星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、作者です。ダクソリマスター楽しい。

エボルト「うーっす、エボルトだ。前回は謎の人物の話だったな」

ハジメ「あのバイク、作者の趣味だろ。主にゴーストライダー2の」

シュウジ「あの作品作者にはドンピシャらしいからな。んで、今回は火山攻略の様子だ。都合上巻きでいってるが、まあ楽しんでくれ。それじゃあせーの…」


三人「「「さてさてどうなる真実編!」」」


レッツ火山攻略

 シュウジ SIDE

 

 

 

 グリューエン大火山。

 

 

 

 そこはとてつもない高気温と地面や宙を流れるマグマ、そしてその中に潜んだ魔物が襲い来る恐怖の迷宮。

 

 暑さに集中力を奪われ、だんだんと余裕を失う危険な、そんな大火山の迷宮に俺たちはいた。そして……

 

 

 

 

 

「夜は焼肉っしょー!Foo!」

『イェーイ!』

 

 

 

 

 

 BBQしてます☆

 

「ほい、いただきー」

「あぁっ私の人参!ちょっとシュウジさん返してくださいよ!」

「ところがどっこい返さない。あ、マシュマロいる?」

「もらいますけど許しません!」

「お前ら、取り合わないで普通に食えよ」

「そう言ってるハジメ殿は目線が網から一ミリも動いていないが?」

「ふむ、肉を自分で焼いて食べるというのもオツなものじゃのう」

「はふっはふっ、ホタテおいひい」

「雫、いる?」

「ありがとうウサギさん」

 

 周囲の暑さなどなんのその、悠々とマグマの中を泳ぐフィーラーの背中の上で、俺たちは存分に騒いでいた。

 

 目の前には下から採取したマグマを火の代わりにした焼肉用の壺(オルクスでのドラゴンの甲殻製)、そこで音を立てる肉。

 

 この前の悩み?んなもん四六時中表に出して考え込んでられるか。そんなことより今はロースを取るのが先じゃい。

 

「しかしまあ、反則だよなぁ。本当ならもっと苦労しながら進みそうなもんだが」

「フィーラー様々だねえ。あ、焼肉のたれいる?」

「おう……ってこれ醤油じゃねえか」

 

 ペシッとはたかれた手を引っ込めてケラケラ笑う。ハジメもつられて笑い、非常に和やかな雰囲気が流れていた。

 

 いやー、ほんと助かってる。フィーラーがいたおかげで、たった半日で現在四十層くらいまで難なく迷宮内を進んでこれた。

 

 まずはじめに、火山を囲っていた砂嵐をぶち破って、出待ちしてたワームを三匹丸呑み。そのまま火山に突撃。

 

 一度降りて頂上の入り口から中に入り、しばらくは徒歩で進んだ。で、マグマが多くなってきたところでもう一回ライドオン。

 

 

 

「「「「ハハッ、どこぞのファッキン迷宮に比べたらたかが熱い程度」」」」

 

 

 

 ちなみに、歩いている最中のハジメたちの言葉がこれである。これはミレディも満面の笑みでピースサインだろう。

 

 それからのんびりと進んでる。道中で襲ってきた魔物たちを餌にしつつ、甲殻から冷気を出してくれるフィーラーはいい子。

 

 

 ヴィィイイイィィィ……

 

 

「ん、戻ってきたみたいだな」

「っし、ゲット」

 

 ハジメと塩タンを奪い合ってると、どこからかプロペラが回転するような音がこちらに近づいてきた。

 

 音の方を見ると、重力とかなにそれ美味しいの?で空中を流れるマグマの間を通り抜け、竜の意匠が施されたドローンが来る。

 

 全六基のドローンはフィーラーの背中に固定した足場まで来ると、静かに着地した。全員それに近寄る。

 

「ポチッとな、と」

 

 ボタン操作で上部の蓋を開ければ、中に詰まっているのは淡く光る鉱石。例の魔力を鎮める鉱石、〝静因石〟だ。

 

「うし、随分と集まったな。あとどれくらい必要だっけ?」

「既に取ってきた量に加えると……もう十分のはずだ、マスター」

「オッケーオッケー、さすがはハジメのアーティファクト。いい仕事するねえ」

「よせよ、半分はお前が作ったろ?」

「まあな」

 

 鉱石採掘用飛行型アーティファクト、〝ビーズ〟。今回の依頼の件を聞いてハジメと協力して作成したアーティファクトだ。

 

 オルニスと同じく、重力石と感応石を中心に、ハジメの十八番である錬成と派生技能、[+鉱物系鑑定]と[+鉱物系探査]を追加。

 

 あとは俺が異空間を付与したりプデザインやらなんやらして、あっという間に静因石を取ってきてくれるドローンの完成。

 

「ともかく、これで依頼分は完了。異空間にまとめとくわ」

「頼む。俺だと指輪な以上、万が一の可能性があるからな」

 

 本当なら某ゲーム的にマグマポチャでもしたらたまんないので瞬間移動で美空たちに届けたいが、それは無理だ。

 

 いやー、迷宮の一番厄介なとこは瞬間移動が使えないとこだわ。無くさないようしっかりと保管しとかないとネ。

 

「む。前方から何かくるな」

 

 ドローンから取り出した静因石を異空間に入れてると、気配感知に引っかかったのかハジメが言う。

 

 前方を見れば、なるほど確かにマグマの向こうからこちらに接近する気配を感じる。ほどなくして、そいつらは現れた。

 

 

 

 ブモォオオオオ!

 

 

 

 キシキシキシキシ!

 

 

 

「大量大量。まるで一匹でたら百匹いると思えなあいつらみたい」

 

 やってきたのはマグマを纏った10頭くらいの雄牛の群れ、その上には同じくマグマコウモリの群れ。こっちは三十匹くらいか。

 

 階層が深くなるたびにオルクスのようにバリエーションが増えているが、今回は結構少ない方だ。

 

「てことでフィーラー、食べちゃってー」

 

 

 

 オォオオオオ………………

 

 

 

 俺の言葉を受理したフィーラーが、溶岩の中に沈めていた首をもたげる。

 

 広場が傾かない程度に顔を出したフィーラーは、こちらに走り寄ってくる魔物たちにその大口を開け、舌を触手に変えて放った。

 

 素早い動きで飛んだ職種は魔物たちを絡めとり、その身を覆うマグマなど知らんと言わんばかりに丸呑みにする。

 

 悲鳴とともに、魔物たちは口膣の中へと消えていった。フィーラーは満足げに唸り声を口の隙間から漏らして頭を沈める。

 

「よく食べますねえ」

「……シア、何でツインテール?」

「シュウジさんから人参取り返そうとしたらやられましたぁ……」

「しかし、これでは迷宮のコンセプトが形無しじゃのう」

「今更感」

 

 こいつは女神様ペディアで知ったことだが、解放者たちが残した迷宮にはそれぞれコンセプトというものがある。

 

 たとえば、オルクスは多種多様な能力を持つ魔物と戦うことで経験を。ミレディちゃんのドキドキ☆迷宮では魔法抜きの対応力を。

 

 んでもって、このグリューエン大火山はさしずめ、灼熱と繰り返す魔物の急襲の中でどれだけ精神的余裕を持てるかってとこかね。

 

「あっちの望み通りにしてやる理由なんてどこにもない。スムーズに進めるならそれに越したことはないだろ」

「ハジメの言う通りだな。さて、焼肉の続きといきますか」

 

 順調な迷宮攻略に満足しつつ、俺はハジメとのチョリソー争奪戦に臨むのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

 ルイネ SIDE

 

「──?」

「──、──」

 

 広場の端で、マスターと正妻殿が話している。

 

 笑顔で言葉を交わすその様子はとても楽しそうで、ここが溶岩に囲まれた魔境であることさえ忘れてしまいそうになる。

 

「ルイネ」

「ユエか」

 

 ぼうっと二人を眺めていると、隣にユエが座った。そうして、止まっていた私の手から洗いかけの皿をとる。

 

 そして簡易キッチンにもう一つあったスポンジに遷座をつけて、手伝いを始めた。ありがとう、と言って私も作業を再開する。

 

「他の皆は?」

「あっちではしゃぎ疲れて寝てる。ハジメはドローンの整備」

「そうか」

 

 そこで会話は途切れて、しばらく皿洗いに没頭した。ただ周囲のマグマと皿にスポンジを擦り付ける音が響く。

 

 黙々と手を動かし続け、綺麗にした皿を水で流して積み重ねていき……そうして、ふとまた二人を見てしまう。

 

「……ジェラシー?」

 

 その言葉に、彼女を見下ろす。いつも通り無表情で首をかしげるユエはまっすぐこちらを見ていた。

 

「いや、そういうわけではないさ。ただ……つい、魅入ってしまうものでな」

「それは、なぜ?」

「なぜ、か」

 

 そう聞くのはおかしなことではない。普通ならば、愛している男が他の女と睦まじくしていれば快くは思わないだろう。

 

 けれど私には、あれがどのような名画や絶景よりも美しいものに見えるのだ。なんの変哲もないが、だからこそ何より尊い。

 

「なあ、ユエ。君にはあの人がどう見える?」

「ノリで生きてるめちゃくちゃな実力の男?」

「ふふっ、やはりそう見えるか」

 

 ある意味予想通りの認識に笑いをこぼすと、ユエは少し考えるような仕草をしてから言葉を続けた。

 

「でも、ずっと誰かのことを考えて私たちや、関係ない人たちのために必死で生きてる。そんな気がする」

「……そうか」

 

 この前の一件で、そこまで理解されたのか。これは嬉しいな。

 

「でも、いきなりどうして?」

「……あの人はな。笑ったことがないんだよ。ただの一度も」

「……? いつも笑ってる。鬱陶しいくらい」

「すまない、言葉が足りなかったな。前世ではの話だ」

「ん、そうなの?」

 

 頷いて肯定する。すると詳しく聞きたそうな目をしたので、皿を拭きながら話を続けた。

 

「かつて、まだ今は忘れられた名前の暗殺者であった頃。マスターはいつも鉄面皮で、決して表情を変えることがなかった」

 

 暗殺の中で、そういう風に演じるための偽の笑顔ならば見たことはある。だが、感情のこもったそれはついぞ見れなかったのだ。

 

 ひたすらに、無。唯一表情を変えるのは、世界意志からの命令ではないもの……大のため小を殺した時に懺悔するときだけ。

 

「表情というのは、明確に人間の心情を表す。楽しさも、嬉しさも、様々な彩りを人間に与えることができる」

「ん。私も、ハジメと出会っていろんな感情を知った」

 

 微笑む彼女は、暗闇にいた時よりもずっと豊かな感情を持っているのだろう。普段のハジメ殿との様子を見ればわかる。

 

 それを私は、前世であの人にしてあげられなかった。彼にたくさんの顔をあげたかったのに、変えられなかった。

 

「あの人には悲しみ以外、浮かべられる顔がなかったんだ。他者のために悲しむときだけ、あの人は普通の人らしく表情を変える」

 

 それ以外は、何もない。不器用に私たちと家族として接するときも、暗殺者として厳しく鍛える時も、無が有になることはなかった。

 

 まるで、そうすることが自分の宿命であるかのように。決して人のようであってはいけないと、戒めるように。

 

「それは……とても、悲しい?」

「ああ。単なる私のわがままであることは、分かっていた。でも……」

「でも?」

「おかしいじゃないか、あの人だけが笑えないなんて」

 

 家族とは到底呼べぬ卑劣なものたちに都合の良い操り人形として育てられ、誰より人を憎んでいいはずなのに。

 

 なのに他人のことばかり気にして、誰かが笑顔でいる明日をひたすら願って、それを守るために必要な苦痛を、全部背負いこんで。

 

 どれだけ苦しんでも、絶対に後ろを振り向かない。フラフラで崩れ落ちそうでも、何でもないような顔をして歩き続けてた。

 

「そんな優しい人が笑えないなんて、絶対に間違っている。だから私は、この肌の下に流れる龍の血で少しでも解きほぐせたらと……」

「それが馴れ初め?」

「……こほん」

 

 途端にニヤリとするユエ。しまった、と自分の発言を後悔して、熱くなる頬を誤魔化すように咳払いして話を続ける。

 

「だから嬉しかったんだ。転生したあの人が、普通の人間と同じように笑っていたことが。それも、自分の感情で」

「普通……」

 

 この世界に来て、あの迷宮で最初に再会した時はあまりの変わりように驚いた。だが、その十倍の嬉しさがこみ上げてきて。

 

 そして、その理由がハジメ殿や、ユエたちや……八重樫雫という少女だと知った時。語りつくせないほどの感謝が溢れ出た。

 

「私では引き出せなかった、心からの笑顔がこうして見れる。その理由の一人であるユエにもありがとうと、心の底から言いたい」

「……ん、ちょっとむず痒い」

「はは、それはすまないな」

「ん、許してしんぜよう」

「ああ、ありがとう……私は、あの人にずっと笑っていてほしい。もう二度と、あんな今にも砕けてしまいそうな顔は見たくない」

 

 願わくば人々を弄ぶ神を倒して、平穏な生活に。あの人が刃を握る必要がない、そんな世界に帰ってほしい。

 

 その断片であるあの光景は、たまらなく眩しい。ほんの少し、私の女としての部分が羨ましいと思ってしまうほどに。

 

「……その顔、やっぱり思うところがある?」

「本音を言えば、少しな。ああ、だが……」

「?」

 

 そこで一旦、言葉を切る。

 

 ユエは不思議そうに首を傾げ、私は悪戯げに笑って。

 

「たとえあの人を初めて理解したのが彼女だとしても……最初のキスも、逢瀬も、私のものだ」

「……ふふ、ルイネも結構独占欲強い」

「それは君もだろう?」

「ん、当然」

 

 だから羨ましくは思っても、嫉妬など微塵も感じない。私にとって何より大事なのは、彼が笑ってくれることだから。

 

 それにここしばらくの旅の中で、雫殿が加わっても変わらず愛してくれていることはちゃんと分かっているからな。

 

「だからユエ。できればこれからも、マスターを頼むよ」

「……私も?」

「ああ、あの人の頑固さは筋金入りだからな。近くにいる人間は多ければ多いほどいい」

 

 あの人は、私が一人手を引いたところで俯いたその顔を上げてはくれない。だが、一人でダメならもっと多くの人間でやればいい。

 

 そこが雫殿と私の間に、普通ならあり得ぬ形の女の友情がある所以でもある。皆で明るい場所まで引きずるのだ、彼を。

 

「ん、当然。シュウジのお陰でいつも楽しいし……それに、仲間だから」

「仲間、か。いい響きだ」

 

 我々暗殺者にとって、何より縁遠いものが確かにここにある。それがあの人を、良い方向に変えてくれたのだ。

 

 この迷宮攻略もこの調子で無事に終わってくれるように願いつつ、私は拭いた皿を棚に置いた。

 

 

 ●◯●

 

 

 ハジメ SIDE

 

 BBQからしばらく経って。

 

 かなり下まで降り、おそらく50階層近い場所に来た頃。シュウジの隣に来て話しかける。

 

「そろそろ麓じゃねえか?」

「女神様ぺディアによれば、そろそろ最終試練の部屋に近いとこだねん」

「そうか……と、ちょうどトンネルが見えてきたな」

「おっ、あれあれ。フィーラー、直進な」

 

 

 

 オォオオオオ

 

 

 

 前方の壁に空いた大穴に、フィーラーはまっすぐ向かっていく。目をこらせば、マグマに照らされて中の様子が見えた。

 

 どうやらかなりの下り坂になっているようだ。これまでにも何度か同じことがあったが、ショートカットになっていた。

 

 シュウジの言葉から推測するに、あれが最後だろう。そう思っているうちにトンネルの中に進入する。

 

 洞窟内は、そこそこ広かった。その中心に蛇のようにくねりながら続いている、マグマの道を泳いで進んでいく。

 

「そろそろこの光景にも飽きてきたわ」

「それな。しばらくマグマは見たくな…………っ!」

 

 不意に、気配感知に反応が引っかかった。距離はかなり離れているが、それでも相当な数を感じられる。

 

「……シュウジ」

「どうやら、これまでの奴らとは違うみたいだな」

 

 100はくだらない数と感じる気配の濃さに、ハンドサインでくつろいでいたユエたちを招集する。

 

 すぐに集まってきた仲間たちに、前方の敵の存在を伝えて各々戦闘準備を整えるように指示を出した。

 

 それぞれの武器を手に構えて、同じように気配を感じて洞窟に唸り声を響かせるフィーラーの上で待つ。

 

「接敵まで三、二、一……」

 

 シュウジのゼロ、というカウントダウンと同時に、マグマロードの角を曲がった瞬間。

 

 

 

 ガァアアアァア!!!

 

 

 

 暗闇の中から、咆哮を上げて何かが現れた。

 

 

 ドパンッ!

 

 

 凄まじい速度で接近してきたそいつをヘッドショットで仕留める。弾丸は寸分の違いもなく頭部を貫通し、脱力して落ちてきた。

 

 ドスン、と音を立てて広場に転がったのは、人型の化け物だった。三メートルほどの体は黒く、まるで獣のようだ。

 

 ところどころに牙が生えており、顔にはバイザー状のものをつけている。おおよそ普通の魔物とは思えない。

 

「こいつは……」

「まだまだ来るぞ!」

 

 シュウジの飛ばした警戒に、すぐに目線を前方に戻す。すると同型の化け物が視界を埋め尽くすほど迫っていた。

 

 それだけではない、気がつけば左右の壁を突き破り、さらには後ろのマグマの中からも黒い獣が溢れ出す。

 

「くっ、気配を感じなかった……!」

「大方マグマと同化してたか、俺でも気づけないとはねぇ」

「な、何匹いるんですかぁ!?」

「ん、落ち着いてやれば問題ないほらシア、肩の力抜いて」

「は、はい、ありがとうございますウサギさん」

「ティオ殿、私が糸で動きを止める。ユエ殿とともに魔法で落としてくれ」

「んっ!」

「承知した!」

 

 ぐるりと円を作るように互いの背中を預け、獣の迎撃を開始する。

 

 

 

「「「「「ガァアアアァア!!!」」」」」

 

 

 

 

 ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

 迫る怪異たちのバイザーに狙いを定め、一秒に五発、二丁で十発のペースで的確に撃ち抜いていく。

 

 最初の三十体くらいはそれで倒せたが、奴ら知能があるのか銃口の向きから弾道を予測して避け始めた。

 

 ならばとオルカンで追尾式ミサイルを撃つが、なんと数体が集まって黒い雷を発して到達する前に爆発してしまう。

 

「チッ、気配を消す他にも固有魔法持ちか」

 

 それならそれでやりようはある。オルカンをシュラークに持ち直して、獣ではなく近くの壁に狙いを定めた。

 

 

 ドパンッ!

 

 

 音を立てて射出された弾たちは壁に向かって飛んでいき……跳弾して俺をあざ笑っていた獣の後頭部を貫いた。

 

「ガ、ガァ!?」

「あらよっと!」

 

 驚いて動きを止めた獣たちに、シュウジの投げたカーネイジ製の赤いナイフが襲いかかる。その数、全部で十。

 

 それ自体が意思を持つナイフは空間を縦横無尽に駆け巡り、知覚不能な速度で次々と獣の首を切り落としていく。

 

 それだけにとどまらず、異空間からのっぺらぼうの頭……〝百鬼夜行〟の一鬼〝サロメの飾り頭〟が落ちる獣の骸に殺到した。

 

「お前らの体、再利用させてもらうぜ?」

 

 飾り頭は首のない骸に取り付くと、まるで元から持ち主であるかのように操って獣たちを蹂躙していった。

 

 獣たちは数の暴力で押し潰そうとする。しかし痛覚のない骸は片腕がもげても、下半身が獣の吐く炎で炭にされようと止まらない。

 

 さらにそこに俺のメツェライでの広範囲攻撃、さらにシュウジの振るうカーネイジの鎌で獣を刈っていく。

 

 

 ガァア!

 

 

「ち、後ろか!」

「出力10%……ラビットスタンプ」

 

 背後からの強襲にドンナーを抜こうとした瞬間、飛んできたウサギのドロップキックが決まって獣は粉砕された。

 

 ウサギは、両手両足に装着した某星人キラーのスーツみたいな黒い装備についた返り血を腕を振って払う。

 

「サンキュー」

「うん。こっちは任せて」

「おう」

 

 ウサギは跳躍して、獣を狩りにもどる。その拍子にちらりと後ろを見ると、あちらも善戦しているようだった。

 

「ふっ……今だ」

「うむ!」

「……〝嵐龍〟」

 

 ルイネが縛って動きを封じた獣たちを、ユエの重力魔法と風属性魔法を複合した龍が、ティオの黒い極光がミンチにしている。

 

「うー、りゃあ!」

「出力15%、ラビットバンカー」

 

 魔法組二人に近づこうとする後方の獣たちは、シアの鉄槌とウサギの超攻撃力で一瞬で肉塊へと変貌。

 

 シアの鉄槌からは、その打撃面以上の範囲で衝撃が広がっていた。それを巧みに使いこなし、獣を一気に倒している。

 

 シアのやつ、あのシュウジがエグいことしてた魔物の固有技能……衝撃変換を付与した鉄槌をうまく使えてるみたいだな。

 

「うし、そろそろ行き止まりだから決着つけようか」

 

 それから十分ほど戦い続けて、無限に湧いてくるかと思った獣の数が減り始めた頃。獣の首を折って殺したシュウジがそう言った。

 

「そろそろこいつらの相手も飽きてきたところだしな。最終試練の時までつきまとわれちゃあ面倒だ」

「そいつはまっぴらごめんだ……おい、全員どっかに掴まれ!」

 

 俺の叫びに機敏に反応し、ユエたちは襲いかかってきた獣を殺すとそれぞれの方法で体を固定した。

 

 それを確認し、前を見る。すると、なるほど行き止まりと言っても過言ではない。まるで滝のようにマグマが途切れている。

 

 その地点まで目算であと十メートル、以前勢い衰えずやってくる獣を撃ち殺して待つ。

 

 

 ドパンッ!

 

 

 あと八メートル。

 

 

 

 ドパンッ!

 

 

 

 五メートル。

 

 

 

 ドパンッ!

 

 

 

 三メートル。

 

 

 

 ドパンッ!

 

 

 

 そして……

 

「これで、ゼロだ!」

「フィーラー、飛べ!」

 

 

 

オオォォオオオオオオオオオオ!!!!!

 

 

 

 一気に前進したフィーラーは、地響きを立てて途切れたマグマから飛び出した。

 

 空虚な空間に飛び出したその巨躯は、あわや下の暗闇へ落ちていくかと思ったが……しかし、背中の甲殻が蠢いて翼が現れる。

 

 それを使い、剛風を巻き上げて滞空したフィーラーはぐるりと一回転すると、一塊になって飛んでくる獣たちに口を開けた。

 

 

 

 ゴオォオオオオオオ!

 

 

 

 そこからあふれ出したのは、ティオの極光を何千も束ねたような漆黒の本流。それは獣を一匹残らずとらえ、焼き尽くした。

 

 三十秒ほど続いて、徐々に本流は途切れる。バクン、と口を閉じたフィーラーは、天井に向かって大きく吼えた。

 

 

 

オオォォオオオオオオオ!!!!!

 

 

 

「勝鬨、って感じだな」

「ああ」

 

 獣をしまい、少し返り血のついた帽子をくるりと回転させているシュウジとハイタッチを交わす。

 

 程なくしてユエたちも近寄ってきて、皆で健闘を称えあった。こんな量の魔物を倒したのは、ウルの街以来だ。

 

「それにしても、なんだったんだこいつは?」

 

 広場に散乱している獣の残骸の一つを、全員で覗き込む。比較的形が残っているそいつは、今一度見ても気持ち悪い。

 

「ティオ、なんか知ってるか?」

「はて、このような魔物は見たことがないのう」

「シュー、貴方は?」

「はてさて、さっぱり見当が付かん。女神様の知識の中にもこんなのが火山にいるなんて情報はねえし……」

 

 こいつでもわからないとなると、おそらくごく最近生まれた魔物か。あるいは……誰かが作った魔物か。

 

 どちらかはわからないが、とりあえずサンプルとして使えそうな死骸を選別して宝物こと異空間に入れておく。

 

「っし、あとはこの広場を洗えば終わりだな」

「そいつはまた今度だ。それよりもさっさと攻略しちまおう」

「その方が賢明そうだ。てことでフィーラー、下に向かってくれ」

 

 

 

 オオォォオオオオオ………………

 

 

 

 シュウジの命令に従い、フィーラーは滝の下へと向かい降下していく。穴はかなり深いようで、少し降りても下が見えなかった。

 

 そんな底なしのような暗闇を見て、俺はいつも通り気負うことなく、冷静に戦うことを確認する。

 

 そうすると、もう一度穴を見て不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、この先にある大迷宮の最終試練に挑むとするか。




読んでいただき、ありがとうございます。
次回かもう一つ次の回、めちゃくちゃ重要です。
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