ハジメ「よっ、ハジメだ。前回はなんか色々フラグ立ててたな」
シュウジ「なにせ、次回がねぇ」
エボルト「作者、漫画だったらとっくに血反吐吐きながら書いてるってよ」
ルイネ「マスターをあんなにしたのだ、存分に吐くがいい」
シュウジ「辛辣ぅ」
シア「仕方がないですぅ。さあ、今回はなんだか出てくるみたいですよ。それじゃあせーの!」
五人「「「「「さてさてどうなる真実編!」」」」」
ズン、と音を立てて、フィーラーがマグマの中に着陸……陸じゃないとかいうツッコミは聞かない……する。
「到着〜。皆様、ご利用ありがとうございました」
「タクシーかよ」
「どっちかっていうとメガジャンボジェット?」
ハジメの言葉に返しつつ、翼を体内にしまって息を吐き出すフィーラーの頭を撫でて周囲を見渡した。
グリューエン大火山の大迷宮の最奥部は、まさしくマグマの地底湖って感じだ。オルクスやライセンみたいに整備されてない。
代わりにほぼ地面全てを覆うマグマに、変わらず上空を流れて下のマグマの海に落ちる溶岩。おまけにフレアまで吹いている。
「うぇ、さっきのところより熱いですぅ」
「これは、少しきつい」
「……カエル、熱いし重いからフードから出て」
「ゲコッ」
「嫌って……むぅ」
「かなり蒸れるのぅ」
灼熱地獄に、お嬢様方はご不満のようだ。そこでルイネがあるものを指輪の異空間から取り出して、配っていく。
「皆、これを。持っていると熱気をある程度遮断できる」
「これって……鱗かしら?」
「ああ、そうだ正妻殿。龍王の一族の鱗は様々な自然現象に耐えうる鱗を持っている」
へえ、なんて関心の声をあげて、皆一枚ずつ受け取る。そしてすぐに効果が出て楽そうな表情になった。
無論、俺も持ってる。帽子の飾りに加工してるけどネ。あ、ついでだからハジメにも予備のやつ渡しとくか。
「ほい、プレゼント」
「サンキュ。気が向いたら帽子もかぶる……にしても、地獄の釜って感じだな」
「ああ。んで、その中心にはお宝が眠ってるって寸法らしい」
言いながら、前方を指差す。釣られてハジメはそちらを見て、聞こえてたのか女性陣も寄ってきてその方を見た。
ここから結構行った場所……マグマの海の中心に孤島がある。そいつはマグマのドームで覆われてて、いかにも重要そうだ。
あれだ、攻撃一発で壊せる超絶脆いエネルギーの要みたいなのがあるんだ(フロム並感
「……あそこが住居?」
「いかにも、って感じ」
ユエとウサギが近づいてきて、
「最深部だし、そう考えるのが妥当だろうな……しかしそうなると」
「フィーラー、ちょっと進んでみてくれ」
命令を出して、フィーラーを孤島に向かって泳がせる。
相変わらず巨体に反して滑らかな動きでフィーラーは進んでいき、そしてある一定の距離まで近づいた、その瞬間。
ドドドドドドドドドド!
突如、上のマグマから炎塊がマシンガンのごとく落ちてきた。こいつはまた大粒な雨が降ったもんだ。
「ま、想定内だけどね」
すぐさまステッキと足場を魔力で接続、杖の底で叩くとエ・リヒトが足場を覆うような形で形成される。
難なく炎塊をいなし、変わることなく孤島を目指す。そうしてまた近寄ると、今度は下から嫌な気配を感じた。
ゴォアアアアア!!!
んでもってそれは当たるもんで、まるで孤島を守るようにマグマでできた大蛇が何匹も鎌首をもたげる。
全員すぐさま戦闘態勢に入り、ハジメはドンナーの銃口をマグマ蛇に向けて目を鋭くした。これが本当の鷹の目、なんつって。
「こいつらがガーディアンってわけか」
「イグザクトリィ。全部で百匹も出てくるよん」
「マジか……なら短期決戦でいくぞ、全員それでいいな」
『了解』
先ほどの謎の野獣先輩(違う)の時みたく、足場の上で円陣を組んでフィーラーを取り囲む大蛇に狙いを定める。
俺もアローハーオエーなアロハ服からいつもの紫衣装にチェンジして、ステッキの先端を向けハジメと背中合わせになる。
「ケツは任せとくぞ、相棒」
「おうさ……んじゃ、蛇退治といこうぜ」
さっきの襲撃で肩慣らしは十分、女性陣の精神衛生上よろしくもないし、この最終試練サクッとクリアしちゃいますか。
ゴァァア!
俺たちの戦意を感じ取ったか、襲いかかってくる総勢二十匹のマグマ蛇。まずは最初の一体に狙いを定める。
先端から超小型魔力誘引弾が射出され、マグマ蛇を構成している魔石にヒット。そのまま貫いて粉砕した。
「ます一匹もらい。あ、一番ビリが今日の晩飯おごりな」
「面白い、やってやろうじゃねえか!」
「ん、シア。ごちになります」
「なんで私がビリで決まってるんですかぁ!」
軽口を叩きながらも、俺の挑発にあえて乗ったハジメたちはそれぞれ積極的にマグマ蛇を倒し始めた。
「しゃらくせえ!」
ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!
ハジメは魔眼石で正確に位置を捉えて撃ち抜き、常に動く魔石を確実に一匹一匹仕留めていく。
「〝炎龍〟」
ゴォアアアアア!
ユエは周囲のマグマを利用し、重力魔法と複合した龍で魔石を引き寄せ喰い殺す。魔法使いの本領発揮って感じだ。
「出力20%、ラビットエイク……!」
「ちぇすとぉ!」
ウサギが跳躍し、空間を掌底による衝撃波で揺らしてマグマをひっぺがすことで魔石をむき出しにする。
そこにシアさんが重力魔法の付与された円盤に乗り、接近してドリュッケンで破壊。マグマを避けるのヒット&アウェイ戦法。
「はっ!」
「ふっ!」
「受けてみるのじゃ!」
ルイネと雫の斬撃が煌めく度に切り刻まれて、動きの止まった魔石をティオの極光が消しとばす。
互いに連携したり、弾幕を張ったり、インドダンスしながらナイフ投げたりして、あっという間に最初の二十匹を片付けた。
すると天井にある鉱石……カウンターみたいなやつに20個ぶん光がついて、マグマの中から新たに二十匹が補充される。
変わらずそれぞれの最も効率的な方法で殲滅していき、すぐさま追加の二十匹も殲滅完了。さらに第3ウェーブが現れる。
「そうだ。ちょうど半分に達したことだし、もう一つ勝負をしないか?」
光が五十に達し、マグマ蛇を半分倒したとき。不意にルイネが思いついたように言った。
「へえ、何をやるんだ?」
「簡単だよマスター、最も多く倒したものは、この中の自由な相手に、好きなことを要求できる」
「……へえ。面白そう」
最初にニヤリと笑ったのはウサギ。
それまでマグマを剥がすのに徹していたのを、ちょうど戻ってきたシアさんと入れ替わるように跳躍する。
マグマ蛇の一匹に接近し、手を手刀の形に構えた。すると手甲の機能が作動し、魔力で構築されたエネルギー刃が出現。
「出力35%──ラビットスラッシュ」
ウサギが刃を振るい──スパン、と空気ごと五匹のマグマ蛇の全身が細切れになった。
当然、中にあった魔石も微塵切りに。洞窟の中にキラキラと破片が輝きながら、マグマの中に消える。
「それじゃあ。ハジメに、新しい写真集のためにたくさん写真撮ってもらう」
「あーっ!ウサギさん、抜け駆けはずるいですよう!」
新しい勝負のことを聞き、シアさんが円盤で飛んでウサギの横を通り抜けてマグマ蛇の群れに向かっていく。
円盤を巧みに操作して噛みつきを回避すると、体を伸ばしたマグマ蛇たちに変形させたハンマーの銃口を定めた。
引き金を引いたのか、スラッグ弾が発射。ハジメ特製のそれはマグマ蛇たちの体に侵入し、大きな音を立てて破裂させたのだった。
「私も、今回こそハジメさんの一晩をもらうんですからぁ!」
「……負けてられない」
早速勝負を始めた二人に、ユエが炎龍をもう一匹増やしてマグマ蛇たちをさらに飲み込み、殲滅度を上げた。
そして4回目の補充、現れたマグマ蛇を倒そうとして──炎龍よりも早く飛んだ斬撃波が真っ二つに切り裂く。
「な……」
「ふふ、なら私は久しぶりにシュウジと二人でデートでも申し込みましょうか」
「……いい度胸」
「うむ、これは妾もいくしかないな!
「おっと、言い出した私が遅れるわけにもいくまい」
雫にティオ、んでもって提案者のルイネも加わって、やる気レェベェルマァーックスな女性陣たちであった。
「いやはや、こいつは後が怖いねえ。なあハジ──」
「うし、七匹完了」
「ウッソ早くない?」
いつの間にやらメツェライを装備して、まとめてマグマ蛇を屠ったハジメは振り返ってニヤリと笑う。
「自由な相手に好きなことを要求できんだろ?なら、久しぶりに男二人で遊びにいくのもいいかと思ってな」
「そういうこと言ってるとホモ扱いされちゃったりして」
「あいにくと、俺は某世界的歌手じゃねえ!」
メツェライを片手で撃ちながら、オルカンも持ち出して本気の本気なハジメ。どうやらマジらしい。
「なら俺もやるっきゃないねえ。その友情に答えて、俺から誘ってやろう!」
「上等!」
俺も本気ってことで、両手にカーネイジを纏ってマグマ蛇の魔石を叩き斬る。レンジなら俺は無限大だ。
そうして、結果的に勝負しながらも超効率でマグマ蛇を順調に倒していき、残りは最後の八匹になった。
「シッ!」
雫が切り裂き、七匹。
「ふんっ!」
ウサギが殴り砕き、六匹。
「行って……!」
ユエのダブル炎龍に喰らい尽くされ、五匹。
「おぉりゃぁああっ!」
シアさんが粉砕、四匹。
「受けやがれ!」
ハジメが撃ち抜いて、三匹。
「ふっ!」
ルイネが刻み、二匹。
「リーチじゃ!」
ティオが極光で消し飛ばす。ラスト。
「こいつで……フィナーレだ」
そして俺が、最後の一匹を刈り取って終了……
「させないよ」
「っ!?」
「ガァァア!!!」
「ぐぅっ!?」
突如、どこからか現れた何かが神速で突撃してくる。
とっさにステッキに魔力を通して傘にし、そいつと体の間に差し込んで防いだ。しかし、何かの突進は止まらない。
全力で踏ん張っているにも関わらず、易々と俺の膂力を上回るそいつは俺の足を足場から引き離し、宙に浮かせた。
「こいつ……!?」
「「「シュウジ!?」」」
「マスター!」
「シュウジ殿!」
「シュウジさん!」
ハジメたちの声を遠くに、俺は壁に叩きつけられる。なおもそいつの足は留まることを知らず、壁を破壊して突き進んでいった。
なんとか背中側にエ・リヒトを展開して溢れ出すマグマを防ぎ、そいつの力が緩む瞬間まで耐え続ける。
ドガンッ!
しばらく突然のランデブーに付き合っていると、壁を破ってある程度広い空間に出た。おそらく空気の溜まり場か。
そこで、ようやく何かの足の力が緩んだ。どうやら、この空間に連れてくるのが目的だったらしい。
「あらよ、っと!」
ステッキの傘を消し、特殊な歩法でそいつの後ろに回りカーネイジで形作った鎌を振り下ろす。
されどそれは捉えられず、一瞬で加速して鎌の範囲外へと逃げる。そしてトン、と少し離れた場所に着地した。
「グルルルルル…………」
「お前、は……」
そいつを見たとき、全身に感じたことがない強い衝撃が走った。
ようやく明確に姿を見れたそいつは、見覚えのあるやつだった。きっとこのトータスで、誰よりも俺が知っている。
そして……もしかしたら、この迷宮にいるかもしれないなんて、我ながら最悪な予想も、どこかしていた。
…………ああ、でも。
お前が、お前が本当に、この場所にいるのだけは、絶対に見たくなかった。
なのになんで、悪い予想ってのはいつも当たっちまうんだ。
「なあ、教えてくれよ…………」
「……………………」
巨大な獣──仮面のような顔をした奇獣のうめき声が、止まった。
パキ、バキバキ……
次の瞬間にはその体を蕩けさせ、形を変えていく。毛皮は服へ、毛に包まれた4本の足は白い皮膚へと。
やがて、獣は獣でなくなった。代わりにそこに立っているのは……見慣れない、金縁の白いローブを纏う人間。
「………………」
仮面を外して、出てきたのは女とも、男とも取れぬ中性的な顔。そこまで見て、わずかに残っていた可能性を失う。
そこにいたのは、紛れもなく。俺の、前世で誰よりも友と呼んだ、神喰らいの奇獣……フェアベルゲンで会った、ランダだった。
「……なんで、ここにいるんだ」
「………………」
「だんまり、か。俺と話すことは、何もないってことか?」
無表情にこちらを見るランダ。その赤い瞳にはどこか、悲しさのような、憐憫のようなものが浮かんでいた。
そんなランダを、気を抜けばショックから脱力してしまいそうになりながら見ていると、うっすらと口を開く。
「……君が、その力に目覚めなければ」
「力……?」
「ずっと、その時が来ないで欲しかった。君と出会って、いつか来ると、やらなければならないと、わかっていたのに。それでも、私は」
「何を……」
「なぁにブツブツと抜かしてやがんだ?」
新たに第三の声が降り注ぐ。
バッと天井を見上げると、暗がりの中からゆっくりと巨大な獣が降りてくる。そいつはどこか、さっきのやつらに似ていた。
同じローブを纏う黒い体躯に赤い髪。うっすらと光る紫色の模様と、獅子のような顔に刺さった、3本の刀。
感じる力が、さっきの獣たちとは蟻と象ほどに違う。腕組みをして邪悪に笑う姿は、見ているだけで怖気を感じた。
「……
「オオゥ、怖え怖え。そんなに睨むなよぉ、疼いちまうだろ?」
「君と戦う気は無い」
「わかってンだよんなことたぁ。それより、さっさとこいつを殺っちまおうぜぃ?それがエヒトの命令だ」
「……なんだと?」
こいつら、エヒトの眷属か。よく見りゃあのローブ、ランゴスタの着てた法衣にもどことなく似てる。
……だが、それなら尚更わからん。ランダは悪神を食う亜神、俺の知る中でも一度たりとてそれが変わったことはない。
「……そうだね。そう考えた方が、私も楽だ」
「そうか。まぁ俺ぁどうでもいいがな」
ランダと、紅煉と呼ばれた獣はこちらを見る。その体から絶大な殺気が立ち上り、こちらを殺す気であることがわかる。
……いつまでも動揺している場合じゃない。あちらはこっちを殺す気であるようだし、とりあえずこの場を切り抜けなきゃいかん。
「ハジメたちも心配だし……やるしかねえな」
ふ、とため息とともに動揺を吐き出し──心を氷に戻して、ステッキを構える。
あちらもやる気であるのがわかったのだろう、紅煉がローブを脱ぎ捨て、ランダが構えをとった。
「《七罪の獣》第三席、〝嫉妬の獣〟ランダ……
「《七罪の獣》第五席、〝暴食の獣〟紅煉。テメェはどんな味だろうなぁ?」
名乗りを上げ、疾走する二柱の獣に俺も同時に飛び出して──
戦いが、始まった。
さって、次回が大変だぞう
あ、ローブはホロスコープスのキャンサーゾディアーツが着てたのをイメージしてください。