シュウジ「よう、シュウジだ。久しぶりにイケメンムーブしてた気がする前回だったな」
ハジメ「お前見た目はいいからな、見た目は」
シュウジ「ちょっとハジメさん?二回言わなくても良くない?」
ハジメ「何度も噛まないと旨味が分からないような性格してるからな」
シュウジ「俺は昆布か何かか」
ハジメ「で、今回は前回の続きだ。本格的な始まりは次回だな。それじゃあせーの、」
二人「「さてさてどうなる帝国編!」」
三人称 SIDE
やがて演奏が終わり、ダンスは一度終わりを迎える。
微笑みながら軽くキスを交わすハジメとユエに、純粋なる賞賛の気持ちを込めた盛大な拍手が送られた。
それは美空と香織や、シアとウサギなど女性同士で踊っていたペアにも贈られ、彼らは優雅にお辞儀をする。
再び集合した彼らは、次は誰と踊るかを相談し始めた。その様子を一度踊りを終えたシュウジと雫は見る。
「ふふ、思ったより平和的に順番が決まりそうね」
「だな。てっきりユエと白っちゃんあたりがドンパチすると思ったが……あの様子だとそれはなさそうだ」
──HQ、こちらヴィクター。Sポイント制圧完了
──HQ、こちらイクスレイ。Yポイント制圧完了
彼らの視線の席では、多少騒がしいものの、二番手を誰にするかが会話によって選ばれている。
若干ユエと香織が互いのボディーに拳を入れているように見えるが、パーティーの席なのでスルーした。
それから互いに照れまくっている龍太郎と鈴を見つけて笑い、ふと雫はシュウジの耳元に顔を寄せる。
「それで、
「もうちょっとさ。残念だけど、あと数曲しか踊れなさそうだな」
「あら残念。それなら、行きましょう?」
先ほどとは違う旋律が流れ始めた会場の中、雫は蠱惑的に潤んだ瞳でシュウジのことを見上げる。
恋人の艶やかな視線にシュウジは少し顔を赤らめ、しかしいつものように余裕を持ったセリフを使おうとした、その時。
「北野シュウジ様。一曲踊っていただけませんか?」
「おろ?」
「あら、リリィじゃない」
雫の手を取りかけていたシュウジに声を変えたのは、リリアーナだった。
「おやおやリリィちゃん、主役がこんなとこにいていいのかい? 随分と互いに冷たそうではあったけどネ」
「やっぱり気付いてましたか……それに、主役と言いつつも私よりもずっと目立っているではありませんか」
「ご、ごめんねリリィ?そういうつもりじゃ……」
「姫さんには悪いけど、うちの雫は最高だろ?」
腰を軽く引き寄せると、弁明をしようとしていた雫は少し恨めしげにシュウジのことを見上げた。
しかし、その大半は恋人に最高認定されたことへの喜色で満ちている。リリィはうわぁ、と猛烈な甘さを感じた。
「ええ、でも確かに。いつもと違って可愛らしさが増してます。雫、良かったわね?」
「もう、リリィまで……」
「で、そんな本来の主役が俺を誘っていいのかい? あのクs……ウォッホン、コウテイサマの息子は?」
「今なにか言いかけましたよね?」
ジトッと睨むリリアーナに、シュウジは笑って誤魔化す。
思えば、いつも以上に雫のことをアピールしているのも皇帝がいるからだろう。その自覚があった。
以前ならばさらりと受け流せていたその感情に振り回されることに少しの複雑さを感じながら、リリアーナに尋ねる。
「挨拶回りはもう終わったのかい?」
「ええ、ですからこうして来たのです。今はパーティーを楽しむ時間。もとより何曲かは別の人と踊るものですしね」
ほら、とリリアーナが示すところでは、バイアスが愛人と踊っている。しかしその顔は女を見てはいない。
事前に知っている情報と違う様子に、内心困惑するもののそれを表には出さず、真剣な目のリリアーナを見る。
「……なるほど、ね。つまり
「理解していただけたならば、手を取っていただけるでしょうか?」
すっと差し出された手に、シュウジは雫を見る。
彼女は少し名残惜しそうにしながらも、こくりとうなずいて微笑んだ。どうやら恋人のお許しは出たようだ。
「あなたが心配するから、南雲くんたちのところへ行ってるわ」
「おう、ありがとさん。それじゃあお姫様……いや、皇太子妃様?この道化と一曲、是非」
片足を後ろに引き、左腕を腰の後ろへ。体を屈めて手を差し出し、恭しくリリアーナを見上げる。
妙に様になっているその姿にクスリと笑い、彼の手に自らの手を乗せたリリアーナは共にダンスホールへと行く。
先ほどよりもゆったりとした曲調の旋律の中、二人はゆらりゆらりと踊り出した。非常に様になった光景だ。
「てっきりハジメのとこに行くかと思ったがね」
「もう、南雲さんがまた怒りますよ。自分をなんだと思ってるんだ、って」
「はは、違いない」
密着し、音楽に隠れて互いにしか聞こえないほどの声で囁くように話し合う。
「でも、俺は基本裏方だ。目立つのも、女の子を助けるのもハジメだよ」
「だからこそ、北野さんはもっと恐ろしい。違いますか?」
「おっと、こいつは恐れ入った。若くても王族様ってのは観察眼があるねぇ」
まるで何かを探るような目で問いかけるリリアーナに、シュウジはおどけたように笑う。
彼女は雫のように長年一緒にいたわけでもなければ、ルイネのように元になったカインの性質を知っているわけでもない。
だが、人の上に立つものとしての優れた目が、目の前の男がいつも見ているばかりの道化でないことを悟っていた。
「今夜が終われば、本当にただの王族として、皇太子妃としての人生を歩むことになります。今から側室の方々からの苛めが恐ろしいですわ」
「いつの世も、人間はそういう生き物さ。我欲に囚われ、望み、欲し、奪い、排し……そういった面は必ず存在する」
「ここだけの話、彼女たちも帝国の令嬢ですから……そういう気質が強いと思います」
「はは、聞かれたら大惨事だな。俺の胸の中にしまっとこう」
「そうしてくれると助かります……」
ふっと笑ったリリアーナは、不意に暗い、どこか強張った表情になる。
シュウジはすぐに違和感を覚えるも、互いの表情を隠すようにステップを変えてダンスを続行した。
「どうした?具体的に想像しちゃった?」
「……北野さん。私には貴方が、どこまで信用できるのか。そして
突然信用していないと有り体に言われ、即座にシュウジの頭の中でいくつもの予測が立てられる。
先ほども言った通り、もし彼女が〝助けて〟と言った類のことを頼むのなら、正面から理不尽を打ち破るハジメの方だ。
故に、最初からハジメではなく、仄暗いものを感じるだろう自分に相談することは尋常な事ではないと予想できる。
保持した情報の中から該当しそうなものを取り出すも、しかし目の前の彼女が浮かべる〝恐怖〟には釣り合わない。
「でも、その上であえて聞きます……私は貴方の駒の一つですか?」
「……どういう意味だ?」
「先ほど、ドレスに着替えていた時。部屋の中に突然、怪物のような鎧の何者かが現れたのです」
リリアーナの告げた言葉に、それまで決して崩れることのなかった冷静な表情が強張った。
「その怪物は、私と香織たちしか知らない光輝さんへの思いを捨てるな、と言って……あの怪物も、もしや」
「……さて、どうだかな」
追求するが如き王女の質問を受け流し、シュウジは笑顔の仮面を被り直した。
普段ならば「え、マジでアレがいいの?」と言いそうなものだが、別のことでシュウジの頭はフル回転を始める。
リリアーナに接触した怪物。それは常時更新される情報の中には存在しておらず、また
今回の一件に
なら、誰だ。自分も知らない、自分が操っていないその人物は、一体誰なのだ。
前提を否定しろ。使えない情報は全て捨てろ。新しい観点を取り入れ、仮説を立てろ。シュウジは自らにそう言い聞かせた。
「……まさか、《獣》か?」
「え……?」
「……いや、案外魔人族かもなってな。ほら、魔物で作った鎧を着てたのかもしれないぜ?」
「そう、かもしれませんね」
疑わしげであるものの、仮にも一千年で熟成されたシュウジの仮面の中をそれ以上に見通すことはできなかった。
そうしているうちに、やがて曲は終焉を迎える。リリアーナとシュウジは離れ、互いに礼を示しあう。
「ありがとうございました。どうぞ、雫と楽しんでください」
「姫さんもな。おっと、SOSならハジメのところに行くといいぜ?」
最後の囁きにクスリと苦笑をこぼし、リリアーナはシュウジと別れた。
お偉い方と踊りに行った彼女を見送り、シュウジはやや小難しい顔でハジメたちのところへと行った。
「おう、おかえり。八重樫が浮気されたって怒ってたぞ」
「ちょっと南雲くん、言ってもないことを冗談にしないでちょうだい」
「いや、すまんすまん。で、そっちの凸凹コンビは楽しんだみたいだねぇ」
「ま、まあな」
「ふぁぅ……」
早々にシュウジに目をつけられた龍太郎&鈴コンビは、一方は照れ臭そうに頬をかき、一方はその背中に隠れる。
幼馴染の幸福に、ぼんやりと突っ立っている光輝い外の二人が微笑ましいものを見る目を向けた。
ユエたちも、特にこの二人に悪い感情は抱いていないので、同じような目を向ける。完全に見守られている二人だった。
──HQ、こちらズールー。Zポイント制圧完了
──全隊へ通達。こちらHQ、全ての配置が完了した。カウントダウンを開始します。
その時、最後の通信が透明化した通信機を耳の裏につけた全員に届く。
シアの表情が強張り、香織と美空が互いに安心させ合うように手を繋ぐ。ハジメが瞑目し、シュウジが不敵に笑った。
他の面々も緊張や、あるいは不安といったものを浮かべる中で、タイミングよく壇上にガハルドが上がった。
「さて。まずはリリアーナ姫の訪問と、息子との正式な婚約を祝うパーティーに集まってもらったことを感謝させてもらおう。色々とサプライズがあって実に面白い催しとなった」
再び乾杯するためか、グラスを片手にスピーチをするガハルドはハジメたちを意味ありげに見る。
知らんふりをするハジメや、ガン無視しているシュウジに面白そうに笑う彼は演説を続けた。
──全隊へ。こちらアルファワン。これより我等は、数百年に及ぶ迫害に終止符を打ち、この世界の歴史に名を刻む。
その裏で、着実に進む計画があるとは知らずに。
──今宵、我らこそが恐怖、あるいは敗北者の代名詞となる。さあ、研ぎ澄ました弱者の刃を見せてやろう。
──十、九、八……
──ボス。この機会をくださったことを感謝します。そしてセンセイ、我らに牙を与えてくれたご恩、末代まで忘れません。
表では皇帝の演説が響き、そして裏では狩人たちのカウントダウンが刻まれる。
密かに笑むシュウジたちと、なにも知らずに微笑む帝国の貴族たち。
いっそ悍しいほどに、二つの時が刻まれていた。
「パーティーはまだまだ始まったばかりだ。今宵は、大いに食べ、大いに飲み、大いに踊って心ゆくまで楽しんでくれ。それが、息子と義理の娘の門出に対する何よりの祝福となる。さぁ、杯を掲げろ!」
ガハルドは、会場の全員が杯を掲げるのを確認すると、グラスを天井に掲げる。
そして、息をスゥーと吸うと覇気に満ちた声で音頭を取った。
裏でもまた、同じくカムが最後の言葉を投げかける。
──我ら新生ハウリア、最初の大狩りだ。行くぞ!
──「「「「「「「「「「おうっ!!!」」」」」」」」」」
──四、三、二、一……
その瞬間、ハジメとシュウジも割れたように口を笑みに裂いた。
「この婚姻により人間族の結束はより強固となった!魔人族など恐るるに足らない!我等、人間族に栄光あれ!」
「「「「「「「「「「栄光あれ!!」」」」」」」」」」
──ゼロ。ご武運を
その瞬間。
「さあ……」
「イッツ──ショウタイムだ」
全ての光は失われ、会場が闇に呑み込まれた。
さてさて、こっからオリジナルが介入していきますよっと。
感想カモン!