星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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うーん、前回は感想が少なかったです。
やはりネタが最強なのか…?

シュウジ「さてさて、今回もあらすじだ。前回はいい感じにエボルトたちが活躍してたな」

エボルト「特にハジメは表彰もんだな。あいつの感情には恐れ入るぜ」

シュウジ「くう〜、動かない自分が恨めしいぜ!」

エボルト「まあなんにせよ、今回でベヒモスとの戦いは終わりだ。結果がどうあれ、な…それじゃあせーの、」

シュ&エボ「「さてさてどうなる迷宮編!」」


絶望へと フェーズ3

 メルド SIDE

 

「急げお前たち、一刻も早く子供たちを助けるぞ!」

「「「はい!」」」

 

  メルド・ロギンスは、怒号に近い声をあげながらトラウムソルジャーたちと交戦している光輝たちの元へと走った。その後を、騎士団員たちがついて来る。

 

  くそっ、ただの遠征のつもりが、こんな事態になるとは。しっかりと子供たちを管理できていなかった俺の責任だ!

 

  あるいは、あの時シューの提案にすぐ頷いておけば、この事態を回避できたかもしれない。

 

  しかし、そんなものは後の祭り。いつまでも悔やんでいるわけにもいかない。速やかに作戦を遂行し、地上へ撤退しなくては。

 

 

 グォオオオオオオオオオオォォオオオッ!

 

 

「だ、団長!」

「大丈夫だ!」

 

  背後から聞こえてきたベヒモスの声に、団員の一人のカイルが焦ったような声を出す。俺はまた大声で、それを抑えた。

 

  ベヒモスは、エボルトたちが四人がかりで抑えている。ここまでの道中でも、あの三人の戦闘能力はズバ抜けていた。

 

  特に驚いたのは、〝錬成師〟の坊主だ。ステータスは平均、気弱そうな見た目から心配していたが、むしろ一番戦い慣れしている。

 

  聞けば、シューとは幼馴染で、小さい頃から鍛えられていたようだ。それならば頷ける。おそらく、経験ならステータス頼りの光輝よりはるかに上だ。

 

「頼んだぞ……!」

 

  だから俺は、そんなあいつらならなんとかしてくれると信じて足を動かす。すると、シューの姿が見えた。

 

「竹の子狩りじゃあ!」

 

  シューは、蛇の魔物を圧倒的な力で翻弄していた。最初蝙蝠のような鎧を纏った時は驚いたが、頼もしいものだ。

 

「あの魔物は心配なさそうだな!お前たち、今のうちに行くぞ!」

 

  もう一度団員たちを激励し、子供たちの元へと急ぐ。いつもなら容易く過ぎる一分一秒が、とても長く感じた。

 

「団長、見えました!」

 

  イヴァンの言葉に前を見ると、トラウムソルジャーに包囲されている子供たちと団員が見えた。

 

「皆、慌てるな!二人以上で連携をとってやるんだ!」

 

  子供たちは、どうやら光輝が指揮をとることで冷静さを取り戻したようで、周囲に声を掛け、団員たちと連携を取って対応しているようだった。

 

「まだ実力は成熟しきってないが、良いカリスマ性だ……!」

 

  エボルトの言う通り、光輝はまだスペックの高さに技量が追いついていない。

 

  だが、このカリスマ性の使いどころ、適材適所をあいつはよくわかっている。以前ある組織を束ねていたと聞いたが、さすがだ。

 

「お前たち!」

「メルドさん!」

「今までやってきた訓練を思い出せ!気をぬくんじゃないぞ!」

 

  指揮に加わりながら、剣を引き抜いてトラウムソルジャーを両断する。これでも騎士団長の称号は、伊達ではない。

 

  襲いかかって来るトラウムソルジャーを相手取りながら、戦場を見渡し情報を集めようとした。皆満身創痍で、消耗している。

 

「被害状況は!」

「……メルド騎士団長」

「うおっ!」

 

  団員に聞こうとすると、不意に隣から声が聞こえた。驚きながらそちらを見ると、そこには髪で目元の隠れた一人の少女がいる。

 

  確か、〝御堂英子(みどうえいこ)〟という名前だったか。戦闘職の天職だった気がするが、声をかけられるまで全く気配を感じなかった。

 

「トラウムソルジャーの数は約200体。対して騎士団員は全員限界に近い状態。クラスメイトたちはスペックで耐えていますが、そう長くは持たないでしょう。そちらは?」

 

  淡々と状況を説明した少女に、俺は内心驚く。まさかこの状況で、冷静に状況を理解できるものが子供たちの中にいるとは。

 

「あ、ああ。ベヒモスを、シューの手があくまでエボルトたちが抑えている。坊主が〝錬成〟で足止めして、それを他の三人がフォローしている」

「ハジメが!?」

 

  こちらの作戦を伝えていると、団員たちを回復させていた美空が目ざとく反応して、こちらに来た。しまった、聞かれていたか。

 

 

《エボルテックアターック! Ciao〜♪》

 

 

  「どういうことですか!?」と詰め寄って来る美空に言いあぐねていると、不意にそんな声が聞こえた。

 

  反射的にそちらを振り返ると、金属製のコウモリの翼を生やしたシューが、ボロボロの魔物にとどめを刺すところだった。

 

  これでひとまず安心か、そう思った次の瞬間、粉砕した魔物の破片から出てきた女に目を見開く。

 

「あれは!?」

「なんで、魔物の中から人間が!?」

 

  美空と二人で驚愕していると、シューが「ルイネッ!?」と名前と思しきものを叫ぶ。そこからは動揺が伝わってきた。

 

  シューが、動揺している?そんなの今まで一度も見たことがない。いや、それよりもあの女のことを知っているのか?

 

  俺たちが混乱している中で、無防備に地面に落ちたシューが女が落ちていった奈落を見下ろした。

 

  そして、何やら筒のようなものを武器に差し込んで撃つ。そしてまた奈落を見下ろして、そのまま動かなくなった。

 

チッ、よりによってこんなタイミングであのバカ姉は……メルド騎士団長、作戦変更です。お師しょ…んんっ、北野くんが動かない以上、ベヒモスを倒す決定打がありません。ソルジャーたちを突破して安全地帯を確保、そこからの魔法の一斉掃射で時間を稼ぎ、南雲くんたちが離脱次第撤退することを推奨します。幸い、彼のおかげでソルジャーの増加は止まっている。行くなら今です」

「ぬ、それは……」

 

  確かに、一番良い作戦だ。だが、ただでさえ危険な役割を任せている坊主たちを、さらに危険にさらすものでもある。

 

  しかし後がないのも事実だ。今はなんとか全員頑張っているが、香織や美空がいつまでも回復魔法を使えるわけではない。

 

「そんなの、ハジメたちに魔法が当たったらどうするの!?」

「そうしたらあなたが治したらいいでしょう。今の段階の実力だったら、四肢がもげることもない。せいぜい軽傷で済むわ」

「なっ……」

 

  この少女、判断が早い。いや、早すぎる。これが本当に、争いのない平和な世界から来た人間なのか?

 

  見れば、髪の隙間から覗く彼女の目はどこまでも澄み渡り、かつ無機質な、〝指揮者〟としての目だった。思わず、ゾクリとする。

 

  エボルトと同じような雰囲気を持つ少女は、美空をうまいこと言いくるめると、こちらに判断を求めて来る。

 

「……仕方がない、それしかもう方法はなさそうだからな」

「賢明な判断です。さあ、それなら早く指示を」

 

  英子の促しに頷き、俺は大声をあげて撤退を宣言する。すでに限界だったのか、子供たちの行動は早かった。

 

 騎士団員達のサポートがなくなり、パニックを起こして泣きそうな顔で武器を振り回していた生徒たちは、最後の抵抗となんとか連携を取り始めた。

 

「光輝、これから撤退する!退路を開けるか!」

「わかりました!皆、諦めるな!道は俺が切り開く!」

「石動さん、白崎さんのところに行って一緒に魔法を使って。あのクs……んんっ、天之河くんの言葉でなんとか活気が戻ってるから、精神を鎮めさせるのよ」

「……わかった」

 

  渋々といった様子で美空が香織の元へと向かい、光輝が〝天翔閃〟でソルジャーをなぎ倒して道を作り始めた。

 

  香織たちの魔法で精神を落ち着かせた他のものも、それぞれ行動を開始する。あるものは治療を、あるものは攻撃を、あるものは防御を。

 

 治癒が終わり、復活した騎士団員達も加わり、反撃の狼煙が上がった。強力な魔法と武技の波状攻撃が、怒涛の如く敵目掛けて襲いかかる。

 

「……このままいけば突破できそうですね。メルド騎士団長、今のうちです。私たちも行きましょう」

「あ、ああ……」

 

  剣を抜いて戦線に加わっていった英子に、俺は戸惑いながらも剣の柄を握りしめて、トラウムソルジャーを掃討する。

 

  そうして戦うこと数分、奮闘の甲斐あって、階段への道が開けた。

 

「皆、続け!階段前を確保するぞ!」

 

  光輝が掛け声と同時に走り出す。しんがりを務めながら、俺もそれに続く。俺はどこか、ソルジャーを斬りながら言いようのない不安を感じた。

 

「あと少しだ!」

 

  そんな俺の心境をよそに、必死に全員が足を動かし、そして遂に包囲網を突破したのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

 三人称 SIDE

 

「や、やった…!」

「これで帰れる……!」

 

  すでに心身ともに限界だった少年少女たちは、へたり込みながらそう言った。彼らは一刻も早く、この階段を上って逃げ出したい心境であった。

 

「いいや、まだだっ!」

 

  しかし、メルドがそう言いながら壁のように密集して来るソルジャーを斬り伏せた。〝天翔閃〟にも劣らない一撃だ。

 

 その行為に、全員が訝しそうな表情をする。それもそうだろう、目と鼻の先に安全地帯があるのに、なぜまだ戦う必要があるのか。

 

  その中には光輝もいた。それでもメルドだけ戦わせるわけにはいかないと、ソルジャーたちを蹴散らす。

 

「皆、待って!まだハジメたちが戦ってる!」

「南雲たちは四人だけで、あの怪物を抑えてるの!」

 

 美空と香織のその言葉に、何を言っているんだという顔をする光輝。彼の中ではまだ、ハジメは〝無能〟なのだ。

 

  だが、事実は違った。メルドと光輝の活躍により、減少したソルジャー越しに見える橋の上では、ハジメたちが戦っていた。

 

「何だよあれ、何してんだ?」

「あの魔物、上半身が埋まってる?」

「ねえ、頭の上で八重樫さんたちが攻撃してない?」

 

 次々と疑問の声を漏らす生徒達に、メルドが大声で指示を飛ばす。

 

「そうだ!あいつらがベヒモスを抑えているから撤退できたんだ!前衛組!ソルジャーどもを寄せ付けるな!後衛組は遠距離魔法準備!俺が合図して、アイツらが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」

 

 ビリビリと腹の底まで響くような声に、気を引き締め直す生徒達。中には、階段の方向を未練に満ちた表情で見ている者もいる。

 

  無理もない。ついさっき死にかけたのだ。一秒でも早く安全を確保したいと思うのは当然だろう。

 

「何をぼさっとしている!早くしろっ!」

 

  だが、メルドの怒声に未練を捨て、戦場に戻った。

 

(クソッ、なんで俺が……)

 

 その中には檜山大介もいた。自分のしでかした事とはいえ、本気で恐怖を感じていた檜山は、直ぐにでもこの場から逃げ出したかった。

 

(……待てよ)

 

 しかし、ふと脳裏にあの日の情景が浮かび上がる。

 

 それは、迷宮に入る前日、ホルアドの町で宿泊していた時のこと。緊張のせいか中々寝付けずにいた檜山は、トイレついでに外の風を浴びに行った。

 

  その帰り、たまたま香織を見かけ、物陰に身を潜めながら後を追った。ここですでに、小物臭がにじみ出ている。

 

  すると、香織は途中で別の通路からきた美空とニコニコと何かを話していた。そのとき二人の間で交わされた殺気に思わず身震いしたのは内緒だ。

 

  最終的に頬を引っ張りあって歩いて行ったので後を追うと、二人はとある部屋の前で立ち止まりノックをした。

 

 

 

  そして、その扉から出てきたのは……ハジメだった。檜山は頭が真っ白になった。

 

 

 

  檜山は、香織に好意を持っている。だが自分では、到底釣り合わないと理解し、光輝のような別次元の存在ならと諦めていた。

 

 しかし、ハジメは違う。自分より劣った存在(檜山はそう思っている)が香織の傍にいるのはおかしい。そもそも彼女がいるじゃないか。

 

  それなら自分でもいいじゃないか、と端から聞けば頭大丈夫? と言われそうな考えを檜山は本気で持っていた。

 

 

 

  実際、この考えは見当はずれもいいところだ。

 

  ハジメはその気になれば檜山など足元にも及ばない実力であり、かつ趣味の延長で将来も約束されているようなもの。

 

  性格も時々シュウジのことで暴走気味とはいえ、非常に良い。むしろ優良物件である。それを理解できないから檜山は小物なのだ。

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

(なんで、なんであいつが……!)

 

 唯でさえ溜まっていた不満は、すでに憎悪にまで膨れ上がっていた。檜山の心は、黒く染まっている。

 

  香織が見蕩れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなって現れたからだろう。

 

  それだけではない。檜山が恨む人間は他にもいる。それは言わずもがな、シュウジとエボルトだ。

 

  二人は地球でも散々自分を嘲笑い、見下した目で見ていた。当たり前だ、普通に考えて檜山は人間的にゴミ以下の価値もない。

 

  恨めしく思えど、先日の一件然り二人は光輝以上のハイスペック。檜山が何かしたところで、何もできず終わるのがオチだ。

 

(だが、この状況でもし……)

 

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 昏い思考を働かせる檜山は、ベヒモスを〝錬成〟で抑えるハジメや動かないシュウジを見た後、今も祈るようにハジメを案じる香織を視界に捉え……

 

「……ひひっ」

 

 酷く、ほの暗い笑みを浮かべた。

 

 

 ●◯●

 

 

 エボルト SIDE

 

 一方、その頃のエボルトたちは。

 

『おいハジメ、魔力は後どれくらいだ!?』

「ごめん、もう限界かも……!回復ジュースも切れちゃった……!」

『くっ……』

 

  だんだん、状況は悪くなっていた。聞いての通り、すでにハジメの魔力は切れかかっている。こいつの〝錬成〟が一番の要なのに!

 

  しかもベヒモスも慣れ始めたのか、俺たち三人がいくら攻撃したって無視して脱出しようとしやがる。

 

「シュウジは、まだ来ないの!?」

「そろそろ、腕も限界だぞ!?」

 

  流石に金属の塊を振り回すのは消耗が激しいのか、雫と坂上も悲鳴を上げ始めた。額には大量の汗が流れている。

 

『残念だが、あいつはこれねえようだ!』

「なっ、どういうことだ!?」

『ちょっと色々あってな!』

 

  知っての通り、分離していても俺とあいつの思考は共有されてる。だからあいつのショックも伝わってきた。

 

  いかにシュウジといえど、流石にあれはすぐには処理し切れんだろう。あいつの前世の記憶を見た俺だからこそ、わかることだ。

 

  しかも聞いたところによると、どうやら作戦変更らしい。魔法の一斉掃射が始まる前に逃げる必要がある。

 

  それにしても……あの女の正体は気になるところだ。が、今はそれよりも離脱することが先だろう。

 

『とにかく、あいつが動けない以上いつまでもこんなことをやってる意味はねえ。ハジメの魔力が途切れ次第、俺が瞬間移動で一人ずつ運ぶ!』

「了解!」

「ならせいぜい、後少し頑張るとするか!みーたんに良いところ見せたいしな!」

 

  約一名動機が不純な奴がいたが、とにかくスルーだ。今はこの状況を脱する方に思考を使わなくちゃいかん。

 

 

 

 オオォオオオオオオオオオオォォオッ!!!

 

 

 

  ベヒモスは全身に力を込め、錬成で固まった地面に亀裂を入れながら立ち上がろうとしている。タイムリミットが近づいていた。

 

「ごめんエボルト、後一回が限界だ!」

『そうか、それじゃあ俺が合図したら使え!3、2、1……今だ!』

「〝錬成〟ッ!」

 

  数十度目の、そして最後の〝錬成〟が行われ、無数の亀裂の入った石橋が固められる。その瞬間、俺は一番近くにいた雫を抱えた。

 

  そして瞬間移動し、安全地帯に行くと雫を下ろし、もう一度ベヒモスの元に戻って今度はハジメを回収した。

 

『あとは坂上を……』

 

 

 

 グォオオオオオオオオオオォォオオオッ!

 

 

 

  最後に坂上を回収しようとした瞬間、ベヒモスが地面を破裂するように粉砕させ、ベヒモスが咆哮と共に起き上がる。

 

「うおおおおおおおっ!?」

 

  当然、頭の上にいた坂上は空高く打ち上げられ、宙を舞った。まずい、あの高さから落ちれば死ぬ!

 

『ええい、瞬間移動で間に合うか……』

「坂上くんっ!」

 

  一か八か瞬間移動しようとしたその瞬間、隣を一陣の風が駆け抜けた。

 

  咄嗟に目で追いかければ、ラビットエボルボトルを片手にハジメが疾走していた。まさかあいつ、助けに行くつもりか!

 

  俺の予想通り、文字通り神速のごとき速度でトラウムソルジャーの間をくぐり抜け、石橋を駆けたハジメは跳躍し、坂上の体をキャッチする。

 

「エボルトォオオオオオオオッ!」

「のわぁああああっ!?」

 

  そして、思いっきりこちらにぶん投げてきた。すでに限界に近いスーツをフル稼働させ、坂上を受け止める。

 

「ごはっ!」

『どけ、邪魔だ!ハジメ、早くそこからーーグッ!?』

 

 

 バヂッ!!!

 

 

  石橋の上に落ちたハジメを迎えに行こうとした瞬間、スーツに激しいスパークが走った。各所から煙が上がり、アラームが鳴り響く。

 

『スーツが、限界を、超えた、のか……!』

 

  そりゃああんな化け物装甲の魔物をぶったたけばイカレるとは思ってたが、ここでそれがくるかよ!

 

「今だ、撃てーーーーッ!」

 

  俺が動けないでいるうちに、魔法の一斉掃射が始まった。色とりどりの、あらゆる属性の魔法がベヒモスに降り注ぐ。

 

  それは案の定、ベヒモスにとっては大したダメージになっていない。だがしかし、足止めには十分な威力のようだ。

 

『ハジメ、走れぇえええええええっ!!!』

 

  全身を駆け巡る激痛に苛まれながら、俺は叫ぶ。立ち上がったハジメは転けそうになりながらも、こちらに走ってきた。

 

「ハジメ、早くッ!」

「南雲くんっ!」

 

  隣で、美空とカオリンが叫ぶ。

 

『クソッ、なぜ体が動かない!?動け、動けっ、動けッッッ!!!!』

 

  なにが星狩りだ!なにが究極の存在だ!俺は、俺は友一人すら、救うことができないのかっ!

 

  自分を呪っている間に、ハジメはこちらに向けて一直線に走ってきていた。このままの速度でいけば、無事にたどり着く。

 

  自分に対して怒りを感じながらも、ニヤリと仮面の下で顔を歪め……

 

 

 

 

 

 ギュンッ!

 

 

 

 

 

『何っ!?』

 

 魔法の一つが、突然曲がってーーッ!?

 

「!?」

 

  俺以上に驚くハジメの眼前に、その火球は突き刺さった。着弾の衝撃波をモロに浴び、来た道を引き返すように吹き飛ぶ。

 

「ハジメッッ!!!」

「南雲くんっ!」

 

  美空たちが叫ぶ。こんな状況になってなお、俺の体は動かなかった。

 

 俺たちの視界の先で、ハジメがフラフラと立ち上がる。そして、少しでも前に進もうと歩き始めた。

 

 

 

 

 グォオオオオオオオオオオォォオオッ!!!

 

 

 

 

 が、ベヒモスも何時までも一方的にやられっぱなしではなかった。ハジメの背後で、三度目の赤熱化を果たした頭をかざす。

 

『クソッタレがぁ………!』

 

  俺はそれを、ただ見ていることしかできなかった。そうしているうちに、振り返って咄嗟に飛び退いたハジメにベヒモスの頭が振り下ろされた。

 

 

 

 ドォォオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

 

  次の瞬間、激烈な衝撃が橋全体を襲う。ベヒモスの攻撃で橋全体が震動し、メキメキと橋が悲鳴を上げ……そして、崩壊を始めた。

 

 

 

 グルァァアアアァアア!?

 

 

 

 悲鳴を上げながら、崩壊し傾く石畳を、爪で必死に引っ掻くベヒモス。しかし、引っ掛けた場所すら崩壊し、抵抗も虚しく奈落へと消えていった。

 

「う、うわぁあああぁあああっ!?」

 

  ベヒモスの断末魔が木霊する中、ハジメもまた、悲鳴をあげてなんとか這い上がろうとしていた。

 

  だが、時間は無情に過ぎていく。必死の抵抗むなしく、石橋は崩壊し、ハジメは落ちていった。

 

 

《READY GO!》

 

 

《エボルテックアタッーク!》

 

 

  その時。そんな聞き慣れた自分の声が耳に届いた。

 

 

 

 

 

「ハジメェェエェェエッ!!!」

 

 

 

 

 

  アラームが鳴り響き、パネルが真っ赤に染まる中で、復活したシュウジが翼を生やし、ハジメの消えていった奈落へと飛び込んだ。

 

『シュウジッ!!!』

 

  この期に及んで動けない俺の叫びは、届くことなく。石橋だった大量の瓦礫とともに、二人の姿は消えた。

 

  それから数秒して、ようやくスーツのシステムが正常に戻る。俺は即座に瞬間移動をして、奈落の底を覗いた。

 

  だが。どんなに目を凝らしても、直ったばかりのカメラアイを使っても、二人の姿はもう、どこにもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

『シュウジィィィイイイイイッ!ハジメェエエエエエエエエッ!』

 

 

 

 

 

 

 

  最後の最後まで何もできなかった俺の叫びは、奈落の闇へと吸い込まれて消えていくのだったーー。

 




はい、落ちましたね。
この後は…さあ、ようやく物語の始まりだ。
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