星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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えー、活動報告に我ながらくだらない怒りを書きました作者です。
ここでも改めて言っときますが、この作品は基本ギャグと自分の厨二病の温床です。本来の仮面ライダーの切磋琢磨とか、熱いストーリーを読みたいのなら他の方の作品をどうぞ。
ってことで今回は龍太郎と鈴の回、楽しんでいただけると嬉しいです。


龍太郎と鈴の一日 前編

 拝啓、地球にいるお父さんとお母さん。そして他のクラスの友人のみんな。

 

 この世界に来てからもう半年近く、季節は秋か冬頃になってると思うけど、そっちはどう過ごしているかな?

 

 鈴こと谷口鈴は、この異世界トータスで一緒に来たクラスメイト達と、それなりに元気にやっています。

 

 ちょっと前に迷宮でお腹に穴が空いたり、下半身が石化したりしたけど、それでもなんとか元気溌剌です。

 

 そして今、鈴はーー

 

 

 

 

 

「よし、それじゃあ行こうぜ谷口!」

「ひゃ、ひゃいっ!」

 

 

 

 

 

 生まれて初めて本気で好きになったかもしれない人と、なぜかお出かけしてます。

 

 

●◯●

 

 

 ことの発端は、鈴とお見舞いに来てくれた龍っちがお話ししていたときのことです。

 

「谷口、腹に痛いとことかねえか?それか下半身が痺れたりとか……」

「んもうっ、平気だってば!龍っち心配しすぎだよ、もう一週間も前じゃん!」

 

 あれから、帰還後すぐに王宮の治癒術師さんたちによる治療と、御堂さんの回復魔法?みたいなもので、鈴は九死に一生を得られた。

 

 あの時は怖かったよ。日本では滅多に感じることなんかない死の恐怖が全身を駆け巡って震えあがっちゃった。

 

 自分の命がこぼれ落ちていく感触は、二度と体験したくない。元気なことが鈴のアイデンティティでもあるしね。

 

「そっか、そうだよな。いや、すまねえ谷口」

「あっいやっ、心配してくれるのは嬉しいよ!?」

 

 しゅんとする龍っち。大きな体に似合わないしおらしい様子に、鈴は慌ててベッドの中でブンブンと手を振った。

 

 すると龍っちはちょっと恥ずかしそうに頬を掻いた。うう〜、その顔は鈴にとっては反則だよこのにぶちんっ!

 

「? どうした谷口、いきなり顔を赤くして……って、まさか熱でも出て!」

「違うって毎日言ってんでしょこの鈍感っ!」

「あべしっ!」

 

 ごく軽めのビンタで横に吹っ飛ぶ龍っちの頬。もうっ、女心がわからないんだからっ!

 

 王都に帰ってきてから、龍っちは毎日のようにお見舞い来てくれてる。訓練が終わるとすっ飛んでくるのだ。

 

 理由は、あの事件の時あの場にいた誰より自分が一番強かったはずなのに、鈴を守れなかったから、だって。

 

 このにぶーい男は全く意識してないんだろうけど、そんなこと言われたら乙女回路がショートしちゃうよ!

 

「はぁ……もう、なんでよりによって鈴はこんなおバカさんを」

「あん?せめて筋肉つけろよ」

「じゃあ類人猿」

「せめてゴリラといえ!」

 

 ツッコむ龍っちに、クスリと笑う。こんなくだらないやりとりさえ心が安らぐんだから、鈴も相当手遅れだろう。

 

 

 

 

 

 そう、鈴は多分……龍っちが好きだ。

 

 

 

 

 

 それは多分、あの北野っちの連れてたエボルトにあの金色の仮面ライダーにされて、変化して帰ってきた後から。

 

 暑苦しいのに爽やかさがある?というか、前と違って行動に責任感があるというか、とにかく頼もしくなったのだ。

 

 それまでは全然意識してなくて、率直に思ってることを口にしていてすごいなぁ、なんて程度だったんだけど。

 

 我ながらおかしなことに、そんな龍っちにコロッといっちゃったのです。ああもう、ラノベのヒロイン並みのチョロさだよ。

 

 だから、なんといいますか。そういう訳なので、こうして毎日顔を合わせに来てくれるのはそう悪い気はしない。

 

「んもー、龍っち他にやることないの?雫っちたちがいなくなった今、最高戦力の一人でしょ?」

「ん?あー、なんか偉そうな奴に色々言ってきたけどシカトしてきた。んなことより谷口のが大事だし」

「っ、ふ、ふふーん!もー龍っちったら寂しがり屋なんだからー!」

「ははっ、そうかもなー」

 

 これだ。この男、確かに前より賢くなったし、頼もしくなったけど、根本的なとこでまだ鈍いんだ。

 

 こちとら度々助けられたり、隠れてた時にあんなこと言われたりで淡い期待とかしてヤバいのに全くわかってない!

 

 で、でもまあ、そーいうとこも少ーし良いっていうか何ていうか……あーもう、我ながら恋は盲目だなぁ。

 

「ああ、でもみーたんがもう居ないってのはキツいよなぁ……うう、南雲たちが生きててくれたのは心の底から嬉しいが、みーたん……」

「………………」

 

 前言撤回。恋する乙女の前で他人の、それも恋人がいる女の話をするとはこの脳筋どうしてくれよう。

 

「まっ、でも谷口がこうして元気に笑ってんのを見れるだけで十分か!」

「も、もうっ!龍っちどんだけ鈴のこと好きなのさっ!」

 

 あーもう、ずるいなぁこの男は!無意識に鈴の言って欲しいセリフ言っちゃって、ほんっとずるいなー!

 

「おうさ。なんたって谷口は、()()()()()()だからな!」

「っ……」

 

 そう言ってニカリと笑う龍っちに、鈴の心はちょっとだけ締め付けられた。

 

「……なら、鈴は龍っちの1番の女友達だね!」

「おう!」

 

 でも、すぐいつもみたいに笑って言葉を返す。龍っちはもちろん気づいた様子なんてなくて、また豪快に笑った。

 

 友達……そう、ただの友達なんだよね。龍っちにとって鈴はクラスメイトの中で一番仲の良い女の子、それだけなんだ。

 

 だから、っていう訳じゃないけど。この時鈴は龍っちに、こんな事を言った。

 

「だったらさ。安静が解けたら、一緒にどっか行こーよ」

 

 それはなんて事ない提案だった。

 

 いきなり訓練に参加するのもちょっとキツいし、それならと龍っちとどっかに行きたいなって、そう思っただけ。

 

 さっきはああ言ったけど、ちょっとだけ悔しかったのかもしれない。鈴だけ色々考えて、このにぶちんがケロッとしてるのが。

 

「ん? おう、いいぜ」

「ほ、ほんとっ?」

 

 その提案を、龍っちはあっさり受け入れた。思わずベッドから乗り出してしまう。

 

「おおっ、なんでそんな勢いよく乗り出してんだよ。別に友達と遊びに行くくらい普通だろ」

「あ、ごめん……じゃあ、明日は?」

「ん、ちょい待ち」

 

 コートのポケットから予定長を取り出す龍っち。こういうとこもマメになったなぁ、前は雫っちにため息吐かれてたのに。

 

 真剣な表情で手帳に目を落とす龍っちに少し見とれてると、予定を確認し終わったのかパタンと閉じられた。

 

「いいぜ。特に予定はない」

「じゃあ、明日城門の外で待ち合わせね!」

「おう!」

 

 そんなわけで、龍っちとのお出かけが急遽決まったのです。

 

 

●◯●

 

 

で、今に至る。

 

「? どした谷口、難しい顔して。なんかあったか?」

「い、いや、なんでもないよ?」

「そうか?じゃあ行こうぜ」

「あ、うん!」

 

 いつも通り全く気にした様子もなく、龍っちは前を向いて、これからのことが楽しみそうな顔をした。

 

 だから鈴も、いつもクラスメイトたちを盛り上げるように、明るく振る舞う……ことなんてできるわけないでしょ。

 

 いや何やってんの昨日の鈴。これデートじゃん。どう考えたってデートじゃん。男と女が一緒に出かけたらそれもうデートじゃん!

 

 龍っちから見えないのをいいことに、ペシペシ自分の脇腹を叩く。傷跡も残ってないのにジンジンと痛んだ。

 

 と、とにかく!もう終わっことはしょーがない!実際もう出発しようとしてるわけだし、せめて最後までキャラを保つ!

 

「やー、それにしても龍っち、今日はカッコいい服だね!」

「ん、そうか?」

 

 龍っちはいつもものコートじゃなくてちゃんとしたオシャレな格好をしていた。

 

 白いシャツと地球で言うところの緑色のオープンカラーシャツを組み合わせ、下は少し緩めのワイドパンツとローファー。

 

 首にはいつものネックレス……ドライバーとかを収納してるファンタジーなやつ……と、かなりキマっていた。

 

 正直、さっきからドキドキしっぱしだよ。特にシャツの内側から浮き出てる筋肉とか、ちょっと刺激強すぎて鈴にはまだ早い(錯乱)

 

「なんか晩飯の時に谷口と遊びに行く話したら、なんか女子共に寄って集って魔改造されたんだが」

「ほへー、そーなんだ」

 

 グッジョブクラスメイトたち。多分いつも鈴がそういうネタでからかってた意趣返しだけどグッジョブ。

 

「それで、さ」

「ん? どした谷口」

「その……どう?」

 

 ちょっと前に出て、服装を強調してみる。私だって割と気合入れてきたのだ。

 

 ピンク色のシャツとお腹のところで縛っている薄い上着、ホットパンツにブーツ。異世界の服ではかなりの出来だ。

 

「おう、いいと思うぜ。 動きやすそうだし」

「もー、違うでしょ龍っち。女の子には……」

「それに、谷口によく似合ってて可愛いしな」

 

 ピシッと固まった。そして、何気なく放たれたその言葉を幻聴か?と思う。

 

「龍っち、今なんて言った?」

「ん?谷口によく似合ってる?」

「その後」

「あー……可愛いしな?」

「〜〜っ!」

 

 聞き間違いでなかったとわかって、かーっと頬が熱くなった。

 

 なんなの、ほんとなんなのこの脳筋!こっちが言って欲しいことばっか言って!顔がニヤけちゃうじゃん!

 

 ううー、先制を取ろうとしたらあっさり反撃されたよ!このままだとまた鈴が恥ずか嬉しいだけで終わっちゃうよ!

 

「そ、そう!ありがとね!あ、そういえばもうそろそろ昼時ーー」

「おう、待ち合わせ時間的に腹減ってるかと思って、前に谷口が聞いた噂のスイーツがあるとこ、見つけといたぜ」

 

 な ん だ こ の イ ケ メ ン ゴ リ ラ は 。

 

「えっ、あ、あの店?本当に見つけてくれたの?」

「言ってたじゃねえか、「なんか地球で行った店に似てたんだよね」って。それなら連れて行かないわけにはいかないだろ?」

「………」

 

 まずい。龍っちがイケメン度高くなりすぎて心臓がまずい。これが本当にあの元ドルオタゴリラなの?

 

 いやいや嘘でしょ別人でしょなんて思ってるうちに、首を傾げた龍っちに「いいからほら」と背中を押されて街へと向かう。

 

 ううっ、絶対顔が赤いよ。周りの人も見てるし、ここは龍っちの大きな体に隠れさせてもらおう。

 

「ん?何だ寄ってきて。あ、人混みの中で小さからはぐれるからか」

「なっ、気にしてるんだから言わないでよ!龍っちデリカシーないし!」

「すまんすまん、なら……」

 

 龍っちはごく普通に、自然な様子で鈴の手を取った。

 

「これならはぐれないだろ?」

「……………っ!?」

 

 だからなんなの!?いくらなんでもカッコ良すぎるよ!これ誰かが幻覚魔法で姿変えてるとかじゃないよね!?

 

 結局そのお店に着くまで、まともに龍っちの顔を見ることができずに俯いていた。せっかくなら寄り道しようかな、なんて考えてたのに。

 

「っと、ここだ」

 

 お城への坂を下り、城下町に出てから十分くらい、いろいろな飲食店が立ち並ぶ通りの一角にその店はあった。

 

 その店の趣きは、一度友人たちと遠出して行ったことがある有名なパンケーキ屋さんに似ていた。あの時は何時間も並んだなぁ。

 

 更に、異世界語で書かれたファンシーな看板には〝他のどの店より甘い幸せをあなたに〟なんて謳い文句が書いてある。

 

「いらっしゃいませ、二名様でしょうか」

「おう、予約してたもんだ」

「ああ、サカガミ様ですね。こちらです」

 

 お店に入ると、店員のお兄さんが席に案内してくれた。言われた通りについて行き、向かい合わせに腰を下ろす。

 

 店内の内装は落ち着いていて、とても心地が良い。それを証明するように、女の人のお客さんで席のほとんどが埋まっていた。

 

「おー、さすが噂になってるってだけあるな」

「うん、大人気みたいだね」

「で、何食うんだ?」

「えーと、どれにしようかなぁ」

 

 店員さんが置いて行ったメニュー表を見る。色々あるけど、どれも美味しそうだなぁ。

 

「どれどれ……」

 

 テーブルに身を乗り出し、メニュー表を覗き込んでくる龍っち。いきなりの急接近にまた心臓が飛び跳ねた。

 

 まずいまずい近い近いって!龍っちの顔が至近距離にあっ意外と眉毛長いじゃなくて耳元で悩む声がわーーーーーーっ!

 

「んー、俺はこれかな」

「じゃ、じゃあ鈴もそれにしようかなー、なんて」

「おお、気が合うな谷口。すんませーん!」

 

 龍っちが店員さんを呼んで、同じものを頼む。女性店員さんには案の定、微笑ましいものを見る顔をされた。

 

「一体どんな感じなのか楽しみだな、谷口!」

 

 いかにも楽しみです!って顔で体を揺らす龍っち。

 

 その様子はまるで子供みたいで、まるでデートだって意識しているように見えない。いや、確実にしてないんだけど。

 

 ……なんだろう。そういうふうに意識されてないのは悔しいんだけど、おかげでむしろ少し緊張がほぐれた。

 

「あはは、嬉しそうだね龍っち」

「おう!つってもほら、男って甘いもん好きな奴は少なくてよ。なかなか行けなかったから谷口がいて助かったぜ」

「確かに、甘いものは女の子の特権っていうイメージはあるからね」

 

 実際、男の人がこういうお店に一人で入るのはかなり勇気がいると思う。男のプライドってやつなのかな。

 

 だから人に見られるのは恥ずかしいみたいだし、もしクラスメイトとかに見られたらもっと恥ずかしい……らしい。

 

 でも、もし女の子と一緒なら一気に難易度は下がるとか。まあ、私もスポーツショップとかは一人じゃちょっと入りづらいしね。

 

「一緒に来た鈴に感謝するのです」

「ははーっ、ありがたやー」

 

 両手に腰を当てて胸を張れば、龍っちはテーブルに両手をついて深々と頭を下げてくる。それからどっちもプッと吹き出した。

 

 それで完全に緊張が解けて、いつも通り何でもない会話をする。案外、このやりとりが恵理と話してる時かそれ以上に安心感があった。

 

「お待たせしました、ご注文の品です」

 

 時間も忘れて話していると、注文したものがやってきた。私と龍っちの目の前に、それぞれ一皿ずつ置かれる。

 

 そこに盛り付けられたのは、ホイップクリームやフルーツ、チョコレートなどで目一杯デコレートされたパンケーキ。

 

「わぁ………!」

「すっげえ美味そうだな!」

「うんっ、早く食べよ!」

「おう、オレも我慢できねえぜ!」

 

 ナイフとフォーク……今更だけど、地球と同じって面白いよね……を持ち、いただきますと言う。

 

 ひと口分切り取って、口に近づけると甘い香りが鼻腔を突いた。龍っちと顔を見合わせ、ゴクリと喉を鳴らす。

 

 覚悟を決めて、大きく口を開け口内に入れる。そうすると閉口し、ゆっくりとそれを咀嚼して……

 

「ん〜〜〜っ、おいひぃっ!」

「美味えっ!特にこのホイップクリームとパンケーキの生地がベストマッチでさいっこうだ!」

「だよねだよね!」

 

 はぁーもう幸せ!これを食べてるだけで散々恥ずかしい思いをしたのがなんでもないように思えるよ!

 

「ん、谷口」

「はむはむっ、どしたの龍っち」

「ほっぺた、クリームついちまってるぞ」

「うそっ!?」

 

 しまった、あまりに美味しくてついつい夢中になっちゃった!はしたない子って思われたよね!?

 

 慌ててほっぺたを拭うけど、うまく取れない。龍っちが見てるからか、テンパってて全部からぶっちゃった。

 

「あー、しょうがねえな」

 

 そう言って、龍っちがまた身を乗り出す。ふぇ?と固まっている間にこっちに手を伸ばして、右のほっぺたの表面を滑らせた。

 

 いきなり触れられたことに硬直していると、ゆっくりとした動作で身を引く龍っち。その指にはホイップクリームが付いていた。

 

「ほれ、取れたろ?」

「〜〜〜〜〜っっっ!!?」

 

 

 

 

 

あーもう、だからかっこよすぎっ!

 

 

 

 

 




構成が適当な気がしなくもない、というかする()
次回は後半、その次は用語説明という名の厨二設定を纏めて六章開始です。
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