星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

133 / 354
どうも、熊です。遠隔授業面倒くさい

シュウジ「よっす、シュウジだ。前回は迷宮から脱出したな」

ハジメ「なんで二回も流されなきゃいけないんだよ……」

エボルト「様式美?」

ハジメ「いやな様式美だな!」

シュウジ「はっはっはっ。で、今回はクリオネ戦な。この作品始まって以降のレギュラーの初視点もあるぜ。それじゃあせーの、」


三人「「「さてさてどうなる海底迷宮編!」」」


冒涜なる進化

フィーラー SIDE

 

 

 

「最後の試練、さっさと終わらせてリベル達のところへ帰ろうか」

 

 

 

 背の上で、主人がそう宣言するのを聞く。

 

 確信に満ちた声。圧倒的な余裕のあるその一言で、主人の番と仲間たちの戦意が引き上げられるのを感じた。

 

 それは遍く魔の頂点たる力を持つ我を持ってして、この躯を震わせるほどの殺意すら感じさせる。

 

 少し、頭上にいる意思なき者に同情した。これより始まるは主人らの狩り、彼奴はただの障害物。

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

 

 

 であれば、それに付き従うが我が使命。この身、主人の盾となり、矛とならんとしてなんとする。

 

 否、否。それでは足りぬ。主人らの手を煩わせるまでもない。このような者、我のみで噛み砕いてくれよう。

 

 背の鱗を脈動させ、内より小さき分体を解き放つと意思なき者へ差し向ける。

 

「「「「グァアアアア!!!」」」」

「ーーーー!!!」

 

 矮小とて我が分身、その気になれば並みの魔物など瞬く間に食い殺そう。

 

 だが小癪にも意思なき者はその無数の触手で分身を捉えると、動きを封じて溶かしおった。

 

 しかし、その隙を突くように〝ぎょらい〟なるものが意思なき者に命中し、その体を大きく削った。

 

 それだけではない。氷の氷柱が、主人の中に巣食う赤き者が刃となって意思なき者を貫き、動きを止める。

 

「いい足止めだ。フィーラーナイス」

 

 むう、主人らの手を煩わせてしまったか。小手調べにはいささか軽すぎたな。

 

 

 

「オオオォォォォオオオオオオ!!!!!」

 

 

 

 しかし、次はそうはいかぬ。主人の感謝に答えられること、この出来損ないの怪物(フィーラー)証明してみせよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー最初に主人と出会ったのは、深く暗い寝床の底であった。

 

 

 我は、この世界をかき乱す者を喰らい殺すために作られた。

 

 我が最初の創造主、オスカーなる名を持つものは、我に〝自らに食らった者の力を付与する力〟を与えた。

 

 始まりは死肉を食らうただの鰐。しかし一つ、一つとまた食らう内、我はますます強き者になった。

 

 そして思考を獲得した時、我は最も強き魔となっていた。それはどうやら創造主達には都合が悪かったようだ。

 

 

 

 我は深く、暗き穴底に封じられた。

 

 

 

 我が背に乗せられた、我の完成品を守るという唯一の役目を仰せつかって。

 

 不満はなかった。言を理解し、理を知り、心を学べば、我は怪物であるとわかっていたからだ。

 

 誰も我を受け入れぬ。誰も我に笑いかけぬ。創造主らですら、役目を与え謝るのみで去った。

 

 であれば、我はそれを全うしよう。いつかこの背で眠る、本当に望まれた者の目覚めまで。

 

 そして、数千の時が過ぎた。我はじっと、我が背のものを迎えに来る者を待ち続けた。

 

 待って、待って、創造主らの顔すら忘れるほど悠久の時を経て、ようやくその時はやってきた。

 

 迎えが来たのだ。我が背のものは、ようやく自らの役割を得た。

 

 ウサギと、そう名付けられた背の者は、迎えに来た者達に受け入れられた。

 

 やっとだ。やっと眠れる。我が役目は終わった。これでこの世界が終わる時まで、心安らいでいられる。

 

 ああ……だが、少しだけ。悔しいのだ、我は。

 

 そう、悔しかった。世界を見ることもなく、誰かに笑いかけられることもなく、生まれた穴倉の中で死んでゆく。

 

 

 その時になってーーふと、恐れが浮かんだ。

 

 

 それまで感じたことのないもの、感じようはずもない感覚。

 

 寂寥感。孤独。苦しみ。そのようなものが駆け巡った。

 

 我も世界が見たい。思う存分空へ吠えたい。疲れ果てるまで大海原を泳ぎたい。

 

 誰かにーーよくやったと、そう言って欲しい。

 

 だから……誰でもいい、我が唯一の願いだ。

 

 

 

 

 

 我を、見つけてくれ。

 

 

 

 

 

「おろ、なんか下にいるな」

 

 わかっていた。そんな者は幻だ。夢だ。惨めな化け物が抱いた、叶わぬ願いだ。

 

「っしょっと……うわ、これものすごい広さだな。しかもなんかやべえの寝てる」

「敵か?」

「いや、とりあえず俺だけで降りるわ。ハジメ達はこの棺桶下の階に持ってって」

「わかった……この耳、まさかあいつじゃないよな……?」

 

 ああ、だからこそ嬉しかったのだ。

 

「よ、っと。ふぃ〜、改めて間近で見ると超でけえな。おい、お前生きてるか?」

 

 聞こえた声に、我は二十の目を全て見開く。

 

 その目で捉えたのはーー我と同じほどの、途轍もない化け物だった。

 

 なんだ、この怪物は。その上、体の中におぞましい何かが潜んでいる。

 

「……ん、ああこの知識か。へえ、ホムンクルスの情報はないのに裏情報はあるのね。女神様くれる情報偏ってない?」

 

 我には理解の及ばぬことを言いながら、その人間の形をした(ナニカ)は我の鼻先に触れた。

 

「強くなり過ぎた失敗作、か……はは、どっかで聞いたような話だな」

 

 

 

……お前は、なんだ?

 

 

 

 目でそう問うた。そうでなければ、長く住み着いたこの穴底から飛び出してしまいそうであったが故に。

 

 すると、そのナニカは寂しそうに笑い、それから我の鼻を軽く叩いた。初めての経験であった。

 

「お前さんと同じさ。本家の連中にしてみりゃ、暴走した人形なんて失敗作だろうしな」

「………?」

「……なあ、馬鹿でかい鰐さんよ。どうせだ、こんな狭っ苦しいところ出て俺たちと旅しないか?」

 

 この日、初めて我は驚きというものを知った。

 

 しかし、我は渇望していたのだろう。我を必要としてくれるものに。我に笑いかけてくれる誰かに。

 

 そして我は、この方のものとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オオォオオオオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの時から、我が思いは変わらぬ。

 

 主人は我に、多くを与えた。

 

 地を泳ぐ喜びも。

 

 空を仰ぎ見る安らぎも。

 

 久しく忘れ、忌避していた食らうことへの楽しささえも。

 

 この方のためであれば、我は神など容易く喰らい殺してみせよう。

 

 あの日、我を見つけてくれた恩を返すために。

 

「いい加減死ねや!」

「やっぱり厄介だねぇ!」

 

 幾たびかの攻撃、意思なき者へ主人らの攻撃が入り、意思なき者は散り散りな体を元へと戻す。

 

 ああ、自らが情けない。この身は強くありながら、しかし主人らの役には立てていないのだ。

 

 寄越せ、力を。我にこの方が頼れるほどの力を、誰か寄越せ。

 

「クルルルルル!」

 

 その時、我が周りを泳ぎ回っていた矮小なものが鳴いた。

 

 そちらに目の一つを向けると、矮小なものは特殊な思念を使い、我に自らの使い方を教えてくる。

 

 ……いいだろう。我がために作られたというのならば、その力存分に使わせてもらうぞ。

 

「クルルッ!」

 

 意思なき者を絡めとっていた触手の一つを使い、矮小なものを掴むと自らの額の鱗を開いて入れる。

 

 そして矮小なものが話が一部となった途端、我は自らの中に新たな力が生まれたことがわかった。

 

 

 

 

「オオォオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 主人らを狙っていた、意思なき者へ咆哮する。

 

 意思なき者の意識がこちらに向いたところで、我は本来であれば空を駆けるための翼を広げた。

 

 

 

能力再生(スキルブースト):水魔法】

 

 

 

 矮小なるものの力ーー我が体に刻み込まれた数多の力、その一つを強く呼び起こす。

 

 翼を腕のように動かした。さすれば周囲の海水は我が意のままに動き、意思なき者を水の結界に閉じ込める。

 

 

 

能力再生(スキルブースト):虚無魔法】

 

 

 

 次に主人と同じ力を使い、口元へ身体中のエネルギーを貯めた。

 

 逃げようとする意思なき者、息を飲む主人たち。その前で、我は自らの力の源を限界まで振り絞る。

 

 しかと見よ。主人よ、その家族よ、そして意思なき者よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オォオオオオオオォオオオオオァアアアアッッッーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これがーー我が力だ。

 

 

 

 

 

●◯●

 

 

 

 

 

シュウジ SIDE

 

 

 

 突然周囲の海水ごと操り始めたフィーラーが、なんかとんでもない光線を発射した。

 

 水中?何それ美味しいの?と言わんばかりで突き進んだ漆黒の柱は、逃げようともがく巨大クリオネに直撃する。

 

 おそらく海面まで突き進んだだろう光線は、フィーラーの全エネルギーを使っているのか見ていてゾッとする。

 

『ありゃあお前の〝抹消〟や、俺のブラックホールを生成する力と同じだな。触れただけでこの世から完全に消える』

 

 何それ怖い。

 

 俺も珍しくハジメたちと一緒にポカーンとしていると、少しずつ黒い光が消え始めた。

 

 そして完全に消えた時……そこにはもう、巨大クリオネのクの字も残ってないくらい何もない。

 

 それどころか、あまりの熱量に海の中に一直線に穴が開いて、海面が見えていた。

 

「………すげえって言葉しか出てこないの、俺だけか?」

「……ハジメ、今回ばかりはお前に全面的に賛成」

 

 互いの頬をペチペチするが、普通に痛い。ていうかハジメの方は義手だから痛い上に硬い。

 

「……多分これが、あの子の力。フィーラーの技能をオリジナルのレベルまで再生させて使えるようになる」

「ウサギさんや、それ先に言ってくれないかい?」

「……今フィーラーが言ってきた」

「あ、あはは、事後報告ってことで、いいのかなぁ……」

「……頭が痛くなってきたわ」

 

 引きつった顔で笑う白っちゃんと、眉間の辺りを揉んで唸る雫。

 

 なお、他のメンバーはまだ固まってる。あ、揺れまくったせいでシアさんの顔が青白くなってきた。

 

 いやー、まさかこんなところでフィーラーの強化イベントくるとは思わなかった。もはや魔改造だろこれ。

 

『これでいよいよ、()()()()に必要な戦力も整ってきたな』

 

シッ、それはもっと後まで秘密な。

 

『へいへい』

 

「とりあえずフィーラー、大勝利。お前が今日のM.V.P.だ」

 

 

 

オォオオオオオオォオオオオオ………

 

 

 

 嬉しそうに鳴くフィーラー。これで今後はさらに旅が楽になりそうだ。

 

 そんなことを思いつつ、この海域から移動するよう言おうとして……不意に敵意感知の魔法が反応した。

 

「後ろだ!」

 

 叫んだ時には、もう遅く。

 

 エネルギーを使い果たしていたのか、フィーラーは高速で脇腹に飛んできた触手達を避けられなかった。

 

 

 

オオオオオォオオオ!!?

 

 

 

 悲鳴をあげ、フィーラーの体が揺れる。

 

 当然上に乗っている俺たちも盛大にバランスを崩し、魔力が枯渇寸前だったユエなどは尻餅をつく。

 

 俺はなんとか踏みとどまったものの、安心する暇もなく触手が飛んできた方向を睨んだ。

 

 そこにはやはり。巨大クリオネの姿が。先ほどまで戦っていた奴よりかは小さいが、それでも十メートルはある。

 

「チッ、もしもの時のために分身を残してやがったか!」

「どうする、フィーラーはしばらく動けそうにねえぞ!」

 

 ハジメのいう通り、さっきの一撃に力を使い果たしたらしいフィーラーは動けそうにない。

 

 ……あのクリオネを倒すには、さっきのと同じレベルの攻撃を当てるのが一番手っ取り早いな。

 

 これまでの攻撃で火が効くっぽいのもわかってるが、あれを再生の暇なく倒せるほどの攻撃の用意には時間がかかる。

 

 遠距離攻撃、魔法が使える組は全員さっきまでの戦闘で消耗、シアさんはゲロってるし近接組では危険すぎる。

 

『ブラックホールでいくか?』

 

 いや、いい機会だ。〝あれ〟の性能テストをしとこう。

 

『……それは本気で言ってるんだろうな?』

 

 それまで平坦だったエボルトの声音が、さらに冷たいものへと変わった。

 

 この合理主義そのもののような冷徹宇宙人がわざわざ止めに入るほど、〝あれ〟の力は強力すぎる。

 

 力というよりは、危険なのは性質。その一点において、ブラックホールと同じほど極悪な性能を発揮できる。

 

 見つけたのは偶然だった。しかし文字通り()()()()()()()それに、あの一件以降封印した。

 

 あとでまた怒られても嫌だから、この辺りで使っておくべきだろう。

 

「ハジメ、二十秒稼げるか」

「……何するつもりだ?」

 

 俺の目を見てただならぬと判断したのか、ハジメは怪訝そうな顔で聞いてくる。

 

「あいつを確実に殺せるヤバいこと、さ」

 

 不敵に笑み、エボルドライバーを取り出して装着する。

 

『本当にやるんだな?』

 

ああ、まあ稼働時間には気をつけるさ。

 

「……よし、お前が倒せるっていうなら信じてやる。ユエ、ティオ、まだ行けるか?」

「ん、当然」

「かつかつじゃが、あと何回かは魔法を使えるぞ」

 

 頼もしい仲間に援護を任せ、俺は雫に向き直った。

 

 雫は案の定、またあの顔をしている。手は俺の袖に伸びており、それだけで何が言いたいのかわかった。

 

 その手を取って、なるべく安心できるように精神沈静化の魔法をかけて笑いかける。

 

「大丈夫。ちゃんと帰ってくるから」

「………約束よ」

「おうよ。俺は期待はいい意味で裏切るが、約束は守るぜ?」

 

 仕方がないわね、と笑った雫に頷き、俺はさっきからバシバシ触手の当たってるドームの外に目線を移す。

 

 結界を操作して一部に穴を開けると、自分の体の表面に風の魔法を使い、呼吸ができるようにして外へ出る。

 

 

 

 

 

さあ……最低最悪の実験を始めよう。

 

 

 

 

 

●◯●

 

 

 

 

 

 外に出ると、執拗に俺たちを殺そうとしていた巨大クリオネは外へ出てきた俺に注目を向け、触手を放ってきた。

 

 鋭い敵意を全身で受け止めながら、俺は異空間から〝それ〟を取り出す。

 

 アサシンエボルボトル。エボルトの力で俺の遺伝子から作り出した、オリジナルのエボルボトル。

 

「……期待外れにはなるなよ、暴れ馬」

 

 震える指先を精神力で押さえつけ、アサシンエボルボトルを顔の横に掲げる。

 

 もう一方の手にライダーエボルボトルを握り、両方の蓋を指で開けるとドライバーに装填した。

 

 

アサシン! ライダーシステム! 》

 

 

 ドライバーは、無事にボトルを認識する。

 

 

 

《レボリューション!》

 

 

 

 

 そして、次の瞬間。

 

 ビキリと、全身がひび割れるような激痛に襲われた。

 

「ガァアアアァアッ!!!?????」

 

 絶叫し、限界まで目を見開く。

 

 オルクスで最初に〝抹消〟が発現した後、魂を削る激痛に耐えた夜。

 

 あの時によく似た、されど遙かに激しい痛みは俺の全身を這い回り、まるで体の内側から捻るように痛めつける。

 

 脳がひっくり返り、内臓が裏返って、筋肉が無理やり引きちぎられ、骨をバラバラに握り潰されたかのような感覚。

 

 その中でいやに大きく自分の心臓の音が聞こえ、やがてそれさえも全身を這い回る何かに侵食される。

 

 思わずその場で膝をつくと、これ幸いと襲ってきた触手を、後ろからの援護攻撃が跳ね返した。

 

「「「「シュウジ!」」」」

「シュー!」

「シューくん!」

「シュウジさんっ!?」

 

 ……仲間の声が遠い。力に、痛みに頭を支配されそうになる。

 

『シュウジ!今からでもいい、ブラックホールに切り替えろ!』

「どうせっ、そのうち乗り越える、ことだっ……!」

 

 いずれランダと、本物の俺の友と戦うのならば……!

 

 

 

 

 

 耐えて、耐えて、耐える。

 

 

 

 

 

二十秒、十五秒、十秒。

 

 時間が経っていくうちに、少しずつ違和感は消え、痛みは引いていく。

 

 そして、ハジメたちに宣言した二十秒が経った時。

 

 それまでの苦痛が嘘のように、その何かはあっさりと俺の中に馴染んだ。

 

 自分の手を見ると、〝抹消〟の痣が全身に浮かんでいる。紫色の血管のようなものがとても不気味だ。

 

「……ふぅ」

 

 気分を落ち着けるために、息を吐く。

 

 それから風のように凪いだ心で開眼すると、立ち上がって巨大クリオネを睨んだ。

 

 右手でレバーを握り、回してエボルボトルの成分を引き出す。荘厳な音楽に不快な笑い声が混ざっていた。

 

 聞いているだけで気が狂いそうな音とともに伸びたチューブは、ねじれ曲がって檻のごとく俺を包み込む。

 

 レバーから手を離して両手を胸で交差させれば、身体中に枷のように黄金の円環が現れた。

 

 

  

 《ARE YOU READY?》

 

 

 

 最終宣告に、俺は不適に笑い。

 

「ーー変身」

 

 ゆっくりと、檻をかき分けるように腕を開いた。

 

 

 

《アサシン!アサシン!エボルアサシン!ブラスフェマスエボリューション!》

 

 

 

 冒涜、そう呼ばれるにふさわしく檻は激しく俺の体を包み込み、そして円環はそれを縛り付けるように一体化する。

 

 

 

《フッハッハッハッハッ!》

 

 

 

 視界が開け、笑い声が響く。

 

 紫色に染まった目に映るそこには煌びやかな、手甲に包まれた自分の両手。

 

 その手をよく見て、自分を見下ろせば、俺は全く未知のエボルへと進化していたのだった。

 

「ーーネオフェーズ1。成功だ」

 

 エボルアサシン。本来のエボルには存在しない力。

 

 そして……〝抹消〟の力を取り込んだ、俺にしか使えない力。

 

 今この瞬間、俺はそれを手に入れた。

 

「ーーーーーーッ!」

 

 命の危機を感じたか、巨大クリオネが無数の触手で圧殺せんとしてくる。

 

 俺はそれを、片手を掲げ小型のブラックホールを生成して防いだ。

 

 力の基盤となる〝抹消〟と相性が良い能力を特化させるエボルアサシンフォームは、触手を全て喰らい尽くす。

 

「ーーーー!?」

「痛いか?だったら覚えておけ……」

 

 ブラックホールの引力を増幅させ、逃げようとする巨大クリオネをこちらへと引き寄せる。

 

 慌てて触手を切り離そうともがく巨大クリオネを〝念動力〟で押さえ込み、じわじわと虚無の穴へと誘った。

 

 そして、俺と巨大クリオネの距離がわずか三メートルまで近づいた時。

 

 

 

《Ready Go!》

 

 

 

「ーーそれがお前の味わう、最後の感覚だ」

 

 密かに回していたレバーを手放し、漲る力に身を任せて飛び上がる。

 

 向かう先は、俺自身が生み出したブラックホール。

 

 それは俺が近づくにつれ圧縮されていき、そして空中で一回転した突き出した右足に黒点となって収束した。

 

 そしてブラックホールから飛び出した無数の紫色のチューブに絡めとられた、巨大クリオネに対して……

 

 

《Evoltich Finish! Ciao〜♪》

 

 

「ハァッ!!!!」

 

 俺は、絶死の一撃を叩き込んだ。

 

 その一撃は、無限の再生力を持つクリオネの概念そのものを消し飛ばし、逃れようとする肉体の断片を尽く黒点の中に飲み込んでーー

 

 パン、という乾いた音とともに弾け飛んだのだった。




読んでいただき、ありがとうございます。


【挿絵表示】


これがエボルアサシンのイメージです。モロなのでわかるでしょうが、アスリスタシリーズ参考ですね。

コメントをいただけると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。