それに伴い、設定の大きな変更、並びにその後の各所も書き換えている最中なので、よろしくお願いします。
シュウジ「うす、シュウジだ。前回は伏線を置いた回だったな」
エボルト「傍観してた俺が言うのもなんだけどよ、あれもうハウリアの原型残ってなくね?」
シュウジ「ああ、彼らは優しかったよ…」
シア「改造した本人が何言ってるんですかもうっ!まあいいです、今回はパーティーの回です。それじゃあせーの、」
三人「「「さてさてどうなる帝国編!」」」
三人称 SIDE
帝城、パーティー会場。
広大かつ煌びやかな装飾がいたる箇所に施されたそこでは、帝国貴族や国の重鎮が集まっていた。
立食形式のパーティーで、純白のテーブルクロスが敷かれたテーブルの上には何百種類もの趣向を凝らした料理やスイーツが並んでいる。
礼儀作法を弁えた熟練の給仕たちが颯爽とグラスを配り歩き、それを片手に老若男女が束の間の宴を楽しんでいた。
彼らの区別は案外顕著で、おどおどとしているのが文官。偉ぶっているのが武官という、これまたいかにも帝国らしい。
「その歳であの【オルクス大迷宮】の屈強な魔物たちを相手にしているとは、いやはや恐れ入る」
「いえいえ、これも鍛錬あっての賜物です」
──HQ、こちらアルファ。H4ポイント制圧完了。
──HQ、こちらブラボー。全Jポイント制圧完了。
そんな中で、ハジメは礼儀正しくも鋭い雰囲気からか、武官たちに積極的に話しかけられている。
彼らからすれば、ハジメたちは〝勇者一行〟であり、〝神の使徒〟。実力こそが全てたる彼らからすれば是非お近づきなりたい。
また、そういった意味での興味以外にも、ハジメの周りに並ぶ極上の花たち……女性陣にも別の意味での興味があるようだ。
無理もあるまい。主役のリリアーナなど微塵も気にしていないように彼女たちは圧倒的な存在感を放っていた。
まずはユエ。
光沢のある生地で、肩口が露出しており、裾はフリルが何段も重ねられ大きく広がっている純白のウェディングドレスを纏っている。
髪はポニーテールに、上品な白い花を模した髪飾りで纏められていた。露出は少ないが、魅力が全身から溢れ出している。
次に美空。パーティードレスにボレロを組み合わせ、いつもは結っている髪を降ろした彼女は、更にその清楚さを増していた。
ネットアイドルをしていただけあってその美貌は抜群で、自信に満ちた姿勢は周囲の女性陣にも決して劣っていない。
シアは、月光を彷彿とさせるようなミニスカートドレスを纏い、すらりと引き締まった長い美脚が惜しげも無く晒されている。
そこにふんわりと広がったスカートと前に垂らした纏めた髪が上品さと可愛らしさを持たせている。
ウサギは、普段の服のように絶妙に色の違う二色のピンク色で構成された、シアと同じく足が露出しているミニドレス。
ボブカットの髪を纏め上げ、いつもは無頓着な化粧を施すことで、生来のミステリアスさに大人の魅力が引き出されている。
そんな兎コンビの隣で、上品にワインを傾けるティオは、体のラインが出るタイプの漆黒のロングドレス。
背中と胸元が開いているために、凹凸の激しいボディラインが惜しげもなく主張されており、会場中の男性の視線を集めている。
香織は、肩口が完全に露出したタイプのスレンダーラインのドレスを着ている。
実のところ、ノイントの肉体を調整する際、香織は元の自分より優っている点はそのままにするようシュウジに頼んでいた。
そのため、元の香織の素材の良さに、文字通り神の造形が追加され、完璧な美を手に入れている。
なお、着替えた際にユエと香織の間で
美魔女だとか綺麗なのはノイントでは?とか言ったことを互いに忘れていない。こっそりと脛を蹴り合っているのがその証拠だ。
「それにしても、奥様はとてもお美しいですわ。いつからのご関係で?」
「いや、これが子供の頃からでして。彼女は実に聡明で、そして強い女性だ。
「ふふ、そんなに褒められると恥ずかしいわ」
──HQ、こちらチャーリー。全兵舎への睡眠薬散布完了
──HQ、こちらエコー。皇子、皇太孫並びに皇女二名確保
一方、少し離れた場所ではシュウジと雫が、貴族の子女や婦人たちに囲まれていた。
勿論の事、この二人が着飾っていないはずがない。
シュウジはいつもとは異なり、白を基調としたタキシードを着ている。随所が秀逸な金の装飾で彩られた逸品だ。
整えられた髪、すらりと長い手足、細くも逞しい体。アメジストのような切れ長の瞳に薄い唇、すっと通った高い鼻。
ハジメたちの前での奇行を除けば、シュウジは万人が見惚れるような優れた見た目をしている。
なお、これには女神マリスが介在していない。
純粋に、長年のシュウジ自らの努力の賜物であり……死産するはずだったこの体、本来の成長だ。
そして雫は、ティオと同じようにスタイルが顕著に出る紫色のタイトドレスに身を包んでいた。
ティオ程ではないものの大きな胸と、それに反してくびれ、引き締まったウェスト。鍛え抜かれた脚はすらりと長く、美しい。
全体的に均整が取れた、女性の中では高い長身は、その凛とした姿勢によって一つの造形美のような印象を見る者に与える。
だがそれだけではない。
雫が普段はその面倒見の良さと頼り甲斐の裏に隠した可愛らしさを押し出すため、ドレスには花の模様があしらわれていた。
極薄のレースショールにもキラリと光る極小の宝石によって形作られた花が咲き誇り、華やかさを演出していた。
普段はポニーテールにまとめた髪はふわりと巻かれ、ローポニーテールに酷似した髪型に纏められている。
どこから見ても完璧な二人組。
だが見た目の麗しさよりも、この場の誰より自然に互いに寄り添っていることが二人の仲を体現していた。
シュウジは雫の腰に手を、雫もシュウジの腕と自分の腕を組み、体を寄せている。見るからに幸せオーラが出ていた。
〝シュウジ、後で城の裏に来い〟
〝体育館裏的なノリで脅しかけてくるなよ〟
──HQ、こちらデルタ。全ポイント爆破準備完了
──HQ、こちらインディア。Mポイント制圧完了
なお、そんな花園の中にいるシュウジに対し、むさくるしい男に囲まれたハジメがこっそりと念話でそんな呪詛を送っていた。
ちなみに、ちゃんと勇者組も着飾っている。
王国の重要な人物達だ、帝国の令嬢たちにも負けないほどにドレスアップされていた。単にあの二組が目立ちすぎなのである。
飛び入り参加のような形にも関わらず、しっかりと全員分用意されているのだ。
「勇者様はその無双の実力のみならず、お顔立ちも整っておられるのね」
「ねえ勇者様、このパーティーの後は空いてらっしゃる?」
「いや、ははは……」
光輝は勇者ということもあり、シュウジ同様に令嬢に詰め寄られている。
(……あれは、本当に幻聴だったんだろうか?)
困ったようにやんわりと対応をしている彼の思考は、しかし昼間にふと聞いた〝声〟に未だ縛られているのだが……
「うう……偉そうな人がいっぱいいてちょっと怖い」
「大丈夫か谷口? このスイーツ、甘くて気分が落ち着くぞ」
「うん、ありがと」
鈴もその一人であり、マッシブな体を特注サイズのタキシードに詰め込んだ龍太郎とスイーツコーナーにいた。
「それにしても龍っち、タキシード似合わないね」
「んぐっ、気にしてるんだから言うなよ……俺だってこんな格好、窮屈で仕方がねえ」
いつも着ているコートを彷彿とさせる深い緑色のタキシードは、しかし見事なまでに龍太郎にはミスマッチ。
当の本人も、そんな羞恥心からか、甘い物好きの自分に思考の舵を切って現実逃避していた。
今にもネクタイを外しそうな顔をしている龍太郎に、ぽしょりと小声で鈴は呟く。
「……まあ、鈴はそういうのもいいと思うけど」
「あん?なんか言ったか?」
「なんでもないよ……それよりもほら!鈴も今日はちょっといいと思うんだけど!何か言うことはないかな〜?」
誤魔化すようにいつもの元気良い声を張り上げ、くるりとその場で回ってみせる鈴。
フリルのあしらわれた黄色いドレスは、彼女の活発な笑顔と相乗効果を発揮し、より可愛らしさを演出している。
回った拍子にくるりと揺れたツインテールを目で追いかけた龍太郎は、スイーツを飲み込むと頭をかいた。
「あー……まあ、いいんじゃないか?」
「む……」
そっぽを向き、ほんのりと頬を赤く染めた龍太郎に、鈴は不満げに頬を膨らませる。
彼女とて乙女。意中の相手にそのようなそっけない態度を取られれば、意地悪がしたくなる。
「……あんな大声で公開告白したくせに」
「ぶはっ!? お、おま、今それを言うのは反則だろ!?」
「ふーんだ。鈴のこと好きって言っといて褒めもしない龍っちなんて知らないっ」
今度は鈴がそっぽを向き、龍太郎が困り果てたようにワタワタとする。
(……ごめんね龍っち。相変わらずズルい女の子で)
鈴だってわかっている。これは非常に卑怯な恋愛的戦略であり、龍太郎にとって痛手であることを。
そもそもあれだけ熱烈な告白をされたのに、返事をせずにこれまでの関係を引き延ばしているのは鈴の方だ。
だが、それでも。やはり鈴も女の子であり、精一杯お洒落をしたのであれば──
「──似合ってるよ」
「……え?」
その一言が、欲しいのだ。
「龍っち、今なんて……」
「だから、似合ってるって言ったんだよ。元から可愛かった
そう。何も元は筋金入りの脳筋だった龍太郎とて、時折こちらを見る鈴の目線に含まれたものには気付いていた。
だが、事故のようなものとはいえ告白をしたのに返事をもらえない不安と、思春期特有の羞恥心が答えることを躊躇わせた。
しかし、奇しくも鈴のある意味ずる賢いとも言える言葉が、その本音を引き出したのだ。
「……えへへへ」
「おい谷口、すげえ顔が緩んでるぞ」
「龍っちのせいだもんっ。ていうかいい加減、鈴のこと普段から名前で呼んでよ!」
「いや、それはまだちょっと……」
「むう、この純情おバカ!」
「せめて筋肉つけろ!」
詰め寄る鈴に狼狽る龍太郎の様子を、周りの貴族たちが微笑ましく見守っていると、不意に会場の空気が揺れた。
そちらを振り向くと、ちょうど本日の主役……まあシュウジたちにとられた感はあるが……が入場する所だった。
そしてバイアスと共に入ってきたリリアーナは──黒いドレスに身を包んでいた。
光を吸い込むようなそれは、婚約パーティーというめでたい席には似合わない。
澄ました顔もそうだ。いかにもそこに義務でいますと言わんばかりの顔で、バイアスに配慮はない。
しかし、そのバイアスこそが大してリリアーナの装いに興味がなさそうな顔が一番困惑を招いた。
司会の男も同様に、混乱した様子ながらもパーティーを進行させていく。
最後を笑い出しそうなガハルドが挨拶で締めると、緩やかな音楽が流れ始めた。ダンスタイムだ。
会場の中央では、それぞれ会場の花を連れ出した男達が思い思いに踊り始めた。当然、主役たる二人も踊り始める?
が、なんとも機械的だ。どちらも義務的な表情で、とても婚約したとは思えない。
一曲終わると、そそくさと挨拶まわりに行ってしまった。実に冷え切っていた。
「なんか、珍しいね。リリィがあそこまで愛想がなさすぎるっていうのも」
「ハジメ、あんたまた何かしたんじゃ……」
「さあな」
──HQ、こちらロメオ。Pポイント制圧完了
──HQ、こちらタンゴ。Rポイント制圧完了
ジト目を送る美空に、ハジメはかぶりを振って言う。これに関しては本当に心当たりがないのだ。
疑問を残しつつも、ハジメたちもダンスに参加し始めた。無論ユエたちを誘おうとした男連中は〝威圧〟で排除だ。
「ユエ、最初に踊ってくれるか?」
「んっ……喜んで」
「ぶー。まあ、今日は譲るか」
「じゃあ美空、私と踊ろう?」
「いいよ?ネットアイドルのダンススキルについて来られるならね」
「うん、全力で合わせてあげる」
ハジメはユエと、美空は香織と。
芸術品のような美少女と、上から下まで今日は白一色の青年、そして見目麗しい二人の少女に注目が集まる。
元王族としてそのような教養もあるユエに、ハジメは〝瞬光〟をも使い動きを合わせ、優雅に踊る。
楽しそうに微笑むユエと、目元を和らげるハジメ。これではバイアスとリリアーナではなく、二人の婚約パーティーだ。
美空は元よりネットアイドルとして鍛えられたダンスの技術に、周囲から見様見真似でパーティーダンスをそつなく披露した。
そしてそれに、香織が改造されたノイントの肉体の反射神経でついていく。表情は幸せそうだ。
それにつられるように、ウサギがシアを誘ったりと、ハジメハーレムの女性陣が異色の組み合わせで踊り出した。
いつの間にやら主役になっている彼らに、しかしギスギスしていた雰囲気は和らぎ、楽士たちも笑顔で演奏をする。
「あー……俺たちも踊るか?」
「ふぇ? でも、鈴と龍っちじゃ体格がぜんぜん違うよ?」
「合わせるよ。まあ、甘いもんばっか食ってばかりでも胃がもたれるからな……付き合ってくれや、鈴」
「……!うん、じゃあ踊ろう!」
現在最もラブコメをしている二人も、不器用に誘った龍太郎によって鈴が舞台へと連れ出される。
そうして始められた二人の踊りは、ぎこちないながらも非常に楽しげであった。年配の参加者たちは微笑ましくそれを見ている。
「ふふ、勇者様も踊りは不慣れですのね」
「はは……面目ない」
光輝もまた、令嬢たちにダンス会場に連れ出され、必死に彼女たちの動きに追随していた。
流石にパーティーで踊るダンスなど、日本育ちの光輝には経験がない。どうにかこうにか対応している。
同郷の人間であるハジメたちが難なく踊っていることもあり、光輝は内心不格好な自分を恥じた。
「本当──不格好ですわね?」
ほんの一瞬目線を落とした間に、令嬢が別の人物にすり替わるまでは。
「ッ!? 御堂!?」
「あらあら、声を荒げてはいけなくてよ? あくまで優雅に踊りなさいな」
驚愕する光輝の手を取り、自らの動きの中に取り込むようにその身を操るネルファ。
半ば呆然としながらも、彼女の動きに合わせて少しずつステップが修正されていく感覚に光輝は奇妙さを覚える。
だがそれ以上に、真っ赤なドレスに身を包み、金糸の髪をエレガントに纏めた彼女に見惚れていた。
蠱惑的に笑う唇には赤いルージュが引かれ、エメラルドと見紛う碧眼は怪しく光輝の意識を引きつける。
「ほら、ワン、ツー。ワン、ツー。そうですわ、見た目に中身が少しは追いついてきてよ?」
「な、なんでお前がここに……」
「さて、どうしてかしら」
くるり、と急にターンをするネルファ。
「うわっ!?」
強引なそれに慌てて光輝がたたらを踏み、文句を言うために彼女を見る。
「エクセレント。今宵のレッスンは、これまでといたしましょう」
「待っ──」
「? 勇者様、どうかしましたか?」
「え、あれ……」
しかし、そこにいたのは元の令嬢だった。ぽかんとしながら踊る光輝に、淑女然とした女は首を傾げる。
幻覚の次は幻聴か、と思いながらも、光輝は今しがた教えられたばかりのステップでダンスを踊り続けた。
「こうしていると、私たちが許嫁として認められた時のことを思い出すわね?」
「ああ、雫とうちの家族総出で開いたパーティーな。あの時も種類は違うけど、一緒に踊ったよな」
無論、ハジメ達ばかりが主役ではない。
むしろ、彼らの中で誰よりも美しく、ゆるやかに、しかし完璧なステップを踏む二人組がいた。
シュウジと雫である。片やカインの技能の一つとして、片や裏ではNINJA家業をしている家の娘として踊りを嗜んでいた。
長年連れ添った夫婦のように息の合った、それでいて愛に燃える若者のように熱を伴ったステップを踏む。
「あの時より、私はあなたにとって魅力的な女になれたかしら?」
「それは無意味な質問だな」
「あら、どうして?」
「そりゃ……」
タン、と音楽に合わせてシュウジが踏み込み、雫は上半身を後ろへ逸らす。
「惚れたその瞬間から、雫は最高に魅力的だからさ」
至近距離に近づいた二人の顔。シュウジはニッと貴公子然とした笑顔を浮かべ、雫にウィンクした。
雫はクスリと笑い、言葉ではなく姿勢を戻した拍子に、素早くシュウジの首筋にキスを落とすことで応える。
「さあ、もう一曲付き合って?」
「仰せのままに、お姫様」
──HQ、こちらヴィクター。Sポイント制圧完了
──HQ、こちらイクスレイ。Yポイント制圧完了
そうして、帝国の夜は更けていく。
こういう話はシュウジの普段は死んでいるイケメン設定を存分に使えるから楽しい。