星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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6時に定時更新すると言った。だが誰も朝の6時にしないとは言ってない。
ということで、早めに出来上がったので投稿です。
楽しんでいただけると嬉しい、ZE!


真実 後編

 

 

 

 そう。奴こそが全ての黒幕。

 

 

 

 俺をシュウジに憑依させ、そしてシュウジ自身を転生……いや、()()()張本人に他ならない。

 

 奴は世界意志を破壊したことで創造の力も手に入れ、神に等しい存在になった。いいや、神そのものか。

 

 普通はそんなことをすれば、大きすぎる力に耐えきれないだろうが……しかし奴は先んじて〝世界の殺意〟の力を手に入れた。

 

 世界意思が創造する、千年限定の不老不死。

 

 それを手にすることで、創造の力への適応性を獲得していたのだ。

 

 世界を作る力と、世界を破壊しうる力。その両方を取り込み、世界意思が消滅した世界にマリスは君臨した。

 

 

 

 

 

 それから、奴は一切の躊躇なく世界を滅ぼした。

 

 

 

 

 

 いや、この言い方は語弊があるな。正確には()()()()()()()()()()

 

 命を尊ぶ、なんて父に教えられた綺麗事は、人間的な思考の消滅とともに奴の中から消えた。

 

 奴に残っていたのは、友を、世界を切り捨ててでも成就したいたった一つの目的だけ。

 

 カインを蘇らせる。そのために奴は世界意思から簒奪した力を使い、世にもおぞましい実験を始めた。

 

 回収した無数の魂。奴は、その魂を使って()()()()()()を目論んだ。

 

 システムの一部になったことにより激しく破損したカインの魂は、もうほとんど復元不可能だった。

 

 だが、取り込んだ世界意思の記録に欠損した部分が残っていたため、それを漂白した魂に入れてカインの魂に継ぎ足した。

 

 千年分の、それも常人より遥かに濃い記憶だ。完全に復元されるまでに何万、何十万人もの魂を使っただろうなぁ。

 

 

 

 だが、そんなものはほんの序の口だ。

 

 

 

「100万以上の命を使ってカインの魂を修復した奴は、さらに十数億という膨大な魂のエネルギーを使ってカインを目覚めさせた」

「その時の記憶をお見せしましょう」

 

 カインの幻覚魔法が展開し、真っ白な空間が投影される。

 

 そこにいたのは神格化したマリスと、初めて混乱した顔を見せるカインの姿。

 

『これは……私は、何故』

 

 そんな言葉を呟くカイン。

 

 無理もない。世界を崩壊に導いた罪を贖うために自殺したのに、意識が覚醒したんだからな。

 

 状況を理解できないカインに女神マリスは歩み寄り、人間の時にそうしていたように笑顔の仮面をかぶる。

 

『おはよう、お父さん。やっと……やっと会えたね』

『マリス……あなたが私を』

『うん、そうだよ。どうしてもお父さんに会いたくて蘇らせたの』

 

 照れ臭そうに、実に人間臭い表情で奴はカインのことを見下ろす。

 

 いやはや。俺も戦兎たちの世界で色々な人間に化けたが、奴の演技力には脱帽をせざるを得ないな。

 

『そう、ですか……ですが私は自らの罪を清算するために死を選んだのです。そうしなければ、世界は壊れてしまうから……』

『何も心配いらないよ、お父さん。もうお父さんが一人で戦う必要も、誰かが犠牲になる必要もないの』

 

 甘い言葉を口にして、マリスはカインに片手を差し出した。

 

 現状を知ることもままならないカインは、すっかり愛娘の笑顔に騙され、その手をとって立ち上がる。

 

「この時の私は愚かでした。ここで彼女の異変に気が付いてれば、もう少し違う結果になったかもしれないのに」

「どういう意味だ?」

 

 ハジメの質問に、カインは答えなかった。その代わりに無言でひたすらに自分の幻覚を見つめている。

 

 自分がわざわざ口に出さずとも、この光景を見ていれば自ずと答えはわかるとでも言いたげに。

 

『マリス。それはどういう意味ですか? 真に我々を必要としない世界が来たと?』

『そう。私がそうしたの。だからお父さんは、もう苦しまなくていいんだよ! だって──』

 

 奴は、まだ繋いでいたカインの手を自分の頬に添えた。

 

 もしかしたら、カインもこの時点まで来れば何か違和感を感じていたかもしれないな。

 

 

 

 

『もう誰も、この世界にはいないんだもの』

 

 

 

 だがもう、全ては──終わった後だった。

 

『な、にを……』

『私ね、考えたんだ。お父さんが憎む悪も、世界のバグも生まれない為にはどうしたらいいのかって』

 

 絶句するカインの手を自らの頬に擦り付け、無邪気で、まるでか弱い小娘のような口調で語り出す。

 

 それはまるで、親に隠れて準備していたとっておきのサプライズを明かした子供のようにあどけない顔で。

 

『そしてわかったんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って』

『──ッ!!』

『どっちにしろお父さんを蘇らせるには、膨大な量の魂が必要だった。だから一石二鳥だったんだ』

『マ、リス。貴方は、なんと、いうこと、を……』

『私、頑張ったの。この力を手に入れる為にルイネとネルファの魂を貰ったのは()()()()悪かったけど、でもお父さんの理想の世界を作ったんだよ』

 

 だからね、と奴は言って。

 

 

 

『お父さん、褒めて?』

 

 

 

 この時のカインが抱いていた感情は、幻覚であってもその表情からありありと伝わってきた。

 

 自分の教え子が世界を滅ぼした恐怖。守ろうとした人々がたかが自分などを蘇らせる為に消えた絶望。

 

 そして何より──こいつが直接愛する愛娘が、最も憎む悪辣な悪になってしまったことへの失望。

 

 

 それらすべてを感じ取ったのだろう、ユエたちの顔が青白いものになった。ハジメでさえも怒りに顔を歪めている。

 

『…………マリス』

『なぁに、お父さん?』

 

 そんな俺たちの前で、カインの幻覚……悪夢の記憶は進んでいった。

 

 顔を俯かせたカインが名前を飛べば、猫撫で声で奴は答える。

 

 あまりに悍ましく、あまりに子供らしいその姿は、純粋に父親からの賞賛を求める娘そのものだ。

 

 だが。そんな奴に、顔を上げたカインは──どこまでも光を失った冷たい目を向けた。

 

『私を、今すぐ消せ』

『………………何を、言ってるの、お父さん』

『お前は取り返しのつかない間違いを犯した。私は教えたはずだ、少数のために多数を犠牲にするのは悪だと』

 

 憤っているような、悲しんでいるような。様々な感情を内包した声で、カインは絞り出すように言う。

 

 それを聞くマリスの顔は──ああ、くくっ。思わず笑いが漏れちまうほどに、無表情だったよ。

 

『大罪人たる私などを生き返らせるために世界を滅ぼすなど……あり得ざる間違いだ』

『…………う』

『間違いは正さなくてはいけない。この世界に私は存在してはいけない。世界を守ることが我々の責務だ』

『…………がう』

『マリス。貴方にまだ人として、私の娘としての心が残っているのなら。私を──』

 

 

 

『違う』

 

 

 

 言葉を遮り、奴は大きな声で断言する。

 

 その威圧感に、幻覚のカインは口を噤んだ。否、噤むしかなかったのだ。

 

 何故ならば。

 

『その回答は、正解ではない』

『な……』

 

 もとより空っぽだった奴の目が──もはや機械と何も変わらない程に、虚無に満ちていたのだから。

 

『貴方は私の求めるお父さんではない。これは()が下した決定だ。覆ることは絶対にない』

『マリス、お前は何を……!』

『私こそが理。私こそが摂理。私こそがこの世界の審判者。故に──お前はそれに反している』

 

 そこで、奴はカインに向けて手をかざし……唐突に幻覚が静止する。

 

「私の記憶は一度、ここで途切れました。そして次に目覚めた時……もう全てが手遅れになっていた」

 

 次の瞬間、まるでチャンネルを変えたようにまったく別の記憶が映し出された。

 

 それは、先ほど全く同じ、機械的な目をした奴が黒い魂……カインの魂に何かをしている場面。

 

「奴は自分を否定したカインを求めたものではないと判断した。自分を肯定し、自分を敬い、自分を愛する者こそが父親だと」

「おい、まさか……」

「そのまさかです、南雲ハジメ」

 

 カインは自らに覚悟を決めさせるように一拍置いて。

 

 それから、閉じた目を開いて自らの幻覚を苦々しげな表情で見た。

 

「我が娘は作ることにしたのです。()()()()()を」

「な……!」

「カインという人格でなくてもいい、と考えたのさ。ただカインの記憶さえ保持していればよかった。だから──新しい人格が作られた」

 

 記憶という中身を起動するためには、人格という入れ物が必要になる。

 

 カインは自分を否定した。だから全く新しい、完全にまっさらな……好きに弄れる人格を作成した。

 

 しかし、記憶の欠損の修復と起動にすでに相当量の魂を使った。実験や研究をする余裕がないくらいにな。

 

 だから補助となるものを必要とした。いわゆる教科書、記憶のない人格を作るためのモデルを。

 

 奴は、別の世界を覗いてそういう人間を探すことにした。そこから情報をコピーして参考にするためにさ。

 

 案外順調にいったよ、そのサンプル探しは。

 

 実に手際よく、奴はいくつかのサンプルを集めた。

 

 

 

 

 

 ある人間は、皆を守る力と引き換えに守護者となり、自分の理想にすり潰され記憶を擦り切らせた男だった。

 

 

 

 

 

 ある人喰らいの怪物は人間に負け、捕らえられ、その果てに仮初めの人格を得た男だった。

 

 

 

 

 

 ある人形は、理不尽に処刑された聖女の死を嘆き、狂った男に作られた記憶のない憎悪の化身たる女だった。

 

 

 

 

 

 ある人間は生まれた時から全てを憎み、その身で育てた大妖に大切なもの全てを破壊され、復讐のために獣になった男だった。

 

 

 

 

 

 そして、ある人間は。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、偽りのヒーローだった。

 

 

 

 

 

 そうだ。俺が最後のサンプルだ。

 

 

 

 

 

 桐生戦兎を作り出した俺こそが、奴が新たな人格を作るための研究資料の一つだったのさ。

 

 

 

 

 

 奴は集めたサンプルたちからそ在り方を学習し、残った魂の全てを使って人格を作った。

 

 そして、成功した。世界を滅ぼし、父を滅ぼし、狂い果てた奴の念願はついに成就した。

 

 そして出来上がった人格に都合の悪い部分を改変した記憶を入れ込み、サンプルにした者達の情報で補強した。

 

 全ての作業を終えた後、一つの人として起動した。

 

 それが、それこそが──

 

 

 

 

 

『おはようございます、北野シュウジさん(お父さん)?』

 

 

 

 

 

 

「北野シュウジ。女神の執念と狂気の果てに生み出された、カインの記憶を持つ新しい人格さ」

 

 幻覚の中で歪に笑う女神に、俺はそう締めくくった。

 

 ハジメ達は、絶句という様子だった。表情に差はあれど、一人残らず目を見開いているのは同じだ。

 

 ああ、そんな顔もするだろうさ。ほんの数日前まであんな能天気に笑ってたやつの正体が、狂気の結晶なんだからよ。

 

「シューは、本来は存在しない人格……?」

 

 雫が、この世の終わりのような顔でつぶやく。だからさっき思ったのだ、悲劇の絶好調には早いってな。

 

 そのつぶやきを最後に、ショックで脳の情報処理の限界を超えちまったのかふらりと脱力し、倒れ込む。

 

「雫ちゃん!」

 

 咄嗟に白っちゃんが支え、床に倒れることは防いだ。

 

「雫ちゃん!しっかりして!」

 

 名前を呼んで揺さぶるが、気を失った雫は答えない。

 

 とりあえず、同じように放心状態になっているルイネの隣に寝かせとけと言った。白っちゃんは黙ってそれに従う。

 

「…………そっか。だからなんだ」

 

 雫をソファに横たわらせたところで、ずっと黙って何かを考えていたウサギがポツリとつぶやいた。

 

 俺はもちろんのこと、ハジメたちもウサギを見る。あいつは顔を上げると、おもむろに話し出した。

 

「オルクスで、私が魂だけでハジメたちと一緒にいた頃。シュウジは、私の姿が見えていた」

「……それは、あいつが、その……作られたものだからか?」

 

 ハジメの質問にこくり、と頷くウサギ。

 

「私たちホムンクルスの魂には、神に奪われないよう強いプロテクトがかけてある。もしそれが見えるとしたら、守りを上回る存在か、それとも……」

「同じように作られたものか、ってことだな」

 

 まさしくシュウジにうってつけの条件だ。あの時あいつにだけウサギの魂が見えてたのはそれが理由か。

 

 何せ世界一つ滅ぼした女神の作った人形だ、共鳴してそんなミラクルが起きたとしてもなんらおかしくはねえ。

 

「じゃあ、あいつが転生してきたってのは」

「真っ赤な嘘だ。奴はシュウジを起動させるにあたって、いくつかの刷り込みをした」

 

 自分は作られた人形ではなく、カインの生まれ変わりである。自分はたまたまそれを見つけた女神である。

 

 他にもエトセトラエトセトラ、父親に習ったハニートラップの技と精神的干渉で、シュウジに自分がカインだと思い込ませた。

 

「他にも桐生戦兎の記憶をテレビで見た番組の内容だとと改ざんしたり、とかな」

「なるほどな……じゃあ先生は?」

「大方、監視用に生まれさせた端末だろう」

 

 で、ヴェノムに取り戻した後のことを省いた記憶を持たせて操ってるってとこか。どこまでも抜け目のない女だ。

 

「いやはや。色んな人間を見た記憶があるが、あそこまで純粋に狂った奴は見たことなかったよ──この俺が恐れるくらいにな」

 

 奴がシュウジの肉体を作る間、俺は極限まで動きを封じられてひたすら奴が作業するのを見せつけられていた。

 

 なんでそんなことをしたのかは知らねえし、知りたくもねえ。

 

 あるいは、自分のために数々の星を滅ぼしてきた俺に共感したか。

 

 純粋に、そして冷徹に命を使う様子に、かつて戦兎に植え付けられた感情で感じたのは……恐怖だった。

 

「十年戦兎たちの世界で人間どもを使ってたが、そんなみみっちいことしてた俺とは根本的にスケールが違ってたのさ。こいつには絶対に勝てない、そう思ったね」

「だから女神に取り入った、か?」

「……ほう?」

 

 少し、驚いた。まさか今の混乱した状態でそんな的を射た質問をしてくるとはな。

 

「どうしてそう思う」

「今の話じゃ、先生……女神はサンプルを全部使ったんだろ?ならなんでお前だけは残ってるってことになる。そう考えれば答えは一つだ」

「く、くくくくく。ははははははははははは!その通りだ!お前は本当に鋭いなぁ!」

 

 そう、俺は奴に取り入った。いずれ自分も補強の材料にされることは目に見えてたからな、そうなる前に助かろうとした。

 

 そしてシュウジを作るのに没頭してたあいつにどうにか話をつけ、監視役という名目で完成した後に取り憑くことに成功した。

 

「なんとか生き延びて力をつけた後は、俺をサンプルなんぞに使ってくれたあいつに復讐するつもりだった。せいぜいシュウジを破滅させて、あいつの計画をおじゃんにしてやろうってな」

()()()、ってことは途中で変わったのか。シュウジは今まで生きてるんだからな」

「お前は本当に目の付け所がいいなぁ」

 

 そうだ。俺が感じた屈辱を返してやろうという目論見は、そのまま遂行されることはなかった。

 

 なぜならその前に、俺に干渉してきた奴がいたからな。そいつの影響で、今の俺の人格は出来上がった。

 

「それは、こいつだ」

「……カインが?」

「ええ」

 

 再びカインが一歩前に出る。眼鏡の位置を直すと、俺の説明を引き継いだ。

 

「どういうわけか、辛うじて私の人格は残った。しかしもう、私にはなにもできなかったのです」

「今にも消えそうな弱い人格に成り下がったこいつは、俺に接触してきた」

「今更私の言葉が彼女に届くとも思えなかった。だから私は、彼に望みをかけたのです」

「そしてこいつは、ある取引を持ちかけてきた」

 

 それは、シュウジを守ること。

 

 暴走した弟子によって最悪の殺戮兵器の記憶を引き継いだあいつをサポートしてくれと、そう頼んできた。

 

 もちろん最初は断ったさ、なんで俺がそんなことをしてやる必要がある、ってな。

 

 すると今度はこう言ってきた。

 

「『ただ単に壊すよりも、奴の予想外の生き方をさせた方が意趣返しになるのでは』、なんてな」

「マリスは彼を新たな私にしようとしていた。自分を愛し、そして()()()()人々を守る人格を育てたかったのです」

「カインが英雄視され、人々が平伏する姿も見たがってたのさ。もしもこの世界に召喚されていなければ、そのうち女神の用意した脅威が地球に現れて英雄に仕立て上げられていたかもな」

「そのために、色々と魂も調整もしていたようです」

「……! じゃあ、ミレディよりも重力魔法へお適性が高かったのも」

 

 魔法のエキスパートであるユエが、一つの真実にたどり着いた。こいつら揃いも揃って直感が鋭いな。

 

「ええ、おそらくその影響でしょう。言うなればマリスは、〝彼女にとって最高の父〟を作ろうとしていた」

「だから俺はこいつの案に乗って、色々なことをした」

 

 地球では必要以上に大きなことに巻き込まれないように裏で暗躍し、極力平和な人生を歩めるようプロデュースした。

 

 そうすることで、奴が作ろうとしていた〝父親〟を木っ端微塵に砕こうとした。

 

 そのほうが面白そうだったからな。

 

「結局、自分のためだったんだね」

「この場で外道とでも罵るか?……しっかしまあ、俺もそこで誤算を起こしたわけだ」

「……まだ、何かあるの?」

「おいおい、その目は旧世界を思い出すからやめてくれよ」

 

 美空はもう完全に俺に敵意に等しい目を向けていた。

 

 はいプリティーな笑顔なんて言ったらこの場で解体されそうな剣幕だったので、引き続き話をする。

 

「カインに埋め込まれたんだよ。こいつが持ってる感情の全てを」

「ルイネへの愛情を除いて、ですがね」

 

 戦兎によって植え付けられた感情のうち、俺の中では元からの狡猾さや残虐性、一般的には負の感情がより強くなっていた。

 

 そこにこいつが持っていた正の感情……愛情や友情、その他諸々を植え付けられた。

 

「その結果、シュウジやお前たちと過ごすうちに……まあ、なんつーの?大事になっちまったっていうかよ」

 

 最初は奴に一泡吹かせてやる、ついでにまた滅亡のゲームでもするか、などと画策していた。

 

 だが、新しく獲得した感情で過ごすうちに……どうやら俺は、忌々しいことに人間に近くなってしまったようだ。

 

 

 

 目的以上に、あいつのために。

 

 

 

 復讐よりもあの生温い、ほどほどに心地の良い平和の中に。

 

 

 

 そんなことを考えるようになった。

 

「最後にゃ完全に入れ込んじまってな、はっはっは!」

「いや、はっはっはてお前……」

「そんな笑われても……」

 

 それまでずっとシリアスだったせいか、拍子抜けしたような顔をするハジメ達。

 

 うん、こっちの方が性に合ってるわ。

 

 いやー、当初は我ながらこんなネタキャラムーブするとは思わなかったわ。

 

「まあ、そんなわけだ。だからこいつには最後までその事実を知って欲しくなかったんだが……変な奴らのおかげで、この有様だ」

「真実を知って、魂を補強してた力が暴走した、というところでしょう」

「……あの辺な法衣着てた二人か」

 

 ティオが話した、シュウジに真実を話しただろう奴ら。想像するだけで殺意が湧いてきやがる。

 

「奴らは絶対に許さない。俺の計画を、安息を邪魔したエヒトもろとも必ず消す」

「……同感だ。今の話を聞いたら、ますますこいつが放っておけなくなった」

 

 ほお、自分たちとは根本的に違うと知ってなお、そんな顔をするか。やはりこいつらを選んで正解だったな。

 

 さりげなく、シュウジですらわからねえように近くにいる人間も操作してたが……結果は成功ってとこかね。

 

「そういえば、なんでカインさんも残ってるんですか?」

「ああ、それは彼だけでは不安だったので、もしものために保険を残しておいたのですよ」

「万が一シュウジが自分のことについて知った時のために、俺にくっついてシュウジの人格の裏側に潜んでたんだよ」

 

 どこまでも用心深いのは、さすがは世界を守り、また破壊した男といったところか。

 

「俺も狡猾さは負けてないつもりなんだがねぇ」

「とはいえ、私は消えた存在。おそらくはこれで最後──────グッ!?」

 

 その時だった。突然、カインが苦しみだしたのは。

 

 

 




やっとだ!心労に耐えながらここまで来るのに3話もかけた……!
いやー、かなり力入れました。これは読んでもらえる…はず
次回、ハジメとシュウジの一世一代の大ゲンカ。見逃すな!
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