星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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シュウジ「おーっす、俺だ。なんか前回後ろからぶっ刺されたんだけど?」

エボルト「突然のピンチ、よくある展開だな」

シュウジ「はっはっはっマイペット、そんなの頻繁にあってたまるかよ」

エボルト「誰がペットか」

謎の男「そろそろ俺の出番が来たな。ったく、ジジイを待たせやがって。さて、今回はグリスのサイドからだ。では、せーので」


三人「「「さてさてどうなる王都侵略編!」」」


傲慢なる裏切り者たち 中編

 

 

 

 動く死体となった兵士たちの間を抜け、ローグとグリスが相対した途端にあっという間に包囲は下に戻った。

 

 不敵に笑う恵里に、龍太郎は舌打ちをする。これで少しでも隙があろうものならば後ろから崩せたのだが。

 

「不意打ちはルール違反だよ?」

『チッ、中村……』

 

 仕方がなく、グリスはローグへと向き直った。

 

 彼の後ろにいた兵士たちはいつの間にか、全員スマッシュになっている。もはや全員が傀儡なのだろう。

 

『前門の龍、後門の虎ってか。へっ、面白えじゃねえか』

 

 異様な雰囲気を放つスマッシュたちに、グリスはあえて強気な言葉を放ち足を進めた。

 

(……威勢を張ったものの、なんだあいつの威圧感は。まるで底が見えねえ)

 

 一歩進むごとに、目の前にいるローグの凄みが増していく。

 

 ただそこに佇んでいるだけでその体から溢れ出る、圧倒的なオーラ。ハザードレベルは予想不可能だ。

 

 今更引き返すことはできない。自分が負ければクラスメイトたちはとどめを刺され、光輝と鈴も……

 

(気張れよ俺。ここで負けたら全部終わりだ!)

 

 ついに、グリスはローグの眼前二メートルまで到達する。ここからは互いの攻撃の射程圏内だ。

 

 

 

『ほお、面白そうなことをしてるじゃないか』

 

 

 

『っ!?』

 

 突如として頭上から投げかけられた声に、グリスは上を見上げる。

 

 広場に等間隔に設置された、光源となる魔石の埋め込まれた柱。その上に誰かが一人、座っていた。

 

 雲が流れ、月光が広場を照らすと……そこに足を組んでいたのは、真紅の蛇。

 

『スターク!』

『よう、久しぶりだな龍太郎。メルドと対決するなら審判にでもなってやろうか?』

『テメェ……!』

『おっと、動くなよ』

 

 思わずツインブレイカーを向けたグリスに、スタークは背に隠していた人物を引っ張り出す。

 

 出てきたのは……ハイリヒ王国第一王女、ベルナージュ。伸びる毒針で拘束された彼女は、忌々しそうにスタークを睨んでいる。

 

『王女さん!?』

「……私のことは気にするな。今は目の前の戦いに集中するのだ」

『もし俺に危害を加えようものなら、ベルナージュがどうなるか……わかるな?』

 

 姑息な手段に肩を震わせるものの、この距離ではまともな手段では敵わないことを冷静に判断して腕を下ろす。

 

『……これはお前の差し金か?』

 

 この世界において、ライダーシステムはオーバーテクノロジーの権化と言っても過言ではない。

 

 加えてこれほどの数のスマッシュ……明らかにスタークが一枚噛んでいるとしか思えなかった。

 

『さぁて、どうだかねぇ……だが、俺の差し金にせよそうじゃないにせよ、お前は仲間を背負ってそこに立っている。それなら、やることは決まってるんじゃあないか?』

 

 スタークはその追求をのらりくらりとした口調でかわした。

 

 同時に突きつけられた正論に、龍太郎は一旦敵意を収めてローグへと向き直る。

 

『悪いが本気でいかせてもらうぜ、メルドさん』

『今この一時、お前を龍太郎とは思わん。全力でかかってこい』

 

 悠然と立ち、冷静沈着な様子で告げるローグ。

 

 尚も崩れぬ威圧感に冷や汗を流しつつ、グリスはツインブレイカーを握った拳に力を込め、構えをとった。

 

『心火を燃やして……ぶっ潰す!』

 

 己を鼓舞し、一気に闘志のエンジンをかける。

 

 スーツによって強化された肉体は瞬時に戦闘状態へと切り替わり、石畳を砕きながらローグに向けて突貫した。

 

 彼我の距離、たった二メートル。それはライダーにとってはほんの瞬きほどの時間で到達できる距離である。

 

『オラァアアアアア!!!』

 

 裂帛の叫びとともに、ツインブレイカーがローグの胸部装甲に叩きつけらた。

 

 盛大に火花が散り、かつてベヒモスをも屠った時よりも更に成長した一撃がローグの体を襲った。 

 

 一度で終わらず、激昂しているかのような叫び声とともに何度も何度もグリスは攻撃を叩きつけた。

 

「龍太郎……!」

「龍っち……!」

 

 その様子を見守っている光輝と鈴は、祈るような気持ちでいた。

 

(くそっ、まただ……また俺は、肝心な時に何もできないのか!)

 

 光輝は、状況が違うのならば今すぐにでも龍太郎の加勢に行きたい気分であった。

 

 幼馴染であり、1番の親友に最も苛烈な戦いを任せてしまう負い目。

 

 今度こそ誰かを守るため、この日のために鍛えてきたと言っても過言ではない力が、全く役に立たない悲しみ。

 

 そして、どうにかなると楽観視しようとする、骨の髄まで沁みついた自分の考え方への苛立ち。

 

 その全てが毒のように光輝の体を這い回り、じわじわと理性を削っていく。まるで我慢比べをしているような気分だ。

 

(お願い、どうか龍っちに力を……!)

 

 鈴は、この場で誰よりも非力な少女は、ただただ想い人の勝利を願っていた。

 

 光輝のように何もできなことへの悔しさはあるが、それ以上にまた危ない戦いへ龍太郎が身を投じたことが不安であった。

 

 あの日ハジメに助けられ、その後悔からグリスとなり変わった龍太郎。強さも、人としても成長した彼に惚れた。

 

 先日の事件では、自分が傷ついたことに誰よりも怒ってくれた。皆が疲弊していた中でずっとそばにいてくれた。

 

 そんな相手が、今死ぬかもしれない。鈴とてグリスとしての龍太郎を見て仮面ライダーの強さを知っている。

 

 だから誰かに、必死に願うのだ。大好きな男の勝利を。

 

「あはは、すごいなぁ。スタークには色々とお世話になってるけど、あれが味方なら何でも勝てる気がするよ」

「……恵里。どうしてこんなことをしたんだ」

 

 グリスとローグを見て笑う恵里に、光輝は一度冷静になるためにももう一度質問する。

 

 ゆっくりと振り返った彼女は、光輝に話かけられたことが心底嬉しいといった顔で笑った。

 

「さっきも言ったよ? 僕はね、ずっと光輝くんが欲しかったんだ。だからそのために必要なことをして、利用した。それだけのことだよ?」

「なっ……」

 

 息を呑む光輝。  

 

 例のごとくご都合解釈で異性の好意すらも気付かなかった彼は、好意とも呼べぬ独占欲を明確に告げられて動揺した。

 

「そ、それなら告白してくれれば、俺だって……」

「ダメダメ、それはダメ。だって光輝くんは優しいから、特別を作れないでしょ?」

「それは……」

 

 違う、と光輝は思った。

 

 今の光輝は自分の行いが、ただいい顔をしていたかっただけの自己中心的な行動だったことを自覚している。

 

 だが、それを認めてしまってはいけない。痛い目を見てなりを潜めていたプライドがそう囁く。

 

「たとえ周りに何の価値もないゴミしかいなくても、優しすぎて放っておけないんだよね?」

「──っ!」

「この世界に来て、本当に良かったよ。ゴミ掃除は楽にできるしさ……ね? 僕はわかってるよ? 僕だけは光輝くんのことを理解してあげられるよ? そのために僕が、邪魔なゴミは片付けて──」

「違う!」

 

 だが、恵里の言葉に呪縛のように巻き付いていたものは吹き飛んだ。

 

「ゴミなんかじゃない! みんな大切な仲間だ! それなのに俺は、俺がしたいことばかりを押し付けてきた! その結果がこの前北野に突きつけられた答えだ!」

「あ、天之河くん……」

 

 突如として怒り出した光輝に、鈴は驚いた。

 

 シュウジやハジメほど根本的に毛嫌いしている訳ではないが、それでも彼女から見ても眼に余る部分はあった。

 

 だというのに、面食らった顔をする恵里に叫ぶ光輝の目には、自分に盲目的な色は見られない。

 

「俺には、どうして恵里がそんなに俺に執着しているのかはわからない……でもきっと、俺の行動が君をこんな風にしてしまったことだけはわかる!」

「…………」

 

 光輝は今、真剣に、本当の意味で、目の前にいる一人の()()に向き合おうとしていた。

 

 自分の正義感を満たすための相手などではなく、ただの天之河光輝として、中里恵里を知うとしているのだ。

 

「なあ、恵里。訳を聞かせてくれないか。今度こそ俺は、ちゃんと向き合うから。そしてこんなことはもうやめよう。恵里にとっても、絶対にいい結果には……」

「──うるさいなぁ」

 

 ──だが、その声はもう届かない。

 

「がっ!?」

「近藤くん!?」

「はぁ、あ、ぐぁ……」

 

 突然、傀儡兵士の一人が組み伏せていたクラスメイト……近藤礼一の背中に再び剣を突き立てる。

 

 それは心臓を貫いており、近藤はしばし強靭なステータスで耐えていたものの……

 

 やがて、動かなくなった。

 

「う、そ……」

「恵里!? どうして……!」

「光輝くん、僕はもう後戻りできないんだよ。北野のやつに色々吹き込まれて変になっちゃったみたいだけど、それでも僕は止まらない」

 

 死んだ近藤に歩み寄り、恵里は手をかざすとその場にいる誰もが今まで一度も聞いたことのない呪文を唱える。

 

「〝縛魂〟」

 

 魔法名を唱え終わると、半透明の近藤が現れ、自分の遺体に重なるように溶け込んでいった。

 

 兵士が上からどく。

 

 すると死んだはずの近藤は、なんと身を起こし、兵士たちと同じような顔で立ち上がった。

 

「はい、お人形の完成〜」

「あ、あぁ……」

「恵里……ッ!」

「どう、すごいでしょ? 僕のオリジナルの魔法だよ? 降霊術に、生前の記憶と思考パターンを付加してある程度だけど受け答えが出来るようにしたんだ。スタークや、ある人の協力は借りたけど……おかげでこんなに手駒が手に入っちゃったし、《獣》の末席にも座れた」

 

 両手を広げ、兵士たちを見せびらかすように語る恵里。

 

 恵里はその執念によって、本来は残留思念を汲み取ったり、死体を簡単な命令で動かすだけの魔法を神代魔法の域まで高めた。

 

 それをまるで、よく出来たテストを見せびらかすようにする恵里に、鈴はいよいよ親友が狂ったことを認識する。

 

 一方の光輝は、対話の無意味さにようやく気がついて歯を食いしばる。

 

 シュウジが憎んだ悪辣とは、このようなものかと。

 

「大丈夫だよ。みんなはちゃんと使えるお人形にして、兵士さんたちと一緒に魔人族に献上するし。光輝くんは安心して〝縛魂〟で縛られて、私と一緒に魔人族の領で暮らそうね?」

 

 魔人族、という言葉に光輝はあることに思い至ってはっとする。

 

「まさか、大結界を破ったのは……」

「そう、僕でしたー! いやー、スタークには感謝してるよ。気づかれずに大結界を維持するアーティファクトのところまで傀儡を行かせてくれたし、魔人族に取り合ってくれたのもスタークだからね」

「なっ……!」

 

 戦いを観戦しているスタークの方を見て、光輝はやはりかと目を鋭くした。

 

(これが、必要な選択だっていうのか……?)

 

 だが、怒りとともに光輝の心を多分に支配していたのは困惑だった。

 

 自分に拳とともに自分の信念を叩きつけたシュウジと、あそこにいる不気味な怪物がどうしても結びつかない。

 

 あるいは、クラスメイトたちの命さえ脅かすこの惨状こそが〝必要な選択〟だというのなら……流石に許容できない。

 

「あぁ、ああ! 他の誰も見ない、僕だけを見つめて、僕の望んだ通りの言葉をくれる! 僕だけの光輝くん! 今から想像するだけでイってしまいそうだよ!」

「え、エリリン……なんで……」

「もう、聞き分けが悪いなぁ鈴は……でも、ありがとね?」

「え……?」

 

 これ以上は限界である鈴に、恵里はにこりと笑い。

 

「鈴の存在は、とっても便利だったよ? 光輝くんの傍にいるのは雫と香織って空気が蔓延しちゃってさ。不用意に近づくと、他の女共に目付けられちゃうし……向こうじゃ何の力もなかったから、嵌めたり自滅させたりするのは時間かかるんだよ」

「え、ぁ…………」

「その点、鈴の存在はありがたかったよ。馬鹿丸出しで何しても微笑ましく思ってもらえるもんね? 光輝くん達の輪に入っても誰も咎めないもの。だから、〝谷口鈴の親友〟っていうポジションはホントに便利だったよ。おかげで向こうでも自然と光輝くんの傍に居られたし、異世界に来ても同じパーティーにも入れたし……うん、ほ~んと鈴って便利だった! だから、ありがと!」

「……あ、う、あ……」

 

 その告白に、鈴は心の底から打ちのめされた。

 

 これまで信じてきた友情が、親愛が、全てまやかしだったと知り、真っ暗な水の中に叩き落とされたような感覚。

 

 十六の少女にはあまりに重すぎる事実に、鈴の瞳から光が消え、徐々に顔を俯かせていき──

 

 

 

『ぐぁあああああああっ!?』

 

 

 

 自我を失う寸前で、その悲鳴が鈴を現実に引き戻した。

 

「龍っち!?」

「龍太郎!」

『ハァ、ハァ、クソッ、なんだこのパワーは……!』

『……この程度か』

 

 長らく目を離していた戦場に目を戻せば、そこには腹部の装甲から煙を上げて倒れているグリスの姿が。

 

 反射的にローグを見ると、拳を振り切った姿勢から腕を下ろすところだった。おそらく一撃を放ったのだろう。

 

 これまで無敗を誇っていたグリスをたった一発のパンチでのしたローグの力に、二人は驚きを隠せない。

 

『お前のハザードレベルでは、俺は倒せん。負けを認めろ』

『ハッ、冗談ぬかせ。まだまだ俺は戦えるぞ!』

 

 立ち上がったグリスは、闘志を振り絞ってローグに攻撃を加える。

 

『オラァッ!』

『──遅い』

『ガッ!』

 

 これまであらゆる敵を撃滅してきた一撃をあっさりとかわし、ローグの拳がグリスの顎を捉える。

 

 平衡感覚を狂わされ、ふらりと揺れるグリスの体。ローグのストレートは的確に彼を弱らせた。

 

(クソッ、脳が揺れて──)

 

『フッ! ハッ!』

『グッ、ゴッ、ガハッ!?』

 

 続くローグの連続攻撃が、グリスの体を打ち据える。

 

 ジャブが二発、次に左フック、右脇腹にボディ、下がった頭にアッパーカット。一撃一撃が必殺の威力を持っていた。

 

 光輝と鈴が悲鳴に近い声で龍太郎の名前を呼ぶが、グリスの装甲を易々と貫通して届く痛みに彼の意識は飛びかけていた。

 

『こう、き……たに、ぐち…………』

『大義のための、犠牲となれ』

 

 ぐらりと後ろに倒れたグリスの隙を見逃さず、ローグはレバーを素早く握ると下へ下ろす。

 

 

《クラックアップフィニッシュ!》

 

 

『ハァッ!!!』

『ガッ──!?』

 

 飛び上がったローグの下半身をワニの頭部のようなエネルギーが覆い、それでグリスの体を挟み込む。

 

 エネルギーはグリスの体に何度も噛みつき、盛大な火花を散らして激しく装甲を破壊し尽くす。

 

 ほとんど動かなくなったグリスを、ローグは捻り切るように足を回転させて弾き飛ばした。

 

 

 

 ドッゴォオオン! 

 

 

 

 柱に叩きつけられたグリスは、声も上げることなく地に伏す。

 

 そのまま、指の一本も動かせなかった。全身から青い火花が散り、いつ変身が解けてもおかしくない。

 

『く、そ……』

『それがお前の限界だ。我々の大義のため、倒れてくれ』

 

 言い返そうとするも、もはや言葉を発する力も残っていない龍太郎は気を失った。

 

 完全な沈黙を察知したライダーシステムは、変身者の負担を減らすために自動的に変身を解除。

 

 光輝と鈴は、顔を青くする。瀕死ながらも誰かが戦っていることを感じていたクラスメイトたちも絶望した。

 

『ようやく倒したか。ご苦労だったなローグ』

 

 よっと呟きながらスタークは柱の上から飛び降りる。

 

 切り離された毒針がベルナージュを柱に固定する中、スタークは倒れた龍太郎に歩み寄った。

 

『ほお、ハザードレベル4.8か。ここまで上がるとは、やはり選んで正解だったな』

 

 しゃがみ込んでその背中に手を置き、スタークは楽しそうに笑う。

 

 そのまま、手刀の形にした手を龍太郎の背中に突き刺した。

 

「龍っち! いやぁあああああ!」

「見るな鈴っ!」

 

 鈴が口元を抑えて悲鳴を上げ、光輝がとっさにその目を手で覆う。

 

 だが、彼女の恐怖は現実には起こっていなかった。

 

 スタークの突き込んだ部分に傷はあらず、スタークの手はするりと体に侵入しており、何かを探っていた。

 

『ここらへんに……見つけたァ!』

 

 そして、引き抜かれたスタークの手の中には──真っ黒に染まった、城のレリーフが刻まれたボトルが握られていた。

 

 龍太郎の背に、やはり傷はない。それどころかコートに新しい破損すらなく、光輝はほっとする。

 

『これで回収したボトルは全部で四本。〝計画〟は順調だ』

「おーい、もう終わった? 僕、そろそろ待つのも疲れたんだけど」

『ああ、もういいぞ。そいつらは用済みだ。好きにしろ』

「お言葉に甘えて〜」

 

 興味をなくしたような口調で手を振り、ローグの方へ行くスタークの言葉に恵里が怪しく笑った。

 

 まずい、と光輝は思った。龍太郎が破れ去った今、先ほど宣言されたとおり恵里は自分たちを傀儡にするだろう。

 

 

 

(どうする、俺はどうすればいい──!?)

 

 

 

 光輝が再び自分の無力を呪い、ふとあの無敵の〝美〟を思い浮かべた、その瞬間。

 

「……ま、だ」

「っ!?」

「龍っち!?」

「ハァ? まだ意識があるわけ?」

 

 気を失っていたはずの龍太郎が、ぐっと拳を握る。

 

 緩慢な動きで腕を引きずり、握り拳を地面につけると、力を振り絞って立ち上がる。

 

「はぁ……はぁ……」

『ほお、頑丈だな。圧倒的にハザードレベルが上のローグの一撃を受けておいて、大した根性だ』

 

 なんとか両足で立ったものの、龍太郎の体は満身創痍と言って差し支えない状態だった。

 

 それでも龍太郎は、血に濡れた顔を猛獣のように闘志に歪ませ、両目でスタークとローグを睨む。

 

「まだ、終わっちゃいねえ……俺は死んでねえぞ……!」

『何故そこまで戦う。お前を突き動かしているのは信念か? 矜恃か? それとも──意地か?』

「意地……ハッ、そうさな。こいつは意地だ」

 

 スタークの問いかけに、龍太郎は獰猛に笑う。

 

 手負いとは思えぬその凄みに、静観していたローグは思わず動揺する。

 

 ハザードレベルは優っているはずなのに、龍太郎の威圧感は凄まじかいものであり。ローグが一歩、後ずさるくらいには。

 

 同時に、迷いが生まれる。大義のためとはいえ、ここまで強い心を持つ少年を打ち負かしてしまったことに。

 

「そう、意地だ……」

 

 そんなローグを真っ直ぐに見つめ、スタークすら眼中から外した龍太郎は、一歩歩みを進める。

 

 そうすると、カッと目を見開いて。その場にいる意思あるもの全員が見つめる中で、大声で叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()、無様に負けたままでたまるかああぁあああああああああああああああああああああああッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 そんな、場違いともいえるような告白を。

 




読んでいただき、ありがとうございます。
原作だと本編終了後にくっついたこの二人の恋愛、やっとここまで進んだぜ

伸びそうなので間の4話はなしでいきます。

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