星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、この章になってからやたらと文字数が増えてることに難儀している作者です。振られた回がUA多くて笑った。

エボルト「おう、最近全くセリフがないエボルトだ。前回はいよいよ王都侵攻が始まったな」

ハジメ「面倒臭いが、先生を助けるためならな。つーか御堂裏切ってんだけど」

エボルト「俺はあのクソ兄貴がまた出てきたことにキレそうだね。さて、今回はウサギの戦いだ。それじゃあせーの、」


二人「「さてさてどうなる王都侵攻編!」」




ウサギVSシザーロストスマッシュ

「…………見づらい」

「そりゃこんだけ暗ければな」

 

 思わず不満をこぼすと、ハジメが頭を撫でてくれる。

 

 思わず頬を緩めながら、でもこれ以上はアルバムを見るのは無理だと思って指輪の〝宝物庫〟にしまった。

 

 それから立ち上がって、時計塔から街の中を見下ろす。

 

 今にも壊れてしまいそうな大結界を見て、みんな騒いでる。怖がって、泣いて、逃げようとしてる。

 

 道端で呆然としてる人、荷物を持って王宮へ避難しようとする人、そんな人たちに家に入るよう叫ぶ兵士。

 

「……!」

 

 その中に、女を見つけた。

 

 誰もが逃げ惑う中で、大通りの中で()()()()()を開いた彼女は、はっきりとこちらを見上げている。

 

 初めは気づいていないみたいで、大結界の方を見ている。でも私はじっと彼女と目を合わせ続けた。

 

 他の人間とは違う、()()()()()()()()()彼女は……ふと、妖艶な紅色の唇を開いた。

 

 

 

 〝が ん ば り ま し ょ う ね〟

 

 

 

「っ!」

 

 その瞬間、全てを悟る。

 

「……そっか、ここにいたんだね」

 

 グリューエンの大迷宮にいなかったから、もしかしてマグマの下に沈んだんじゃないかと思ってた。

 

 私には、他のホムンクルスと一緒に作られ、わずかに言葉を交わした、遥か昔の記憶が残ってる。

 

 その中で誰より平和を愛し、そして帽子を愛した〝姉〟を思い出して……私は思わず微笑んだ。

 

「ウサギ、来るぞ」

「ん、わかった」

 

 でも、そんな時間はない。

 

 ハジメの声掛けに、前を見ると──ちょうど、最後の大結界が破れる瞬間だった。

 

 砕け散った三枚目の大結界の破片が美しく空へ飛び散る中、地響きを立てて魔人族と魔物の軍団が押し寄せる。

 

 そして、文字通り最後の砦である石の外壁へ殺到し──

 

 

 

 

 

 パチン。

 

 

 

 

 

 その瞬間、私の耳は確かに指を鳴らす音を捉えた。

 

 すると外壁から王都を守るように、新しくドーム状の結界が展開する。

 

 

 半透明のそれは、あらゆる侵攻を妨げた。

 

 

 物理的に壁を壊そうとしていた魔物も、魔人族の魔法の嵐も、空から入ろうとした灰色のトカゲや黒い鷲さえも。

 

 防いでるんじゃない。ただ()()()()()()()()()()()()()()()。巻き戻すように、何もかもを拒絶するのだ。

 

「おいおい、これはどういうことだ?実は四枚目がありましたってオチかよ?」

 

 街の中から困惑する声が聞こえる中で、ハジメも困惑してる。

 

 もう一度振り返って、あの人を探すけど……もう大通りには跡形もなく、帽子の一つも残ってなかった。

 

 でも、わかる。この結界は、力無き人々を守るための壊れない揺り籠を作れるのは、紛れもなく……

 

「……ありがとう、お姉ちゃん」

「お姉ちゃん?ウサギ、何言ってるんだ?」

「……なんでもないよ。ハジメ、作戦を始めよう?」

「あ、ああ、そうだな」

 

 一瞬困ったけど、ハジメは不敵に笑って銃を抜いた。

 

「じゃあ、お願い」

「…………」

 

 さっきからずっと隣にいた、()()()()()()()()()()()()()()()が頷いた。

 

 彼が手をかざすと、私たちの前に空間の亀裂が二つ生まれる。その向こうにはそれぞれ、外壁の上と街道があった。

 

「それじゃあ、頑張れよ。あと必要以上の怪我はしないようにな」

「ん、ハジメもね」

 

 私は街道へ、ハジメは外壁へ。

 

 亀裂をくぐると、そこは道の真ん中。後から私の方に現れた彼の空間魔法でワープしてきた。

 

 空を見上げると、ちょうど大きな白いトカゲが、灰色のトカゲの群れを引き連れて飛んでいくところだった。

 

「ハジメ、頑張ってね。私も頑張るから」

 

 あの冷たそうな名前の魔人族をけちょんけちょんにするハジメを想像しながら、私も準備に入った。

 

 街道の向こうからは、まだまだ魔人族と魔物の軍勢がやってくる。外壁を突破できない時の第二陣だろう。

 

 〝宝物庫〟から黒い、流線的なガントレットを取り出して装着する。シューズの方も魔力を流すと問題なかった。

 

「頑張ろうね」

「…………」

 

 最後に振り返って、男にそう言うと、彼は無言で頷いた。

 

「じゃあ、始めよう」

 

 

 

 ──月の小函(ムーンセル)、起動。

 

 

 

 心臓の位置にある月の小函(ムーンセル)の、生命活動用回路に接続された魔力を戦闘用回路に切り替える。

 

 すると瞬く間に数十倍に回転効率が上がって、全身から桃色の放電現象が起こった。

 

 ん、これなら平気そう。シュウジとハジメの作ってくれた新しいパーカーのおかげで、反動は回復できてる。

 

 ガントレットも、シューズも……壊れてない。エボルトの装甲から作ったらしいけど、頑丈だ。

 

「ふぅ……」

 

 息を吐き、気持ちを落ち着ける。

 

 そうすることで膨大な魔力のコントロールを確かなものにして、私は迫り来る軍勢へと目を向けた。

 

 右半身を引き、腰を落とす。腰だめに握りしめた拳を構え、近づく地鳴りに大地をしっかりと踏みしめる。

 

「第一段階解放……出力65%」

 

 そしていよいよ、先頭の魔物の顔が見えるくらいに近づいてきた、その瞬間。

 

兎貫(とっかん)

 

 踏み込み、拳を繰り出す。

 

 

 

ゴバァッ!!!!!

 

 

 

 街道に一瞬の静寂が響き──そして、私の突き出した拳から先の全てがことごとく吹き飛んでいった。

 

 地は抉れ、木々は風圧で消し飛び、そして魔の軍勢は肉と内臓を撒き散らして、みんなミンチになる。

 

「三割くらい……かな?」

 

 結構削れた。魔人族も魔物も立ち止まって、私を困惑した目で見てきた。

 

 後ろがにわかに騒がしくなる。私の攻撃で軍勢が減ったのを察知したんだね。

 

 

 

 ドッゴォオオオオン!

 

 

 

 後ろを振り向くと、ちょうど私に向かってこようとした、あの白いトカゲの周りの灰色のトカゲが吹っ飛んだ。

 

 爆炎の中から黒こげになった灰色のトカゲが落ちてきて、私は外壁に立つ黒いコートの彼を見る。

 

 

 

 〝こっちは任せろ。お前の方には一匹も行かせねえ〟

 〝……ん、ありがとね〟

 

 

 

 後ろの心配はいらない。だって、私が知っている誰よりも強くて、諦めの悪い彼が守ってくれるから。

 

「…………」

「わかってるよ。ありがとう」

 

 軍勢を指差す彼に、私は視線を前に戻す。

 

 すると、みんな殺気立っていた。怒った顔をして、私と彼を今にも飛び出しそうな目で睨んでいる。

 

 まるで私が後ろを振り向いていたことに怒っているみたいな……

 

「……あ、そっか。私が興味ないから怒ってるんだ」

 

 静かな街道に、私の呟きがこだまする。

 

 その瞬間、さっきよりもさらにすごい怒った顔で私を殺そうと襲いかかってきた。

 

 ん、この数は少し多いな。怪我したらハジメが怒るし、新しいパーカーをあんまり汚したくない。

 

 どうしようか考えていると、黒い鷲に乗った魔人族たちから大量の魔法が降り注いできた。

 

「よくも俺たちの仲間をぉおおお!」

「獣風情がぁあああああ!」

「殺してやるぞ、薄汚い小娘ぇえええええ!」

 

 そして鷲の上から、魔人族たちはそんなふうに言ってくる。

 

 ……薄汚い? ルイネとユエがデザインして、シュウジが作ってくれたこの服が、薄汚い?

 

「その言葉は、許せない」

 

 月の小函(ムーンセル)をフル回転させて、全身の回路に魔力を回す。

 

 迸る桃色の雷を左脚に纏い、回し蹴りの風圧で魔法を、ついでに前から近寄ってきてた魔物を全てかき消した。

 

 うん、やっぱりすごい。魔力を衝撃波に変える機能があるって言ってたけど、ちゃんと私にフィットしてる。

 

 驚いて固まった魔人族たちに、私はタカフルボトルをガントレットの手の甲についたスロットに入れる。

 

 そして魔力を固定して凝縮する機能を使って両手に拳サイズの球を作り、それを左右から投げ放った。

 

 タカフルボトルの性質を持つ球は、空中で何十にも分解して飛び回り、魔人族や、彼らの乗る鷲を、空に蔓延る魔物たちの頭を貫く。

 

「な、なんだこれは!?」

「避けろ!凄まじい貫通力を持っているぞ!」

「おのれぇ、獣人族ごときがぁ!」

 

 球を避けながら、魔法をこちらに放ってくる魔人族。むう、面倒くさい。

 

 あの球は一度打ち出すと消えるまで操作できない。なので仕方がなく、パンチの風圧で対応した。

 

 無数の炎弾、嵐のような風の刃の集合体、冷たそうな氷の杭。全部を月の小函(ムーンセル)から力を得て消し去る。

 

 ついでに、どさくさに紛れて近づいてきた魔物たちも蹴り殺した。みんな脆くて、全然強くない。

 

「くっ、なんなんだこいつは!本当に獣人族か!?」

「狼狽るな!空は我らの領域、全方位から魔法と石針で畳み掛けろ!」

 

 一つ目のおっきな魔物の頭をハイキックで刈り取ると、魔人族たちは上空で四方に分かれる。

 

 そうすると私を包囲して、すべての角度から魔法を撃ってきた。数で押しつぶそう、ってことなのかな。

 

「そんなに私は、甘くないよ」

 

 その全てを、全身に満遍なく強化を施すことで()()()()()()()()叩き落とした。

 

「なっ、分身して……!?」

「えい」

 

 固まってる魔人族の一人、一番大きな黒い鷲に乗ってる魔人族に一足飛びで近づいて、鷲の顔を蹴り飛ばす。

 

 すると、首の骨を折る感覚がして、鷲は魔人族と一緒に地上にいる魔物の群れの中に吹っ飛んだ。

 

「ミハイル隊長!?」

「おのれぇ!」

 

 驚いた他の魔人族たちが、至近距離で魔法を撃ち込んでくる。鷲のほうも変な針を飛ばしてきた。

 

 今度は分散させずに魔力弾を投げてすべてを相殺して、地面に着地する。

 

「……ん」

 

 その時に、少しチクッとした。

 

 肩を見ると、灰色の刺が刺さっている。さっき魔法に紛れて飛んできたのが、一本当たっちゃったのかな。

 

 刺が刺さった場所から、少しずつ肌が石になっていく。思わず顔をしかめると、魔人族たちは上で笑顔になった。

 

「やったぞ! コートリスの石針が刺さっている!」

「これで終わりだ!」

 

 さっきからこの針を飛ばしてきたあの黒い鷲、コートリスっていうんだ。

 

 とりあえず引っこ抜いて握り潰すけど、石化は止まらない。体の中に変なものが回ってる。

 

 ……どうしようかな。私はシアみたいに再生魔法で治せないし。

 

 それぞれの神代魔法の適性に特化した私たちホムンクルスは、他の神代魔法を使えない。不便だ。

 

「…………」

 

 とりあえず、ジリジリと近寄ってくる敵に左手だけで戦おうとすると、それまでずっと側に立っていた彼が肩に手を置いた。

 

 すると、みるみるうちに肩が治る。体の中にあった、変な感じもすぐに消えていった。

 

「ありがとう」

「…………(コクリ)」

「なっ、薬もなしにコートリスの石針を!?」

「あの男を殺せ、厄介な魔法を使うぞ!」

 

 魔人族が、彼に目をつけた。

 

 すぐに魔法陣が構築されて、私もろとも彼を圧死させようと様々な魔法が飛んでくる。

 

 もういい加減に見飽きてきたし……それに、さっきからすごい音がしてる外壁にいるハジメが心配だ。

 

「そろそろかな……もういいよ。()()()()()()

 

 だから私は、彼にそう囁いた。

 

「…………ッ!!!」

 

 彼は、待っていましたというように私と同じだった無表情を笑いに変えた。

 

 次の瞬間、私たちに魔法の嵐が炸裂する。すごい音がして、街道が盛大にえぐれた。

 

「やったか!?」

「獣ごときが、調子に乗るからだ!」

「…………ん? いや、待てっ! 何かがおかしいぞ!」

 

 煙が晴れて、周りが見えるようになる。

 

 まず最初に見えたのは、とても大きな腕。私たちを魔法から守ったその腕は月の光を覆い隠す。

 

 それがどかされると、またぽかんとした顔の魔人族達がいた。彼らは皆、私の隣にいる彼を見ている。

 

「グルルルル……」

 

 その腕は、彼のものだった。不釣り合いなほどに大きなそれは鱗に覆われていて、鉤爪はまるで剣山のよう。

 

「な、なんだあいつは!?人間じゃなkクペッ?」

「トーマスぅ!?」

 

 彼の突き出した右腕が、しゃべっていた魔人族を他の何人かと一緒に握りつぶす。

 

 開かれた彼の腕から血肉が滴り落ちて、地面に振り下ろされた腕に押しつぶされた。

 

「ガ、ァァアアアア──────!!!」

 

 そして、彼の体は変わり始めた。

 

 お父さんの……()()()()の姿から、本来の姿へ。木々をなぎ倒し、恐怖に固まっていた魔物を挽き肉へ変え、大きくなる。

 

 どんどん大きくなった彼は、やがて月の光をその体で覆い隠して──そして、魔人族と魔物達を20の目で見下ろした。

 

「な、な……」

「暴れて……フィーラー」

 

 

 

 

 

 オオォォォォオオオオオオオオオ!!!!!

 

 

 

 

 

 彼の叫びで、魔人族達が黒い鷲ごと吹き飛んだ。

 

 地面に叩きつけられて肉塊になる人、外壁まで飛んでいく人、空の上で弾けて死んでしまう人。

 

 全員、彼の目の前に飛ぶものは死に絶えた。夜の空に彼の喜んだ叫びがこだまして、私は微笑む。

 

 ひとしきり叫んだ彼は、ぐるりと振り返って、固まっている魔物達を見下ろした。

 

「ガ、ガァ……」

「オ、オォ……」

 

 

 オオォォォォォオオオオオオオ!!!

 

 

 怯える彼らに、フィーラーは大きく口を開けて飛びついた。

 

 魔物の絶叫が響き、王都を蹂躙するはずだった彼らはフィーラーの餌になる。よかったねお兄ちゃん、食べ放題だよ。

 

「これで、終わりかな」

 

 見た所、さっきので黒い鷲に乗ってた魔人族はみんな死んじゃった。

 

 あとはフィーラーが食べ尽くしてくれる。私も安心してハジメのところに……

 

「まだだぁぁああああ!!!」

「っ!」

 

 気配を感じて、咄嗟にその場を飛び退く。

 

 すると、たくさんの炎弾と一緒に、さっき殺したはずの大きな黒い鷲がさっきまで立ってた地面にめり込んだ。

 

 鷲は、ボウボウと燃えている。もう死んでるのに玉にされちゃったんだ。

 

「……かわいそう」

「おのれ、今ので押しつぶされればいいものを!」

 

 街道の隣にある林の中から、魔人族が出てきた。

 

 頭からは血を流していて、肩で息をしていた。髪は金色のツンツンで、ユエと違って固そう。

 

「あなた、誰?」

「な、なんだと!?」

「……………………あっ、あの大きな鷲に乗ってた人」

「き、貴様……!」

 

 顔なんて全然見てなかったから、思い出せなかった。私が蹴り飛ばしたから死んでなかったんだ。

 

 顔を真っ赤にしていたツンツンの人は、フィーラーのことを忌々しそうに見上げた後に私を睨んでくる。

 

「まさか、このような隠し球があったとはな。だが諦めんぞ、貴様を殺して、あの男の前にその死体を見せしめてやる」

「……一回蹴ったくらいで大げさ」

「赤髪の魔人族の女を覚えているだろう?」

「…………………………誰?」

 

 そんな人いたっけ。赤い髪の雌、赤い髪の雌……うーん、覚えてない。

 

「どこまでも侮辱しおって……! 貴様らが【オルクス大迷宮】で殺した女だぁ!」

「…………あっ、あの魔人族。シュウジが怒ってめちゃくちゃに壊した人」

 

 ようやく思い出した。雫と香織、美空と……あとは弱い人たちのことを殺そうとして、シュウジの逆鱗に触れた人。

 

 そういえばいたな、なんて思ってると、ツンツンの人は更に怒った顔をする。何か変なこと言ったかな?

 

「よくも、よくもカトレアを……優しく聡明で。いつも国を思っていたあいつを……」

「彼女は、あなたの何?」

「カトレアは俺の婚約者だ……!彼女を殺したお前達を、絶対に許さん!」

「そう……でも、謝れないよ」

「なんだと!?」

 

 目を見開くツンツンの人。

 

 私は胸に手を置いて、彼に話す。

 

「私が謝ったら、死ぬのを覚悟で戦った彼女を侮辱する。選択をしたシュウジの覚悟を軽んじる。だから私たちは、謝れない」

「き、綺麗事を!カトレアの仇だ、まずは貴様から殺してくれる!」

 

 そういって、ツンツンの人はポケットからあるものを取り出した。

 

「それって……ボトル?」

「あのような得体の知れない男から受け取ったものを使うのは気に触るが……やむを得ん!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()を振って、ツンツンの人は自分の首に押し当てた。

 

 体が紫色の煙に染まって、それが消えた時……ツンツンの人は、全身がツンツンになっていた。

 

『おお、力がみなぎるぞ!これで貴様を殺してやる!』

 

 さらにツンツンになったツンツンの人は、そう言って私に襲いかかってきた。

 

『うおおおおお!カトレアと部下達の恨みだ!』

「ふっ……!」

 

 魔力を回して、ガントレットの側面で拳をいなす。

 

 一回で終わらせるつもりで、50%くらいの力で胴体を殴ると……ガツン、と固い感触が返ってきた。

 

「むう、硬い」

『ハハハハ!手も足も出ないか!』

「それ、言うの早すぎる」

『減らず口を!』

 

 思わず身を引くと、ツンツンの人はどんどん殴りかかってきた。

 

 鋭い両腕に竜巻のように風の魔法を纏っていて、まるでミキサーのようだ。当たれば痛そうだな。

 

 強化に使っていた魔力の半分を回し、体の表面を覆うように展開して風ミキサーから全身を守る。

 

 その上でガントレットとグリーヴに魔力の強化を集中させて、ツンツンの人の攻撃を防いだ。

 

『どうした!防戦一方か!』

「…………」

 

 騒いでるツンツンの人を無視して、さっき一撃を入れたとことに何回も拳を叩き込む。

 

 返ってくるのは、やっぱり硬い感触。まるでフィーラーの鱗を叩いているかのようか感じだ。

 

『ははは!もう効かんぞ!』

 

 ツンツンの人は、調子に乗って雷やハサミの形をした何かまで飛ばしてくるようになった。

 

 それを避けて、まだ同じ場所を殴りつけていると、ふとこちらを見下ろすフィーラーと目があった。

 

 そのたくさんの目は、私に手伝いは必要か?と聞いている。気がつけば魔物は全滅していた。

 

「大丈夫だよお兄ちゃん、私は平気だから」

『何を世迷言を!』

 

 また、あの風ミキサーを纏ったパンチが飛んでくる。ガントレットで外にずらして、お腹に目を向けた。

 

 私はそれまでのように避けるのではなく、今度は真正面からストレートを突き込んだ。

 

「……出力60%、ラビットスマッシュ」

『だから効かんと言って──っ!?』

 

 私の拳は、硬かった鎧を砕いてツンツンの人の体を貫いた。

 

『ごはッ!? な、なぜ……!?』

「……同じ場所を攻撃し続ければ、いつかは壊れる」

『そんな、力技で──!』

「できる。それがパワー」

 

 思いっきり腕を振って、ツンツンの人を投げ飛ばす。

 

 宙を舞うツンツンの人。私は使用過多で自動的に閉じようとする回路に最後の魔力を回し、飛び上がる。

 

 

 

「出力65%──兎絶(とぜつ)」 

 

 

 

 そして、私は大きく振り上げた足をツンツンの人に叩き込んだ。

 

 正確に先ほど貫いた場所をかかとで抉り、ツンツンの人は凄まじい速度で地面に激突する。

 

「よっ、とと」

 

 着地して、魔力の使いすぎで思わずふらつく。

 

 すると、黒くて大きな尻尾が支えてくれた。見上げると、フィーラーが私を静かに見下ろしていた。

 

「ありがと、お兄ちゃん」

 

 

 オオォォオオオ……

 

 

 お礼を言って、もう休眠しかけていた月の小函(ムーンセル)から最後に体を回復するための魔力を絞りだす。

 

 その魔力でパーカーに付与された回復魔法を使い、疲れた体を回復すると地面にできたクレーターに近づいた。

 

「ごほっ……よもや、ここまでの力、とは……」

 

 クレーターの中心では、元の頭だけツンツンに戻った人が横たわっていた。

 

 さっきの一撃で完全に全身を破壊した。彼はもう死ぬのだろう。

 

「あなた、強かったよ。恋人さんも誇らしいだろうね」

「此の期に及んで、皮肉を……ああ、だが感謝する」

「何のこと?」

「……お前は、カトレアの覚悟を笑わなかった。敵ながら、そこだけはありがとうと言っておこう」

 

 ……ああ、この人はきっと本当にあの人のことが好きだったんだろうな。

 

 私の役目は、人間をエヒトから解放すること。そのために作られ、戦えるように設計されたアーティファクトだ。

 

 けれど、お父さん達は私たちに人族だけを守れとは言わなかった。私たちが守る価値があると思ったものを守りなさい、と。

 

 もし、出会い方が違っていたのなら……この人と、あのシュウジの大切なものを傷つけた彼女も守れたのかな。

 

「次生まれた時は、殺し合わないといいね」

「はっ、どうだ、か、な……」

 

 ……死んじゃった。

 

 目を閉じて動かなくなったツンツンの人……確かミハイルって言ったっけ……に、私は合掌する。

 

 こうすることで死んだ人を思うと、ハジメが教えてくれた。

 

「かわいそうな人たち。エヒトに踊らされて……ハジメ達と一緒に、ちゃんと倒すからね」

 

 お祈りをして、私は目を開ける。

 

 すると、ミハイルさんの近くにボトルが落ちているのに気が付いた。

 

「真っ黒になってる」

 

 手に取ると、紫色だったボトルはなぜか真っ黒になってた。キックの摩擦熱で焦げたのかな?

 

「わっ!」

 

 首を傾げた途端、一瞬で目の前を赤い何かが通り過ぎた。私でも反応できないような早さだった。

 

 びっくりしたな……ん、あれ。いつの間にかボトルが消えてる。ちゃんと手に持ってたのに。

 

「まあ、いっか。あとでハジメに言おう」

 

 

 オオオオオオオォォォ……

 

 

「うん、勝ったね。ハジメの方も終わったみたい」

 

 外壁の方を見ると、いつの間にか静かになっていた。その上でハジメが手を振っている。

 

 もう周りに敵はいない。魔物も、魔人族も、一人も、一匹も残さずに倒しきった。

 

「いこ、お兄ちゃん」

 

 

 オオオォォォ……

 

 

 頭を下げたフィーラーの鼻の上に乗って、私達はハジメのところへ帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これでまずは一本……残りの二本もあと少しだ』




帽子屋さん、覚えてるかな?覚えてない人はメルド団長とセントレアさんのデート回を見てね!

最近ジョジョ見てるんですけど、めっちゃ面白いですね。
つーかミハイルさんの攻撃、なんかワムウ様みたくなった。


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