楽しんでいただけると嬉しいです。
何やら企んでいるカムたちだったが、一度パルたちと合流しておいたほうがいいという事になった。
よって、ハジメの作った空間魔法を付与した〝ゲートキー〟というアーティファクトを用いて地下牢から移動する。
そうして岩石地帯にやって来たハジメたちを、総勢百二十名のプレデターハウリアたちの熱狂的な歓迎が迎えた。
お互いに肩を叩き合い、鳩尾を殴り合い、クロスカウンターを決め合って、罵り合いながら無事を喜び合っている。
「みんな元気だねぇ」
「いや、元気すぎるだろこれ。カムとかあの怪我なのに三人投げ飛ばしてるぞ」
「ち、治療してくるね!」
「ったく、重症患者だし!」
治癒師二人が駆けていくのを眺めていると、彼らの耳にこちらに近づいてくる足音が届く。
その足運びや足音の重さから、誰なのかを一瞬で判断したシュウジは迷いのない動きで振り返って両手を広げた。
ちょうど良いタイミングで、そこにぽふっと一人の少女が収まる。その拍子にトレードマークのポニーテールが揺れた。
「おかえりさん雫。どったよ?」
「……お願い、少しの間こうさせて」
「そりゃいくらでも構わないさ」
弱々しい声で呟く雫の頭を撫でながら、ギッとシュウジは一緒に帰ってきた光輝を睨みつけた。
どういうことじゃコラと殺気を放つシュウジに、脇に勇者(笑)マスクを抱えた光輝はうろたえる。
「いや、その、仮面を帝国兵がバカにしてな……」
「もう、不細工なおっさんたちのくせにシズシズを貶すなんて!鈴は怒ったよ!」
「まあ、普通にこのマスクはねえけどなぁ」
同じように持っていた仮面をひょいと頭の横に持ち上げ、龍太郎は疲れたようにため息を吐く。
本来であれば、光輝だけあの仮面(ハジメ作)で、あとの雫たちは見事なデザインのもののはずだった。
が、さすがにそこは幼馴染のよしみというか、一人だけ激しく浮くので、恥を忍んで同じものにした。
その結果がこれである。見事に爆散していた。
「なるほどな。やっぱ今後はそこの勇者だけ同じ仮面にしよう」
「いや、せめて他のにしてくれ……これはキツい」
光輝の切実な願いをシュウジがスルーしていると、
香織たちによって無理やり治され、無傷になったその体には何やらただならぬ雰囲気を纏っている。
シュウジは一度雫と離れ、ハジメとともに目の前に跪いたカムのことを見下ろした。
「まず初めに、改めてありがとうございました。まさかこんなところでボスとセンセイに会えるとは、幸運の極みです」
「うんまあ、正確には俺じゃないんだけど……」
「まあ、偶々だ。で、何があった?」
「ええ……どうやら我々は、少々やりすぎたようです」
そしてカムは、これまでの経緯を語り始める。
先に聞いていた通り、カムたちは魔人族同様に、あらゆる手段を用いて樹海に入り込んだ帝国兵を殺した。
帝国側の被害は非常に大きく、次々と消えていく味方の姿に相当警戒をした帝国は、ある一計を案じる。
それがまさしく、話に聞いた帝都での大捕り物であった。
亜人族の女子供の大量誘拐、フェアベルゲンの惨状、それらによって頭に血が上ったハウリア族を誘い込んのだ。
樹海を端から焼き払ったり、亜人奴隷に拷問まがいの強制をして霧を突破したりしたことも要因だろう。
そうして生け捕りにされたカムだったが、当然温厚の代名詞のような兎人族がこのような化け物になっていて帝国側も驚いた。
おまけに、樹海の中でもないのに真正面から何十人も帝国兵を蹴散らしたことで、その装備や変貌の理由に上層部が興味を抱く。
「ですが、その全てを我々は予測していました」
「ほう?」
だが、ニヤリとカムは不敵に笑って言った。全てが想定内であったと。
「いくら血気盛んな我々でも、センセイの教えを忘れちゃいません。常に冷静に、相手の計略をも計算に入れる。それでこそ一流の暗殺者だと」
「おお、そりゃ教えた甲斐があるねぇ……俺じゃないけど」
拳を握りしめているシアへの言い訳だろうか、小声で最後に付け足すシュウジにカムは頷く。
それは他の兎人族たちも同じであった。メラメラと燃える炎を瞳に宿しながらも、底冷えするような冷笑を浮かべている。
「だから我々は、あえて相手の挑発に乗ってやることにしたのです」
「なるほどな。そうすることで帝国の懐に潜り込んだのか」
「ええ。そして俺と、こいつらが拷問されて時間を稼いでいるうちに帝都の情報を収集させました」
兎人族たちの中から、特に顔つきが違う十数人が一歩前に出る。
彼らはほんの数分前に合流した、カムによってわざわざ逃がされて帝国に潜伏していた尖兵たちであった。
裏をかいたと思っていた帝国の、更に裏をかいていたという事実にシアと光輝たちが驚く中で、カムは言葉を続ける。
「必要なものは揃いました。新たに家族を迎え入れた我ら新生ハウリアは──帝国に戦争を仕掛けます」
鋭い眼差しで、迷いのない口調でなされた宣言に、その場の空気が凍りつく。
ハジメたち、そしてハウリアたち自身以外の全員が一切の動きを止め、カムのことを凝視している。
時が止まったと言っても過言ではないほどに硬直し、虫の鳴き声すら聞こえる空気を破ったのは、シアの震える声だった。
「何を……言ってるんですか?父様、私の聞き間違いでしょうか?今、私の家族が帝国と戦争をするといったように聞こえたんですが」
「聞き間違いではない、確かに言った。この日のために我らはずっと備えてきた。決意は変わらん」
「ば、馬鹿を言わないでください!いよいよ手の施しようがないところまで頭がおかしくなったんですか!?」
金切り声と言っても良い絶叫が、夜の岩山に響く。
下手をすれば帝都を囲む外壁の巡回にまで届きそうなそれは、シアの心情を確かに表していた。
「確かに、そこの鬼畜によってハウリア族は強くなりました。父様に至ってはもう別種族です」
「ちょっとシアさん?今俺の悪口言わんでも良くない?」
「シュウジさんは黙っててください。ですが、たったの百人とちょっとじゃないですか。それなのに帝国と戦争?ついに血迷ったんですか!?」
「シア、落ち着いて話を──」
「落ち着けません!血迷っているのでないのなら、調子に乗ってるんですね?だったら今すぐブレードを出してください!帝国の前に私が相手になります。その伸びきった鼻っ柱を叩き折ってくれます!」
「鬼畜って言われた……否定できないけど」
「よしよし」
明らかに興奮した様子で、シアは宝物庫からドリュッケンとディオステイルを取り出す。
最初から奥の手である二刀流ならぬ、二槌流を出しているあたり、どれだけ怒っているのか一目瞭然だ。
その瞳に宿っているのは、積極的な自殺をしようとしているとしか思えない家族への純粋な怒り。
光輝たち、龍太郎と雫を除いた地球組など軽く凌駕する圧倒的圧力を淡青色の魔力と共に全身に纏い、父を見下ろす娘。
普段とはまるで様子の違うシアに光輝らが驚く中で、カムはどこまでも冷徹な目でシアのことを見上げていた。
「一旦落ち着け、この早とちりウサギ」
「ふひゃっ!?」
しかし、そんな剣呑な父と娘の睨み合いは、むんずとハジメがシアのウサ尻尾を掴んだことで祝った。
「ひゃぁん!?だめぇ、しょこはだめですぅ~!ハジメしゃん、やめれぇ~」
「私も」
「ああぅうっ!?」
そこに、ウサギがウサミミをコリコリしてさらなる刺激を与える。
快感的気持ち良さと快楽的気持ちよさ、その両方を同時に与えられたシアは、なすすべなく崩れ落ちた。
四つん這い状態になったシアは、荒い吐息を吐きながら、潤んだ瞳で二人を恨めしげに見る。
何人かが前かがみになる中で、ハジメとウサギは片方ずつシアのウサミミを弄る。手つきの巧さに安心したような顔になった。
「ちょっとは落ち着いたか?話を聞こうとしてるお前が、逆に頭に血が上ってどうする」
「……確かにそうです。すみませんでした父様。私、話も聞かずに……」
「謝ることはない。娘が父を、家族を心配してなにが悪いというのだ。それよりも……」
穏やかな顔で娘のウサミミを弄るハジメを見て、ニヤリとカムは笑う。
「随分ボスに可愛がって貰ってるな?孫が見れるのはいつだ?うん?」
「みゃ、みゃごっ!?そんな、父様、私まだそんなんじゃ……」
赤面してアワアワとしているシアをハジメたちが宥めている間に、シュウジがカムに確認をとる。
「さっき必要なものは揃ったって言ってたな。それに帝都の情報を集めてたってことは……」
「センセイの思っている通りです。なにも真正面から馬鹿正直に殺し合おうなどとは思ってません。まあ、それでも負けるつもりはありませんがね」
クックックックッ、と笑うカムに、他のプレデターハウリアたちも怪しげな笑いを浮かべた。
実際、彼らは白兵戦においても一騎当千の力を持つだろう。カインはそれだけの厳しい訓練を施した。
「ですが、気配を消すことにかけては随一の我ら。ここは得意分野で……暗殺を仕掛けようと思います」
「なるほど、だからわざと帝城に捕まってた訳だ」
「ど、どういうことだ?」
話についていけない光輝が質問すると、シュウジは心底面倒そうな顔をした。なので、代わりに雫が補足をする。
「お城には皇帝陛下を筆頭に、一族と国の重鎮が集まっているでしょう?だからカムさんたちに目を向けさせて、その間に帝城の内部についても情報を集めた……違うかしら?」
「ご名答ですぜ、雫の姉御。お初にお目にかかりましたが、さすがはセンセイの伴侶です」
「あ、姉御……」
また新たに増えた呼び名に雫がふらつく。しかし後に続いたシュウジの伴侶という表現に、どうにか踏みとどまった。
「城の中でさえ、もはや我らの庭のようなもの……我々の手で、必ず奴らに恐怖を植えつけてやりましょう」
「つまり、俺たちの手は借りずにカムさんたち自身でやるってことか」
「ええ。偶然にもこうして再会できましたが、元よりそのつもりでしたからね」
それもそうだ、と頷くシュウジ。
シアのウサミミをモフりながらも聞いていたハジメも、ここで頼ってくるような軟弱者でないと聞いてふっと笑う。
「で、戦争の動機は?」
「先ほども言いましたが、我々兎人族は帝国の興味を強く引いた。それも極めて強い興味を。帝国は実力至上主義を掲げる強欲な者達が集う国で、皇帝も例には漏れません。そして、弱い者は強い者に従うのが当然であるという価値観が性根に染み付いている」
「つまり、皇帝が兎人族狩りでも始めるって言いたいのか?殺すんじゃなくて、自分のものにするために?」
「肯定です。尋問を受けているとき、皇帝自らやって来て、〝飼ってやる〟と言われました」
「なんだそのギャルゲーみたいな展開」
質問に答えるカムに、ハジメの脳裏にスイーツなBGMとキラキラな背景、その中で決めポーズの皇帝が思い浮かんだ。
南雲ハジメ、若干17歳。父親のゲーム会社でバイトしているために、思考が一部製作者のものになっていた。
「その場で顔に唾を吐きかけてやりましたが、むしろ気に入られてしまいました。全ての兎人族を捕らえて調教してみるのも面白そうだなどと、それは強欲そうな顔で笑いまして。断言しますが、あの顔は本気です。再び樹海に進撃して、今度はより多くの兎人族を襲うでしょう」
「で、もし壊滅状態のフェアベルゲンに兎人族の受け渡しでも要求されたら……」
「そうです。我らのせいで他の兎人族の未来が奪われるのは……流石に、耐え難い」
今この場にいる兎人族たちが強いのは、最初にカインが行った魔改造と、その訓練法を受け継いだカムたちがいるから。
もしそのような状況になった時、何も知らない兎人族たちは殺され、あるいは愛玩用に奴隷となる。
いくらフェアベルゲンから追放されたと言えど、このプレデターたちにも同族を思う気持ちくらいは残っていた。
「流石にカムさんたちでも、皇帝とその一族をサクッと……なんて考えちゃあいないよな?」
「無論ですよセンセイ。あちらも国のトップだ、暗殺の対策はしてあるでしょう。ですが、周りの人間が一人、また一人と消えていったら?」
「……なるほどな。本丸を叩くんじゃなくて、少しずつ精神的に追い詰め、自分たちの手に負えない脅威だと思わせるってことか」
静かに頷き、カムは肯定の意を示す。
「最終的に、亜人族との不干渉を確約させるところまで持っていこうと思います」
「それまで相手が待つと思うか?」
「さて、それは我らの腕次第でしょうな」
「リスクが高いねぇ」
シュウジの零した言葉に、シアはハッと顔を青ざめさせた。
家族は今、一手でも間違えれば一族諸共滅びる賭けに出ようとしている。文字通り、存亡をかけた戦いだ。
同族を見捨てて逃げることもできるだろう。おとなしく帝国に恭順することもできるだろう。
だが、あえて戦うという、最も過酷な道を選んだのだ。
「父様……それにみんなも……」
「シア、そんな顔をするな。全て承知の上だ。もう逃げることや蔑まれること、何より滅びることを諦めて受け入れたくはないのだ」
「でも!」
「これは我らの誇りだ。もう昔とは違うのだと、我らはお前たちに踏みつけられる存在ではないと、ここで証明し、生きる権利を勝ち取ってみせる」
この世界は弱肉強食。勝利したものが正義となり、負けたものは惨めに悪の汚名を背負うことになる。
だからこそ力こそが全ての帝国は大きな顔をしてきた。それを踏みにじり、生存という名の正義を勝ち取る。
その決意が、確かにカムたちの目の中には存在していた。
強い信念に満ちたカムたちの瞳を見て、光輝は負けたような気持ちを抱く。
(……すごいな。この人たちも、自分の誇りを持っている。なすべきことのために、辛い選択をすることを決心している)
同時に、強烈な憧れをも感じていた。
信じていた借り物の正義を捨て、本当の自分を見つけることを目指す彼にとって、ハウリアの姿勢は一つの理想だったのだ。
生きることとは、選ぶこと。時にそれがどれだけ過酷なことであろうとも、逃げずに立ち向かわなくてはいけない。
その覚悟を、この場にいる兎人族という、本来弱い者達から思い知らされた。
「だから、振り向くな。我らが愛する娘よ」
「父、様……」
「お前は決意したはずだ。ボスと共に未来へ進むのだと。ならば、我らという過去を振り返らずに真っ直ぐ進め」
狩人でも、族長でもなく、父としてカムはシアの背中を押した。
泣きそうな顔を俯かせるシアを慈愛のこもった目で見て、カムは無言で見守っていたハジメに頭を下げた。
まるで、娘を頼みますとでも言うように。それに続いて次々と頭を下げていく兎人族達に、光輝たちが息を呑む。
「そっか。じゃあ頑張りなさいな」
「北野!?」
それを見て、あっさりと踵を返したシュウジに光輝が吠えた。
それは非難の声ではない。ただ単に、骨の髄までこびりついた正義感から発せられた弾みのようなものだった。
それを自覚し、名前を呼ぶ以上のことをしなかった光輝を一瞥して、シュウジはハジメの肩を叩く。
「で、お前はどうする?」
「……俺も手出しをするつもりはない。これはこいつらの戦いだ。俺たちが介入すれば、それは覚悟を踏みにじることになる」
「ハジメ、さん……」
振り返ったシアが、悲痛そうな顔でハジメの名を呼ぶ。
そして口を開き変えて、止めた。
覚悟を踏みにじるという最愛の男の言葉が、その先を……助けを請うことを思い止まらせた。
再びシアがうつむいた所で、シュウジが不意に耳元で何かを言った。それを見たユエ達は首をかしげる。
内容を聞いたハジメはため息をつきながら、とりあえずシアに言葉を投げかけた。
「それに、強さを示さなければいけないのはハウリアだ。俺たちがそうしたところで、俺たちがいなくなれば逆戻りだ。お前もわかってるだろ?」
「……はい」
「でもよぉシアさん、何も手伝うのはタブーってことはないんじゃないかい?」
「……え?」
続くシュウジの言葉に、シアは間抜けな声を漏らしながら顔を上げた。
「ぶっ!?」
そして吹き出した。何故ならハジメとシュウジが、ジョ○ョ的なポーズで体を寄せ合っていたので。
まるで樹海でのハウリアたちの名乗りに返すようなそれに、おおっと兎人族たちが沸き立つ。
同時に、またくだらないことをやり始めたとユエ達はため息を吐いた。勇者組は顔を引きつらせている。
「そう。俺たちが手を出しちゃあおしまいだ」
「だが、うちの元気印のお前がそんな顔をしてるんだ。黙って引き下がるなんて俺の誇りが許さねえ」
「あの……ちょっと、お二人とも」
無駄にキマっている横顔で話す二人に、プルプルとシアは震えた。
「だから俺たちも手を貸そう。シアさんが泣くような作戦は、仲間として見過ごせねぇ」
「ちょ、プフッ、ちょっと、お二人とも……」
「ああ。だからハウリアども、お前らは直接皇帝の首に刃を突きつけてやれ。そして目の前で家族を、友を、部下を組み敷き、帝国の何もかもを見下してやれ」
「だから、そのポーズ、を、やめ……」
「「そして示してやれ……お前達こそが帝国の破滅の象徴だと!」」
示し合わせたようにこちらを振り向いた二人の周りに、バァアーン!という文字と効果音が浮かんだ。
シュウジの幻覚魔法である。こんなこともあろうかと開発しておいた、無駄にクオリティの高い無駄な技術であった。
シリアスな雰囲気は何処へやら、限界に達したシアが腹を抱えて崩れ落ちる。兎人族達はハイテンションだ。
「帝国を制圧し、蹂躙し、お前達を敵に回したが最後逃げ場など無くなったのだと思い知らせろ!」
「「「「「「「「「Sir,Yes,Sir!!」」」」」」」」」
「おいおい兎ちゃん達、声が小さいぞ?それでもこの北野シュウジが育て上げた殺し屋か!まるでなっちゃあいないぜ!?」
「「「「「「「「「Sir,Yes,Sir!!」」」」」」」」」
「よぉし!その声の大きさがハッタリでないと証明してみせろ!雑魚など構うな、キングを殺れ!」
「「「「「「「「「「ガンホー! ガンホー! ガンホー!」」」」」」」」」」
「いいか、お前達はこの北野シュウジが胸を張って誇れる
「「「「「「「「「「ビヘッド! ビヘッド! ビヘッド!」」」」」」」」」」
「膳立てはするが、主役は貴様等だ! 半端は許さん! わかってるな!」
「「「「「「「「「「Aye,aye,Sir!!!」」」」」」」」」」
「宜しい!その煮えたぎる血と、運命を覆す底意地を奮い立たせろ!新生ハウリア族、百二十二名で……」
「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」
「「帝城を落とすぞ!」」
「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」」」」」」」」
阿鼻叫喚であった。
お膳立て?いいや、そんなものでは収まらない。敬愛するボスと師匠からの鼓舞を受けたハウリアは万倍の勇気を手に入れた。
道は開くと言ってくれた。それならばこの世界最強の狩人として、皇帝の首程度跳ねられなくてどうする。
闘志、野心、殺意、戦意、その他ありとあらゆる熱がつまった雄叫びが岩石地帯に響き渡った。
「兎様お願いします夢には出てこないでください」
「だからしっかりしろ谷口!」
「……雫。あれの片方お前の彼氏だろ。なんとかしてくれ」
「無理よ光輝……でもちょっとかっこいい」
「雫!?」
ガタガタと震える鈴、それを必死に揺さぶる龍太郎、唖然とする光輝と、ほうっと恍惚の溜め息を吐く雫。
一方でいつもの悪ふざけに途中から慣れていたユエたちは、呆れたり微笑んだりと、様々な反応を示す。
「はぁ……変わってないっていうか、悪化してるっていうか」
「う~む、すごいのぉ~。兎人族がここまで変わるとは。流石、ご主人様とシュウジ殿じゃ。あっさり帝国潰しを目的にしよるし。堪らんのぉ~。あんな気勢でご主人様に罵られてみたいものじゃ」
「うるさい、よ?」
「……黙れ変態ドラゴン」
「っ!? ハァハァ」
「うん、ティオさんはちょっと自重しようね? それより、シアの表情見てよ、ユエ。笑いながらも蕩けてるよ」
「……ん、可愛い。シアが泣かないためだから……嬉しくて当たり前」
「だよね~。いいなぁ、私も、あんな風に言われてみたいなぁ~」
そんなこんなで、ハウリアとシュウジたちによる帝国落としが決まったのであった。
なお、ジ○ジョポーズをやめたハジメに、一週間分ほど笑い終えたシアがしばらくの間くっついていた。
次回からちょくちょく光輝と御堂さんが絡む予定です。
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