エボルト「よーっす、エボルトだ。前回はハジメたちサイドだったな。いろいろ不穏だぜ」
ハジメ「この章自体がなぁ……」
ユエ「……マジ?」(今後の予定表を見た
ルイネ「すまない、少し作者をシめてくる」
<ギャー!
ウサギ「あ、作者死んだ」
エボルト「ほっとけ。さあ、今回は謎の人物の話だ。それじゃあせーの、」
四人「「「「さてさてどうなる真実編!」」」」
宿場町ホルアド、郊外。
そこは豊かな自然に囲まれ、涼やかな風が駆け抜ける平原──
突如として空間に黄金の亀裂が入った瞬間──轟音を響かせ、平原は跡形もなく吹き飛んだ。
巨大な〝何か〟がどこからともなく現れて、草も、木も、地面も、その下にいた動物をもろとも破壊し尽くす。
めくれ上がった石や死骸が落ちる中、立ち込めていた濃密な土煙が風に流れて晴れた。そして──黄金の城が姿をあらわす。
無数の魔術式から吸い上げたエネルギーの余剰分が放電となって空間に伝播し、パチパチと音を立てた。
「……ようやくついたか」
平原を丸裸の上黒焦げた荒野へと変えたそれ……巨大な城方のタイムマシンより、オーマジオウが出てきた。
ゆっくりとした足取りでオーマジオウは階段を降りていき、そして荒野に降り立った瞬間──ビリッ、と音がする。
「む……」
それは腰につけたオウマドライバーから。雷光にも似た赤黒い放電が全身に走り、男は仮面の下で目を細める。
限界だと感じた男は黄金の装飾……オーマクリエイザーに手を伸ばし、念じた。すると鎧が黄金の粒子となり、霧散。
次いでベルトが消えたドライバーは、盤面が点滅して機能を停止した。男はドライバーを持ち上げ、ため息を吐く。
「一度時間跳躍をしたらダメになるとは思ってたが、予想通りというのも怖いものだ」
これを用意するのには20年もかかったというのに、と嘆息する。時間をかけた分、あっけなく壊れて少し残念だ。
まあ、どうせこれは形だけ似せた紛い物。かつてその力を真似るために見た、
やれやれとシワのある顔に苦笑を浮かべた男は、赤い光にオウマドライバーを放り込んで後ろを振り返った。
「これも、もう使えないな」
そこには鎮座する己が王城。ドライバーと同じく、すでに役目を終えた置物同然だ。そもそも使うためのエネルギーがない。
左腕をひと振りすれば、王城は元から存在しないようにかき消える。残る荒野を見て、ふむと男は声を漏らした。
「これでは見栄えが悪いな……」
男にとっては過去の時間に行くのだ、どんな場所に出るのかは予想できない。だが、このままというのも後味が悪い。
昔の彼なら、そうは思わなかっただろう。しかし、必要以上に過去の時間を別物にするのは時空が乱れて、最悪壊れてしまう。
男はそれを望まない。たとえ変えることを目的としているとしても、それがなくなってしまっては意味がないのだから。
「《概念特化:再生》」
振りかざした手はそのままに、男は力を使う。右目が鮮烈に輝き、露出した左手に赤いラインが走った。
ポゥ…………
瞬間、大量の赤い燐光が男から溢れ出す。それは荒野に降り注ぎ、かと思えば凄まじい変化が起こった。
まるで時間が巻き戻るように、壊れた平原が元どおりになっていくのだ。えぐれた地面が戻り、死んだ生き物が復活し、緑が生い茂る。
ものの数分で、荒野は元ののどかな平原に戻った。〝力〟を止め、腕を下げた男は……
「ぐ……」
不意に、顔を歪めて膝をついた。胸を押さえる手には力がこもり、頬に一筋の汗が流れる。
「……あまり、使うのは良くないか……」
いかに人として極限に近い力を持つ男とはいえ、この力は非常に負担が大きい。一度使うだけでもかなり消耗する。
能力としては若い頃よりはるかに強くなっているが、肉体の衰えはやはりあった。もっと早く準備できれば、と何度か悔やんだか。
「だが、この程度で…………!」
己の目的を思い出し、男は先ほどよりはるかに軽度の〝力〟で胸の痛みを和らげると立ち上がった。
少し待てば、体から嘘のように痛みが引いていく。特化させなければ、その才能がない男でもそうリスクはない。
「ふぅ……さて、と」
視線が向かう先はホルアド。帽子をかぶりなおし、数秒前の様子は微塵も感じさせない足取りで向かう。
時刻は昼時、ぼんやりと警備をしている門番の横を気配を消して堂々と通り抜け、容易に街へ潜入した。
「たしか、こっちだったか」
そのままとある場所まで、迷いのない動きで足を進める。その姿は
街の中は、とても賑わっていた。快晴なこともあってストリートにはとても人が多く、そこかしこから音がする。
「……変わらんな、この街も。いや、
ぽつりと、誰に聞かせるでもない男のその声は店の呼び込みや通行人の話し声が重なった大きな雑音の中へ消えていった。
鈍い錆色の目に宿る懐かしげな光を帽子で隠して、男は歩き続ける。自分の目的を果たすために。
やがて、前方に大きな建物……冒険者ギルド見えてくる。
「……ここも変わらない、か」
少し笑いつつ、扉を押し開ける男。
すると外の活気に負けない、ギルド内の騒々しい音が解放される。同時に、扉の開く音に中にいたものたちは男の方を見た。
まだ昼だというのに、ギルドの中には人がいた。酒を飲むものや単に昼食をとるもの、受付嬢をナンパするようなものもいる。
『………………』
が、半数以上が昼間から出来上がっているためすぐに興味をなくして酒を飲むのに戻る。好都合だ。
そこに立ったまま、耳を澄まして冒険者たちの会話を聞く。
「──────」
「────?」
「──っ!」
「……………………」
若い頃より衰えない耳で複数の会話を同時に聞きつつ探すことしばらく、ある一つの話題を見つける。
ビンゴと内心言いつつ、男は入り口から中に足を踏み入れると、一直線にそのものたちのもとに向かった。
「ちょっといいか」
「ははっ……あん?」
「なに、あなた?」
近づいて話しかけたのは、男と女のペア。どちらもジョッキを片手に、赤い顔で胡乱げに男を見上げる。
おそらくカップルだろう二人は武器を除き、同じ装備を着ていた。しっかりと手入れがされている辺り、歴戦の冒険者だろう。
「爺さん、俺たちになんか用か?」
「実は、今しがたこの街に来てな。情報収集でもしようとここに来たんだが、面白そうな話をしてるのが聞こえたから声をかけた」
男の言葉に二人は顔を見合わせ、向き直ったかと思うとニヤニヤと酔っ払い特有の笑みを浮かべる。
「へえ……でも、人に話を聞くのにタダっていうのもアレじゃない?」
「そうそう、なんか誠意ってのを見せてもらわねえとな」
頬杖をついて言う女冒険者。女といえど、こういうところは冒険者らしい。
「ほら、これでいいか?」
また他に探すのも面倒だし、揉め事も時間の無駄だと、男はどこからともなく銀色の硬貨……
それを数枚テーブルに放る。二人は目を瞬かせ、しかしすぐにニヤリと笑うと近くにいたウェイターに追加の酒を頼んだ。
「へへ、わかってんじゃん爺さん」
「なに、これで聞けるなら安いものだ……で、聞かせてもらおうか。
椅子に座り、テーブルに脱いだ帽子を置いて男はおもむろに聞く。酒代をもらった二人は笑顔で頷いた。
「おう、いいぜ。あれはちょっと前のことだったんだがな、迷宮で魔人族にコテンパンにされた勇者たちを助けた奴らがいてよ」
その日、彼らは稼ぐべくたまたま迷宮の入り口に行っていたという。そしてそこで、あるものを見た。
それは満身創痍な勇者とその仲間たちと、彼らを助けたと思われる、少し前にギルドに来た冒険者一行。
なんだなんだと野次馬が集まり、そこに二人も迎合していると──なんと、紫調の服を着た男に勇者が殴り飛ばされた。
「あの時は驚いたわよねえ。迷宮の入り口に行ったらあの勇者様がボロボロで、しかもいきなりぶん殴られてんだからさ」
「凄かったんだぜ爺さん、あのいかにも敵なしですっ!って自信満々の顔して迷宮に入ってた勇者が面白いくらい吹っ飛んでたんだぜ?」
「ほう。それで?」
「そんでよ……」
「ああ、それは……」
最初に男が切り出し、女がそれに相槌を打つ形で男に話をという流れで、一週間と少し前の事件の話は進んでいく。
敗れた勇者たち、どこからか現れた若き凄腕の冒険者、そして……勇者を殴り飛ばし、全ての言葉を粉砕していった一人の男。
酔っているためかその語り口はとても饒舌で、男は少し楽しみながら最後まで話に聞き入っていた。
「……とまあ、こんなわけだ。っかー、あの時はすっきりしたね!」
「ちょっと、酔いすぎ……でも、ふふ。あの男はかっこよかったわよねえ」
「おいおい、俺の前でそんなこと言うか?」
「冗談よ。嫉妬?」
「へん」
ニヤニヤとからかう女に、口をとがらせ酒を煽る男。そこには長年連れ添ったもの特有の気軽さがある。
『ねえ■■■、早くおいでよ!』
その光景に、ふと男の脳裏にある女の顔がよぎった。ずっと昔から共にいて、彼にとって何より大切だった人。
今は隣にいないその彼女は……もう二度と、会うことはできないだろう。それを選んだのは他でもない、彼なのだから。
「あーあと、なんか勇者の仲間の奴ら、
「……なに?」
男のぼやきに、眉根をひそめる。それまでのどこか穏やかな様子から一変して、険しい表情になった。
「その話、詳しく聞かせてくれ」
「あ? 別にいいけど……迷宮の中でなーんかあったのか、白いナイフとか見るとビビってたんだよ。なんでだろうな?」
「さあ? あ、あの勇者様をぶっ飛ばした男が使ってたとか?」
「…………」
二人の言葉で男の脳裏に、もしやとある可能性が浮かんできた。そして考え込む。
(本来ならもっと後のはずだが……いや、これが
男は本来、この時間には存在しない。もしその矛盾が時間軸に変化をもたらしたのだとすれば合点が行く。
五十年もの時間を飛び越えてやってきたのだ、こういうことがあってもおかしくはない。
が、予想していないといえば嘘になる。
「相変わらず悪い予想ばかりは当たる、か」
つくづく、自分という男はそこら辺の運が悪いらしい。そうでなければあの日、
「……? 爺さん、なにぶつぶつ言ってんだ?」
「……いや、なんでもない。それよりもありがとう。俺はここらで失礼するよ」
「お、そうか。今度この街に来た時は俺たちが奢るからよ、元気でな」
「ああ……お前たちも、達者でな」
たとえこの先の未来に、何が起こるとしても。口の中で続きを噛み砕いて、帽子をかぶって立ち上がる。
手を振る二人に軽く会釈し、男はギルドを後にした。その足を止めることなく、入った時と同じように街をでる。
「っと、ここら辺ならもう平気か」
それからしばらく歩いて、町からだいぶ離れたところで止まった。そうすると大きなため息をひとつこぼす。
「やれやれ、こいつは参った。よもやこの時点でズレが生じるとはな」
あまりに早すぎる。彼の知っている時間軸では、〝それ〟が発現するのはもっと後のはずなのだ。
そしてそれが起こるということは、男が変えようとしているもののタイミングもまた早くなるということ。
「予定を変更せざるを得ないな。そうしなければ、目的を果たせなくなる」
もはや元の時代に戻って準備をし直すということもできない以上、全速力で向かう他にない。
先ほどのように手をかざすと、地面に赤い光が発生し、そこから
男はそれに乗り込み、魔力を流してエンジンをつけた。ブルン、とエンジン音をふかしてそれに答えるバイク。
「よし…………」
YAMAHA V−MAXによく似たそれの、使い古されたハンドルを握りしめる。魔力の通りは良好、きちんと整備をしていた甲斐があった。
「この時期だと……
ブルン!
決意を目に宿し、アクセルを握った男は街を後にした。
すみません、次回から火山になります。
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