟という定義に当てはめるのなら、こんな芸当までできてしまうのだから。

 

「これで……最後だ」

 

 そんなことを話しているうちに、貯水タンクが完成する。残っていた金属を支えに整形して、仕上げも完了した。

 

「ふ……やはりこれは疲れるな」

 

 深く息を吐くルイネ。別世界の竜人族であり、シュウジに鍛えられて無尽蔵の体力を持っていてなお疲労はあるらしい。

 

「ゲコッ、ゲコッ」

 

 そんなルイネとは裏腹に、金属を掘り起こした時に地中の虫が大量に出てきてカエルが飛び回ってた。

 

「お疲れさん」

「お疲れ」

「ああ……ユエ、あとは頼む」

「ん、わかった」

 

 カエルは放っておいて、歩み寄って労いの言葉をかければルイネは言い、ユエはコクリと頷いて了承した。

 

 先ほどまでルイネが立っていた場所に移動して、天に向かって手を掲げる。そして、魔法を行使した。

 

「〝虚波〟」

 

 水属性上級魔法によって、虚空に目測で幅50メートル、高さ100メートルほどの津波が出現。タンクに入っていく。

 

 二度、三度。魔力が不足すれば俺の首筋にかぶりつき、容赦無く血を吸ってまたタンクに水を貯めるの繰り返し。

 

 高密度に作られたタンクは数トン分の水を全て受け止め、魔法が止むとひとりでに上部の蓋が閉まった。

 

「ようやく終わった……疲れた」

「お疲れさん。ありがとな」

「ハジメ、おんぶ」

「はいはい」

 

 まったく、甘えん坊な吸血姫だ。まあ特に文句もないので普通に背負った俺も俺だが。兵士たちの視線?知らん。

 

「これで数週間は平気なはずだ」

「か、感謝する。良かった、これでなんとか……」

「まったくだ。ルイネ様様だな」

「よせハジメ殿、私は当然のことをしたまでだ」

 

 いや、こいつはすごい。

 

 領主からアンカジの総人口を聞き、さらに病気にかかっているそれぞれの年齢層の各人数を詳しく知って把握。

 

 そこから治療や生活に使う水を正確に割り出し、そこに念のための量を足すとユエに指示してこのタンクを作り上げた。

 

 きっと俺たちだけならば、適当に大量に出しとくだけだっただろう。聞けばシュウジの三人の弟子の中でブレインだったという。

 

「早速、領主様にご報告しなくては」

「ハジメ殿、お連れの方々。そういうわけで私たちはこれで失礼する。本当に、本当にありがとう」

「ああ、お前らちょっと待て」

 

 領主館の方へ踵を返そうとする兵士たちを呼び止める。すぐに止まり、振り返った兵士たちはなんだ?という顔をした。

 

 ユエたちも不思議そうに首をかしげる。まあ、これは単なる俺の気がかりだから事前に言ってないから当たり前か。

 

「聞きたいことがあるんだが、()()()()()()()()()()()()()()()?」

「へ?領主様?」

「ああ。先に聞いた話だと領主もその病気にかかったって話だが、やけに具合が良さそうだと思ってな」

「なるほど、そういうことか」

 

 そこまで言って合点がいったのだろう。納得した顔で兵士は答えた。

 

「実は昨日、領主館にふらりと変な男……女?が現れてな。あっという間に領主様を治してしまったんだ」

「謎の人物、ね……」

「得体がしれない奴だったが、おかげでなんとかこの国は回っている。ぜひもう一度会って礼を言いたいね」

「そうか。引き止めて悪かったな、もう行ってくれ」

 

 では遠慮なく、といった感じで兵士たちは農地を後にしていった。一刻も早く水が手に入ったことを伝えたいんだろう。

 

 その後ろ姿を見つめていると、脳内にシュウジの声が響いた。ん、どうやらあっちも無事に終わったようだ。

 

「シュウジたちも終わったらしい、医療院で美空たちと合流して戻るぞ」

「ん」

「ああ」

「わかった。カエル、おいで」

「ゲコッ」

 

 俺たちの方にも、これ以上ここには何も用がない。

 

 なので、飛び回ってるカエルを回収してから兵士たちの後を追うように、領主館方面に歩き出した。

 

 結界に守られている上に北部にあるためか、ここの風は少し気持ちが良かった。砂漠の乾いた風にイライラしてたので丁度いい。

 

「ハジメ」

「ん?」

「なんであんなこと聞いた?」

 

 もうすぐ農地を出るというところで、背中にいるユエが聞いてきた。その時吐息が首筋にかかってゲフンゲフン。

 

 見れば、ルイネやウサギも理由を知りたいといった顔をしている。ルイネは気づいている上で、って感じだけど。

 

「おかしい、と思ってな」

「おかしいって?」

「ゲコッ?」

 

 コテンと首をかしげるウサギとカエルに小型カメラを使いつつ、説明を始めた。

 

「実はさっき、こっそりエボルトから念話で教えてもらったんだが。領主の体から毒素が綺麗さっぱり消えてたらしい」

「それは……残っていた静因石で治した?」

「いや、あれは魔力を鎮めるだけで根本的な毒素を完全に消す力はないようだ。なのに領主が病を治している。少しおかしいと思わないか?」

「……たしかに」

 

 まるで狙ったかのようなタイミング。国のトップを回復させることで、ギリギリの状態を保っている。

 

 そして実際に聞いてみれば、予想通り領主を直した誰かがいた。これはもう、何かの陰謀が絡んでいると見ていいだろう。

 

「少しきな臭いな、今回の話」

「もしかすると、大迷宮でも何かあるかもしれないな。警戒を怠らないようにしよう」

「ん、ルイネの言う通り。他の皆にも言う?」

「あとで火山に向かう車内でな。流石にこの状況でさらに不安にさせるようなことを言うのはアレだ」

「……ふふ。ハジメ、昔みたいに優しくなってきてる」

「……………………」

 

 こいつは、昔の〝(ぼく)〟を知っている。最後にかつての俺を見て……そして誰より最初に、今の俺の誕生を見ていた。

 

 ある意味では、こいつが〝俺〟を生んだもいっても過言ではない。辛い記憶なのであんまり思い出したくはないけどな。

 

「……さあな」

「ふふふ」

 

 嬉しそうに笑うウサギ。

 

 それは天使と見紛うような……いや俺としては天使オブ天使だけどな!……神々しさを持っていた。

 

 それからのんびりと歩くこと、しばらく。前方に医療院が見えていた。遠くからでもわかるほどに騒がしい。

 

「どうやら、あちらも奮闘中のようだ」

「ああ。ユエ、そろそろ降りろ」

「………………もうちょっとダメ?」

「美空が怖いからダメ」

「……ん」

 

 めちゃくちゃ名残惜しそうにするユエを下ろして恋人繋ぎをしつつ、医療院に行く。

 

「シアさん、急患三人!奥のスペース開けたから連れてって!」

「はいですぅ!」

「B班の方、お願いします!」

「「「了解です美空様!」」」

「〝廻聖〟……エボルト!そのグループの解毒あとどれくらいで終わりそう!?」

「三分ってとこだ。白っちゃんは構わず治療続けてな」

「うん、ありがと!」

 

 扉を開けた先は……はっきり言って阿鼻叫喚だった。

 

 いつ作ったのか〝臨時医療班長〟のハチマキをつけた美空がボード片手に指示を出し、それに皆が従っている。

 

 シアが剛力で患者を運び、香織が主になって医師たちが魔法で症状を遅延・回復させ、最後にエボルトが解毒を行う。

 

 リーダーシップのある美空によって一つのルーティンができ上がった医療院は、まさしく戦場そのものだった。

 

「よう、大変そうだな」

「ハジメ!もう直ぐ終わるからちょっと待ってて!」

 

 こちらに気づいた美空は手早く指示を出すと、大量の紙が挟まったボードを近くの医師に渡すとこちらに近づいてきた。

 

 それと入れ替わりで、ルイネがシアのサポートに入る。さっきあんな大仕事したのに、律儀なやつだな。

 

「様子はどうだ?」

「見ての通り、なんとか回ってる感じ。そっちはなんとかなったみたいね」

「ああ、シュウジたちも終わったらしい。今から合流しようとしてたんだが……この様子だと無理か?」

 

 神妙な顔で頷く美空。どうやらチート級の力の持ち主である美空と香織がいて、どうにかなっているレベルらしい。

 

 聞けば先ほど伝達が来て、オアシスの浄化と俺たちのタンクのことが知らされて、それによって医師たちに心理的余裕ができた。

 

 それによって治療の効率が早くなり、なんとかここまでこぎつけた。責任感が強い美空のことだ、大奮闘だったのだろう。

 

「今のペースでどれくらい持つ?」

「……私たちがつきっきりになって二日、かな。エボルトの解毒も同時にできるのは最大五人くらいで、かなり疲れるみたいだから」

「思ったより短いな」

 

 事前に聞いた情報から、それなりに予想はしてたが……こいつらがいてもそれだけ時間が限られているか。

 

「グリューエン大火山には、俺たちだけで行くことになりそうか」

「ごめんね、できることならサポートしたいけど。それに関心ないのに、大量の静因石まで……」

 

 美空たちにはたびに同行する時点で、俺が知る事を話してある。今更そんな事という反応だったけど。

 

 香織はそこで怖気付くと思ったが、こうしてついてきた。八重樫は言わずもがな、シュウジといれるならどこだろうと。

 

「ま、どうせ大迷宮の深部に行くんだ。ついでに依頼が一つ増えたところで変わりない」

「……気をつけてね。ちゃんと、帰ってきて」

 

 コートの裾を握って、美空は懇願するように見上げてくる。そこにこもっているのは不安か、あるいは恐怖か。

 

 こいつにそんな顔で言われたら、頷くしかなくなる。もう二度と、あんな別れを繰り返したくもない。

 

「当たり前だ。それじゃ、ここは頼んだぞ」

「うん。シアさん、もういいよ!ハジメたちと行って!」

「あ、はいですぅ!」

 

 ご自慢のウサミミで美空の声を聞きつけたシアは、手に持っていた患者をベッドに転がすとこっちにきた。

 

「すまない、待たせた」

「いや……美空、また後でな」

「うん、行ってらっしゃい!」

 

 程なくしてルイネも戻ってきて、最後にもう一度美空と別れの言葉を交わして医療院を出ていく。

 

 また歩くのも面倒なので、サイドカーを付けて魔力駆動二輪で領主館前までかっ飛ばした。門番の驚いた顔面白かったな。

 

 すでに一度来ているので顔パスで通されて、執務室に案内される。そこにはすでにシュウジたちが待っていた。

 

「おー、お疲れさん。手早く終わったみたいだな」

「ルイネのおかげでな」

 

 ぱしんとハイタッチして、シュウジの隣に座る。

 

「お前こそ一番乗りってことは、手際よく終わらせたんだろ?」

「……そう、だな」

「……?」

 

 なんか含みのある表情だな。オアシスでなんかあったのか?

 

 長年の付き合いがないとわからない、わずかな曇りのある顔に不思議に思う。するとコトと目の前に湯気立つティーカップが置かれた。

 

「南雲くん、お疲れ様」

「八重樫か。これ、お前が淹れたのか?」

「ええ。他のみんなもどうぞ」

「ん、ありがたく飲ませてもらう」

「ありがと雫」

「わーい、雫さんのお茶ですう」

「ありがとう、正妻殿」

「はい、あなたのも」

「ゲコッ」

 

 カップを持ち、一口すする。口の中にふわりと爽やかな味が広がり、心をリラックスさせた。

 

 飲んだことのない茶葉だが、いつも淹れているのと同じクオリティだ。地球ならこの一杯で金がとれる。

 

「相変わらず美味いな」

「誰かさんが好きだから、上手になったのよ」

「イェーイ」

「んんっ!そろそろ話に入ってもよろしいかな?」

 

 ずっと向かい合わせに座っていた領主が咳払いする。一旦会話を切り上げて、そちらに意識を向けた。

 

「話は部下から聞いた。オアシスを浄化し、水を確保し、患者たちの治療をしてくれていると」

「ああ、その事だがな。俺たちが大火山に行く間、美空たちは残るそうだ」

「そうか!あのお二人が残ってくださるのか!よかった、これで民が死ぬことはない……」

 

 心の底からホッとしたという顔をする。しかし次の瞬間には凛々しく引き締め、こちらの目をまっすぐと見つめてきた。

 

「貴殿たちにはいくら感謝してもしたりない。このアンカジ公国領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、国を代表して礼を言う」

 

 ランズィはそういって、深々と頭を下げた。そうやすやすと領主が頭を下げても良くないだろうに。

 

 それくらい愛国心が強い、ってことなんだろうな。ロクでもない世界だが、まだまともな人間もいるもんだ。

 

「おう、せいぜい感謝してくれ。美空たちの分も含めて、この音は絶対忘れるなよ」

「あ、ああ。もちろん末代まで忘れないとも。それで、静因石の件だが……」

「心配しなさんな領主さん。俺たちがサクッと取ってきてやるよ」

 

 いつも通り、飄々とした笑みを浮かべてシュウジが答える。領主はまたホッとした顔をしてもう一度強く頼みこんできた。

 

 それからミュウたちのことを帰ってくるまでちゃんと任せることを念押しして、そのまま館から出ていった。

 

 さらに城門まで移動すると、魔力駆動四輪を取り出す。そして全員乗り込むと、火山の方面にアクセルを踏んだ。

 

「さてさて、期限は二日。急ぎのミッションだねえ」

「オルクスの時とは違うんだ、今ならやればできんだろ」

 

 そうだな、と助手席にいるシュウジは笑う。その声はいつもより、ほんの少しだけ元気がないように思えた。

 

「何かあったか?」

「……少し、気になることがな」

「そうか。実は俺も一つ、気がかりな情報を手に入れた」

「へえ?」

 

 ハンドルを切りつつ、兵士から聞いた情報をシュウジに伝える。

 

 シュウジは謎の人物の存在に、少しだけ目を見開いた。そして「……そっか」と低い声でつぶやいて、それきり黙る。

 

 咄嗟に名前を呼ぼうとするが、その横顔を見て口をつぐんだ。この顔は、いっても耳に入ってない時の顔だ。

 

 それに嫌な予感がよぎるものの、そう大事にはならないだろうと思い直して、俺は再びアクセルを踏むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あんなことになるなんて、露ほども思わずに。




次回から迷宮攻略。感想とアクセス数を鑑みて、ちゃんと定期更新しようと思います。
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