星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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おじさんとマシュマロ読んだんですけど、すごく面白かったです。最後の終わり方でガッツポーズしましたw
今回はオリジナル話です。
例のヒロイン登場。
楽しんでいただけると嬉しいです。

シュウジ「さてさて、今回もあらすじのお時間だ」

エボルト「前回はいろんなやつが狂っちまったな。カオリンはよく頑張ったもんだ。あの女騎士は相変わらずへっぽこだが」

シュウジ「まさかの馬さんパンツだもんなぁ。ていうかセントレアと馬って、もうそれ完全にモンむs」

セントレア「い、言わないでくれシュウジ殿!別に馬が好きでも良いだろう!?」

シュウジ「あ、来てたんすねセントレアさん」

セントレア「ま、まったく、公共の場で私のパンツの話などしないでくれ」

シュウジ「いや、俺はいいと思うけどどね?」

セントレア「しゅ、シュウジ殿…」

エボルト「はいはい、ラブコメはそこまで。で、今回は落ちた後のお前の話だな。それじゃあせーの…」

シュ&エボ&セン「「「さてさてどうなる迷宮編!」」」


紅の殲滅者

「ん……ありゃ?」

 

  目を覚ますと、そこはいつぞやの真っ白な空間だった。あれだ、燃え尽きたぜ、真っ白にな……ってくらい白い。

 

  それはともかく、なんでここにいるのだろうか。確か、俺はハジメを助けるためにエボルテックアタックで奈落に飛び込んだはずだが。

 

  少なくとも、ハジメを抱きしめて、岩や壁に何度もぶつかったのだけは覚えてる。そして、エボルトの絶叫も。

 

「……とすると、俺奈落の底のどっかで気絶してる?意識がないからこっちに引っ張られてきた?」

 

  その説が一番有力そうだ。俺は考える人のポーズ(空気椅子ver)をしながらそう考えた。

 

  そういや落ちたって言えば、あいつも落ちてったな。あの時はかなり混乱してたが、無事だっただろうか。

 

「……流石にミンチになってるのは見たくないなぁ」

 

  そしたらこの迷宮を塵一つ残さず消しとばす。俺から彼女や、他の二人を奪う奴は誰だろうと許さない。

 

  もしするにしてもハジメを回収してからだなーと考えてると、どっかから走る音が聞こえてきた。だんだんこっちに近づいてくる。

 

「ようやくお出ましk……」

「うえ〜ん!シュウジく〜ん!」

「っ!?!!?」

 

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ。音の方向に振り向いたと思ったら、いきなり顔に馬鹿でかい柔らかいものが押し付けられた。

 何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何が起きたのかわからなかった。頭がどうにかなりそうだった。

 桃だとかマシュマロだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

 

「もっと恐ろしいもの(爆乳)の片鱗を味わったぜ……」

「うう……」

 

  おっと、恨めしげに見上げられてるのでここら辺にしとこう。

 

「で、どうしたんですか女神様?」

「それが聞いてくださいよシュウジくん!シュウジくんのこと色々と調べてたら、とんでもないことがわかったんです!」

「なにゆえに?」

「愛のなせる技です♪」

 

  ぴんっと指を立てて笑顔で言う女神様。何これ可愛い。もし雫とダブルでやったら俺もういくらでも頑張れちゃいそう。

 

「で、とんでもないことって?」

「それが……前世のシュウジくんの、お弟子さんたちがシュウジくんと同じ世界にいるんです!」

「……やっぱりですか」

 

  なんとなく、そんな気はしていた。そもそも、〝ルイネ〟がいた時点で残りの二人がいるのも確定している。

 

  そのうちの一人は、多分〝世界の殺意〟状態のときに助けた、あのクラスメイト。彼女はおそらく……

 

「でも、なんで女神様がそれを知らないんすか?神様でしょ?」

「私もびっくりしました。まさか神の目をかいくぐるなんて」

 

  それからの女神様の話を要約すると、こうなるらしい。ちなみに途中からあぐらをかいてもふもふしてた。良い匂いがした。

 

  まずあの三人、俺があいつらに分け与えた〝報酬〟を元に、完全に世界から消えたはずの、俺の記憶を復元したらしい。

 

  そして、自分たちの記憶と力を保存しておき、別の世界……これも俺の〝報酬〟を使って、俺のいる世界に送った。

 

  魂と記憶は、互いに引き寄せあう性質を持つ。記憶と力という〝座標〟があれば、自然にその場所に転生できるわけだ。

 

  そうすることで輪廻転生のシステムに引っかかることなく、俺の後を追ってきたらしい。まったく、手の込んだやり方だ。

 

  というか、我ながらなんて弟子たちを育てちまったんだか。まさか()()()()()()()、世界のシステムに干渉するとは。

 

  しかし、さしもの我が愛弟子たちでも、別世界への転移は不可能だったようだ。わざわざ魂と記憶、力を分けたのがその証拠だ。

 

「でも、どうやら最後の最後でうまくいかなかったみたいなんです」

「というと?」

「シュウジさんのいる世界に行ったところまでは成功したみたいなんですけど、その存在の強大さに世界が混乱を起こしたみたいで、世界に存在してもおかしくないように修正されたんです」

 

  まるでAIが学習して自分のバグを直すように、まるで最初からそこにあったようにすることで、世界を構成するシステムの負荷をなくしたようだ。

 

  それに当てはめると、おそらく〝ルイネ〟はオルクス大迷宮の一部として、あのクラスメイト(暫定)はただの人間の一人として、生まれ変わったのだろう。

 

  考えてみれば、当たり前だ。もともと存在しないものがいきなり存在することはない。記憶があるとはいえ、俺もこの世界の人間の一人として生まれたのだから。

 

「しかも、転生した後に回収できた記憶や力は、それぞれかなり差があるようで……」

 

  ほとんど記憶があるものもいれば、前世で持っていた特別な力の大半を失ったものもいる。中には全て失ったものもいるらしい。

 

  だが、それすら彼女たちは予期していた。女神様からすればてんてこ舞いだろうが、俺としては優秀な弟子に鼻高々である。

 

  回収できなかった記憶や力は、代わりに〝何か〟になって必ず自分の元に戻ってくるよう、運命をいじったとか。とんでもないなおい。

 

「さらに、必ずシュウジくんと出会うようにしたらしいです」

「……それで、さっき〝ルイネ〟が俺の目の前に現れたってわけか」

 

  案外、早かったものだ。いや、彼女たちからすれば気の遠くなるような時間の末の再会かもしれないが。

 

  困ったもんだなぁ。こうなるかもしれないと思ったから、あえて記憶を消してから死んだというのに。

 

  いやはや、まったく困った弟子たちだ。一体俺がなんのために、自分の〝報酬〟を使ったと思っているのか。自分たちの夢を放棄してまで、俺なんぞについてくるか普通?

 

「あの、シュウジくん?」

「はい?」

「そういうわりに、すごく嬉しそうな顔ですよ?」

 

  言われてようやく、自分の口の端が両方ともつり上がっていることに気がついた。頬をムニムニして元に戻すが、すぐにニヤニヤしてしまう。

 

「……ありゃりゃ、こりゃいけねえ」

「…本当に大切に思ってたんですね、お弟子さんたちを」

「まあ、娘みたいなもんだからなぁ」

 

  彼女たちのためならば、何でもやれる自信がある。〝報酬〟を彼女たちに譲ったのだって、愛情あってこそ。

 

  それが追いかけてきてくれたとあっちゃあ、師匠冥利につきるってもんだ。あの騒がしく、暖かい時間を、もう一度……

 

「とにかく、注意しておいてくださいね。いつ現れるかわかりませんから」

「はい、注意しときまーす。そんで女神様、要件はそれだけ?」

「まあ、それはそうなんですけど……目覚めるまで、しばらくこのままでいいですか?ちょっと疲れたので」

「合点承知の助でやんす」

 

  それから現実で目が醒めるまで、女神様とほのぼのしてました、まる。

 

 

 ●◯●

 

 

  パチッ、と目を覚ます。すると最初に見えたのは、薄暗い洞窟の天井だった。めちゃくちゃゴツゴツしてそう。

 

「あいたたた……」

 

  ズキズキと痛む身体に声を出しながら、上半身を持ち上げて伸びをする。すると色んなところからポキポキと音が鳴った。

 

  しばらく身体をほぐして、痛みが和らいでくると状況確認に移る。まず場所は……まあ、奈落の底だろうな。

 

  周りを見渡していると、すぐ近くに焚き火があった。パチパチと良い音を立てている。そして自分の体に毛布がかかっているのがわかった。

 

「よぉシュウジ。いい夢見れたか?」

 

  異空間の中に入れといたはずの毛布がなんで、と思っていると、聞き慣れた声がしたのでそういうことかと納得する。

 

「ふっ。いつから夢を見ていると錯覚していた?」

「なん……だと……!?いや、お前は夢を見たはずだ!」

「おまえがそう思うならそうなんだろう、おまえの中ではな」

「俺がガンダムだ」

「お前は何を言ってるんだ」

「……く、クク。フハハハハハ!」

「ふふ、あはははは!」

 

  いつものようなやり取りをした俺たちは、たまらず大声で笑う。そして互いに不敵な笑みを相手に向けた。

 

「そんだけの元気があるなら平気だな」

「おうよ、()()()()

 

  そう、俺の前に座っているのは、我が相棒にしてかつて最凶最悪の地球外生命体、エボルトであった。

 

  俺と全く同じ顔、背格好をしているエボルトは、白髪を揺らしながら楽しそうに赤眼を歪めている。手元では薪を折って火に投げ込んでいた。

 

  さて。ここで疑問に思う人もいるだろう。なぜ分離して、スタークになって戦っていたエボルトがいるのか。それは、ある技能のおかげだ。

 

 

 ============================

 北野 シュウジ 17歳 男 レベル:???HL:測定不能

 天職:星狩り、アサシン

 筋力:ERROR

 体力:ERROR

 耐性:ERROR

 敏捷:ERROR

 魔力:ERROR

 魔耐:ERROR

 技能:天体観測・特殊空間航行・全事象耐性・憑依[+精神操作][+肉体操作]・衝撃波・魔具精製[+エボルボトル][+ドライバー]・念動力[+凝縮][+破壊]・毒物精製・瞬間移動[+一定空間内]・異空間収納[+付与][+無機物]・敵対感知・物体操作・隠密・剣術・槍術・短剣術・銃術・闘術・暗殺術・交渉術・世界の殺意[+回帰]

 短剣術・自己再生[+分裂増殖]・変身・蒸血・進化・言語理解

 ==============================

 

 

  ステータスプレートにある技能のうち、いくつかが派生技能を獲得している。ちなみにレベルとハザードレベルはスルーの方向で。

 

  その派生技能のうちの一つ、自己再生の[+分裂増殖]。これはいわば、単細胞生物のプラナリアと同じ原理で分裂し、増える技能だ。

 

  残念ながら、一応人間の俺では使えなかったが、技能を共有するエボルトには使えた。つまり、スタークになっていたのはエボルトの元半分だ。

 

  で、ここにいるのは残りの半分。こういうもしもの事態に備えて、常に俺の体内に潜んでいたというわけだ。

 

「いやあ、案外悪くないなこの世界のシステムも」

「この状況にはまさにベストマッチだったな……で、だ。良い知らせと悪い知らせがあるが、どちらから聞きたい?」

「んー、じゃあ悪い方からで」

「おk。まず一つ目だが……お前のエボルドライバー壊れたぞ」

「……は?え、マジで!?」

 

  慌てて異空間からエボルドライバーを取り出して、腰に当てる。が、しかしベルトが出てくることはなかった。マジかよ。

 

「ここにくるまでに、何度も岩壁にぶつかったせいだな。ベルト部分がぶっ壊れたから使えねーぞー」

「うそーん……」

「で、二つ目。途中でお前が気絶したせいで、ハジメを離しちまってはぐれた。途中で横穴に落ちてったから場所もわからん」

「オイオイオイオイ、最悪じゃねえか」

「グラップラー刃◯やめろ」

 

  うーん、瞬間移動でハイリヒ王国中から素材集めて作ったのに、残念だ。異空間の中にも材料は残ってない。こりゃしばらく修理は無理だな。

 

「で、良い知らせってのは?」

「それが……と、噂をすれば起きたようだぞ」

「起きた?」

 

  ほれ、と指差すエボルトに、そちらを振り向く。すると、近くに置いてあった布がもぞもぞと動きだす。なんだ?

 

  少し警戒して見ていると、むくりと布の中から何かが起き上がる。するすると布が落ちていき、そして……血のように赤い長髪が姿を現した。

 

  まさか、と思っていると、赤髪の持ち主はしばらくぼーっとした後、キョロキョロと辺りを見渡し、最後にこちらを振り向いた。

 

  その女の顔を見た瞬間、俺はピシッと固まった。そのまましばし、女のことをじっと見つめる。エボルトに叩かれて正気に戻った。

 

「おいシュウジ」

「お、おう……やあお嬢さん、元気かい?あ、俺は元気だぜ。うん、もう絶好調」

「おい、混乱しておかしなことになってるぞ」

「マス、ター?」

 

  エボルトに突っ込まれていると、女は俺をマスターと呼んだ。思わずピタリ、と動きを止める。そして驚きの顔で女を見た。

 

「マスター、なのか?」

「……なんでわかった?」

 

  そう言うと、女はぱあぁあっ!と顔を輝かせた。あまりに美しいその笑顔に、胸がドクンと高鳴った。

 

「やはり、マスターなのだな!よかった、やっと会えた……!」

「うわっちょ、抱きつくなって!お前今裸……」

 

  そう、こいつは今裸なのだ。エボルトに服着せとけよとテレパシーを送るが、面倒臭かったと肩をすくめやがった。こいつ後で殺す。

 

  エボルトを恨めしげに睨んでいると、押し付けられていたおっぱゲフンゲフン、胸の感触がさらに強まった。

 

  バッとそいつを見下ろすと、「ふふふ……」と笑いながら体を密着させてきた。いたずらげな光を宿した碧眼が、上目遣いに俺を見る。

 

「お、おい……」

「どうだ、マスター?私がマスターの初めてを奪った時と感触は変わってない……」

「ストーップ!ストーップルイネさん!それ以上はいけない!」

 

  慌てて彼女の口をふさぐ。「むぐっ」と声をあげながらも、女はまるで触られたことが嬉しいと言わんばかりに目を細めた。

 

  こりゃダメだと、恐る恐るエボルトの方を振り返る。すると奴は案の定、ニヤニヤと口元を歪めていた。

 

「へえ、そういやそうだったなぁ。なあシュウジ、今どんな気持ち?童◯奪われた相手に抱きつかれてどんな気持ち?」

「やややややかましいわ!べべべ別に?特に何も思ってないし?」

 

 嘘ですかなりドキドキしてます。

 

  結局、俺はそいつが満足するまでエボルトの愉悦顔から逃れることはできないのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

 で、十分ほど経った後。

 

「……で、だ。久しぶりだな、ルイネ」

「ああ、久しぶりだ、マスター♪」

 

  真面目な声と表情でそう言うと、ルイネは上機嫌で答えた。俺の膝の間から。

 

「……時にルイネさん、俺の膝から降りる気は?」

「ないが?」

「あっ即答ですかそうですか」

「ふふ♪」

 

  背中を預けてくるルイネ。これは何を言っても無意味だと、俺は諦めて肩をすくめた。ニヤついてるエボルトは無視だ無視。

 

  改めて……こいつの名は、ルイネ・ブラディア。前世、俺が〝世界の殺意〟であったころに育てていた、三人の弟子の一人だ。

 

  順番的には三番弟子にあたるが、姉御気質で他の二人を纏めていることが多かった。一番年齢が上というのもある。

 

  一番弟子は四歳程度の頃から育てていたから、本当の娘のような感じだが、ルイネは俺を見つけてきた時からすでにある程度の歳だった。

 

  特徴的なその赤髪と、七つの大国を滅ぼしたことから、〝紅の殲滅者〟という異名を持っている。

 

  また、その神話の女神にも劣らない美貌から、〝血濡れの美姫〟なんて他の二人からあだ名も付いてた。本人は苦笑してたが。

 

  あと、まあ……さっき言った通り、こいつには俺の初めてを奪われた。俺が身近な異性のそういう誘惑に弱い原因でもある。

 

  いやだって、普通弟子に襲われるなんて思わないじゃん?あらゆる手段を使っても上回ってくるなんて思わないじゃん?

 

「それでマスター、このマスターの姿をした奴はなんなのだ?」

「おお、そういや自己紹介がまだだったな。俺の名はエボルト。かつていくつもの惑星を飲み込んできた地球外生命体。今は改心して、シュウジの体内に住んでる……相棒?家族?兄弟?なあシュウジ、俺ってどんなポジだっけ?」

「ペット枠」

「そうそう……ってオイ!」

「なるほど、つまりマスターの半身というわけだな」

 

  ほんの少しのやりとりで納得するルイネ。こいつは昔から理解が早かったからなぁ。

 

「私はルイネ・ブラディアだ。以後よろしく頼む」

「おう、よろしくブラディア。俺のことはエボちゃんとかエーボとか呼んでくれ」

「エーボってアミー◯みたいだなおい」

 

  そういやビルドとかクローズのア◯ーボ作ってたけど、どうなってるだろうか。処分されてなきゃいいが。

 

  さてさて。自己紹介も済んだところで、肝心なことを聞くとしますか。そう、女神様から聞いたことをな。

 

  とりあえず、この体制では真面目な話もできんので、異空間から適当に服と雫用に使ってたカチューシャを見繕って座らせる。

 

「んで、ルイネさんや。大体は女神様から聞いたが……他の二人もどこかにいんのか?」

「ああ、いる。皆マスターを追いかけてきたからな。そのうち、私のように現れるだろう」

「そっかー、来んのかー……まったく、飛んだおてんばな弟子たちだぜ」

「今度は私が尋ねる番だ……マスター。なぜ私たちから、記憶を消した」

 

  それまでのどこか甘えるような声ではなく、言及するような厳しい声でルイネは問いかけてくる。俺は自然と居住まいを正した。

 

「なんで、か……そんなの決まってるだろ。お前たちの夢への〝道〟に、俺という綻びを作らないためだ。夢を叶えた輝かしいお前たちに、俺という存在は不要なものだった」

「ふざけないでくれっ!」

 

  立ち上がったルイネの怒声に、空気が揺れた。パラパラと砂が天井からこぼれ落ちる。

 

「……私たちは、悲しんだ。あなたという存在を忘れていたことが、どれだけ悔しくて苦しかったか、あなたは考えたか?」

「………」

「ああ、確かにあなたのおかげで、夢は叶えたさ。私は祖国と家族を取り戻した。〝破壊者〟は教師に、〝捕食者〟は料理人になれた。望むものすべてを手に入れたが、それでもあなただけがいなかった!」

「……ルイネ」

「不要な存在だと?ふざけるな!私たちが夢を叶えるための力をくれたのは……何もかも失った私の〝家族〟になってくれたのは、他の誰でもない、あなたじゃないか!」

 

  彼女は、泣いていた。頬を赤らめ、怒りをあらわにしながら、それでも寂しそうに、心が激しく締め付けられるほどに、涙を流していた。

 

  それに、俺は後悔を感じた。これまで、一度もあの選択が間違ったと思ったことはなかった。これで、俺一人消えることで彼女たちは幸せになれると。

 

  だが、違った。俺が思うよりずっと、彼女たちと俺の絆は、強かったんだ。一人で完結して、勝手に理想の結果を押し付けていた。

 

「たとえ夢を叶えたとしたって、あなたがいなければ意味がないんだ!私は誰よりも、あなたに〝頑張ったな〟と、そう言って欲しかった!きっと、他の二人だってそうだ!」

「……すまん」

 

  悲痛な叫びを上げるルイネに、俺は深々と頭を下げた。これに関しては、俺が徹頭徹尾、十割がた悪い。

 

  謝罪を受けたルイネは、少しじっと俺を見た後、まるで縋り付くように抱きついてきた。今度は拒むことなく、その背中に手を回す。

 

「マスター、頼む……もう、私の、私たちの前からいなくならないでくれ。あなたが必要なんだ。私は、あなたがいない世界でなんて、生きたくないんだ」

「……ああ。こんなところまで追いかけてきてくれたんだ、もうどこにも行きやしないさ。今度は、ずっと一緒だ」

「マスター、マスタぁっ……!」

 

  泣きじゃくるルイネ。そんな彼女に俺はそっと、昔のように髪を撫でた。ゆっくりと、まるで子供をあやすように。

 

  しばらくそうしていると、ルイネはだんだん落ち着いてきて、しまいにはゴロゴロと甘えるようになった。思わず苦笑してしまう。

 

「……で、いつまで撮ってるつもりだそこの地球外生命体」

「おっと、バレちまったか。いやなに、弟子と師匠の感動の再会だからな。記録しておきたいと思って」

 

  言いながら異空間にスマホを放り込むエボルト。ちなみにあのスマホ、例のバイクに変わる俺の自作である。

 

「さて。それで、これからどうする?」

「そうだな……とりあえず、上には戻らない。ハジメを見つけてから、女神様からの知識にある〝隠れ家〟を目指す。雫や他のやつは上のお前に任せよう」

「そうだな、それがいい」

「む……マスター、何の話だ?」

「いやなに、旅をして切り札を増やし、神を〝殺す〟って話さ」

 

  そう言った途端、ルイネはニヤリと不敵に笑った。それは、任務に出るときに彼女が必ず浮かべていたもの。

 

「ほう、マスターがついに神を殺すのか」

「まあな……一緒に来るか?まあ、答えは決まってるだろうが」

「その通りだ。私もその旅に同行させてもらいたい。だから……これから末長く、よろしく頼むぞ、マスター」

「おう」

 

  それからしばし、これからの計画を立てながら、転生して以降の話などをして三人で盛り上がった。




次回はハジメサイドです。
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