さて、この作品も折り返し。頑張っていきます。
はい、今回はプロローグ的なアレです。ネタが戻ってくるぞー!
楽しんでいただけると嬉しいです。
さて、海底遺跡である。マイ◯ラっていいよね。
メルジーネ海底遺跡。
それはエリセンから西北西に約300キロメートルの位置にある、解放者の残した七大迷宮の一つである。
オスカーの手記、そして実はシュウジが連絡を取ってたミレディによると、入るための鍵は〝月〟と〝グリューエンの証〟の二つ。
そこに例の女神から与えられた知識と照らし合わせた結果、月光の下で証を使うと道しるべになることが判明。
「そして俺たちは今、月が出るのを待っているのであった……」
「誰に話してんだよ」
海上に浮かぶフィーラーの背中の広場、そこのコテージのベランダで海面を見ていたハジメは、隣のシュウジに突っ込む。
ハジメの眼に映る日没の海は、それは綺麗な者だった。逢う魔が時と呼んで良い時間、全てが鮮明なオレンジに染まる。
ハジメは柄にもなくそれに見とれていた。というか、必要以上にそれを見て隣を見ないようにしていた。
なぜなら……
「綺麗な夕日だな。きっと月も綺麗だろう」
「……ッ!」
シュウジは今、某月に代わってお仕置きよ☆な美少女戦士の格好をしているので。
明らかに狙った発言に、ハジメは吹き出すのをこらえる。左を見るな、ただ前だけを見て時を待つのだ。
「今宵の夜は、きっと悪がのさばっているぜ……」
「そいつはいけねえ、俺たちが裁きを下そう」
「…………ッッ!!!」
訂正、右も見てはいけない。そこにはパンツをかぶった筋肉モリモリマッチョマンの変態に擬態した
セーラー服を着た美少女⭐︎戦士とおいなりさん()が武器の変態に包囲されたハジメは、かれこれ数分ほどこのままだった。
「ところでハジメ」
「……………………なんだ」
「セーラー服って、いいよな」
「ぶふっ!」
ハジメは吹き出しかけた口をとっさに片手で押さえて、なんとか笑うのを堪えた。
「網タイツもいいよなぁ」
「ふ、くっ……!」
「ところでエボルト、お前パンツ履いてんの?」
「履いてるってか付けてる」
「くはっ……!」
「こういう装飾って額に食い込むんだよな」
「パンツ顔面に食い込ませてる俺にそれ言う?」
「ちょ、おま、お前ら……」
「「どうしたハジメ?」」
グニョーンと目の前に金髪のウィッグと化粧をした顔と、パンツが食い込んだ漫画フェイスが割り込んできた。
「ぶっ、あはははははははははははっ!!!」
そこで限界を迎え、ハジメは思い切り笑ってしまった。その瞬間、デデーン!という音ともにコテージの扉が開く。
脇腹を抑えた涙目のハジメが振り返ると、〝どれだけ奇行に耐えられるか選手権〟のプラカードを持ったウサギたちが出てきた。
「ハジメ、アウトー」
「ちっくしょう、またやっちまった!」
「時間は四分五十六秒。ふふ、ハジメ弱い」
「ご主人様にも弱いところがあるのじゃなぁ」
「いーや、俺たちが強すぎるんだよ」
「この俺のおいなりさんは最強だぜ(キラン)」
「お前元からついてないだろ」
「ついてるぞ?」
「スライムなのに?」
「ほら、ウス=異本仕様だから」
「お前これから雫に近づくの禁止な」
「いや地球人には興奮しねえよ!」
シュウジが目元でピースサインしてポーズを取り、エボルトが股間を強調するポーズで会話する。
まさにシュールな光景に、ユエたちまでもが視界から外した。まあ回り込まれて即吹き出すことになったのだが。
さて、なんでこんなことをしているのか。
まあ、端的に言って夕飯までの暇つぶしである。
またハジメとシュウジが勝負して取った魚を雫とシアが調理している間暇だったので、何かゲームをしようということに。
ルールは簡単、シュウジとエボルトのボケにどれだけ笑わないかである。優勝最有力は七分間耐久したウサギだ。
「ふぅ……よし落ち着いた。じゃあ次はティオだな」
「ふふん、絶対にご主人様より長く耐えて見せるのじゃ」
「その心は?」
「悔しそうにするご主人様に殴ってほしいハァハァ」
「よし鉄拳をくれてやる」
「ありがたき幸せなのじゃっ!」
ハジメのストレートで沈むティオ。倒れた後の気持ち良さそうな顔に苦笑がこぼれたのはいうまでもない。
「ったく、この駄竜が」
「当たりが強いねぇ。さて、ティオさんに回復魔法かけて……」
「シューぅー、ちょっと味見してほしいんだけどー」
「ハジメさーん、お願いしまーす」
シュウジが手のひらを向けてティオを回復したところで、コテージ内のキッチンから声がかかった。
「おっと、お姫様から呼び出しだ。行こうぜハジメ」
「ああ。お前らも来るか?」
「ん、私たちはまだここにいる」
「お風呂上がり、風に当たりたい」
「そうか。風邪ひくなよ」
そう言い残すと、ハジメはシュウジと一緒にコテージの中に入った。後ろ手にパタン、とドアが閉められる。
残ったユエたちは二人の後ろ姿が消えていったドアを見つめ、やがて顔を見合わせるとクスリと笑い合った。
「すっかり、いつも通り」
「元気になって良かったね」
「うむ、ああでないとこちらも虐められがいがないの」
「ティオさん、それは特殊な意見だと思うよ?」
コテージのベランダから出て、四人は広場の一角に設置されたベンチに座る。そして夕暮れの少し暖かい風に当たった。
ちなみに髪を痛める潮風はシュウジの都合の良い結界で潮だけが除去されているので全くの無害となっている。
「一時はどうなることかと思ったよ……」
「ん、それもシュウジが暴走を起こしたせい」
「……でも、いきなりあんなことを知ったら、ああなるのも分かる」
「あはは、そうだよね……自分が、人形だったなんて」
驚くべきシュウジの真実が明らかになった騒動から、一週間。
二人の喧嘩の傷も癒え、火山で破損した武具の修理も完了して元の調子を取り戻したハジメたち一行は迷宮攻略を再開していた。
その間に、シュウジは何事もなかったかのように元に戻った。ハジメたちは心の底から安堵した。
代わりに雫が凄まじく過保護になったり、ちょっとしたことでリベルが心配したりと、周りが色々あったが。
「心配して、みんなでハジメとシュウジを囲んで寝たりした」
「あれは、レミアがハジメを部屋に連れ込むのを防ぐ意味もあった」
「結果、何かの儀式じみていたがの」
リビングで全員で雑魚寝した時のことを思い返し、笑いが起こる。あの時も翌朝笑ったものだ。
しかし、ふとユエが笑いを止めて憂鬱な表情になった。すぐに気がつき、ウサギたちはユエの顔を見た。
「……でも、心配なこともある」
「ルイネさんのこと、だよね」
同調するようにいう香織に頷くユエ。ウサギとティオも、神妙な顔つきになる。
実は、シュウジは元に戻ったのだが、目覚めたルイネに問題があった。二人の仲がよそよそしくなってしまったのだ。
「雫は、〝シュウジ〟と生きてきた。でも、ルイネは……」
「シューくんじゃなくて、カインさんの方に気持ちがあるんだよね……」
「だから戸惑っておる、ということじゃな」
「難しい、問題」
それまでの旅の様子とは一変して、二人は顔を合わせるたびに気まずそうな顔をしていた。オルクスから一緒のユエとしては憂鬱だ。
今も、ルイネは逃げるようにレミアの経過診察をする美空と、子ども組と一緒にエリセンに残っている。
「なんとか、したい」
「それなら、私も手伝うよ」
ユエは、隣の香織を見る。香織はユエに向かってウィンクした。
「ハジメくんのことは一旦置いといて、一緒に旅をしてるのに気まずいのは悲しいからね」
「……一応、礼を言う」
「ふふん、感謝しなさい」
「調子に乗るな、負けヒロイン」
「また言ったわね!今日こそどっちがヒロインか分らせてやるんだから!」
「望むところ、かかってくるがいい!」
一瞬前の和やかな雰囲気は何処へやら、取っ組み合いを始める二人にウサギとティオは顔を見合わせ、やれやれと呆れて笑う。
そんなこんなで話しているうちに、ユエたちにもお呼びがかかって呼びに来たハジメと共にコテージに戻って夕食を取った。
それからカードゲームや某バトルロイヤルゲームなどをしているうちにどんどん日は沈んでいき、やがて夜が訪れる。
「よーし、そろそろ出てみるか」
「そうだな、月も満ちたことだし」
「あ、ほんとですね」
「はい余所見した。シア、お前負けな」
「あーっ、私のカー◯ィ!」
エボルトがシアのピンクな食欲モンスターを倒したところでポーズ、全員準備をするとコテージを出て広場に出る。
ハジメが懐から【グリューエン大火山】の攻略の証を取り出す。中央に穴が開いた、女性がランタンを掲げる彫刻が刻まれたペンダントだ。
「んで、それを月光に掲げてみて」
「こうか?」
「ワキこちょこちょ」
「やめろこのバカ」
ハジメがシュウジの脇腹を軽く殴ったその瞬間、ペンダントのくり抜かれたランタンの部分に変化が起こった。
「わぁ、ランタンに光が溜まっていきますぅ。綺麗ですねぇ」
「ホント……不思議ね。穴が空いているのに……」
実に神秘的なその光景にシアが感嘆の声を上げ、香織が同調するように瞳を輝かせる。
彼女達の言葉通り、ペンダントのランタンは、少しずつ月の光を吸収するように底の方から光を溜めていった。
それに伴って、穴あき部分が光で塞がっていく。ユエとティオも、興味深げに、ハジメがかざすペンダントを見つめた。
「そういえばさ、雫」
同じようにそれをみていたシュウジは、ふとあることを思いついて隣にいる雫に声をかける。
「ん? どうしたのシュー」
「新しいペンダントとか、いるか?」
「ペンダント……ああ、そういうことね」
その横で、シュウジの質問に雫はオルクス大迷宮の事件の際に壊れてしまったペンダントを思い返した。
後から聞いた話だが、あれは大きく破損した時に信号のようなものを発し、雫の位置を教えるアーティファクトだったらしい。
つまり、あれが雫の元へシュウジとハジメたちを導いてくれたのだ。今でも大切に持ち歩いている。
「いいえ、別にいいわ。だって……」
「ん?」
「今度は、ずっとそばで守ってくれるでしょ?」
そう言って微笑み、自分を見上げる雫。シュウジは不敵な笑みを浮かべ、それに応えて……
「…………おう、まあな」
ではなく。可憐なその笑顔にシュウジは胸が強く高鳴り、頬を赤く染めた。そして目を逸らしつつ、端的に答える。
「顔、赤いわよ」
「あっれーおかしいな、もう夕日は落ちたんだけどなー」
「ふふっ♪」
真実を知って、一つシュウジと雫の関係に変化が起きた。
それは以前よりも、雫への思いが表面に現れてしまうこと。こうしてことあるごとに本音というか、感情が表に出る。
千年の時を生きた暗殺者の記憶は、実はその無比な強さ以外にもシュウジにある種の精神的余裕を与えていた。
しかし、それは与えられた偽物だった。それ故か、余裕の裏に隠されていた年相応の感情……特に雫へのものが強くなったのだ。
「とほほ、一週間経っても慣れねえよ」
「まあ、私はその方が嬉しいんだけどね♪」
「ぐむ…………」
「ラブコメしてるところ悪いがな、準備ができたぞ」
「ばっおま、別にしてねえし?ちょっと見つめ合ってただけだし?」
ニヤニヤとしたエボルトの言葉に、シュウジはハジメのペンダントに目を戻す。その際のハジメたちのニヤけ顔はスルーした。
ランタンに光が満ちたペンダントはそれ自体が光を帯び、ランタンの部分から一直線に光を放って海面のとある場所を指し示していた。
「フィーラー、光の先を目指して潜れ」
オォオオオオオオオオ…………
夜の海にフィーラーの咆哮が響き、その巨躯が沈んでいく。シュウジが手をかざし、水を遮る結界を広場に起動した。
海中は、やはりというべきか漆黒だった。ペンダントの光とフィーラーの煌めく鱗だけが光源となっている。
「ライトアップといこうか」
シュウジがパチン、と指を鳴らす。すると広場の縁の部分が等間隔に開き、そこからスポットライトが現れた。
それは一つ残らず、ペンダントの光の方向を照らし出す。そこは、無数の岩が山脈のように連なる海底の岩壁地帯だった。
「わぁ、すごい。昔見た映画を思い出すよ」
「あれか、大きい生き物が小さくて、小さい生き物が大きな世界のやつ」
「それそれ!おっきい蜥蜴が怖かったなぁ」
某筋肉俳優の登場する映画の話をするハジメと香織。それにユエがプク、と頬を膨らませた。
「むぅ、なにそれ。知らない」
「ふふん、ユエは映画なんて見たことないよね」
香織が地球での思い出でマウントを取ろうとした瞬間、ペンダントの光が海底の岩石の一点に当たった。
その瞬間、ゴゴゴゴッ!と音を響かせて地震のような震動が発生し始めた。岩壁の一部が動き出したのだ。
岩壁が真っ二つに裂け、扉のように左右に開き出したのである。その奥には冥界に誘うかのような暗い道が続いていた。
「こりゃ、昼に探しても見つからんわけだな」
「乙カレイ」
「お前バカにしてんだろ」
療養中にリハビリがてら一度探しに来たハジメがガックリと肩を落とす。シュウジはケラケラと笑って慰め?た。
フィーラーは割れ目に入って、奥へ奥へと泳いでいく。その先にあるであろう、メルジーネ海底遺跡を目指して。
「でも、おかしいわよね。シューのこの結界とか、フィーラーちゃんや南雲くんの持ってた潜水艇がなかったら、そもそも迷宮に行けないんだから」
「海底遺跡と聞いた時から、嫌な予感はしておったが、の」
「強力な結界が使えないとダメ」
「ん。他にも、空気と光、あと水流操作も最低限同時に使えないとダメ」
「でも、ここにくるのに【グリューエン大火山】攻略が必須ですから、大迷宮を攻略している時点で普通じゃないですよね」
「もしかしたら、空間魔法を利用するのがセオリーなのかも」
「んー、女神ペディアによるとそれが正解みたいねー」
頭の中にある知識と照らし合わせるシュウジ。残酷な真実の黒幕であれ、雫たちのために使えるものは使う。
なお、空間魔法についてはハジメたちの脳に刻まれたものを模倣して入手したとここに記しておこう。
そんなことを話し合いながら、シュウジたちは第四の大迷宮へと進んでいくのだった。
次回から本格的に攻略。
この章は新しいフォームも出るよ!
感想カモン!