シュウジ「それ面白いから?絶対面白いからあえて黙ってたよな?」
エボルト「いや、お前の成長を思ってだな……ククク」
ハジメ「いや、その反応明らかにギルティだろ……」
シュウジ「……はあ、まあいいわ。んで、今回は坂みんたちのサイドだな。それじゃあせーの、」
三人「「「さてさてどうなる王都侵攻編!」」」
パキャァアアアアン!!
「ッ! 一体なんだ!」
自室でシャドーボクシングをしていた龍太郎は、突然のガラスが割れるような音にすぐに警戒心を持つ。
この世界に来てグリスになって以降、地球での鍛錬以上に自分を虐め抜いた龍太郎の反応速度は素晴らしいものだった。
「……何も、ないな」
しばらくして、差し迫った脅威の気配を感じなかったので構えを解く。
「何か、起きてやがるな」
直感的に異変を悟った龍太郎は、椅子にかけていたタオルで汗を拭くと上着を着込んだ。
筋骨隆々の体は服を着てもなお逞しい。ちなみに昨日、上半身裸でたまたま遭遇した鈴にビンタを食らった。
(とりあえず、一番近い部屋にいる谷口と合流するか。そのあとは光輝だ)
オルクスの一件での後、龍太郎は無理を言って鈴と曲がり角を挟んだ部屋に移動した。
もしまた、目の前で鈴が危ない目にあったら。そして自分の手が届かなかったら。そう思うと不安で夜も眠れなかったのだ。
女子たちの面白いオモチャを見つけた反応が厄介だったが、安心して眠れるので差し引きゼロである。
「っし、いくか」
机に置いていたドライバーを手に取って、念のために装着しておく。
そうすると警戒しながら部屋を出て、極力気配を殺しながら廊下を素早く移動した。
「なんか騒がしいな……さっきの音も気になるし……まさか魔人族が攻めてきたんじゃねーだろうな?」
その予測は正解であったが、それを教えるものはこの場にはいない。
足音を消して小走りに移動すること、2分ほど。王宮だけあって個室が広いため、それなりに隣の部屋も遠い。
最後の角を曲がり、龍太郎は軽く息を整えると、恐る恐る握った拳で小さくノックをした。
「んぁ……だぁれ……?」
「谷口、俺だ。今いいか?」
「ッ!!? ちょ、ちょっと待って!」
部屋の中で寝ぼけ眼で返事をした鈴は、一瞬で目を覚ますとワタワタと慌て始める。
もとより先ほどの音で眠りが浅くなっていた彼女は、いきなりの想い人の来訪にめちゃくちゃ頭が冴えていた。
(えっ、うそ!?まさか龍っち、いきなりそういうこと!?せ、せめて恋人になってからでも……!)
何やら素晴らしい勘違いをしながら、鈴ははだけたパジャマを直して身だしなみを整える。この女、マジである。
そっと扉を開けると、真剣な顔の龍太郎が立っている。見上げるような体とその表情に思わず頬を赤くした。
「りゅ、龍っち?こんな時間に、いきなりどうしたのかな……?」
「谷口、今すぐ動けるか?」
「今すぐ激しい運動をっ!?」
「は?」
「ああああいいいやなんでもないなんでもないYO!」
鈴はなんか変なテンションになった。
「お、おう……さっきの音は聞いたか?」
「さっきの?あっ、何か割れるような音?誰かがお皿でも割っちゃったのかな?」
んーと虚空を見上げて言う鈴に、龍太郎は何かが起こっていることを伝えた。
グリスになってからの彼の直感を信じている鈴は、何やらただならぬことだと察して意識を切り替える。
一言断ってから室内に戻り、迷宮に行く時の装いに着替えると、龍太郎とともに部屋を後にした。
「よし、じゃあ行くぞ。俺から離れるなよ」
「うん」
それから二人は、片っぱしからクラスメイトたちを叩き起こしていった。
まずは当初の予定通り、光輝から。すでに起きていた彼は聖剣を片手に扉を開け、二人を見て驚いた。
簡単に事情を説明すると、光輝はすぐに表情を引き締めて了承。以前とは比べ物にならない対応である。
三人に増えた彼らは、光輝同様に覚醒していたクラスメイトたちの部屋を訪ね、速やかに集合する。
不安げにするもの、安眠を妨害されて不機嫌な者、バラバラな彼らを光輝が纏めていると、ある人物が駆け込んでくる。
「勇者殿!それに皆も!」
「セントレアさん!」
近寄ってきたのは、女騎士のセントレアだった。既に鎧に身を包んでいる彼女は光輝らに駆け寄り、ホッとする。
「どうやら無事だったようだな……よかった」
「セントレアさん、一体何がおきているのですか?」
「……大結界が、破られた」
「なっ!?」
厳しい表情で告げられた情報に、光輝たちは息を飲む。
彼らも王都の大結界の堅牢さは知っている。だからこそ、その言葉が信じられなかったのだ。
「魔人族の侵攻のようだ。大群が王都近郊に展開さてれおり、奴らの攻撃で既に二枚が破られた。もう残りの一枚も、じきに……」
「クソッ、なんで悪い予想ばっか当たるんだよ……!」
「りゅ、龍っち……」
不安げな様子で、鈴が龍太郎の袖を引く。
先の一件で特に殺しかけられた彼女は、強い恐怖を抱いていた。
そんな鈴の手を、龍太郎は強く握りしめる。それだけで途端に安心できて、鈴は顔をほころばせた。
急に展開されたラブコメに光輝がなんとも言えない顔をしつつ、思考だけは素早く回転させていく。
「……とりあえず、メルドさんたちと合流しよう。俺たちは戦争の経験なんてない。こういう時の対処も、メルドさんたちは心得てるはずだ」
「いい判断だぜ、光輝。みんなもそれで良いな?」
龍太郎が呼びかければ、皆暗い表情ながらも頷く。
もとより彼らは戦意喪失した者たちだ。今も迷宮に潜っている光輝たちと違い、今すぐにでも逃げ出したい一心だ。
「私も、光輝くんの意見が正しいと思う。私たちは能力は強いけど、戦争のプロじゃないから……」
そこに客観的な視点と冷静な思考を持つ、雫がいない今光輝パーティーのブレーンである恵里も賛同すれば、もう反論は上がらない。
思ったよりも早く一丸となったことに光輝はホッと息を吐き、それからふとあることに気がついた。
「あれ、御堂さんはどこだ?」
「あ?そういやあいつ、どこにもいねえな……」
クラスメイトたちを見渡してみるも、あの高慢な女王の如き少女の姿は見当たらない。
普段ならば先ほどの光輝の提案に、皮肉りながらも評価を下した彼女がいないことに光輝は不安を感じた。
あの夜、シュウジ……否、カインのことを教えられてから、彼の中で御堂英子は特別な存在になっていた。
恋愛感情ではない。むしろ彼にしては珍しい苦手意識すらある。だがそれ以上に、どこか信頼しているのだ。
あの男に自分を真っ向から否定され、さらに追い討ちをかけるように現実を思い知らせた、あの〝美〟を。
ちなみに実は、遠藤と清水もいなかったのだが……例の如く影の薄さとウルの街でのことでナチュラルに忘れられていた。
「まああいつのことだ、そのうちひょっこり出てくるだろ」
「そう……だな」
龍太郎の言葉に流され、光輝はクラスメイトたちを伴って動き始めた。
「…………………………」
その後ろで目を濁らせる、ある人物に気付かずに。
●◯●
緊急時に指定されている屋外の集合場所に、光輝たちはやってきた。
そこには既に騎士たちが揃い踏みしており、壇上では副団長のホセ・ランカイドが声高に状況説明をしている。
それを聞く兵士たちの顔に覇気はなく、兜に隠された目にも意思の光は一切伺えない。
「ホセさん!」
と、ちょうど説明が終わった頃合いで光輝が声を張り上げると、ホセは言葉を止めて手招きした。
「……よく来てくれた。状況は理解しているか?」
「はい、ニアから聞きました。えっと、メルドさんは?」
ホセの歓迎の言葉と質問に光輝は頷き、そして、姿が見えないメルドを探して周囲を見回す。
その隣で、至近距離でホセの顔を見た龍太郎はふと何かに思い至り、そっと手を握っていた鈴を背中に隠す。
「……谷口、俺の後ろにいろ」
「え? う、うん……」
「……?」
幼馴染の剣呑な様子に、ふと光輝は眉をひそめてホセから目線を外し、険しい顔の龍太郎を見る。
龍太郎は、わかるかわからないかの角度で小さく頷いた。なんとなくその意味を察した光輝は聖剣の鞘に手をかける。
「団長は少し、やる事がある。それより、さぁ、我らの中心へ。勇者が、我らのリーダー、なのだから……」
「……わかりました」
「セントレア殿は、こちらへ」
「む?わかった」
あいも変わらず無表情なホセは、光輝達を整列する兵士達の中央へ案内した。
自分たちも?という顔をした居残り組らも共に流されるように推し進められ、そして彼らはそこへ誘われる。
(……やっぱりおかしいな)
その中で、依然として龍太郎は周囲の微動だにしない兵士たちに鋭く視線をよこした。
数週間前まで笑って会話をしていた兵士も、中にはいる。前までなら笑顔で励ましてくれただろう。
だが、今はその見る影もない。かろうじて口は引き結んでいるものの、空いていれば涎が滴っていそうな顔だ。
龍太郎の中で疑念が膨れ上がっていく中で、ついに周囲すべてを兵士たちに囲まれたところでホセが声を上げる。
「皆、状況は切迫している。しかし、恐れることは何もない。我々に敵はない。我々に敗北はない。死が我々を襲うことなど有りはしないのだ。さぁ、みな、我らが勇者を歓迎しよう。今日、この日のために我々は存在するのだ。さぁ、剣をとれ」
相場にいる王国側の人間全てが、一斉に剣を抜刀し掲げる。
「始まりの狼煙だ。注視せよ」
ホセが懐から取り出した何かを頭上に掲げた。
彼の言葉に従い、兵士達だけでなく光輝達も思わず注目する。
そして……
カッ!!
光が爆ぜた。
まるで照明弾のような何かが打ち上げられ、つられてそれを見ていた光輝たちは視界を奪われた。
それが、致命的な間違いだった。
ズブリッ
そんな生々しい音が無数に鳴り、
「あぐっ?」
「がぁ!」
「ぐふっ!?」
次いで、あちこちからくぐもった悲鳴が上がった。
光への悲鳴ではない。それよりももっと苦しげな……そう、まるで不意打ちを受けたかのような呻き声。
やがて、光が収まった時……そこには騎士や兵士たちに組み伏せられ、剣で刺殺された少年少女たちがいた。
《ロボットィイングリスゥ! ブゥウラァッ!》
『チィ! やっぱりこういうことかよ!』
「ッ!? 龍っち!? それにみんなも!?」
「くっ!?」
グリスへ変身し、自分と鈴を狙った凶刃を受け止めた龍太郎と、かろうじて気配で対応した光輝を除いて。
「なっ!? ホセ殿、これはどういうことか!」
「あなたには、大人しくしていて、もらう」
ホセが機械的な声とともに、そう言って取り出したのは──蜘蛛の巣のような模様がついた、丸いボトル。
見覚えのあるそれに目を見開くセントレアの前で、ホセはキャップを開けて自分にふりかける。
粒子のような成分がホセを覆い隠し──そして、セントレアの目の前で黄色い箱のような頭の怪物に変わった。
「っ!? こいつは──」
「グルァアア!」
もはや言葉を発さない怪物……スクエアスマッシュは、その剛力でセントレアを押さえつける。
抜け出そうとするセントレアだが、スクエアスマッシュの力は完全に彼女のステータスを凌駕していた。
「くっ!? 何故このようなことを!」
「セントレアさん!」
『待て、光輝ッ! 迂闊に動くな!』
「ッ!」
直情的に駆け出そうとしていた光輝は、グリスの言葉にかろうじて立ち止まる。
周りを見れば、瀕死のクラスメイトたちを拘束している兵士たち。急所は外したのか、皆弱々しく呻いている。
セントレアと彼らは皆、光輝たちに対しての人質だ。それはこちらに向けられた虚ろな目を見れば一目瞭然である。
それを理解し、光輝は悔しげに歯噛みしながらも唯一無事な鈴を龍太郎と背中合わせに守る。
「あらら、流石に仮面ライダーは強いね。光輝くんもそのまま倒れてくれれば楽だったのになぁ」
「っ!?」
「な、なんで……」
否。もう一人、瀕死のクライメイトたちの中で生きているものがいた。
普段とはまるで違う、粘着質な声音で話しかけてくるそのクラスメイトに光輝と鈴は息を呑む。
特に鈴は……今にも倒れ込んでしまいそうなほどに顔を蒼白にした。
『……まさか、テメェとはな』
「あははぁ、もしかして疑われてたぁ? ボロを出したつもりはなかったんだけどなー」
『御堂から、全員疑っとくよう言われてたからな』
あれは愛子が帰還してから一日経った日のことだった。
いつものように鍛錬をしていた龍太郎の前にふらりと現れた英子は、気まぐれのようにその旨を彼に伝えた。
今思えば、このことを予期していたのだろう。自分たちとは比較にならない経験を前世から受け継いだ彼女は……
「ああ、あの女か……ほんっっっと邪魔だったんだよね。光輝くんの視線も独り占めしてさぁ……ちょっと顔がいいくらいで調子に乗って、ウザかったんだよねぇ」
強く、深く怨嗟を含んだ声で言うその人物。あまりに異質なそれに、龍太郎はマスクの下で全てを察した。
『なるほどな。お前の狙いは光輝か──恵里!』
「あははぁ、せいかぁい」
まるで馬鹿にしたように、拍手をしたその人物は──他でもない、中村恵里だった。
兵士たちの包囲の外から愉しそうに笑う彼女は、普段の控えめで大人しく、気配り上手で心優しい様子はない。
「でも、本当に光輝くんまで対応するのは予想外だったよ。一体どうして?」
「え、恵里……どうして……」
龍太郎たちほどではないものの、ここ数ヶ月苦楽を共にしてきた友人の変貌に動揺を隠せない光輝。
無理もない。あれ以降意識が変わり、以前より力をつけたとはいえ、彼の中身はまだ成長の真っ只中だ。
人はそう簡単に変われない。だから性善説を信じる光輝は、この状況でもまだ心のどこかに迷いを持つ。
『油断するな。そいつは今までずっと俺たちを騙し続けてきた奴だ』
「ひどいなぁ。でも、待っててね光輝くん。すぐに迎えに行くから」
「くっ……!」
狂気的な笑みを浮かべる恵里に、光輝は葛藤を抱えながらも聖剣を構える。
ここでまだ迷うようなら、鈴共々フォローしようと思っていた龍太郎はニヤリと男臭く笑った。
「──お前たち、それ以上の抵抗はやめろ」
そんな三人に、声が投げかけられた。
●◯●
「メルドさん!」
声のした方を振り返って、光輝はその人物の顔を見ると歓喜に笑う。
兵士たちの更に後ろ──出入り口に軍服を着た兵士たちを率いて立っていたのはメルド・ロギンスだった。
紫色の軽装と黒いコートを身に纏った彼は、一切感情を感じさせない目で光輝たちを見てくる。
『──待て。光輝、あれは違う』
「何を言ってるんだ龍太郎? どう見てもあれはメルドさんたち──」
『そうじゃねえ。
龍太郎の言葉に、二人はひゅっと声にならない驚愕を口にする。
光輝と鈴は、そうであってくれと願いながらもう一度メルドを見て……その冷徹な顔に、絶望を得た。
「メルド! 何かが起こっている! 皆正気じゃない、彼らを守ってくれ!」
拘束された自分の身ではなく、光輝たちの安全の確保を叫ぶセントレア。なんという騎士道精神だろうか。
だが。その言葉を受けたメルドは……ふと目を閉じると、何かを堪えるように口元を引き締めて首を振った。
「……すまない、セントレア。これも大義のためだ」
「え……?」
「光輝、龍太郎、鈴。武装を解除しろ。そうすれば他の皆も助ける」
セントレアへの関心は一瞬、とてもあのメルドとは思えない冷たい声で命令する。
『こんな敵地のど真ん中で、そりゃ聞けねえっすよメルドさん。いくらあんたでも、そっち側ってんなら信用できねえ』
もちろん、それにハイそうですかと答える龍太郎ではない。
もしも彼が守ったとしても、すぐそこにいる恵里が守るとは思えない。彼女はすぐにでもクラスメイトを殺すだろう。
(おそらく、降霊魔法あたりで死体を操ってんだろうが……ホセさんの明確に意識があるような言動からして明らかに尋常な魔法じゃねえ。下手すりゃ他の奴らも傀儡になる)
そうなれば、いくら龍太郎でも学友を殺せはしない。
せめて相手の狙いである光輝と、鈴だけは守らなければ。決意を新たにグリスはツインブレイカーを構える。
決して引かない姿勢を示す龍太郎にメルドは静かに嘆息し……そして、彼もまた覚悟を決める。
「では、体に言って聞かせるしかないな」
懐を弄り、メルドが取り出したもの。
それは、
『なんであんたがスクラッシュドライバーを!?』
「力を得たのはお前だけではないということだ、龍太郎」
《スクラァアッシュドライバー!》
装着されたドライバーが力強い声を発し、メルドはポケットから取り出した紫色のボトルを掲げる。
長細く、みたことのないそれに龍太郎が訝しむ中、メルドは紫色のキャップを正面に合わせた。
《デンジャー!》
赤い亀裂が走り、ボトルの成分が活性化する。
おどろおどろしく、気分が悪くなるような音を発し始めたそれを、メルドはドライバーに装填した。
《クロコダイルッ!》
『まさか……!』
「変身」
メルドが、レバーとなるレンチを握り、下へ落とした。
その瞬間、プレス機の役割を持つパーツが動き、ボトルがけたたましい音を立てて
紫色の成分がタンクに充填され、地面から円形の枠組みとビーカーが出現。内部に紫色の液体が満たされた。
《割れる! 砕ける!! 砕け散るッ!!!》
続けて側からワニの頭部のような機構が現れ……
パリィィイインッ!
再び、割れた。
飛び散った液体はすぐさまメルドの体を包み込み、紫と黒のモノが硬質化してスーツと鎧になる。
《クロコダイルインローグ! オォラァッ!》
男の声がその名を叫び、黒く輝く頭部の両側についた顎門が食らいついて砕け散り、目が現れる。
まるでそれに対するかのように、最後に悲鳴が響き……メルドは龍太郎も知らない仮面ライダーになった。
「うそっ、龍っちと北野くん以外にも……!?」
『あんたは、一体……!?』
『……ローグ』
「仮面ライダー、ローグ……」
唖然とする三人の前で、「ライダー同士の戦いも面白そうだね」と恵理が笑いながら手をあげる。
すると、龍太郎だけを通すように兵士たちが隙間を開けた。光輝と鈴は龍太郎のことを見る。
『……光輝、谷口を頼む』
「……わかった」
「龍っち!」
歩き出そうしたグリスの腕のアーマーを、鈴は両手で抱きしめる。
全力で軽い体重をかけ、行かせまいとする様子は、彼女がどれだけ彼へ想いを寄せているのかがわかった。
肝心なところで鈍い龍太郎はそこまでわからないものの、鈴の頭に手を置く。
「あ……」
『安心しろ谷口。お前を誰にも傷つけさせない』
「っ、で、でも」
『……頼む、
名前を呼ばれ、鈴は驚いて力を緩めてしまう。
狙い通りに龍太郎はするりと腕を引き抜き、そのまま静かに立つメルドの方へと行ってしまった。
手を伸ばすが、届かない。膝から崩れ落ちた鈴の後ろで、光輝はぐっと覚悟を決めた顔で守るように剣の柄を握りしめた。
ローグと名乗ったメルドは、白い指先を龍太郎……いや、グリスに向ける。
『聞き分けのないお前たちには、もう一度現実を見てもらおう』
『上等だ、返り討ちにしてるぜコラァ!』
そして、仮面ライダーと仮面ライダーの戦いが始まるのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
これ、次回でまたシュウジ側に戻すか、それとも続けるかどうしよう?