カム「腕が鳴りやす」
エボルト「改めて見ると、こいつデカくなったなぁ。もう別種族感ある」
カム「いっそのこと、それも面白そうですね!」
ハジメ「乗り気になってんじゃねえよ。で、今回はこいつらの作戦の開始だ。それじゃあせーの、」
四人「「「「さてさてどうなる帝国編!」」」」
三人称 SIDE
「な、なんだ!? 一体何が起こった!?」
「いやぁ! いきなり何なのッ!?」
突然暗闇の中に放り込まれ、パーティー会場にいた人間たちは一部の例外を除いて混乱する。
混乱、困惑、同様、怒号、そういったものが混じり合い、それぞれが更に互いの感情を助長していく。
「狼狽えるな! 魔法で光源をッガァ!?」
「何だ、どうしっぐぁ!」
「お前ら、いきなりなnギェッ!」
比較的まだ冷静だった者たちが魔法で明かりを作ろうとした瞬間、詠唱は悲鳴に変わり、何かが落ちる音がした。
そして、悲鳴をあげた者達の近くにいた貴族の靴にコツン、と何かが転がってきてぶつかった。
小さく悲鳴をあげた貴族は、少しだけ暗闇に慣れてきた目で自分の足元にあるものを見て──ヒュッと息を呑む。
「く、くく首が……!?」
「首!? 首ってなんのこと!?」
隣にいたパートナーに男は喉が引き攣り、答えることができなかった。
なぜなら、その足元にあるのは──先ほど声をあげた男の、生首だったのだから。
硬直した男の靴の裏に首の断面から流れ出る血が染み込んでいく。その感触はあまりにも悍ましかった。
彼らだけでなく、残り二つの首を見た他の貴族も悲鳴をあげ、それが更に恐怖を生み出していった。
「落ち着けッ! 貴様等はそれでも帝国人かッ!!!」
そんな部下たちの耳に、ガハルドの一括が暗闇を突き破って聞こえてくる。
覇気に満ちたそれは、負の感情で支配された彼らの心を強制的に正気へと引き戻していった。
ビュンッ! ビュンッ! ビュンッ!
「ッ!? チッ、今度は一体なんだ!」
しかし、そんなものは許さないと言わんばかりに闇を突き破って青白いエネルギー弾が殺到した。
まるで魔法のようなそれに、ガハルドはとっさに儀礼用の剣に魔法で風を纏わせ、振るうことでいなした。
最初に飛んできたのは3発。しかしガハルドが防いだ瞬間、間断なく更に数発のエネルギー弾が飛んでくる。
絶妙にタイミングをずらし、決して反撃の隙を当てないそれに、さしものガハルドと言えども防戦一方に追い込まれ。
「クッ、なんだこれは! 魔法じゃねえな!」
ビュッ! ビュッ!
苦し紛れにそう言い放ったガハルドを嘲笑うように、更にエネルギー弾の隙間を縫うようにして風切り音が飛来する。
すぐさまそれを察知したガハルドは、舌打ちをしながら狼狽えている側近の腰からもう一本剣を抜いて弾いた。
地面や壁に突き刺さり、あるいは貴族の体を解体したのは、六枚の刃を持つディスク。
それは更に、ガハルドの一括で理性を取り戻し、魔法で炎球を灯りとして作り出していた軍人たちをも襲う。
シャキン!
「っ、そこか! 一体なにもっ」
抜剣した時のような金属音を聞き、振り返ったその瞬間。音もなく軍人の首が跳ね飛ばされた。
ようやく出来た光源に近寄っていた貴族たちは、その様を目の当たりにして後退りしたり、あるいは尻餅をつく。
彼らは見たのだ。
「ひっ、ば、化け物ぉお!」
「し、死にたくないぃ! 誰かぁ!」
逃げようとした彼らは、しかし再び暗闇から飛んできたディスクに手や足を床に縫い止められ、絶叫した。
中には軍人もいたのだが、前線から退き、贅沢に溺れた彼らにそれを避けることも、痛みに耐える心もない。
それは他の場所でも立て続けに行われ、すぐさまパーティー会場は地獄へと逆戻りする。
「隊列を組め!」
「皇帝陛下の背後を守れ!」
が、流石は力こそ至上たる帝国というべきか。ガハルドを始め、一部は対抗を始めていた。
互いの気配を頼りに背中合わせになり、中にに術者を囲むようにして、魔法の詠唱を任せる。
ガハルドの付近にいた者たちも彼の背後に集まり、どこからともなく飛んでくるエネルギー弾とディスクを弾き出した。
一気に負担が半分になり、ようやく余裕を手に入れたガハルドは儀礼剣に纏わせた風を強くし、一気に飛来物を跳ね除けた。
「〝燃え上がれ! 火球! 〟」
ほんの数秒ほどで詠唱を完成させたガハルドは、十ほどの火球を作り出して会場全体に広げた。
それは先ほど作ろうとして封じられた明かりとなり、元ほどではないものの、会場に光が戻る。
視界を確保した帝国側は、いよいよ反撃だと、そう思ったことだろう。
──彼らの隙間を縫うように手持ちのキャノン砲の狙いを定めた、見えない無数の〝揺らぎ〟を見るまでは。
ドシュンッ!!!
鈍い音を立てて、揺らぎたちがキャノン砲から何かを発射する。
それが帝国側の人間に与えた結果は、二つに分かれた。
一つは絶大な音と光。
隊列を組んでいた各人の目の前で破裂したそれは再び視覚と、そして聴覚を奪った。
また同時に、宙に浮いたままの炎球にも直撃し、衝撃波で消しとばして暗闇を取り戻させる。
そして、もう一つ。
大規模な魔法を使おうとしていた者に限定して発射されたその弾は、体に当たった瞬間砕けて中身をぶちまける。
「ぐああああああっ!?」
「ひぎゃああああ! 俺、俺の体がぁああああ!」
青色のそれを浴びた者たちの皮を溶かし、肉を溶かし、骨の髄までもドロドロにして、肉体を蝕んだ。
「ヌゥンッ!」
だが、そのどちらともを撃ち込まれたのにも関わらず、無事でいた男が一人いた。
「「ッ!?」」
先に炸裂した光と音に五感の二つを奪われたにも関わらず、男──ガハルドは、残りの溶解液の入った弾を躱す。
常識外の反応速度に、マスクとステルス機能を維持する電磁波で二つの弾の影響を受けずに接近していた二人のハウリアは驚愕する。
「オラァアア!」
そのわずかな動揺で漏れ出た微かな気配、それを機敏に察知したガハルドは裂帛の叫びと共に剣を振るう。
「くっ!」
「……!」
凄まじい豪の剣に、リストブレイドでどうにか受け止めたハウリア達は、しかし衝撃で後ろに飛ばされた。
剣を振り抜いたガハルドは、すぐに追撃が来ると予想し──
ゾッ。
「ッ!?」
その瞬間、自分の首が飛ぶヴィジョンを幻視したことで左の剣を首筋に置いた。
激しい衝突音が響き、次の瞬間伝わってきた鋭い斬撃に左手の剣が真っ二つに両断される。
「ほう、やはり侮れんな」
「テメェは、ハウリアの……!」
自分の身長をも越える化け物……唯一マスクをつけていないカムは、獰猛に笑いながら闇の中へ消える。
カムに意識を引かれたガハルドの隙を見逃さず、今度は四人のハウリアが襲いかかるも、グリンとガハルドはこちらに向き直った。
「爆ぜろッ! 〝炎弾〟ッ!」
恐ろしい速度で詠唱と魔法陣の構築が完了し、四つの炎がハウリアたちに高速で飛んでいく。
ハウリアたちがそれを回避する僅かな時間、その間にガハルドは更なる魔法を行使した。
「舞い踊る風よ! 我が意思を疾く運べ、〝風音〟!」
音を運び、あるいは小さな音を遠くへ届ける補助魔法を、ガハルドは未だに回復していない聴力の補強に当てた。
本来は近接戦闘には向かない、集中力を必要とする魔法だが……それでガハルドは、ハウリアたちの装備が立てる小さな音を拾った。
「そこだあああッ!」
確信を伴った声音と共に、四人のハウリアをまとめて圧倒するような斬撃の嵐が見舞われた。
鞭のようにしなり、また巨岩のような威圧感を纏うそれに、ハウリア達は気配を消して出してと緩急をつけて対応する。
が、一度捉えた音をガハルドは逃さない。的確にハウリアたちの位置を割り出し、突き出される槍やブレイドを弾いた。
これが、皇帝。
力こそ全てと、弱者こそが悪だと声高に叫ぶ者たちの頂点。傲慢にもふんぞりかえった者たちの王だ。
((((ああ──なんて狩り甲斐があるんだ!))))
そんなガハルドを前に、ハウリアたちはマスクの下で歯を剥き出しにして獰猛に笑った。
そして、もはや意味をなさない気配遮断をやめ、ステルス機能さえも切って刃物のような殺気を振りまく。
「ハッ、いい殺気だハウリア! 来い!」
ニヤリと笑ったガハルドに、喜んでとでも言うようにハウリアたちは一つの生き物のように動き出した。
劇的に連携の精度が上がり、先ほどまでとは比べ物にならないような連続攻撃がガハルドに襲いかかる。
それさえも独特の剣術で対応しながら、少しだけ戻ってきた聴力にハウリアたちの声が混ざらぬことにガハルドは気付く。
「どうした! ビビって声も出せないのか! あぁ!?」
「──我らは狩人。狩りに無駄口は不要」
その時、連携の穴に割り込むようにしてありえないほどの重い斬撃がガハルドの剣を上へと弾いた。
とても兎人族とは思えない膂力でそれを為したのは、再び姿を現した筋肉の塊──ハウリア族が長、カム。
「ただ、貴様を狩るのみだ」
「面白い! やってみろ!」
叫ぶガハルドにハウリアたちは笑みを深め、接近した彼らの陰にカムが消える。
それから更に、凌ぎ合いは激しさを増していった。かたやヒット&アウェイの集団戦法で、片や剛力で振るわれる剣と魔法で。
その音を聞きながら、ディスクの刃で手足を拘束された者達は、ひたすらに自分たちの皇帝の勝利を願った。
同時に、先ほどのガハルドの咆哮、そして先ほど軍人たちの首を飛ばした姿から相手が兎人族だと知って戦慄を呼んだ。
期待と恐怖、それ等が混じり合った空気──その中でこそ、狩人は笑うというのに。
「っ! なんだ、体が……!」
突如、嵐のようにハウリアたちを踏み込ませなかったガハルドが減速する。
それこそを待っていたとでもいうように、ハウリアたちはすぐさま狩りの終幕を飾るべく動き出す。
「「シッ!」」
二人のハウリアが、レイザーディスクを素早く投げる。
手裏剣のように飛んだそれは空中で六枚の刃を展開し、ふらついているガハルドへ左右から迫る。
「くっ!」
かろうじて剣で弾くガハルド。吹き飛ばされたディスクは幾らか減速し、明後日の方向へと飛んでいく。
「「ハァッ!」」
「何っ!?」
だが、その軌道上にそれぞれ現れたハウリア達の振るったコンビスティックによって軌道を変えた。
それは剣を振り切ったままだったガハルドのところに、再び速度を取り戻して舞い戻り……足の腱を切る。
「ぐぁっ!?」
いよいよ膝をついたガハルドに、今度は四方から現れたハウリア達がネットを発射。
タウル鉱石製のそれは四つの先端に一つずつ楔がついており、ガハルドの体を包み込んで床に縫い付けた。
次の瞬間、ネット全体に流れた特殊な電流により、隠し持っていた魔法陣やアーティファクトが破壊される。
「「「「ふっ!」」」」
そして、駄目押しとでもう言うように網の目を狙ってガハルドの四肢をリストブレイドが貫いた。
「ッ──」
想像を絶する激痛に、しかし悲鳴をあげなかったのはさすが皇帝というところか。
だが、もはや一歩も動けない。そんなガハルドの眼前に、一人のハウリアが現れて何かを背中に刺した。
すると、数秒ほどしてガハルドに視力と聴力が戻ってくる。どうやら注射か何かだったようだ。
まるで芋虫のようになったガハルドは、唯一動く頭を動かして元の位置に戻った足の主を睨みあげた。
「ここまで、全部狙い通りか……!」
「ああ、その通りだ。魔物から抽出した麻痺毒を散布して、ここまで保つとはな」
カムがそう言うのと同時に、天井に張り付いたハウリアの一人がマスクの側面のライトを照射する。
まるでスポットライトのようなそれにより、捕らえられたガハルドの姿がその場にいる者全ての前に晒された。
ヘルシャー帝国皇帝の敗北。
その事実を目の当たりにした者達は、ある者は絶望し、ある者は驚愕し、ある者は呆然とする。
(これは、彼らの未来のために必要なこと……なんだよな)
勿論その中には、光輝達もいた。
目の前に繰り広げられた惨劇に、しかし難しい顔をするだけで光輝は無言でいる。一部加担したことも理由にあるのだろう。
龍太郎も、鈴も、何も言わない。リリアーナも予想していたのか、混乱しつつも黙していた。
ただ目の前にある現実を、選択を、静かに見守っているようだ。
「何故生かされているか。その理由がわからない貴様ではあるまい?」
「ふん、大方何か要求があるんだろ? 聞いてやるから言ってみろ」
ガハルドの判断は正しかった。
だが……対応が悪かった。
「減点」
パッと別の場所にスポットライトが当てられる。
そこにはディスクによって、ガハルド同様に四肢を押さえられている男。ガハルドの家臣の一人である。
突如そこにハウリアの一人が現れ、手に持っていたディスクでその首を跳ね飛ばした。
「テメェ!」
「減点」
声を荒げたガハルドに、悲鳴を漏らすそれを見ていた者達。
そんな彼ら全員に告げるように冷徹な声が響き、また別の場所にスポットライトが当たって同じように男が斬首された。
「ベスタぁ! この、調子に!」
「減点、だ」
三度、光の下で首が飛んだ。
「ッ……!」
「ようやく理解したようだな。そうだ、自分が地べたの這いずっていることを自覚しろ。慎重に、冷静に言葉を選ぶがいい。でなければ──この場の全員の首、我らのトロフィーになるぞ?」
歯を食いしばって黙ったガハルドにそう告げ、すっと暗闇からガハルドの背に乗った首に手を伸ばす。
まさか自分も、と思うガハルドの首は、しかし赤い宝石のついたネックレスがかけられただけて飛ばなかった。
「さて、ガハルド。交渉をしようか?」
そう、冷ややかな笑みを浮かべたカムは言い放った。
さてさて、次回もまたオリジナル要素があります。
感想カモーンオーレ!