星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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おはようございます、感想が少なくなって悲しみの向こうへと旅立ちそうな作者です。
今回はクソ山がやらかす回です。
楽しんでいただけると嬉しいです。


そして、絶望へのカウントダウンは始まる。

 しばしの間訓練は続き、一時間くらい立ったところで小休止が入った。いそいそと座り込み、休憩を始める俺たち。 

 

「ほいハジメと空っち、これ飲んどけ」

「「なにこれ?」」

 

 俺の渡したもの……アルミみたいな金属でできてる小瓶に首をかしげるハジメと空っち。俺は笑いながらとりあえず飲んでみ、という。

 

 不思議そうにしながらも、二人は蓋を開けて中身を煽った。ちなみに開けた時「ぶっ飛びモノトーン!」と音がなってビクッとして面白かった。二人ともから殴られた。

 

 俺が両ほほをさすっている間に、二人は飲み終わる。そしてまだ首を傾げていたが、みるみるうちに表情が変わっていった。

 

「ん、んん?」

「お、おぉ?」

「どうだ?体力も魔力も回復しただろ?」

「すごい、こんなのどこにあったの?」

「俺が作った。ちょっと遠出した時に治癒みたいな技能を持ってる魔物がいたから、そいつふんじばって持ち帰ってきて、エボルトと研究した」

 

 引きつった顔をする二人。そしてシンクロした動きで隣で寝転がってるエボルトを見る。エボルトは腕だけあげてピースサインをした。

 

 乾いた笑いを浮かべるものの、効力は確かなのでなんとも言えない顔をする二人。それに俺はしてやったりと、ケラケラ笑った。

 

「あ、もう一本いる?」

「あ、うん」

「一応もらっとこうかな」

 

 ストックを差し出すと、苦笑いしながら受け取って蓋をあける二人。今度は「天空の暴れん坊!」となってビクった。また殴られた。

 

 プンスカといった顔のハジメは、そっぽを向く。そしてそのまま動きを止めた。はてなマークを頭の中に受けべながら、そっちを見てみる。

 

 すると、そこにいたのは白っちゃんだった。ニコニコとハジメに手を振っており、それにハジメが慌てて目をそらす。頬は赤い。

 

「ハージーメー?」

「ひょ、いひゃい、いひゃいよみほりゃ!」

「ふんっ、ハジメのばか」

 

 拗ねる空っちに、ほほをさすりながらオロオロとするハジメ。いいぞいいぞ、そのやりとりを見てるだけでご飯653杯はいける!

 

「どこのドーパントだよ」

 

 ちゃちゃちゃちゃうわい。

 

「香織、何南雲君と見つめ合っているのよ?迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」

「もう、雫ちゃん!変なこと言わないで!私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!」

 

 ハジメたちのやりとりを見てターミネートボールを頬張ってると、白っちゃんたちの会話も聞こえてきた。おっおっ、これは近いうちに来るか?

 

 

 

 ーーギッ

 

 

 

「ん?」

 

 

 しかし、どこからか視線を感じて思わず背筋を伸ばす。ねばつくような、負の感情がたっぷりとこもった納豆みたいなやつだ。そして、その矛先はハジメ。

 

 とんでもなく気持ち悪いそれは、朝から定期的にハジメに向けられてた。探そうとすると、途端に逃げるように霧散する。

 

 まあ大体見当はついてるが、所詮その程度しかできないならわざわざぶちのめす必要はない。アクションを起こしたら別だが。

 

『一応、俺が監視しといてやるよ』

 

 サンキューエボルト。

 

 そんなこんなんで小休止は終わり、俺たちは二十層を探索する。あ、またセントレアさんがトラップに引っかかった。これで5103回目だ。

 

 やがてたどり着いた二十層の一番奥の部屋は、まるで鍾乳洞のようにつらら状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。

 

「この先を進むと二十一層への階段があるんだっけ?」

「メルドはそう言ってたな。昨日焼き鳥食いながら」

「こっちにも焼き鳥あんのな」

 

  ちなみにそこの店主はすべての焼き鳥屋の中で頂点に立つ男だったらしい。どこのお坊ちゃまだ。

 

 なんにせよ、そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。俺とエボルトは瞬間移動できるけど、他は来た道を歩いて帰る。

 

  セントレアさんが来た時と同じ回数トラップに引っかかりそうだなーと思いながら、道幅的に盾列で進んでると、何やら壁に違和感が。

 

「よいしょっと」

 

 

 バンッ!

 

 

  試しにその箇所にネビュラスチームガンを撃つと、鮮血が飛び散って魔物が転がり落ちて来た。どうやら壁に擬態していたようだ。

 

 

 オォオォオオオォオオオッ!

 

 

  それが引き金になったように、次々と擬態を解いて魔物が出現する。ロックマウントとかいうゴリラ型のやつだ。

 

  とりあえず撃ち殺してると、慌てて他のやつも動き出して、ロックマウントたちを包囲した。

 

 

 

 ヴォオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

 

  分が悪いと理解したのか、ロックマウントは固有魔法〝威圧の咆哮〟を発動。勇者(爆笑)や、後ろのハジメたちが動けなくなる。

 

「ま、効かないけど」

「ヴェッ!?」

 

  とりあえず一匹撃ち殺す。あいにくだが、体を魔力で覆って循環させてるからそういうの効かないんだなこれが。

 

  俺はヤバイと踏んだのか、他の個体が近くにあった岩を、見事な砲丸投げのフォームで硬直中の雫や、白っちゃん達後衛組に投げつけてきた。

 

「何してくれてんだこのエセド◯キーコン◯コラ」

「「ガッ!?」」

 

 

 ドンッ!

 

 

  雫に投げた個体と、なんか嫌な予感がしたので岩も撃つ。すると岩は、丸まったロックマウントだった。危ねえ危ねえ。

 

 

 ドンッ!

 

 

  後衛組に投げた個体を撃ち殺しながら、さてどうなったかと後ろを見ると、案の定擬態してたロックマウントが両腕をいっぱいに広げて飛びかかってた。

 

〝か〜おりちゃ〜ん!〟

「ルパーン!」

 

  なんかル◯ンダイブしてるロックマウントからそんな声が聞こえた気がしたので、ダミ声を出しながら後ろから撃ち殺す。

 

「大丈夫かい三人とも?」

「う、うん。ありがとうシューくん」

「助かったよ北っち!」

「それにしても、銃って便利だね」

「実にマーベラスだろう?」

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

「あん?」

 

  白っちゃんたちと話してると、世界一聞きたくない声が聞こえてくる。前方に目線を戻すと、正義感と思い込みの塊、我らがヒーロー(偽)天之河光輝が何やらキレてた。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ、〝天翔閃〟!」

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 メルさんの声を無視して、あのクソ偽善者は大上段に振りかぶった剣を一気に振り下ろした。やべえ、あれは被害範囲がシャレにならん!

 

「奥の手、今週のビックリドッキリメカ!」

《ギアエンジン! ファンキードライブ!ギアエンジン!》

 

  跳躍しながら異空間から直接白い歯車のついた黄金のボトル……ギアエンジンを装着して、クソ之河が剣を振り下ろす前にネビュラスチームガンを撃つ。

 

  するといくつもの巨大な白い歯車が飛んでいき、ブーメランのように回転しながらロックマウントたちをミンチにした。ついでにゲス之河の顔にも小さい歯車を食らわしとく。

 

「げふっ!?」

「ふぃー、ギリギリセーフだぜ」

 

  なにやら汚い声を上げて倒れた、ゴミの横に着地する。そして迷宮の壁が傷つかなかったことに安堵の息を吐いた。

 

「シュー、感謝する。あのままだと光輝の一撃で崩落する可能性があった」

「間一髪でしたねぇ〜」

 

  異空間にギアエンジンを放り込みながら、「デンジャラス!」と書かれたシャツを見せる。メルさんは首を傾げた。

 

「それさっき別のシャツじゃなかったか?」

「変えました」

「そ、そうか」

「シューくん!」

 

  メルさんとそんなやりとりをしてると、白っちゃんたちが駆け寄って来た。その後ろには心配そうな顔のハジメたちもいる。

 

「すごい高さで飛んでたけど、足大丈夫?」

「平気平気。伊達に鍛えてねえぜ?」

 

  ほらほら、とジャンプすると、ハジメたちは苦笑した。すると、ふと笑ってた白っちゃんが俺の後ろの方に視線を向けた。

 

  なんかある?と思って後ろを見てみると、壁の一部が剥がれてた。そこから何かが顔を覗かせている。

 

「あちゃー、天之河止めるための歯車操作してた時、他の操作忘れてたわ。俺としたことがやっちまったぜい」

「あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 俺がぽりぽりと頬を描いてる間に、白っちゃんの指差す方に全員が目を向けた。俺ももう一度そちらをみる。

 

 するとそこには、青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。

 

  白っちゃんを含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。ちなみに雫は特に反応してない。

 

「ありゃ、雫は興味ない?」

「ええ、あなたが昨日くれたものの方が、ずっと綺麗だもの」

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

  雫の言葉にデレデレとした顔をしてると、メルさんがあご髭をさすりながら感慨深げにいう。

 

「メルさん、グランツ鉱石って?」

「グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなもんだ。特に何か効能があるわけではないが、その輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気で、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入る代物だ」

「ほへー、要するに激レアな宝石ね」

 

 また雫に何か作って贈ろうかな。

 

「素敵……」

 

 白っちゃんが、メルさんの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。

 

「おやおや、誰かさんにあれを送ってもらいたいのかにゃー?」

「ふえっ、シュシュシュシューくん!?べ、別にそんなことは……」

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 俺が白っちゃんをからかってると、唐突にそう言って動き出したやつがいた。俺が嫌いな人間トップスリーのうちの一人、檜山だ。

 

  あのカス野郎は、グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。途端に慌て始めるメルさんたち騎士の方々。

 

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

「撃ち落とします?」

「いや、それは流石に……」

 

  俺の提案にメルさんが悩んでる間に、聞こえないふりをしてたカスはとうとう、鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 

 チッと舌打ちしながら、とりあえず檜山をビビらせて落とそうとネビュラスチームガンを構える。

 

  そんな俺の隣では、瞬間移動してきたエボルトが目を赤く輝かせ、鉱石の辺りを確認した。そして、顔を歪めて舌打ちする。

 

「シュウジ、トラップだ!」

「ッ!?」

「クソッ!」

 

 最悪の事態に悪態をつきながら、俺はネビュラスチームガンの引き金を引こうとする。しかし、エボルトの警告は一歩遅かった。

 

 カスがグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。あの宝石の輝きに魅せられて不用意に触れたやつへのトラップってとこか!

 

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。調べてみりゃあ、術式は転移用のものだ。

 

「そこまでそっくりなんかい!クソ、破壊魔法の構築が間に合わねえ!」

「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」

「おらおら、全員早くしねえと飲み込まれるぞ!」

 

 魔法陣を破壊するのを諦め、メルさんと二人で叫ぶと、ハジメや雫、クラスメイトたちは急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

 部屋の中に光が満ち、全員の視界を白一色に染めると同時に、俺たちはどこかへと転移させられた。

 

  空気が変わったのを感じるのと同時に、一瞬の浮遊感。俺は即座に下に向けてネビュラスチームガンを撃つ。その反動をうまく使って着地した。

 

「よっ、と。平気かシュウジ?」

「お前こそな、つかここどこよ?」

 

  平然と着地したエボルトと話しながら、後ろを見る。するとちゃんと全員、俺たちと同じ場所にいた。

 

 転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も二十メートルはあるだろう。とにかくすげえでかい。

 

 橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁光石すらなく、もう絶望感しかない。

 

『くーるー、きっとくるー』

 

 おいこらやめろ。

 

  覗き込んでみると橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底、ってとこか。

 

  反対側を確認してたエボルトにとうだった?とテレパシーで問いかけると、エボルトは大きくバツを作った。あっちも奈落か。

 

  他に何かないか、と辺りを見渡してみると、橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と、上階への階段が見える。

 

 それを確認した俺は、片膝立ちでこちらをみるメルさんに合図をする。振り返って階段を見たメルさんは、俺に一度頷くと険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け!急げっ!!!」

 

 雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出すクラスメイトども。俺とエボルトも、瞬間移動をしながら動くのが遅れた奴らを回収する。

 

 しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から、大量の魔物が出現したからだ。

 

  更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が現れる。文字通り山のような、強大な悪魔が。

 

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルさんの呻く様な呟きが、やけに耳に残った。

 

 

 

 〝まさか……ベヒモス……なのか……〟

 

 

 

 え、シルエットナイト呼んだ方がいい?

 

『それは別のベヒモスだ』

 

 

 




次回、ついに忠誠を誓う!
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