楽しんでいただけると嬉しいです。
澄み渡る青空、どこまでも広がる海。それを撫でるのは、どこにだろうと向かっていく涼やかな風。
エリセンから少し離れた海上、そこに呼び出したフィーラーの背中の上に設置された広場。ユエたちは今、そこにいた。
「それじゃあ、やるぞ」
エボルトがいつになく、真剣な表情でユエたちに問いかける。すでに戦闘態勢を整えた彼女たちは神妙な面持ちで頷いた。
何故、彼女たちはこのような場所にいるのか。それはシュウジの暴走の被害を最小限に留めるためである。
あの後、二人を呼び戻した時にもしも暴走をしているとエリセンが危険だと、レミア達の家から移動したのだ。
雫とルイネはショックで動けなかったのでリベルの面倒を見ていたティオに頼み、残ったメンバーで帰還に備えることに。
そして今、ハジメに念話で確認をとったエボルトが二人を呼び戻そうとしているのだった。
「ハジメさん、大丈夫でしょうか……?」
心配そうにするシア。あの時シュウジの暴走で、危うくマグマに落ちるところだったのだ、不安に思うのも仕方があるまい。
「ん、きっと大丈夫」
「ハジメなら、シュウジを止められるよ」
そんなシアを、ユエとウサギが励ます。その目には絶対的な確信の色があり、二人が帰ってくることを信じていた。
そんな二人を見て、シアも表情を引き締めるとドリュッケンの持ち手を堅く握りなおした。
「…………」
「……美空、顔が怖いよ?」
「え? あ、ごめん」
そんなシア達のすぐ側には、美空達もいた。心配そうに覗き込む香織に、美空は強張った顔を元に戻す。
「ハジメくん達のことが心配?」
「……まあ、ね。これまでのとは、ワケが違うし」
知っての通り、美空はハジメたちと幼い頃から一緒にいた。そのため、ハジメがああいう顔をするときはどうなるか知っている。
きっとハジメは、シュウジと全力でぶつかり合うだろう。子供の頃の喧嘩とは違う、命さえかけた対話を。
「きっと二人とも、傷ついて帰ってくる。だから……」
「うん。そのときは、2人で治そうね」
そう言って、香織は震える彼女の手を握った。美空は少し驚いたものの、ふっと微笑む。
「あんがとね、香織」
「ううん……ふふ、すごいよね。教室で喧嘩してたのが遠い昔に思えるよ」
「それは香織がハジメにちょっかいかけるからでしょ。ついには私にまで手ぇ出したし」
「そ、それはちょっと言わないでもらえると……」
もしかしたら、戦うことになるかもしれない状況だというのに顔を赤くして恥ずかしがる香織。それに美空の悪戯心がうずく。
美空はするりと一度繋いだ手を解くと、香織の指に自分の指を絡めて握り直した。ぽんっと香りの頭から湯気が出る。
「あぅ、美空……」
「ん?どうしたの香織。ただ手を繋いでるだけだよ?」
「うう、美空のいじわるぅ……」
「……百合百合してますね」
「ん、花が咲いてる」
「これは、ハジメも鼻血案件?」
「和気藹々してるとこ悪いが、来るぞ!」
少し和やかな雰囲気になっていた美空たちに、ワームホールから目を離さずにエボルトが叫ぶ。
流石というべきか、全員が一瞬で警戒を敷いた。そして広場の上に開いたワームホールをじっと見つめる。
全員が見る中、ワームホールの奥にうっすらと蠢く影が見えた。ゆらゆらと左右に揺れながら、こちらに近づいてくる。
「来た……!」
呟いたユエが魔法を放てるように両手を、シアがドリュッケンを腰だめに、ウサギが拳を、その後ろで美空と香織が杖を構えた。
そうしているうちに、影がワームホールの入り口までたどり着く。闇を突き破り、広場に出てきたのは──
「っと……ここは、海の上か?」
「あいたたた、陽の光が傷に染みるねえ」
肩を組み合い、互いを支えるハジメとシュウジであった。
どちらも全身傷だらけで、とても無事と呼べる状態ではないが……それでも、二人でちゃんと帰ってきた。
「「「ハジメ!」」」
「ハジメさん!」
「ハジメくん!」
「うぉっ!?」
警戒態勢を解き、ユエたちが一気にハジメに飛びつく。そして全身各所に抱きつくとそのまま押し倒してしまった。
「ハジメ、ハジメハジメハジメぇ……!」
「うぅっ、よがっだ、よがっだよぉ!」
「ハジメ、良かった……!」
「いや、お前ら全員泣きすぎだろ……別にそんな心配しなくても平気だから」
「どこがよ、このばかっ……!」
「ハジメくぅん……!」
信じていても、やはり心配はあるもので。泣きはらす少女たちにハジメは居心地悪そうに頬を掻いた後、とりあえず頭を撫でた。
一方シュウジはハジメという支えを失い、ダメージが深いこともあって「おっとっと」と後ろによろけて尻餅をついてしまう。
「って〜。いやー、この扱いの差よ」
「そりゃまあ、心配度合いで言えばあっちの方がな」
アメリカンな感じで肩を竦めるシュウジに、ワームホールを閉じたエボルトが腰に手を当てながら歩み寄った。
シュウジは顔を上げ、エボルトの顔を見る。紫がかった黒目と、鮮烈な光を宿す赤目が交差した。
数秒ほど、見つめ合う。それからどちらからともなく不適に笑い、差し出された手でシュウジは立ち上がる。
「どうやら、マトモなみたいだな」
「どっかの大親友のおかげでな。いや参ったよ、ボコボコにされちゃってんの」
「ハン、この俺にまで世話かけたんだ。しばらく痛みに悶えとけ」
「あっれーエボルトさん戻って早々辛辣じゃないっすかね」
「別に、いつも通りなんだろ?ならいいじゃねえか」
「……まっ、それもそうかねぇ」
案外素直ではない自分のもう一人の相棒に、シュウジは笑って拳を差し出した。エボルトは鼻で笑ってから自分の拳をぶつける。
言葉はそれ以上必要なかった。その関係の真実が多少歪んだものだろうが、生まれた時からの仲なのは変わりがないのだから。
「あっそういや俺の記憶の元の一人桐生戦兎だったな。せっかくだからやり返しとこ」
「痛い痛い痛い!この野郎脇腹つねりとはやってくれるじゃねえか!」
「おぶっ、テメェこそ肘打ちとは随分だなコラ!」
「やんのかコラ!」
「テメェこそ覚悟しろコラ!」
訂正、少しだけはっちゃけていた。肩を組んでいるのをいいことに、至近距離でゲシゲシとどつき合う。
「…………ぷっ」
「ふ、ふふふっ……!」
「あははははははははははは!」
そんな2人のやりとりを見て、なんだかシリアスな反応をしていたことがバカらしくなってユエたちは大声で笑ったのだった。
●◯●
それからしばらくして。
「──ってわけで、無事に解決だよ」
エボルトの指示でエリセンに戻るために泳ぐフィーラーの背中の上で、ハジメはことの顛末を話し終えて息を吐いた。
あの時話したこと、ぶつけた思い、そして人生最大の大喧嘩の決着。全部話して、ハジメはすっきりとした顔をする。
なお、その顔には無数の絆創膏とガーゼが貼られていた。ロングコートを羽織っただけの上半身の各所にも包帯が巻かれている。
香織と美空が治そうとしたのだが、ハジメはそれを拒否した。これは自分の勲章であると譲らなかったのだ。
そして……
「へぇ……」
「ほぉ〜」
「ふぅん……」
「はぁ……」
「むぅ……」
「…………………………………………」ダラダラ
話を聞いた女性陣に包囲され、夥しい量の冷や汗をかいているシュウジもである。
よりダメージがあるシュウジはハジメ以上に処置を施されているが、きっと今最も痛いのは胃のほうだろう。
姿勢は正座、円形に取り囲むかごめかごめもビックリな威圧感を纏うユエたち。並の男なら既に心がGAME OVERな状態だ。
「へえ、そうなんだ」
「」ビクッ
「へ〜、私たちが、シュウジをそんなふうに扱うって思ったんだ。へえ〜、へぇ〜〜〜」
「…………あの、ユエさ「誰が喋っていいって、言った?」イエナンデモゴジイマセン女王様」
こんな時ばかり王族としてのオーラを纏うユエに、シュウジは速攻口をつぐむ。一言でも喋れば雷龍でケツバットである。
「うふふ〜、そうなんですかぁ〜、シュウジさんは私がそんな非情なウサギだと思ったんですねぇ〜」
「」ビクゥ
「……処す?処しちゃう?」
「」ビクビクゥ
「あーあー!悲しいし!長年一緒に過ごしてきた幼馴染にそんなふうに思われてたんだ!あーあー!」
「」ビクビクビクゥ
「ねえ、シューくん。私ね、最近新しい魔法覚えたの。怪我をした時の痛みを再現しながら治すんだよ。それで同じことをしないようにするの。うふふ」
「」アババババババ
それだけでは終わらずにシア、ウサギ、美空、香織と畳みかける。弁明しようとするとユエから鋭い殺気が飛んだ。
結果、どうすることもできないシュウジは見事に胃の中がマックシェイクでハッピーセットなことになっていた。
それから十分、極道とヤクザとマフィアをマザルアップしたような怒りという名の険悪な結界の中で耐え続けることになった。
「ほら、わかったろ? お前の正体がなんであれ、戦うための人形だとか、そんな風に態度を変える奴は一人もいねえよ」
「肝に銘じますた、はい…………」
美少女五人から本気でメンチを切られるという素晴らしいご褒美をいただいたシュウジは、ガクガクとハジメに頷く。
ユエたちはつーんとそっぽを向いていた。エボルト?囲まれてる時から爆笑しすぎて過呼吸になっている。
やっちまったぜ⭐︎という顔をしているシュウジの尻を、ハジメがユエたちの前に蹴り飛ばした。いつも通り、雑である。
「ちょっハジメさんどゆこと!?」
「もう一回絞られてこい」
「そんなバナナ」
恐る恐る、ユエたちを見上げるシュウジ。その目にはビビりと恐怖と……そして、申し訳なさが混ざり合っている。
それをチラリと横目で見た五人は、見事にシンクロしたため息を吐く。そうすると優しく微笑んで話し出した。
「赤の他人ならともかく、シュウジは家族。絶対にそんなことは思わない」
「ユエ……」
「そうですっ!確かに父様たちのことは今でもぶん殴りたいくらいハラワタが煮えくりかえりますが、それ以上に理不尽に抗う力をくれたことに感謝してるんです!」
「シアさん……」
「……シュウジが鍛えたから、ハジメは私に勝った。だからこうして今、私はここにいる。だから、ありがとうって思ってた」
「ウサギ……」
「シュウジ、あんた心配させたのと、バカなこと考えてた分、帰ったら店の手伝い半年ね」
「美空……」
「シューくんは地球にいた頃から、ハジメくんのことでたくさん相談乗ってくれたりしたよね。だから優しくないなんて、ただの人形だなんて思わないよ」
「白っちゃん……」
シュウジの目には、今の美空たちが天使に見えていた。だから自分も優しく微笑んで……
「「「「「ただ、それとは別にイラッときたから一発殴らせて?」」」」
「うーんわかってたよー俺の扱いこんな感じギャ────!」
綺麗な終わり方などありはしない。そんなものは夢の中で見る夢である。感動的だな、だが無意味(ry
「ふぅ、すっきり」
「心がすっとしました!」
「やっぱり、拳に限る」
「ふんっ!」
「あはは、ごめんねシューくん?」
「ぐふ…………」
全員にきっかり一発ずつ鉄拳を頂戴し、最初に帰ってきたときと同じくらいボコボコにされたシュウジをハジメが覗き込む。
「俺たちの気持ち、わかったか?」
「い、痛いほどにな……ガクッ」
「口で言ってるあたり、まだ平気そうだな」
そう言うハジメに、またユエたちがおかしそうに笑う。
すっかりいつも通りの扱い、いつも通りの雰囲気であった。
●◯●
そんなこんなで騒いでいるうちに、エリセンに到着する。既に一度見ていた住民達はさほど驚かなかった。
フィーラーを海の中へ行かせて、移動の間に回復したハジメが移動中ボコられていたシュウジに肩を貸してレミアの家に向かう。
道中、ちらほらといる通行人はボロボロの2人を見て一体何があったのかと囁いていたが、喧嘩で疲れているため無視して進んだ。
「おーい、俺たちだ。開けてくれ」
今回は最初から道が分かっているため、家にはすぐに到着した。少し日が傾いているためか、また違った趣きがある。
エボルトがドアを数回叩くと、中から慌ただしく、また小さな足音が近づいてきて内側から木戸が開けられた。
「あっ、エボルトおじちゃんだ!」
「よう、リベルか。今帰ったぜ」
「うん、お帰り!……あ、パパ!」
ドアを開けたリベルは、エボルトの脇の間からシュウジを見つけてぱぁ!と顔を輝かせた。
しかし、すぐにカインのことを思い出して飛び出すのを躊躇する。それを見て、シュウジはハジメの肩から手をどかした。
おぼつかない足取りで数歩前に出ると、大きく両手を広げる。意図を察したエボルトは体を横にずらす。
「さあリベル!パパの胸に飛び込んでこい!」
「っ! パパぁ!」
今度こそ自分の父だとわかって、リベルは重力魔法で体重をほとんどゼロにすると思い切り飛んだ。
普通の幼子にはありえない跳躍力でシュウジの胸に飛び込み、ひしと抱きつくと力いっぱい抱き締めた。
「パパぁ……!さみしかったよぉ……!」
「ごめんな、ほったらかしにして」
「うぅぅうううっ!」
これまでの旅で一度も泣かなかったリベルが、泣きじゃくっている。シュウジは後悔と共に、娘の頭を撫でた。
それを温かい目で見守っていると、ふとハジメはもう一つの足音が玄関に向かってくるのを聞き取った。
「ちょっとリベルちゃん、不用心、よ…………」
現れたのは、雫だった。エボルトの声ですっ飛んでいったリベルを追いかけてきたのだ。
そのリベル……しかも泣いている……を抱いているシュウジを見て、動きを止める。そこでシュウジも気付いて、雫を見た。
「……雫」
「………………………………シュー、なの?」
「ああ。なんていうか、その……」
「シューッ!」
それは必然だった。リベルと同じか、それ以上の速度でシュウジに近づくと首に手を回し、全身を押し付ける。
「っと、随分と熱い抱擁だな」
「心配、したんだからっ……!」
「……ごめん。お前には、いつも心配かけてばっかりで」
「馬鹿、何謝ってるのよ。いいのよ、こうして帰ってきてくれたんだから……!」
それが雫の本心だった。真実がどうであろうと、愛した男が帰ってきた。それだけで十分だったのだから。
その深い愛情を、シュウジは自分を強く抱きしめる細腕からひしひしと感じた。そうして改めて自分の愚かさを思い知る。
ああ、自分は何て馬鹿なことをしようとしていたのか。仲間のみならず、こんなに愛してくれる人を置いて死のうとしていたのだ。
「……そう、か。なら、言うべき言葉は違うよな」
だから、せめてもと体を離し、傷だらけの顔にいつも通りの笑顔を浮かべて。
「ただいま、雫」
「ぐすっ……ええ、お帰り。シュー」
今、何よりも聞きたかった言葉。雫は涙を拭い、シュウジの帰還に心からの花が咲くような笑顔を見せた。
いつまでも玄関にいるわけにもいかないので、リビングに移動する。するとそこにはティオもいた。
「おお、リベル。全く、いきなり飛び出していったから何事かと思ったぞ」
「うん、ごめんなさいティオお姉ちゃん」
「良い良い。して……」
雫とハジメに肩を貸されているシュウジに目線を移すティオ。シュウジはよっ、とジェスチャーした。
それにティオも元通りになったのだろうだと悟り、鷹揚に頷くとハジメとシュウジをソファに座らせるのに手を貸した。
「さて。今回のことだが……」
全員が揃ったところで、ハジメがもう一度ユエ達にもした説明をした。
結果……
パァンッ!
リビングに、乾いた音が木霊する。
その発生源は手を振り切った雫と、赤い頬を張り飛ばされたシュウジから。誰もが沈黙する中、その音はやけに大きく響く。
全身から怒気を発する雫にハジメ達は息を呑み、ティオは衝撃的な光景に直前にリベルの目と耳を塞いだ。
「馬鹿っ!そんなことをしようとしたなんて、一体何を考えてるの!?」
「…………すまん」
「私は何回も言ったわ!一人で背追い込まないでって、何があっても支えるって……それなのに、貴方は!」
もう一度手を振り上げる雫。
シュウジは真っ直ぐ、その手を見た。逃げも隠れもするつもりはない。これは受けて然るべき罰なのだから。
だから、誰より愛する少女の怒りを甘んじて受け止めよう。それで少しでも、自分の愚行の償いになるのなら。
「っ…………!」
けれど、雫は叩かなかった。代わりにその手をそっと伸ばして、シュウジの頬に添える。
「……私じゃ、足りないの?貴方の居場所には、なれないの?」
「……そんなことはない。お前は誰よりも俺の心の拠り所だ」
「なら、私も頼って……? 南雲くんほど強くはないけど、頑張るから。だから、お願い……」
頬に一筋の涙が伝う。雫はそれを隠すように、もう一方の手も伸ばしてシュウジの首に絡め、もう一度抱きついた。
その温もりに、優しさに、愛情に、シュウジは何度でも後悔を繰り返す。そしてまた、精一杯抱きしめ返した。
「ありがとう雫。お前は俺の光だ」
「っ、う、うぅ……!」
今度は雫が涙を流す番だった。静かに嗚咽を漏らす愛する人の頭を、シュウジは愛おしげに撫でる。
それを続けながら、シュウジはハジメ達を見た。そして一人一人の顔を見渡してから、口を開く。
「お前らに、頼みたいことがある」
「今度は一体なんだよ」
聞き返すハジメに、シュウジは一拍置いて。
「俺を、支えてくれ」
『……!』
「俺はどうやら、誰かを踏みにじって作られた人格らしい。でも俺は、俺として生きてみたい。そう思うようになった」
「シュウジ…………」
驚くハジメにシュウジは悪戯げにウィンクし、真面目な顔に戻ると続きを言う。
「だから頼む、それを手伝ってくれないか?」
真剣に、本気でシュウジは頼み込む。ハジメに言われたように、誰かのレプリカではなく、自分自身の時間を生きるために。
大真面目な表情でそんなことを頼むシュウジに、ハジメたちは顔を見合わせる。そうすると頷き合い、全員笑って。
「当たり前だ。なんせ、親友だからな」
「んっ!」
「はいですぅ!」
「家族は助け合うもの。そうだよね」
「まあ、今更だし。付き合うよ」
「うん!これまで色々なことをしてくれた恩返しだよ!」
「うむ、任せるのじゃ」
応えてくれる仲間たち。
「……ああ」
なんて、温かいんだろう。シュウジの心の中に、これまでにないほど強い熱が満たされていく。
自分は、存在すらしてはいけない人形だ。記憶も、力も、誰かの借り物なのだから。
ああ、けれど。この心は、彼らと共に歩む時間の中で生きてきたこの心だけは、誰が否定しようと本物なのだ。
もしも、自分が生きてもいい理由があったのだとしたら。それはきっと、この優しい人間達と共に歩むために。
故に、いつか一人の少年に慟哭したときに流した冷たい涙とは裏腹な、どこまでも暖かい涙とともに言うのだ。
「ありがとう。これからまた……よろしく」
ここから、北野シュウジの本当の人生が始まった。
ちょっとまとめ方雑か?いやでもちょっとはギャグ戻さないと……
さてさて、ネタの準備に移ろうか。
次回は、そうだな……龍太郎と鈴の絡みでもやるか。
感想をいただけると嬉しいゼ。