星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、最近ブラッドスタークの異常なかっこよさに戦慄している作者です。
前回言っていたヒロインのイラスト、完成しました。例のごとくツイッターに上げてあります。
毎回質問してる気がしますが、ローグを誰にすべきでしょうか?

シュウジ「さてさて、今回もあらすじいくぜ。前回、ついに戦いが始まった。俺のすん↓ばら↑すぃー↑戦いが輝いてたぜ」

エボルト「最初ふざけてたけどな。それにしても、あのコブラの中から出てきた女…ありゃ一体誰だ?」

シュウジ「企業秘密ってことで☆」

エボルト「そ、そうか。まあともかく、今回は俺たちの戦いだ。それじゃあせーの…」


シュ&エボ「「さてさてどうなる迷宮編!」」


絶望へと フェーズ2

 時間は、シュウジがコブラ、並びにトラウムソルジャーと戦い始めた時点まで遡る。

 

 

 

 グルァァァアアアアアアァァァァアッ!!!

 

 

 

 俺たちに向かって、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、全員轢き殺されるだろう。

 

 名乗り遅れたが、エボルトだ。こうして話すのは初めてだな(メタい)。

 

  まあそれはともかく、迫るベヒモスにそうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張った。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず、〝聖絶〟!!」」」

 

 最高品質の紙と、魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時で魔法が発動した。まあ、地球に比べりゃあそう上質でもないがな。

 

 一回こっきり一分だけの防御であるが、何者にも破らせない絶対の守りが顕現する。純白に輝く半球状の障壁が、ベヒモスの突進を防ぐ!

 

 

 ガィィイイインッ!!!

 

 

 衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。橋全体が石造りにも関わらず、大きく揺れた。

 

「くっ……!」

「重い……!」

「耐えろお前たち、後方の魔物はシュウジ殿がなんとかしてくれる!」

 

 おーおー、あいつも信頼されてるもんだな。まあ、あの女騎士含めてよく一緒に飯食ってたしな。

 

 べ、別に寂しくなんかないんだからねっ!

 

『よーし、そのまま抑えとけよー』

 

 そんな騎士たちの頭上を飛び越え、俺はライフルモードにしたトランスチームガンを構える。そして空中でベヒモスめがけ、トリガーを引いた。

 

 

《STEAM SHOT! COBRA……!》

 

 

 おどろおどろしい声が響いて、ベヒモスの体に紫色の蛇の形をした弾丸が発射された。堅牢そうな甲殻にぶつかり、爆発する。

 

 さて、どうなったか。着地しながら煙に包まれたベヒモスの体を見る。これで効いててくれりゃあ、なんとかできるんだが。

 

 が、煙が晴れ、カメラアイに移る奴の体は、わずかな擦り傷しか付いてなかった。ほとんど意味なし、か。

 

『こりゃあ結構硬いな。スタークでどれだけ耐えられるか……』

 

 ブラッドスタークはあくまで、エボルの力を取り戻すためのつなぎにすぎない。ハジメたちの訓練には最適だが、その程度だ。

 

 仮面ライダーにも劣るトランスチームシステムじゃあ、たかが知れてるってもんだ。こいつが相手じゃあ歯が立たんな。

 

「エボルト、どんな感じだ!?」

『おお、メルドか』

 

 どうするか考えていると、様子を伺っていたメルドが近づいてきた。その髭面には、心配するような色が浮かんでいる。

 

『難しいな。エボルだったら話は別だが、こりゃあ苦戦するかも知れんぞ』

 

 肩をすくめながらそう言うと、メルドは悔しげに歯噛みをした。義務感の強いこいつだ、守るべき俺たちに頼るのが辛いのだろう。

 

 こいつとは飲み仲間みたいな関係だ。できればあまり責任を感じさせたくはないが……まあ、この手のタイプは口で言っても意味がねぇ。

 

 そういやビルドの世界にいた頃、葛城忍とは一回も飲みにいたことなかったな。そもそも最初から裏切られてたし。

 

 あれ、そう考えると俺の交友関係、少なすぎ……!?

 

「ーーボルト、おいエボルト!」

『ん?おお、すまん。ちょっと考え事してたわ。で、なんだ?』

「いや、どれくらいなら時間を稼げるかと聞いたんだが…」

『そうだな……持って十分ってとこじゃねえか?』

 

 エボルが使えないとしても、経験までなくなるわけじゃあない。こちとら別世界で10年間もやってきたんだからな。

 

 あの巨体からして、この閉鎖空間で突進を回避するのは不可能。押し返すのは無理でも、今の位置で押し留めるのが得策だろう。

 

 一番良い案は、シュウジがあの魔物を倒すまでベヒモスの進行を止め、合流してエボルで倒すことか。

 

 とすると、あまり戦闘の邪魔になる要素は減らしたいな。加えて、攻撃に専念できるようにベヒモスの注意を引く囮が欲しい。

 

 そのために必要なことは…

 

『おいメルド、あそこで騒いでる天乃河(バカ)を連れてってくれ。シュウジがこっちにこれるまで、時間を稼ぐ』

「なっ!」

 

 これから時間稼ぎをするにあたって、いちばんの障害はこいつだ。自分の力を過信してんのか、自分でなんとかできるという顔してやがる。

 

 俺が皆を救う!みたいな顔してる勇者(粗大ゴミ)を指差して言うと、メルドは大きく頷いた。

 

「わかった!おい光輝、いい加減に撤退しろ!お前たちも早く行け!」

「嫌です!メルドさん達を置いていくわけには行きません!絶対、皆で生き残るんです!」

「くっ、こんな時にわがままを……」

『早く消えろ、邪魔だ』

 

 埒が開かなそうなので、俺が直接言う。もう障壁には亀裂が入り始めてる、子供に付き合ってる時間はない。

 

「邪魔って、俺はただ皆のために戦おうと」

『くどいっ!!!』

 

 

 ゴウッ!!!

 

 

 こちらを睨んで食いつこうとしたクソガキの鼻先で、スチームブレードを振るう。豪風が吹き荒れ、ガキは動きを止めた。

 

『スタークの俺の、この程度の一撃で怯んでるようじゃあ、お前にできることなんて何もねえ。さっさと失せろ、作戦の邪魔だ』

「あ、う……」

「おいエボルト、もう持たんぞ!」

 

  ショックで何も言えないクソガキから、さっさとベヒモスに視線を戻す。メルドも障壁の維持に加わっているが、焼け石に水だ。

 

『おいハジメ、お前に囮をして欲しい。いけるか?』

「あ、うん」

 

 転移された時、俺たちの近くにいたため、すぐ後ろにいたハジメにそう言う。なぜという感情がクソガキから発せられるが、オーラで黙殺した。

 

 すでにスイッチが切り替わってんのか、冷静な顔でハジメは俺の隣に並ぶ。短期間でよくここまでになったもんだ。

 

「くそっ、なんで俺はダメで南雲はいいんだ……!」

「光輝!エボルトの言う通りに撤退しましょう!」

 

 雫は状況がわかっているようで、クソガキを諌めようと腕を掴む。そうだ、そのまま出荷してくれ(違う)

 

「でも俺は!」

「ああもう!ちょっと龍太郎、この馬鹿を連れてくの手伝って!」

「お、おう!」

 

 坂上も加わって、クソガキは連れて行かれる。だがなおも「南雲より俺の方がうまくやれる」だのなんだのと騒いでいた。

 

『ふむ……おいカオリン、あのバカにちょっと言伝を頼めるか』

「え?あ、う、うん!」

 

 カオリンを手招きして、耳元でぼそぼそとクソガキに言うことを伝える。ちなみにカオリンってのは、シュウジで言うところの白っちゃんのことだ。

 

『…ってことだ。よろしく頼む』

「うん、わかった。それじゃあ南雲くん、エボルト、頑張ってね!」

「うん、ありがとう白崎さん」

『お〜う』

 

 ひらひらと手を振って、クソガキの方に行くカオリンを見送る。よし、これでクソガキはおとなしく撤退するだろう。

 

 実際に見ていると、俺が言ったことをそのままカオリンが伝えると、クソガキは渋々ながらも通路側の方に向かっていった。

 

「エボルト、なんて言ったの?」

『簡単なことさ。こっちじゃあ役に立たないが、あそこで混乱してるクラスメイトたちなら、お前の力で救えるぞ、ってな』

「なるほどね」

 

 俺の言葉の意図を察したハジメが、クスリと笑った。

 

 あのクソガキは、ベヒモスの相手をさせるには心もとない。だが人間は適材適所、あんな甘ちゃんでも使い所はある。

 

 それは、シュウジが相手している以外のトラウムソルジャーに囲まれ、右往左往しているクラスメイトたちの先導だ。

 

 あれの欠点は、前ばかり見て後ろを見ないこと。いちばん大きいものに気を取られて、クラスメイトどもを見てねえ。

 

  クラスメイトどもは、訓練の事など頭から抜け落ちたように、誰も彼もが好き勝手に戦っている。連携もクソもあったもんじゃない。

 

 だが、そこに強いカリスマ(笑)を持った人間を放り込んでやれば、あとはそいつが勝手に引っ張ってくれる。それがあのクソガキだ。

 

『さて、あとは…俺たちがどこまで耐えられるか、だな』

「うん。僕たちが、頑張らなきゃ」

『そう言うことだ。お前の力は俺やシュウジがよく知ってる。しっかりフォローしてやるから、頼むぞ』

「わかった。さあ、実験を始めーー」

「ーーちょっと待ちなさい」

 

 今にも障壁が砕け、俺たちがベヒモスに向かおうとした瞬間、声が聞こえた。

 

  横を見ると、そこには案の定、雫がいた。さらにその横には、坂上までいる。どちらとも臨戦態勢だ。

 

『あのバカのお守りはどうした?』

「香織に任せたわ。一人なら光輝も守れるでしょうし、逆に光輝が怪我しても治せるでしょう?」

「それなら俺たちは、少しでもお前に貢献しようと思ってな」

 

  ……まったく、こいつらはこいつらでバカなやつだ。だがそういうバカが世界を救うのを、俺はこの命をもって知っている。

 

『……そうか。それじゃあハジメと一緒に遊撃を。俺は狙撃でダメージを与える』

「了解よ」

「いっちょかましてやるか、南雲!」

「うん、坂上くん!」

 

 さあ、これで準備は整った。

 

「メルド、障壁を」

「すまんエボルト、もう限界だーーっ!?」

 

 

 

 バリィィイイィイイインッ!

 

 

 

  障壁を解除しろ、そう言おうとしてベヒモスの方を振り返った瞬間、メルドの言葉と同時に、障壁が砕け散った。

 

『全員踏ん張れ!』

「〝錬成〟!」

 

  咄嗟に全員に怒号をあげながら、しゃがんで石橋にスチームブレードを突き立てて、吹き飛ばされないよう備える。さらに、ハジメが前に出て石壁を作り出した。

 

「くっ、強っ……!?」

『マジか!』

 

  が、あっさり砕かれ吹き飛ばされた。予想以上の力に、俺はさらに深くスチームブレードを突き刺して姿勢を低くする。

 

 

 

 ヴォォオオオオオオッ!!!

 

 

  ふう、なんとか耐えきったぜ。ハジメたちの方は、多少は威力を殺せたようだが……舞い上がる埃が、ベヒモスの咆哮で吹き払われた。

 

  状況を確認すると、メルドと団員たちが転がっていた。どうやら衝撃波の影響で、身動きが取れないようだ。

 

  対するハジメたちは、ハザードレベルのおかげで体の強度が上がっているためか、すぐに起き上がった。

 

『三人とも、そっちは無事か?』

「う、うん、なんとか……」

「ええ、南雲くんのおかげでなんとかね」

「ってえ、やってくれるじゃねえか!」

『そんだけ元気なら平気だな。ハジメ、メルドたちの回収および回復を。残りの二人は予定通り遊撃だ』

「「「了解!」」」

 

  ハジメは例の回復ジュースを片手にメルドたちの元へ、残りの二人は刀とナックルを構え、ベヒモスに突貫していった。

 

《ライフルモード!》

 

  俺も一度分解したスチームブレードとトランスチームガンを再び合体させ、半身を引いて構えると狙撃を始めた。

 

「ハァッ!」

《ニエンテスラッシュ!》

「オラォアアッ!」

《インクブスアタック!オラオラオラオラドラァーッ!!!》

 

 

 ヴォォオオオオオオッ!!

 

 

  蝶のように飛び回って攻撃する二人。しかしベヒモスにとっては痛痒にもならないようで、煩わしそうに吼えている。

 

『その余裕がいつまで持つか、なっ!』

 

 

 ドンッ!

 

 

  言いながら、俺は引き金を引く。ひっきりなしに動く頭の軌道を予測して放った弾は、寸分違わずベヒモスの右目を撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 ヴォアアァアアァァァアアァッ!?

 

 

 

 

 

  召喚されて初めて、大きく悲鳴をあげるベヒモス。どうやら外殻は無理でも、目とかの器官は普通に効くらしいな。

 

  これ幸いと、俺は口内や既に潰れた右目を狙い、どんどん狙撃する。苛立った声をあげながら、ベヒモスは暴れまわった。

 

  まあ、あの図体だ。メルドの話にもある通り、これまで負けたことなんかないんだろう。それなのに傷つけられて怒っているってところだ。

 

『そんな奴には、身の程を知らせてやろうじゃないか……!』

 

  異空間からドラゴンエボルボトルを取り出し、トランスチームガンからコブラロストボトルを抜いて、代わりに差し込む。改造済みなので、エボルボトルを使うこともできる。

 

 

《DRAGON!》

 

 

『こいつでも喰らいな!』

《STEAM SHOT! DRAGON……!》

 

  エボルボトルの成分から生成された青いドラゴンが、橋を震動させ石畳を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。

 

 

 

 ドォォオオオオオオオオオオンッ!

 

 

 

  そしてドラゴンは、轟音と共にベヒモスに直撃した。派手に爆炎が上がり、激震する橋に大きく亀裂が入っていく。おっと、威力過多だったか。

 

『さて、どうなった……?』

 

  朦々と立ち込めていた煙が晴れる。するとベヒモスの背中の甲殻と毛皮が派手に焼け爛れていた。

 

 

 

 

  グルルルルルルルル……!

 

 

 

 

  こちらを殺気たっぷりの目で睨むベヒモスの頭の角が、キィーーーという甲高い音を立てながら赤熱化していく。そして、頭部の兜全体がマグマのように燃えたぎった。

 

『おっと、怒らせちまったか!おい二人とも、さっさと逃げろ!』

 

  声をかけると、上手く立ち回っていた雫と坂上が、俺のところに戻ってきた。どちらとも傷だらけだ。

 

  ライフルを適当に突き刺すと、二人とも腕で抱えてしゃがみこむ。そしてスーツによる強靭な脚力で踏ん張った。

 

  そして次の瞬間、ベヒモスが大きく跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石のように落下する。グッと体に力を込めた。

 

 

 ザンッ !

 

 

  今にもベヒモスの角が石橋に激突するかという時、目の前に一人の男が着地した。ハジメだ。

 

「〝錬成〟!」

 

  大きく叫びながら、俺たちの前でハジメが円形のドームを錬成する。それが終わったのと同時に、激しい衝撃。

 

「ぐぅうううううううっ!!!」

 

  唸り声をあげながら、ハジメが崩壊するドームを錬成し直して耐えてくれた。前から思ってたが、こいつ時々すげえ根性だな。

 

  結局、ハジメの努力が功を奏して、ベヒモスの攻撃を耐えきることができた。ハジメが座り込むのと同時に、ドームが崩壊する。

 

  すると、外の様子が見えるようになった。ベヒモスは角を地面から引き抜き、こちらを殺気立った視線で睨んでいる。

 

『助かったハジメ。で、メルドたちは?』

「はあ、はあ、あそこ……」

 

  荒い息を吐きながらベヒモスを睨むハジメが、後ろを指差す。ライフルを引き抜いて分解しながら、そちらを見た。

 

  するとそこには、崩れるドームの中で、回復したメルドたちが安堵の息を吐いている。どうやら無事のようだ。

 

『お前すげえガッツだな。これは後で美空に報告だな』

「ハハッ、無事に帰れたらね。それで、どうする?」

 

  こちらを見て、どう攻める?と目線で問いかけてくるハジメ。体の下から雫たちを出しながら、後ろを振り返ってシュウジの様子を確かめる。

 

 

 キシャアァアアアアアアッ !!!

 

 

「そいっ!」

 

  なんかコブラの吐き出す毒液をセクシーポーズで躱していた。何やってんだあいつ、遊んでるじゃねえか。

 

『まったく……それはともかく、まだ時間がかかりそうだな』

 

  言いながら、ベヒモスの方を見る。こっちはこっちで、さっきのでダメージを与えられたが、まだまだやれそうだ。こりゃあ耐えるのには骨が折れるな。

 

「そっか……それなら、一つ案があるんだけどさ」

『ほう?』

 

  この状況を打破するアイデアがある、そういうハジメに、俺は面白そうだと思ってその作戦を聞いた。

 

  そうしてハジメがした提案は、あまりに馬鹿げている上に成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を請け負う方法だった。

 

「……っていうものなんだけど」

『…お前、正気か?え、それやらせたら俺が後でシュウジに殺されそうなんだけど』

「美空も怒りそうね……」

「何、みーたんが怒るのか!?それは許さねえぞ南雲!」

「「『お前は黙ってろ』」」

 

  ドルオタ化した坂上に全員で突っ込む。こいつ、最近シリアスブレイカーになってきてやがる。

 

『えー、俺後始末するの面倒だぞ』

「まあそれは、頑張ってってことで」

『ええ……そこは丸投げかよ』

「お前たち!」

 

  まさかの丸投げにガックリとうなだれていると、メルドたちが近づいてくる。するとハジメがメルドたちにも作戦を説明した。

 

「ぬう、それは……美空が怒らないか?」

『やっぱりそこなんかい』

「やります、やらせてください」

 

 決然とした眼差しを真っ直ぐ向けてくるハジメに、メルドは「くっ」と苦々しい笑みを浮かべる。

 

「本来なら、お前一人に負担を負わせるのは心苦しいが……必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」

「はい!」

 

  許可を出したメルドにハジメは答え、今度はこちらを向く。俺は少し怯み、少し逡巡した後、降参と両手を挙げた。

 

『わかったわかった、好きにしろ。バックアップでもフォローでもなんでもしてやる。やってこい、ハジメ』

「ありがとうエボルト……それじゃあ皆、よろしくお願いします!」

「「「了解!」」」

『オーケー』

 

  ハジメの頼みに応え、俺たちは動き出した。

 

「ほらベヒモス、こっちだ!」

 

 まず、メルドがベヒモスの前に出た。そして、簡易の魔法を放ち挑発する。その間に、俺たちはそれぞれ所定の位置についた。

 

  どうやらベヒモスは自分に歯向かう者を標的にする習性があるようで、しっかりとメルドを見る。

 

 

 

 グォオオオオオオオオオオォォオオオッ!

 

 

 

 そして、赤熱化を果たした兜を掲げ、突撃、跳躍する。メルドはギリギリまで引き付けるつもりなのか、目を見開いて構えている。

 

「吹き散らせ、〝風壁〟!」

『そらっ!』

《STEAM BREAK! COBRA……!》

 

 そして、小さく詠唱してバックステップで離脱した。それに合わせてトランスチームガンの引き金を引く。

 

  その直後、ベヒモスの頭部が一瞬前までメルドがいた場所に着弾した。発生した衝撃波や石礫は俺たちの攻撃でどうにか逸らす。

 

「今だ坊主!」

『行けハジメ!』

「うぉおおおっ!」

 

 再び、頭部をめり込ませたベヒモスに、ラビットエボルボトルで加速したハジメが即座に飛びついた。そして作戦を実行する。

 

  それは、名称だけの詠唱。最も簡易で、ハジメにとっては唯一の魔法。

 

「〝錬成〟!」

 

 石中に埋まっていた頭部を抜こうとした、ベヒモスの動きが止まる。周囲の石を砕いて頭部を抜こうとしても、ハジメが錬成して直してしまうからだ。

 

 

 ヴォォオオオオオオッ!!!

 

 

「はぁあああああっ!」

 

  ベヒモスは足を踏ん張り力づくで頭部を抜こうとするが、負けじとハジメは足の部分の石橋をも錬成して沈め、固めた。

 

「よし、うまくいったか……!」

『ボサッとしてる暇はねえぞ。メルド、クラスメイトどものほうへ!雫、坂上、行くぞ!』

「わかった!」

「ええ!」

「おう!」

 

 ベヒモスのパワーは凄まじく、油断すると直ぐ周囲の石畳に亀裂が入り抜け出そうとしている。あまり時間はない。

 

  俺たちは手はず通り、ベヒモスに向かって走っていき、逆にメルドは騎士団員とともに、トラウムソルジャーたちのいる方へいった。

 

  全速力でベヒモスに接近した俺たちは、跳躍して半ばまで沈んでいる頭に飛び乗る。そしてそれぞれの武器を振り上げた。

 

「フッ!」

「オラァッ!」

『ハァッ!』

 

 

 グォオオオッ!?

 

 

  雫が刀の柄頭を、坂上がナックルを、俺がスチームブレードの尻を叩きつける。まさか上から攻撃されるとは思ってなかったようで、ベヒモスの力が弱まった。

 

  これが俺たちの作戦。シュウジがあのコブラを仕留めるまで、ハジメが〝錬成〟で石橋に縫い付け、俺たちが攻撃を加えて力を弱める!

 

 

『さあ、根性比べと行こうか……!』

「私たちが止める……!」

「祭りの時間だコラァ!」

「はあぁぁっ!」

 

 

 

 グォオオオオオオオオオオォォオオオッ!

 

 

 

  そうして、俺たちとベヒモスの力比べが始まったーー。

 

 

 




次回、ついに絶望へ。
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