星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

148 / 354
エピローグは3話でいきます。

楽しんでいただけると嬉しいです。


それぞれ思うところがあるようで 前編

 

 

 

「で、どーすんのよこれ」

「どうするかねぇ」

 

 

 

 ドーモ=ミナサン。シュウジです。隣にはスライm間違えたペットがいます。

 

「結局間違えてるじゃねえか」

「どうすっかなぁ」

「スルー?スルーしちゃうわけ?」

「しちゃう」

「じゃないわよ、このバカども」

 

 ガッと後ろから頭を掴まれました。はて、このギリギリという音と食い込む指の感触は誰でしょう。

 

 A.ハジメ、B.雫、C.ハイウェイ・スター。最後の選択肢は足だしこの世界にスタンド使いはいないので関係ない。

 

「おや、これは我が最愛の雫さんじゃあありませんか」

「ええそうよ、雫さんよ。分かったらさっさとベッドに入りなさい?それとも私の体で一日中拘束してあげましょうか?」

「それは大変魅力的な提案だマイハニー、だが大人しくベットに入るとするよ」

 

 後ろを見るとあら不思議、そこにはちょっと青筋を立てた雫さん。怒らせると怖いのでベッドに戻る。

 

「ククク、すっかり尻に敷かれてるな」

「エボルトてめぇ楽しそうに笑ってんじゃねえ。タコぶつけるぞ」

「俺がいつまでも弱点をそのままにしておくと思うか?」

「まさか……ッ!」

「ふっ……たこ焼きくらいはもう普通に食える」

「嘘だっ!俺を騙そうとしているッ!」

「はいはい、騒いでないで早く合体しなさい。その方が回復早いんでしょ」

 

 雫にギュムって感じでエボルトを押し込まれた。大人しく吸収してベッドに寝転がる。

 

 さて、気を取り直して。

 

 ここは王宮の一室。それも重鎮が寝泊りする時に使われる超VIP専用のかなーりデカい部屋である。

 

 王都での騒動と愛子ちゃんの救出劇から数日、俺はこうして雫の監視の元療養に努めていた。

 

 つーのも、あのアベルにバクスタキメられて体に入った毒が未だに抜けないのだ。

 

 すでに解毒はしたが、微弱なのが残ってるらしい。エボルトでも操作して消しきれないレベルの弱い感じのやつ。

 

 ということで、俺自身の高い治癒力に任せて体から抜けるのを待っている。

 

 なお、死にかけの状態で帰ったらハジメには拳骨食らったし女性陣には説教されたし、雫はまた倒れた。

 

『全部自業自得だな』

 

 是非もないよネ⭐︎

 

 というわけで、その間ここで大人しくしてなきゃならん。

 

 まあこの部屋はすでに魔改造させていただいてるし、()()()()()()()()()()()なので問題ない。

 

 ちなみに下まで行った時に手助けしてくれたのは、なんと遠藤と清水である。あの爺さんに途中で会って指示されてたらしい。

 

「で、みんなの様子はどうよ?」

「……そうね。やっぱり困惑してるわ。恵里と檜山くんの裏切りで疑心暗鬼になってるし、周りにいた人は殺されて傀儡になってたと知って一切部屋から出ない人もいるわ」

「そりゃまた随分だな。まー国の中枢の上から下までほとんど死んでるってんだから仕方がねえか」

 

 国王含め重鎮はほぼ全て中里の傀儡兵によって皆殺し、あるいはローグになったメルさんを筆頭にスマッシュ化。

 

 おまけに何故か俺と愛子ちゃんがあの男のバイクで下山したあと山自体が崩れて、教会関係者は全員お陀仏だ。

 

 幸い謎の結界が張られていたらしく、城下町に被害はなかったが上が軒並み死んだのでてんやわんやだ。

 

 今はベルナージュ様とリリィちゃんを中心に無事だった要人で丸ごと消えた騎士団の再編成をしてるらしい。

 

 団長補佐だったセントレアさんを新たな団長として、今は勇者(笑)が相手になって選抜試験してるとか。まあどうでもいいや。

 

 あと音沙汰のない(死んどるけど)教会の代わりにハジメが愛子ちゃんを祭り上げたりしてるらしい。強かである。

 

『下に残ってた以外の教会関係者全員消えたことは計算外だったが、あとは概ね予定通りだ』

 

 今回の作戦はうまくいったよ。ロストボトルも回収できたし、順調に準備は整ってきている。

 

 ただ、クラスメイト達には悪いことをした。思ったより中里がはちゃめちゃやらかしてくれたなぁ。

 

 ……後で近藤の墓参りに行くか。いくら利用するとはいえ、カインの罪なき人を守る信念は穢したくない。

 

『矛盾しているな。お前も人間らしくなってきたよ』

 

 ぜってぇ褒めてないだろそれ。俺だって申し訳ない気持ちはあるんだぜ?

 

 というかマジで近藤の件は予想外だった。まさか見せしめにサクッと逝くとは。これは責任問題である。

 

 ちゃんと制御しといてくれないと〝最終段階〟の手駒が減るだろ?

 

『はいよ、うまく言い含めとくわ』

 

 あと誰か被害出たっけ……あ、あのゴミか。

 

 死体でもスマッシュにできるのか研究中だし、せいぜい檜山(だったもの)には役に立ってもらおう。

 

「今は愛子ちゃんが、クラスメイト一人一人にカウンセリングみたいなことをして回ってるからなんとかなってるけど……」

「そりゃいいな。マリスの話術も持ってる今ならそこらのカウンセラーよりよっぽど有能だ」

「ふふ、そうね……あとは、鈴かしら」

「中里とは仲良かったらしいからなぁ」

 

 多分今回のクラスメイト達の中で一番しょげてんのは谷ちゃんだろう。え、天之河?知らない知らない誰それ。

 

 ずっと友達だと思ってた中里に利用されていただけだと知って、若干ふさぎ込んでるらしい。

 

「今は龍太郎に任せてるわ。恵里の他に一番鈴が心を開いてるのは、龍太郎だから……」

「へえ、そんなに進展してんのね」

 

 俺全然知らんかったなー(棒)

 

『白々しいな』

 

 うるへー。

 

「今のところはそんな感じよ。みんな悩みながら、どうにかしようと頑張ってる」

「俺たちには俺たちの目的があるし、愛子ちゃんとあのバカ勇者(笑)に任せとくのが一番だわな。つーかそうしないとあいつらも地球に帰れないし」

「あら、案外光輝も成長してるみたいよ?」

「あー、そんなこと言ってたっけ」

 

 なんかユエとシアさんが化け物でも見たかのような顔で話してきた。

 

 あの正義(笑)バカが成長?本当だったら街中で頭にピクルス乗せてロボットダンスしてやるよ。

 

『けどまあ、お前もあいつを頭ごなしに否定もできなくなったよなぁ』

 

 まあな。俺だって俺の欲望で他者を利用しようというのだから同類だ。

 

 今更引けはしない。既にこの世界中に手を回しているのだ。俺は最後までこの願望を、手段を貫き通す。

 

 被害は最低限に抑える。後で責任も取る。俺にできる全力で利用する人々には見返りを用意しよう。

 

 それが「死ね」ということでも、喜んで全てが終わった後にこの命を差し出すだけの覚悟はある。

 

 とまあこのようにいくら言葉を並べたところで、結局は似たもの同士。他人に押し付けるか使うかだけの違いだ。

 

「自己嫌悪で次にあいつと会ったらゲロ吐きそう」

「突然何言ってるの?」

『ゲロ以下の匂いがプン⤴︎プン⤴︎するぜぇ!』

 

 無駄にセクシーな声のエボルトのボケを聞きながら、雫にジト目で見られる。半分は天国ですね。

 

「いや、天之河とは会いたくないって話な」

「ああ、そういう……無理に話す必要もないけど、急に殴りかかったりするのはやめて頂戴ね?あれでも幼馴染みだから」

「地味にひどいこと言いますね雫さん」

 

 そうかしら?とクスクス笑う雫はマジで可愛い。もうこれだけで毒が浄化されて……アッハイ大人しくしてます。

 

「それで……あれ、一体どうするの?」

 

 雫が視線を巡らせ、食事用に置かれたテーブルの方を見る。

 

 幅が広めで長方形のそれの上には……胸の上で手を重ねた鎧姿の銀髪美人が永遠にお眠りになっていた。

 

 〝神の使徒〟ノイント。愛子ちゃんを攫い、一時的にライオットまで規制させていたエヒト製の戦闘人形。

 

 その死体が今ここにあった。さっきエボルトと一緒に覗き込んでいたのはアレである。

 

「ほら、昨日ハジメたちが【神山】にあった大迷宮で魂魄魔法を手に入れたろ? んでこれを何かに使えないかなって」

 

 俺がここで食っちゃ寝してる間に、ハジメたちは色々と動いてくれていた。

 

 大結界の補修やら冒険者ギルドへのミュウちゃんの送り届けの依頼達成やら、迷宮の攻略まで。

 

 攻略つってもあの土砂崩れで半壊してたらしく、あっさりと手に入れられたらしい。やったね。

 

「ウサギはホムンクルス、つまり魂は人工のものだ。俺もハジメの頭を介して手に入れたし、うまくいけば遠隔操作できる人形くらいにゃできる」

「そう、変な趣味があったわけじゃないのね」

「おっと?とんでもない勘ぐりされてたぞ?」

「冗談よ。本当にそうだとしても受け入れる……のは、ちょっと難しいかも」

「安心しろ、俺は中里と類友じゃないから」

 

 それなら安心ね、と笑った雫はどうやらやることがあるようで立ち上がって部屋を出て行った。

 

 それを見送り、完全に扉が閉まったところで振っていた手を止める。

 

「雫の気配は……もうないな」

 

 部屋の中の声が聞こえなくなるくらい離れたのを確認して、体の中にいるエボルトに話しかける。

 

「で、今回でどれくらい削れた?」

『五年、だな』

 

 グッ、と無意識に布団を握りしめるのがわかった。

 

 全身がブルリと震えたように感じる。鼓動が一瞬早まり、気分を落ち着けるために深呼吸をする。

 

「やっぱり、エボルアサシンに変身しないで直接使うとキツイな……」

 

 エボルアサシンは〝抹消〟の力を無理やり固定する器具であると同時に、俺を守るフィルターでもある。

 

 いつか目覚めるのを予測して溜め込んだ悪人の魂はとっくに枯渇し、じわじわと俺の魂に手を伸ばし始めた。

 

 もっとも、入手したばかりの魂魄魔法で魂にプロテクトをかけたので、ただ放っておくぶんには問題ない。

 

 が、力を使えば命は削れる。

 

「こんなの聞いたらなんて言うかわからないしな。今のとこはお口にチャックさせてもらうぜ、雫」

 

 シャツの胸元を捲れば、既に肩口まで黒い亀裂が侵食してきていた。

 

「じわじわと命が削れていく感覚ってのは、恐ろしいもんだな」

『既に五年半削れてるんだ、これ以上早死にしたくなけりゃ用心するんだな』

 

 エボルトから痛い指摘を受けていると、コンコンとノックされる。

 

 すぐに胸元を隠し、気配を探る。すると雫が戻ってきたわけではなかったので、一度ほっとした。

 

 上半身を持ち上げると、勝手知ったるその人物に意識を向ける。

 

「シューくん、今いいかな?」

「ほいほい。あ、ちょい待ち。ネグリジェだったりしない?」

「え?今お昼だよ?」

「それならおk。入ってくれ」

 

 やけに彫刻が凝っている扉を開けて入ってきたのは、白っちゃんだった。

 

 出かけていたのか、外行きのお洒落な格好をしている。さてはハジメか美空とデートしてたな。

 

「調子はどう?さっき雫ちゃんに会って、平気そうだって聞いたけど……」

「おーう、見ての通り優雅なニート生活ですわ。そろそろハジメから働けとか言われそう」

「ふふ、ハジメくんが一番心配してたよ?時々この部屋の方を見て不安そうにしてたし」

「へえ、そりゃいいこと聞いた」

 

 後でからかってやろ。多分キャメルクラッチかまされるけど、私は一向に構わない(イケボ)

 

「んで、そういう白っちゃんはどしたよ?今日はもう検診したろ?」

「うん……ちょっと、頼みたいことがあるの」

「そりゃまた珍しいこって。ハジメをベロンベロンに酔わせるお酒とか欲しい?」

「なんでそんなの持ってるの?」

 

 ツッコミを入れつつも、白っちゃんは椅子を一つ持ってきて俺のそばに座る。

 

 そうすると太ももの上で両手を握り、しばらくどう言い出すべきか迷ってる様子だったが、そのうちポツポツと話し出す。

 

「あのね、この前メルジーネ海底遺跡で色々とあってね。私ちょっと落ち込んでたの」

「知ってるぞ。なんせハジメからお助けメール来たからな」

「そうなんだ。ハジメくんが……」

 

 ハジメが相談したということが嬉しいのか、ちょっと口元をモニュモニュさせる。ほんとベタ惚れね。

 

 こうなると、ハジメと美空どっちがより好きなのか確かめたくなる。ダメですね美空に刻まれる未来しか見えません(諦め)

 

「でもそれは解決したって聞いてるぜ?」

「ハジメくんが私のことを〝大切〟には思ってくれてるってわかって、その時はこれからもずっと一緒にいる覚悟を決たんだけど……でもね、それだけじゃダメなんだ」

「するとなんだ、白っちゃんは今よりも戦力的な意味で強くなりたいってことかい?」

 

 こくり、と頷く白っちゃん。

 

「だから、私を鍛えてくれないかな? これから先の旅で、もっとハジメくんの役に立てるように」

「ふむ……」

 

 思いがけない相談に、顎に手を当てて唸る。

 

 白っちゃんの表情は真剣そのもので、ここで俺が何かを言ったところでテコでも意思を曲げなさそうだ。

 

 これは回復役として十分役に立ってる、とか、それを言ったら美空もだろ、と言っても聞かないだろう。

 

 本気で、冷静に、今自分に足りないものを求めて頼ってきたと見える。俺みたいな一番信用しちゃいかん悪人を。

 

「正直に言うと、白っちゃんのハザードレベルはもう打ち止めだ。それは自分でもなんとなくわかってるだろ?」

「それは……うん、少し前からそろそろ限界かな、って感じてた」

 

 ネビュラガスはその人間の潜在的な能力を引き出し、感情の高ぶりなどに比例して肉体を強くする。

 

 だが、治癒士という天職からも分かる通り、白っちゃんの肉体は戦闘向きじゃない。元々運動もしてないしな。

 

 故にこれ以上の潜在能力は見込めない。今のハザードレベルだって、あのエセ神の恩恵かなんかで体が強くなってたからだ。

 

 ライダーシステムを使えばまた違うだろうが、そこまで使わせるつもりはないからな。

 

「それでも、なんとか強くなりたいの。シューくんならその方法を知ってるかなって」

「随分と頼りにされたもんだ……はてさて、どうしたものかね」

 

 一つ、既に白っちゃんの望みを叶える方法を思いついている。

 

 要するにネックなのは白っちゃんの肉体で、もっと強く、潜在能力がある肉体があれば問題は解決する。

 

 しかしそれは白崎香織という一人の人間を、その範疇から逸脱させることだ。後で除去できるネビュラガスとは一味違う。

 

「……一つ聞きたい。この話雫にはしたか?」

「うん。かなり渋い顔をされたけど、なんとか説得したよ」

「じゃあ、ハジメたちには?」

「あはは、実は美空に反対されちゃって……逃げてきちゃった」

「いつの間にか随分とアグレッシブになったね白っちゃん」

 

 いや、中学時代からハジメの半ストーカーなのは知ってたけどね。

 

「私も、いつまでも弱いままじゃ嫌だ。だからお願いします。シューくん、力を貸してください」

 

 深々と頭を下げてくる白っちゃんからは、どれだけの覚悟があるのかを実感させるには十分なだけの気持ちが伝わってきた。

 

 これ絶対イエスって言うまで顔上げないよなー。うまく言いくるめることはできるけど気が引けるし……

 

『その方法なら後で肉体に戻せるんだ、実験はできてるだろ?』

 

 魔物でだけどな。人体実験はまだやったことがない。

 

「……一つ条件がある。これは俺一人じゃできない試みだ。だからちゃんとハジメたちと話し合って、許可をもらってきな」

「っ! それって!」

「親友の恋人候補の頼みだ。この北野シュウジ叶えてしんぜよう」

 

 ぱぁっと分かりやすいくらいに笑顔になった白っちゃんは、何度も俺に礼を言うと部屋を飛び出していった。

 

 おそらくハジメたちのところへ行ったのだろう後ろ姿に苦笑しつつ、念動力で開きっぱなしのドアを閉める。

 

「……これから先の旅、ね」

 

 窓の外を見やる。

 

 そこには澄み渡る青空。地球で昔からハジメと一緒に何度も見上げたのと同じ、どこまでも広がる空。

 

 俺はあと、どれだけこの空の下であいつらと一緒に笑えるだろうか。どこまで守れるだろうか。

 

 その時が来れば、躊躇いなくこの命を捨てよう。だがその決意とは相反することに、俺の心の中には……

 

「長生きしたいもんだな。まだ17だけど」

 

 そんな願いが、口からこぼれ落ちた。

 

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。