星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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こちらではお久しぶりです。

なんとなく固まって?きたので再開します。

楽しんでいただけると嬉しいです。


傲慢の獣

 三人称 SIDE

 

「っ!?」

 

 突然の仲間の異変に、カムは後ろを振り返る。

 

「ぐ、ぁ……」

「かはっ……!」

「お前たち!」

 

 すると、二人のハウリアの体が宙に浮いていた。

 

 否、浮いているのではない。胸(・)を(・)貫(・)い(・)て(・)い(・)る(・)腕によって体を持ち上げられているのだ。

 

 シュウジ特製の装備を容易く貫通しているその腕に、カムは大きく目を見開く。

 

 それは未だに、ハウリアたちに拘束されているガハルドも同じだった。

 

 そんな彼らの前で、動かなくなったハウリアの胸から腕が引き抜かれ、暗闇の中へと消えていく。

 

 後には地面に倒れ伏した死体のみが残っており、傷口から地面に鮮血が流れ落ちている。

 

「ごはっ!?」

「ぐがぁっ!?」

 

 間も無くして、あちこちから悲鳴や、断末魔の声のようなものが響き始めた。

 

 その中にはハウリア達だけでなく、貴族や軍人達と思しきものもある。

 

 むしろハウリア達のものは僅かで、そちらの死体の方が圧倒的に多い。

 

 先ほどの腕の主は、人族も亜人も関係なく、無差別に襲っているようだ。

 

「な、なんですか!? 今度は一体何が……!」

「おいコラ姫さん、下手に動くな」

「ふぎゅっ!?」

 

 流石に連続した異常事態に耐えかねたのか、オロオロと取り乱し始めたリリアーナの首根っこをハジメが掴む。

 

 ハジメ自身、〝夜目〟の技能が発動しているはずなのに全く姿の見えない敵に警戒を巡らせていた。

 

 それはユエらやハウリア達、正気に戻った軍服兄妹……この場の中でも屈指の実力者達も同じだ。

 

 であれば当然、この相棒が気がついていないはずがないとハジメは隣を見る。

 

「……来たか」

 

 そんなハジメの目線に応えるように、シュウジは小さく呟いた。

 

「明かりをつけろ!」

 

 カムが号令をかけると、辛うじて天井に残っていた者達が全てのライト型アーティファクトを起動する。

 

 すると、パッとまるで昼間のような明るさがパーティー会場に降り注ぎ……血の海を照らし出した。

 

 そこかしこに散乱する、貴族や軍人たち、無数の首や手足、内臓など……そして数人のハウリア族の死体。

 

 

 まさしく惨状、地獄絵図。

 

 

 ある者は絶叫し、ある者はSAN値がオーバーして意識がゴートゥーヘブンし、ある者は壊れたように笑う。

 

 その半分ほどは、ハウリア達によるものだ。だが度を超えた破壊の仕方をされた死体は……違う。

 

 

 

『……無粋だな、亜人。折角闇の中に隠していたものを』

 

 

 

 そして。その張本人は、会場の中心で佇んでいた。

 

 その手には誰かの首らしきものが掲げられており、滴る鮮血がその体を赤く塗りたくっていく。

 

 迷彩柄の皮膚。機械じみた鎧。

 

 濃い緑色の体全てが返り血と内臓の破片らしきもので汚れ、白い瞳が不気味に光る。

 

 

 

 バケモノ。

 

 

 

 ハジメ達を除き、全員がそう思った。

 

「貴様は、いったい何者だ……?」

 

 ハウリアとはまた違った怪物の登場に、ガハルドは剣呑な声音で問いかける。

 

 怪物は、ゆっくりとガハルドの方を振り向き、手からポロリと無造作に首を落とすと声を発する。

 

『我が名は《傲慢の獣》。この世全てを食らう者。人の王よ、既に食(・)わ(・)れ(・)た(・)お前に用はない』

「なんだと……?」

 

 男とも、女ともつかぬ声。それでいて、一言一言全てを聞くたびに寒気を覚えるような錯覚。

 

 ガハルドは戦うまでもなく悟る。

 

 突然現れたアレは、南雲ハジメや北野シュウジと同様に手を出してはいけない類いだと。

 

『だが、我が他にいる獣たちにも用はない』

「……ならば、何故我々の同胞を殺した?」

『ただの演出だ』

 

 こともなげに、あっさりと怪物……否、《獣》はあまりにもな理由を述べた。

 

 ごく軽い理由で兄弟や友、恋人を殺されたハウリア達は、一斉に鋭い殺気を《獣》へと向ける。

 

 ガハルドに向けられていたものと同等のそれを、しかしなんの反応もせずに《獣》は話し続けた。

 

『我が食指が動くのは……』

 

 ぐるり、と怪物はとある方向を見る。

 

 その視線の先にいるのは──未だにハジメに首根っこを掴まれ、「王女なのに……」とつぶやいているリリアーナ。

 

 

 

『お前が一番、美味そうだ』

 

 

 

 だが、その言葉にぐっと喉が縮まったような錯覚を覚えた。

 

 無機質な仮面からは、溢れんばかりの殺気と……そして抑えきれない食欲が漏れ出ている。

 

『だが、ただ嬲り殺すのも興醒めというもの。故に……』

 

 ふと体を翻し、怪物は首を飛ばされたバイアスの死骸に歩み寄る。

 

『蘇れ、救いようがなき愚者よ』

 

 そして、その体に躊躇なく右手の指を突き立てた。

 

 

 

 ──ドクン。

 

 

 

 

 この中でも際立って聴覚の優れた者達は、その音を聞いた。

 

 次の瞬間、もはや力のないはずのバイアスの体がビクンと跳ね上がり、何度も痙攣する。

 

「ォ、ァア、アアァ…………」

「ッ!?」

「なんやて!?」

 

 かと思えば、軍服兄妹の足元に転がっていた生首が声を上げたではないか。

 

 並のホラー映画よりよっぽどホラーな光景に、さしものハジメやシュウジでさえも目を鋭くする。

 

 パクパクと口を動かし、せわしなく目線をあちこちへと向けた首は、一人でに転がって死体に近づく。

 

 そしてピタリと、綺麗な断面に首がくっついた瞬間──勢いよく起き上がった。

 

「あ、ぁァァアあアいああえぇあああ……」

『さあ、踊れ愚か者よ』

「うぅアァぁぁぁぁえああぁぉおおおあ……」

 

 もはや意識があるのかないのか、不気味に呻き声を上げた元バイアスは懐を探る。

 

 そして取り出したのは──フクロウの意匠が刻まれた、紫色ボトル。

 

「あれはまさか……!」

「俺の中にあったのと、同じ……!」

 

 死した檜山や、龍太郎の体内にあったそれに勇者組が息を呑む。

 

 そんな中、屍鬼(グール)となった元バイアスはキャップを開け、自分の体にボトルを突き刺した。

 

 紫色の煙が舞う。

 

 それが晴れた時──そこには、漆黒の怪物がいた。

 

『ォオオオオオアァアアア!!』

「ちっ、そないなもん持っとんのかい!」

「いくでソウ!」

 

 

《ギアエンジン!》

《ギアリモコン!》

 

 

 雄叫びと共に繰り出された大振りのフックを避け、素早くボトルをネビュラスチームガンに装填する。

 

「「潤動!」」

 

 

《ファンキー!》

 

 

《リモート・コントロール・ギア!》

 

 

《エンジン・ランニング・ギア!》

 

 

 素早く変身を果たした二人は、怪物──オウルロストスマッシュとの戦闘を開始した。

 

「へえ。あの見るからに獣な野郎とか、カインのダチの次は、腹ぺこな傲慢の獣ってか」

 

 怯えるリリアーナをぺいっと光輝の方へと放り、ハジメが不敵に笑って一歩踏み出す。

 

 

 曲がりにも可愛い部下達の作戦を、最後に台無しにされた。

 

 

 ハジメも無粋な《獣》に対して少々憤っていたのだ。

 

 その歩みを制したのは、横から伸びてハジメの胸に軽く当たった拳だった。

 

「まあ、そうカッカしなさんな」

「……シュウジ」

 

 訝しむハジメの肩を軽く叩き、シュウジは仲間達を庇うように《獣》の前に立つ。

 

 口元は笑いつつも、帽子の下から《獣》に鋭い目を向けていた。

 

「でもまあ、俺も不思議だなぁ? あんたらは俺を殺すためにこの世界に喚ばれたんじゃあなかったか、《獣》さんよ?」

『然り。だが私にとって最も優先すべきことは食事だ。故に私は、私が食べたい時に食べたいものを食べる』

「そりゃまた傲慢なことで」

 

 決定事項かのように語る《獣》に笑うシュウジ。

 

 そうすると異空間からステッキ(白 ver)を取り出して、床に打ち付ける。

 

「姫さんは雫達の友達だし、俺も黙っちゃいないぜ?」

「ああ、そうだろうとも」

 

 また、第三の声が割り込む。

 

 驚愕とともにハジメ達が、そして呆れたような、悟ったような顔で、シュウジが元いた場所を振り返る。

 

 中性的な顔立ちをした法衣の美女がテーブルに腰掛け、シュウジのことを静かに見ていた。

 

 

 〝嫉妬の獣〟ランダ。

 

 

 彼女を知るものは驚きに顔を染め、知らぬものは「もうこれ以上の登場は勘弁してくれッ!」と表情で語る。

 

「おいおい、獣の集会とかちょっと啓蒙高杉だよ? せめて一度に一人にしてくれない?」

「相変わらずよく回る口だ。だが、私はここから動かない。君が動かない限り、ね」

「……なるほど。お目付役ってわけか」

「君と私が戦えば、南雲ハジメ達を除いた彼らがどうなるのか。想像に難くはあるまい?」

 

 それは言外に、シュウジが《獣》と戦えば、この場にいる全員が死ぬと言っている。

 

 シュウジとしても、この事態を知る人間が皆殺しになるのは《計画》に多少の支障が出てくる。

 

 それはハウリア達の決死の戦いも無意味になるし、そもそも今回の件では自分は動かないことになっている。

 

「俺が横槍入れられたときの対策をしてないとでも?」

「この会場全体に張り巡らされた魔法陣や罠のことなら、私の正拳突き1発で吹き飛ぶと言っておこう」

「ですよねー。知ってた」

 

 ダンスをしながら密かに会場中にばら撒いておいた下準備を、彼女は見破っていた。

 

 100を超える数の物理的、魔法的なものだが、このぶっ壊れ性能の脳筋獣は言った通りにできる。

 

「あーったく、ほんと難易度調整間違ってるわ。なあハジメ?」

「まったくだ」

「パッチ持ってない?」

「生憎と人を騙して崖下に蹴り落とすような知り合いはいない」

「違う、そうじゃない」

 

 たわいもない会話を交わし始めた二人に、光輝が何をという顔をする。

 

 だが、実際に彼女の力の一端を目の当たりにしたユエたちが、顔を強張らせて動かない。

 

 つまり本当に、あのシュウジが劣勢を強いられる相手。その事実に光輝は軽い衝撃を受けざるを得ない。

 

『では、愚かなる神の傀儡よ。せいぜい貧弱な剣で姫を守ってみせろ』

「っ!」

 

 しかし、呆けている暇はなかった。

 

 怪物が腰に巻いた装置の、注射器の上部のような機構を親指で押し込む。

 

 

 ピ、ピピ……

 

 

 電子的な音を立て、横に伸ばした右腕に蒸気と共に何かが具現化していく。

 

 最初はヘドロのようであったそれは、程なくして長大な回転ノコギリとなった。

 

 おまけに上部に小型の機関銃と思わしきものがついており、これでもかと殺意を放っている。

 

「くっ、来い! 聖剣!」

 

 手を掲げ、貴賓室に置いてきていた聖剣を呼び出す光輝。

 

 光と共に手の中に収まったそれを構えた瞬間、待っていましたと言わんばかりに《獣》は襲い掛かった。

 

『フンッ!』

「ぐぅうううっ!?」

 

 激しく回転する刃と、聖剣の刃がぶつかって火花を散らす。

 

 両手のみならず、全身の力を振り絞ってようやく受け止められたその一撃に、光輝は目を剥く。

 

 そして、たった一撃で理解した。

 

 これは、ハジメやシュウジ……自分を歯牙にも掛けない強者の刃である、と。

 

「〝覇潰〟ッ!!」

 

 すぐさま自分の使える最強の技能、一時的に能力を五倍まで高める[+覇潰]を使用する。

 

 光輝の体から純白の魔力が立ち上り、1万を超えるステータスを手に入れたことでやっと拮抗した。

 

『ほう。その身を削るか、愚者よ』

「いつまでも……足手まといのままでたまるかっ!」

 

 渾身の力を込めて聖剣を振り、《獣》の刃を弾き返す。

 

 思ったよりあっさりと刃を引いた《獣》は、ほうと声を漏らすと試すように更に刃を振り下ろした。

 

「はぁっ!」

 

 またしても渾身の一撃で、《獣》の攻撃を凌ぐ。

 

 その度にゴリゴリと魔力が削れていくが、構わず光輝はリリアーナを守るために《獣》に立ち向かっていく。

 

「絶対に負けないっ!」

『よく足掻く。空虚な勇者よ、真実を知ってなお己が主役と傲るか』

「そんなの関係ない! それに……俺は空っぽだから、借り物だからこそ、お前のような悪党にだけは負けられないんだ!」

 

 少し成長した今なら、いや今だからこそわかる。

 

 今、自分を子供のように弄ぶこの怪物が。

 

 自分の勘違いなどではなく、本当に面白半分でハウリアや貴族たちを殺したこれこそが、許されざる悪であると。

 

「うおおおおおっ!」

 

 雄叫びをあげ、戦う光輝。

 

 どうにか合わせる剣筋も、代償を支払ってようやく土台に立つ様も、とても勇壮とは言い難い。

 

 だが、下手に動けない龍太郎達幼馴染組や、先ほどのまでのことも忘れ、皇帝を筆頭とした帝国貴族達も一縷の望みをかけた。

 

『ふむ、拙いがまだ見れるレベルだ。しかし──そういった妄言は私の二割でも力をつけてから言え』

「がっ!?」

 

 しかし、あっさりとその希望は打ち砕かれる。

 

 たった一振り、ほんの少しだけ力と速さを増しただけ。

 

 それだけで聖剣は真っ二つに叩き折られ、その切っ先が光輝の体をも切り裂く。

 

 鮮血を傷口から噴き出させながら倒れる光輝の襟首を掴み、《獣》は追い討ちをかけるように首筋に顔を寄せると──

 

『己の無力さを嘆け』

 

 なんの躊躇もなく、その首筋の肉に食らいついた。

 

「ぐぁぁあああっ!?」

「「「光輝(くん)っ!」」」

『フン』

 

 どうやって食いついているのか、礼服ごと左肩の肉をごっそりと食いちぎり、光輝は投げ捨てられる。

 

 ちょうどリリアーナの足元のあたりに転がって、「光輝さん!」と悲鳴のような声をあげてしゃがみ込んだ。

 

 その光景に、ハジメ達を除き全員が絶望する。人類の希望(笑)が怪物に敗れ去ってしまったのだ。

 

「チッ、使えん勇者クンやな!」

「無駄口叩いてる暇はないで!」

『おおおオォァアアアアアアあ!!!』

 

 それを見ていたブロスらも、いまだにロストスマッシュとの戦闘中である。

 

 スマッシュ化したことで完全に理性がなくなったのか、足元に転がる貴族など御構い無しに暴れまくる。

 

 証人を一人でも残すよう指示されている二人は思うように動けず、必要最小限に牽制するばかりで攻められない。

 

「こんなんどないせいっちゅーねん!」

「ええい、死んでも厄介やな!」

「終わり、かな」

『そこそこ楽しめる余興だったぞ』

 

 二人の《獣》が、勝利宣言に等しい言葉を使う。

 

 その瞬間、敵対していたはずの帝国貴族達とハウリア族の全員に冷たい緊張が走った。

 

『では余韻に姫を喰らい、それで幕としよう』

「残念だが、君を殺すのはまた今度にするよ」

 

 リリアーナににじり寄る《傲慢の獣》に、ランダは後ろを見て──戦慄した。

 

 今までずっと俯き、静かにしていたシュウジ──その口元に、これまでにない笑みが浮かんでいた。

 

「まだフィナーレには早いぜ、お二人さん?」

「……ッ!」

 

 これまでにない悪寒を感じたランダは、躊躇なく右足を上げ、その場で振り下ろした。

 

 この部屋に仕掛けられた魔法はおろか、帝城そのものを瓦礫にする理不尽なまでの力を込めた。

 

 だが──何も、起こらなかった。

 

「……何をした?」

 

 低い声で問いかけるランダ。

 

 全く変わらずそこにあるパーティー会場に、さしもの彼女も動揺を隠せない。

 

「いや何、ちょいとした消失マジックさ」

「……〝抹消〟か。だが君は、あの力を自在にコントロールはできないはず」

「そう。俺にできるのはせいぜいオンとオフ、任意のものを意図的にどうこうすることはできない」

 

 続けて「ただし」、と前置きをして。

 

 ランダの方に振り返ったシュウジは……右手に握った禍々しいエボルボトルを見せつける。

 

「それは……ッ!」

「こうしてほ(・)ん(・)の(・)少(・)し(・)の(・)代(・)償(・)を支払えば、多少は無茶できるのさ」

 

 多少どころではない。

 

 エボルボトルから溢れ出した力は黒い瘴気に実体化し、シュウジの右手から肉体に食い込んでいる。

 

 明らかなエネルギーの侵食。今こうしている間も、無慈悲な破壊の力がシュウジの魂を貪っている。

 

「これで、俺とお前がいるという〝事実〟を世界から一時的に消した。お前が何をしようと、別の次元にある現実世界には何も起こらない……言いたかないが、時間を稼いでくれたあの勇者(笑)には感謝するよ」

 

 説明を聞いていたハジメが、凄まじい形相でシュウジに触れようとした。

 

 ボトルを取り上げようとしたのだが、下手なホラー映画の演出のように手が通り抜けるだけ。

 

 それが、何よりの証明だった。

 

「おい、今すぐそれを手放せッ!」

「……ごめんな、ハジメ」

 

 約束を破ってしまったことを詫び、後ろで顔面蒼白になっている雫達から目を逸らす。

 

「……ついでに、姿が見えないからわかってるだろうけど、あのおっかない錬金術師の弟擬きはエネルギーの余波でどっかに吹っ飛んだわ」

「理解しているのか。そのエネルギーを使い続ければ、君は」

「ああ、しているさ。まず確定でこの後ハジメにしこたまぶん殴られるし、雫達に心が折れるまで説教だ」

 

 瘴気を吐き出し続けるボトルをなおも握り続け、シュウジは凄絶に笑った。

 

「だけどな。それで目的が果たせるのなら、あと十年くらいは喜んでこいつにくれてやるよ」

「……狂っている。人格が作り変えられようと、なおその在り方は変わらないか」

「ああ、変わらないね。ルイネに振られたことで、俺自身逆に理解できたよ」

 

 

《エボルドライバー!》

 

 

 取り出したドライバーを腰に装着し、左手にライダーエボルボトルを持つと、その蓋を開ける。

 

 言いようのない威圧感を放つシュウジに、隔離された世界の中でランダは鋭く目を細めた。

 

「たとえ魂を塗り替えられようが、女神に打ち捨てられようが。俺の本質はあいつから……あんたの親友から受け継いだものだ」

「っ!」

「それを背負い、俺として生きていこうと傲慢にも言うのならば。俺という人間が死ぬ最後の時まで。騙し、欺き、悪道を貫こう」

 

 

《 アサシン!  ライダーシステム! 》

 

 

《レボリューション!》

 

 

 恐ろしいまでに躊躇なくレバーを回し、全身を紫色のアザとして顕現した呪いに塗れていく。

 

 シュウジを包み込み、まるで呑み込むような様をもう一度見たハジメ達は、全身の血が凍りつくような寒気を覚えた。

 

 

《ARE YOU READY?》

 

 

「──変身」

 

 

《エボルアサシン! フッハッハッハッ!》

 

 

 そして。

 

 シュウジは再び、その身をも滅ぼす力の具現に身を染めた。

 

「ネオフェーズ・ワン……さあ、終末を始めよう」

「……殺すッ!」

 

 

 

 

 

 帝国の夜は、まだ終わらない。

 

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

次回で帝国編は終わり。

感想カモン!
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