今回はすぐに、次の話は前回の通り12時に投稿されます。二本立てです。
楽しんでいただけると嬉しいです。
「一体今のはなんだ!?」
シュウジの消えていった穴を見て、狼狽した声を上げるハジメ。
「……何かが、いた?」
「な、何かって?」
「わからない。私でも、見えなかった」
「獣の咆哮のようなものが聞こえたのう」
「そんなことより、シューが!」
ユエ達も困惑して、互いの顔を見合わせる。ハジメを含め、誰も敵の姿が見えなかったのだ。
気がつけばシュウジが消え、壁に穴が空いた。あまりに意味不明な事態に、流石に動揺を隠しきれていない。
「私の龍の目でも捉えられない速さだと……いや、まさかそんな……」
一方、心当たりのあるルイネは口元を隠して、誰にも聞こえない声で呟く。
シュウジにすら事前に気配を悟らせなかった技量、凄まじい神速に受け止めきれないほどの力……頭の中に一人の顔が浮かぶ。
まさか、あり得るはずがない。そう思うも、あらゆるものを疑う暗殺者としての思考が頭の隅にとどめておく。
「……とにかく、早くあいつのところに行こう」
感知系の技能を発生させながら、周囲を見渡す。
マグマ蛇は……出てこない。天井を見ると、全ての鉱石が残らず輝いている。試練クリアの証拠だ。
どうやら、何かに連れ去られる寸前にきっちり倒していたらしい。相変わらず抜け目がない、と笑った。
「試練は終わってるな。解放者の住処は後回しにして、シュウジを──」
シュウジを追いかけるために、フィーラーに頼もうとした──瞬間。
ズドォオオオオオオオオ!!!!
突如、頭上より極光が降り注いだ。
「チィッ!」
「くっ!」
いち早く気づいたルイネとハジメ。ルイネが両手を広げ、背から竜の翼を広げるとユエたちを守るように包み込む。
刹那の瞬間にそれを見たハジメは、シアが使っていた重力盤と同じものを宝物庫から取り出して極光に飛ぶ。
そして、極光に向けて義手を掲げてエ・リヒトを展開した。
「ぐ、おおぉおおおおおおおお!!!」
自分を飲み込まんとする極光に、背後にいるユエたちを守るため全力で魔力を回してエ・リヒトを展開し続ける。
「ハジメ殿!」
そこにルイネが生成した溶岩の剣が加わり、なんとか持ちこたえていたが……長くは続かなかった。
バキッ!
流れ込む魔力量が多すぎて、エ・リヒトの内臓パーツが音を立てて破砕したのだ。思わず目を見開くハジメ。
「しまっ──!」
その言葉を最後に、溶岩の剣を消し去った極光にハジメは飲み込まれた。
「は、ハジメェッ!!!」
「ユエさん、ダメ!」
ユエが叫び、手を伸ばす。ハジメに向かって魔法で飛ぼうとして、雫が直前で抑えた。
これまでの旅の中で初めてと言っていいほどの絶叫にシアたちは驚いた。極光はそんなことおかまいなしに、こちらに直進する。
ゴァアアアアアアアア!!!!!
だが、みすみす主人の仲間を殺させるようなフィーラーではない。
雄叫びをあげ、首をもたげる。マグマの中より現れるのは、尖った頭と大きく見開かれた10対の赤い瞳。
カッ!!!
フィーラーは大きく口を開くと、暗黒の奔流を解き放った。それは極光と相反する、全てを塗り潰す闇。
奔流は拮抗し、白と黒の光が激しくぶつかり合う。フィーラーは体内にあるエネルギー生成器官をフル稼働させた。
シュゥウウ…………
やがて、極光と奔流は相殺しあって消滅した。その中間ほどから、黒い人影がフィーラーめがけて落ちてくる。
その人影の正体は、ハジメ。どうやら気絶しているようで、自ら体を支えることなく重力のままに落下する。
「〝来翔〟!」
ユエが魔法を行使して、背中から落ちるハジメを支えた。瞬時にフィーラーが鱗を開いて、触手を飛ばす。
追撃が来る前に触手はハジメを回収し、広場にそっと寝かせた。ユエたちがハジメに走り寄る。
「ハジメ!ハジメ!」
「ハジメ……!」
「ハジメさん!しっかりしてください!」
「落ち着け!あまり揺らすと患部に障る!」
必死に体を揺らす三人を押しのけ、ハジメの状態を分析するルイネ。
全身に重度の火傷、頭部に裂傷、義手は大幅に破損。特別製の服は焼け焦げ、特にエ・リヒトに近い左半身が酷い。
「まずいな。正妻殿、手伝ってくれ」
「ええ」
ルイネはすぐに生命力を活性化させる龍の血を調合した回復薬を取り出すと、雫がそっと頭を上げて飲ませる。
「んぐ…………ごく」
「よし、飲んだな。ユエ、〝神水〟をくれ」
「んっ!」
既に取り出していた神水を突き出すユエ、受け取ったルイネはハジメに飲ませる。が、回復は遅い。
「毒素か、それも特殊な……!」
「っ! 上じゃ!」
歯噛みするルイネを見ていたティオは、ふと上空に寒気を感じて警戒を飛ばす。
全員が同時に見上げると、先ほどの縮小版のような極光が無数に降り注ぐ様がありありと視界に浮かび上がった。
追い打ちを予想してルイネが張っておいた簡易結界は虚しくも消し飛ばされ、流星のごとく極光が降り注ぐ。
ゴァアアアア!!!!!
二度、フィーラーが吼える。
雄叫びとともに全身から立ち上った魔力は、予め使用を許されていた広場の結界を起動させた。
フィーラーの力で作られた結界が、極光の雨を受け止める。強大な魔力はしっかりとユエたちを守った。
誰もが固唾を呑んで見守る中──ウサギが前に出た。
「ありがと、フィーちゃん──後は私がやる」
バチッ!
ウサギの体に、桃色の雷が走る。
雷は瞬く間にウサギの全身に伝播し、次いで肌の内側から血管のように回路が現れた。
光の筋は、胸の中心に収束していき──月の紋章が浮かび上がる。その瞬間、さらに強く輝いた。
「
桃源の月は輝き、ストッパーがかけられていたウサギの身体能力のリミッターを一つ解除する。
右腕のガントレットが弾け、荒れ狂う桃色の雷を握りしめたウサギは、半身を引いて深く、深く息を吐き出した。
「出力65%──《
〝それ〟を使うことを察知して、フィーラーが結界を消した瞬間──ヒュ、と正拳突きを繰り出す。
まっすぐに飛翔した雷が、極光を全て搔き消す。余波で激しく剛風が吹き、マグマの海がゴウゴウと荒れ狂った。
それだけではない。唖然として、ユエたちが天井を見上げると──そこには、どこまで続くともわからない、大穴が空いている。
「ふ…………疲れた」
後ろで見ていた全員が唖然とする中、膝をつくウサギの体から光が霧散した。
「す、すごいです!」
「この世界に来てからいろんなもの見たけど、驚かない時がないわ……」
「これが、
それは満月の夜、魔力の凝縮体である〝神結晶〟が突然変異したものであり、自発的に魔力を生成し続ける奇跡の石。
そこから生み出される無限の魔力を力に変えて、生成魔法で自分に
「我が竜のブレスを受けて消滅しないあの男にばかり注目していたが、なんという力だ。貴様も危険だな」
危機を脱したと少し安堵するユエたちに、頭上からこわばった男の声がかけられる。
「やはり待ち伏せしていて正解だったか……よもや灰竜のブレスの掃射を消し飛ばそうとはな」
その男は、魔人族だった。浅黒い肌に黒い鎧、対照的に十メートルほどの白い竜の背にまたがっている。
周りには同じようなフォルムの灰色の竜が夥しい数付き従い、あれから極光が放たれたと悟った。
「貴様ら、一体何者だ?特にそこの兎人族の女、貴様はどのような神代魔法を習得している?」
「おいおい、うちのウサギに名乗りもせず質問の嵐とは……随分と舐めた真似してくれるな」
その声に、男の黄金の眼が見開かれる。ユエたちが振り返ると……そこには上半身をもたげたハジメの姿があった。
「ハジメ!」
「ご主人様!」
「ハジメ……う」
「ウサギさん、そんなにすぐ動いたら!」
「……ごめん、シア」
ユエとティオが駆け寄り、ウサギに肩を貸してシアが後を追いかける。残ったルイネは男を睨みあげた。
「貴様……凄まじい生命力だ。報告通り、看過できない実力と見える」
「マスターの親友の名は伊達では無いということだ……それよりも。私としても、貴様の名は知りたいところだ」
溶岩に向けて手の平をかざし、剣を形作って男に切っ先を向ける。しかし、男は鼻を鳴らすのみ。
「これから死にゆく者に名乗る必要があるとは思えないが?」
「辛辣なことだ……それよりも、仲間は元気か?」
ピクリ、と眉を動かす男。ルイネは未だ動けないハジメをかばうように前に出て、不敵に笑った。
仲間とは、ウルの街にて清水を殺そうとした魔人である。あの時ルイネは逃したが、それだけではない。
咄嗟に逃走防止用の罠を使い、片腕と片足を切り飛ばした。そのことをルイネは男に言ったのだ。
男の言葉や今の反応から、仲間なのは間違いないようである。
「……やはり気が変わった、貴様らには私の名を教えてやろう。我が名はフリード・バグアー、異教徒どもに神罰を下す忠実なる神の使徒。この名を心に刻め」
「神の使徒、ね……随分ご立派な肩書きだ」
ルイネが何かを返そうとした時、ハジメがユエとティオに支えられて隣に並んだ。
「ハジメ殿、平気なのか?」
「ああ、ちと痛むがな……で、フリードって言ったっけか。お前がそう名乗るのは神代魔法を持ってるからか?」
「いかにも。神代の力を手に入れた私に〝アルヴ様〟は直接語りかけて下さった、〝我が使徒〟と。故に、私は、己の全てを賭けて主の望みを叶える。その障碍と成りうる貴様等の存在を、私は全力で否定する」
自慢げに話すフリードは、〝アルヴ〟とやらに選ばれたことがよほど誇りらしい。ルイネはしっかりとその名を記憶しておく。
その横で〝魔力変換〟の派生技能〝治癒力〟で回復に努めていたハジメは、フリードの言葉に歯を剥いて笑った。
「なら、俺もお前を否定しよう。俺の前に立つならばお前は敵だ、つまり……殺す!」
ドパンッ!
負傷などなんのそのと、いつもと変わらぬ勢いでドンナーから放たれた一条の赤い光。
ガンッ!
弾丸は、フリードに迫る途中で、割り込んだ灰竜の纏う結界に妨げられた。
「馬鹿め、その魔物の結界はそうやすやすと──っ!?」
「そいつはどうかな?」
弾かれるかと思われた弾丸は、しかしフリードの野草を裏切り灰竜に張り付いた亀を貫き、絶命させる。
こういうこともあろうかと、事前に貫通力を高めるタカフルボトルを装填して威力を上げておいたのだ。
「まさか結界を粉砕するとは……ますます油断ならぬ男、私ももう一つの大いなる力を使うとしよう!」
どこからか複雑な魔法陣の描かれた大きな布を取り出し、詠唱を始めるフリード。それを守るように灰竜が集まって結界を張った。
「チッ、神代魔法を使う気か」
「私が仕掛けよう。皆はハジメ殿とともに援護してくれ」
「……わかった。任せる」
まだ半分ほど傷が治っていないハジメは自分とルイネとの今の戦闘力を鑑みて頷き、次いでユエたちも首肯する。
それを確認して、ハザードトリガーのボタンを押し、ボトルをドラゴンに挿入するとドライバーに差し込むルイネ。
《グレートクローズドラゴンッ!》
「変身」
《ウェィクアップブラッドッ! ゲットディザスタードラゴン! ブラブラブラブラブラァ!〈ヤベーイ!〉》
ブラッドに変身したルイネは、そのまま念動力で灰竜……そしてその後ろのフリードに飛翔していった。
ハジメがその後ろから銃器を、雫が刀を、ユエとティオは魔法を、シアとウサギはそれぞれドリュッケンと拳を構える。
そして、激しい戦闘が始まった。
洞窟という限られた空間の中で、上空と地上、その両方から凄まじい攻撃の応酬が互いに向けて放たれる。
先ほどの試練がまるで児戯だったかのような争いは溶岩の海を揺らし、岩壁を粉砕し、空気を震わせた。
「ハァッ!」
ブラッドの放った糸状のエネルギーが空間を走り、灰竜の前に展開された結界の隙間を通り抜ける。
三角形が組み合わさったような形の結界は、その間のごく微細な穴を通ることを許し糸が亀に絡みついた。
「ふっ!」
捉えたならば、あとは引き剥がすのみ。指を引き、灰竜から亀が強制的に離された。
ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!
宙を舞う亀たちを襲うのは、天へと昇る赤い流星群。それは堅牢な甲羅を食い破り、命を貪る。
一度で終わらず、絶え間なく赤い光……弾丸を、放つのはフィーラーをデフォルメした分体が飛ばす、空中の広場に立つハジメだ。
オォオオオ!
フィーラーとて、ただ見ているだけではない。全身各所の鱗を開き、内側から伸びる触手からビームを放って灰竜を殺している。
「一気に……叩くですぅ!」
「シッ……!」
無防備になった灰竜に、馬鹿げた身体能力で壁を蹴り、弾丸のごとく跳んだ二人の兎の一撃が叩き込まれた。
魔力を衝撃に変換したドリュッケンの広範囲攻撃で灰竜の鱗を軒並み破壊し、ウサギの手刀が左右に両断する。
「〝風刃〟!」
「〝雷龍〟!」
三人の連携によって開いた穴に放たれるは、ユエとティオの魔法。
龍シリーズでも速度の速い〝雷龍〟と、ブーメラン状にした〝風刃〟が内側から灰竜たちを切り裂き、食い破っていく。
「グルァアアア!」
「させないわ」
魔法組二人を狙う灰竜に、流麗な声がかけられた。
極光を吐き出そうとしていた灰竜たちが口を閉じて見上げると──そこには空中で構えをとった、剣の乙女が。
「八重樫流〝亜流〟奥義──《
解き放たれる一閃。世界そのものがズレたと錯覚するほどの一撃が、灰竜たちの首をまとめて切り捨てた。
一拍遅れて、竜らの首が落ちる。残る体もマグマの海に墜落していき、それを見て雫は重力盤を操り次の獲物に向かった。
そうして熟達されたチームワークで灰竜たちは瞬く間に数を減らしていき、ほとんどの結界がなくなった時。
「〝界穿〟!」
いよいよ、フリードの魔法が発動した。
フリードのそばに光り輝く膜のようなものが出現し、フリードは白竜とともにそれに飛び込む。
「っ!ハジメさん!後ろです!」
〝未来視〟でフリードの行方を知ったシアは、灰竜の頭を粉砕しながらハジメに向けて叫んだ。
ハジメが振り返った時、言葉通りそこにはフリードがいた。そして、開かれた白竜の口には極光が集まっている。
「放て!」
フリードの命令を受け、白竜は臨界に達したブレスを解き放った──!
「二度も受けると思うか?」
──が、そんなフリードと白竜に向けられたのは、ほとんど外傷の治ったハジメの不敵な笑み。
フリードの見開かれた目に、いつの間にか義手と付け替えられた赤と黒で彩られた異形の左腕が映る。
広げられた掌には超小型のブラックホールが開いており、そこに白竜の極光が残らず飲み込まれていった。
「しまっ!」
「そっくりお返しするぜ!」
極光を飲み込んだブラックホールが閉じ、勢いよく握り込まれた異形の拳にドス黒いオーラが宿る。
「オラァァアッ!」
「ゴハァッ!?」
極光のエネルギーを変換した一撃が、フリードの横っ面に突き刺さった。ハジメは腕を振りぬき、白竜の上から吹っ飛ばす。
ゴァ!?
「よそ見をしていていいのか?」
《READY GO!》
消えた主人に驚く白竜。そんな彼に、背後に瞬間移動したブラッドの赤いエネルギーが凝縮した右足が迫る。
ガァ!?
「遅い!」
《〈ハザードフィニッシュ!〉グレェートドラゴニック フィニーッシュ!》
まるでフリードの焼き直しをするように、振り返った白竜の顔面にブラッドの回し蹴りが叩き込まれた。
かつてミレディをも屠った蹴撃は、白竜をフリードが飛んで行ったのと同じ方向に飛ばし、大爆発を引き起こす。
ドッガァアアアアアン!
「へっ、どんな、もんだ……ぐっ」
「ハジメ殿!」
左腕を抑えて膝をつくハジメ。ブラッドが歩み寄って袖をまくると、生身との接合部が焼け焦げていた。
「チッ、負傷した状態でこれはまずかったか」
「無茶をする。だがいい一撃だった……っ!」
言葉の途中で、何かに気づいてフリードたちを飛ばした方を見るブラッド。
その瞬間、爆炎の中から白竜が飛び立った。そして天井近くまで飛翔し、最初のようにハジメたちを見下ろす。
「……まさか、読まれていたとはな。これで最初の不意打ちがなかったら、そのまま殺されていたのは私だったか」
グルルル……
魔の名を持つ主従は、どちらも深い傷を負っていた。
頬に大きな傷のついたフリードは口の端から血を流し、白竜はブラッドの必殺技で首の付け根まで裂傷が走っている。
「これで……ラスト!」
「出力10%!」
「〝壊劫〟!」
「ふんっ!」
ゴァアアアアアァアアアアア!!!
二対の黄金の眼が鋭くハジメとブラッドを見下ろしていると、ユエたちがいよいよ灰竜を殲滅した。
そうするとハジメたちの元に戻り、さらにフィーラーまでもがマグマより飛び上がって合流する。
「どうする?まだ俺たちはやれるぞ」
「凄まじい戦闘意欲。いや、生き延びる意思、か……仕方があるまい、ここは──!」
そして、フリードが何かをしようと手元に何かを構える。
その時、突然ある場所の壁が内側から吹き飛んだ。
驚いて全員がそちらを振り向くと、先ほどシュウジが連れ去られた穴のすぐそばに、その5倍はある大穴が開いていた。
「くっ!」
「チィッ!」
穴から跳ぶように出てきたのは、二人の獣。一人は人型、もう一つはその名の通り、大きな獣の姿をしたもの。
ランダと、紅煉だった。突如洞窟に現れた二人を見て、ハジメたちもフリードも驚いて息を飲む。
「あの方々は、キルバス様と同じ!」
「キルバス……?それって、あの時オルクスで襲ってきた……」
聞き覚えのある名前に、雫が言葉をこぼす。やはり、魔人族はあの恐ろしい怪物と繋がっているようだ。
あの時一度ネルファを殺した人、の姿をした人ならざるもの。その狂笑を幻視して、思わず身震いする。
「あいつ、確か樹海で見た……」
「ランダ様……くっ、やはりか……」
一方、ハジメは見覚えのあるランダに眉をひそめて……どこか予想していたルイネは、仮面の下で歯噛みする。
皆それぞれが違う思いを秘めて見つめるが……ランダと紅煉は、微動だにせず自分たちの出てきた穴を見ていた。
「なんだ、様子がおかしいぞ」
「まるで、何かを警戒しているような……」
その様子に、三人は首をかしげる。最初は驚いていたユエたちも顔を見合わせると不思議そうにした。
両者の間に奇妙な静寂が広がっていると、穴の向こうから足音が響く。その足取りはこちらに向いていた。
新手かと、警戒して穴を見て……そこから出てきたものに、目を見開く。
「……………………」
「……シュウジ?」
左右によろけながら、穴の中から姿を現したのは……シュウジだった。
前書きのいつものは、しばらくないかもです。
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