星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

176 / 354
シュウジ「よっす。いやーアリシゼーション終わったな」

エボルト「うちの作者が友達と共同で二次創作やってるから、そっちもぜひ見てくれ」

ハジメ「で、前回はお前が正座してたな」

シュウジ「そう言っちゃうと俺がすごく惨めじゃない?」

ハジメ「しばらく我慢しろ、罰だ。で、今回はフェアベルゲンに到着する話だ。それじゃあせーの、」


三人「「「さてさてどうなる大樹編!」」」


樹海リターン

 

 三人称 SIDE

 

 フェアベルゲンは、夜の帳に包まれている。

 

 霧に包まれ、樹海の奥深くにあれども、その星々のきらめきは色あせる事なく亜人族達を照らしている。

 

 そんな中で、樹海の王国は深夜にも関わらず、国そのものが橙色の灯りで照らされていた。

 

 

 

 真夜中にふさしくない煌々とした灯りと共に、普段であれば家族団欒の時を過ごしている亜人達の喧騒が響く。

 

 その発生源はフェアベルゲン内の民にとどまらず、国外の集落からやってきた亜人達をも含んでいた。

 

 戦後にも関わらず、休みなしに兵士たちが人の整理・誘導に駆り出されているのが、その規模を示唆しているだろう。

 

 

 

 そんな喧騒を、夜風の吹き込む全開の窓から聞き入れながら、仕事をする長老が一人。

 

 森人族(エルフ)のアルフレリック・ハイピストは、これまでにないほどの騒ぎに発生した書類に目を通す。

 

 内容は様々だが、その最たるものは──数千人を超える同胞の受け入れ、その体制に関する報告、または申請書である。

 

「ふう……カムよ、本当に帝国から同族が帰ってくるのか?」

「……まだ疑うか。その目で見るまでわからないことを聞いてないで、さっさと準備をしろ」

 

 ため息と共に溢れた呟きに、部屋の中に第三者の声が響く。

 

 アルフレリックのすぐ側、そこには手を伸ばせば天井に触れられそうな巨体を持つ兎人族……カム・ハウリアがいた。

 

 

 ハウリア族は、先んじてフェアベルゲンにハジメのゲートで帰っていた。

 

 そして、その無制限の通信距離を持つガントレットの機能で、急遽整えることになった態勢を効率的にするために手伝いをしている。

 

「わかってはいるが、やはり信じ難いものでな……あの帝国が、同胞を解放するなど」

「あと数時間で嫌でも答えがわかる。まあ、気持ちはよくわかるがな……我等とて、ボス達がいなくてはここまでの成果をあげられなかった」

「ボス達……資格者、南雲ハジメと北野シュウジか。それが真実ならば、数え切れないほどの同胞を救ってくれた恩人になる。いよいよ、報いる方法が浮かばん」

「ボスはそんなもの期待しないだろうが……ふむ」

 

 そこでカムは、ガントレットに表示されたホログラムを操作しながら唸った。

 

「どうした?」

「いや……確かこの国には、お前達森人族秘伝の湯があったな?」

「なぜ知っているかはもはや問うまい……だが、それがなんだ?」

「実は、センセイを休ませてやりたいのだ」

「北野シュウジを、か……」

 

 アルフレリックは驚いた。

 

 

 実のところ、彼はハジメよりもシュウジの方を初対面の時から警戒していた。

 

 

 ハジメは単純だ。理不尽を憎み、邪魔するものに怒り、その圧倒的な力で真正面から全てを打ち破っていく。

 

 だがシュウジは、長命な森人族の中でも高齢なアルフレリックでも底が全く見通せない悪寒を感じさせた。

 

 ハジメが逆鱗を踏めば躊躇なく暴れまわる獣なら、シュウジはその裏で何かを企てる影。

 

 

 

 絶対に手を出してはいけない。もし手を出せば手も足も首も、この魂まで絡み取られそうな予感さえした。

 

 そして、その恐ろしさはこのカムにも受け継がれている。

 

 一見ガントレットを注視しているように見えるが、その佇まいには一部の隙もなく、触れれば一瞬で切り裂かれそうである。

 

 

 実際に既にその刃は露わになっている。

 

 というのも、今回の受け入れの話をしにカムが長老衆の前に現れた時のことだ。

 

 突然の話を訝しむ長老の一人が、カムの不遜な態度に罵倒を投げつけ、強制的に跪かせようとした。

 

 いわゆる潜在意識というやつである。

 

 たとえ熊人族を蹂躙しようと、フェアベルゲンを魔族の軍や帝国から守ろうと、長年染み付いた意識はそう簡単に変わらない。

 

 

 が、次の瞬間どこからともなくハウリア族が現れ、長老全員の首にリストブレイドを突きつけた。

 

 

 件の長老にも全身に隙間なく刃が向けられ、指一本でも動かそうものなら全員の首が飛ぶ濃密な殺気にその場が包まれる。

 

 以前の温厚で、諦めの早い兎人族はどこへ行ったのか。

 

 最高権力者全員を瞬く間に抑えたその実力に、ひとまず長老衆は話を信じた。そうしなければ本当に首が飛んでいただろう。

 

「センセイは、ボスや姉御達が本気で心配するほど無茶な戦いをした。香織殿と美空殿がいるから心配はないだろうが、それでも出来うる限り療養してほしい。これは我等全員の意思だ」

「ハウリア族全員の、か……お前達がそこまで言うほどの事がなんなのか気になるが、考慮しておこう」

「考慮?」

「わかったわかった、必ず言っておく。だからその顔をやめろ」

 

 どこぞのホラゲーに出てくる兎人間のような顔をするカムに、アルフレリックは苦笑した。

 

 と、そこで扉の開く音がした。アルフレリックとカムが同時に振り返ると、一人の森人族が入ってくる。

 

「お祖父様、炊き出しの準備が整いましたわ。これが消費した後の備蓄量です」

「む、アルテナか。ご苦労だった、帰ってきて間もないのに……あまり無理はするな」

「わたくしのことならご心配なさらずに。同胞達が帰ってくるというのに、じっとなんてしていられません」

 

 気遣う言葉を向けるアルフレリックに、アルテナは凛とした声で答えた。

 

 それから報告書をアルフレリックに渡すが……ちらりとカムの方を見る。

 

 訝しむアルフレリックだが、カムは一瞬で自分に向けられた視線の意図を察していた。

 

「センセイのことが気になるか?」

「っ! い、いえ、そんなことは……!」

「ふむ。ではボスの方か」

「いえ、そういうわけでも……」

 

 露骨に反応が変わったアルテナである。

 

 これには流石にアルフレリックにも察しがついて、あの男に対する認識と孫娘の気持ちになんとも複雑な苦笑いを浮かべた。

 

「悪いが、センセイの気持ちは雫の姉御から動くことはないだろう。姿の見えないらしいルイネの姉御が気にかかるが……あの方も、ボスもとても一途だ」

「わ、わかっていますわ。だからわたくしは、別にそういうことではなくて……」

「なるほど。大方もう一度会って、きっぱりと諦めたいといったところだな」

「……なんだか全部察していられるのも怖いですわ」

 

 微妙な顔をするアルテナ。カムにもシュウジの洞察力の一端が受け継がれていた。

 

 なんとも言えない顔でいるアルテナをお構い無しに、カムは感慨深げな顔をしながら独り言をぼやいた。

 

「我が娘シアも、随分と頑張った……最初の頃の対応に比べて、あんなに大切にされて……」

 

 カムの脳裏に、初対面の頃の心底面倒そうにシアの相手をするハジメが思い浮かぶ。

 

 対して、先日帝国で見た娘と自らのボスは……ユエや美空にほぼ近い立ち位置までその認識を改めていた。

 

 おまけに帝国攻略に手を貸した理由は、〝シアの笑顔を曇らせない〟というもの。父親としては感無量の思いだ。

 

「これはもう、ボスの〝特別〟になる日も近いだろう……」

「あの、お祖父様……」

「……気にするな」

 

 二メートル近い筋肉の塊が男泣き。はっきり言って一歩間違えばホラーである。

 

 

 

 そんなカムを見ていると、不意に外が騒がしくなった。

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 それまでの喧騒とは異なり、不測の事態に対するようなそれはとても大きい。

 

「何事だ!」

 

 席を立ち、叫んだアルフレリックは窓に歩み寄った。

 

 そして原因を目の当たりにして──唖然とする。

 

「光の柱……だと?」

 

 陽光に等しい……いや、それよりもずっと白く強い光が、天より木々を通り抜け広場を照らしている。

 

「案ずるな。ボスたちのご到着だ」

 

 困惑するカムに、懐古から現実に戻ってきたカムは至極冷静な声で言う。

 

 その言葉通り、天より──否、空より降り注ぐその光は、フェルニルの下部に取り付けられたサーチライトだった。

 

 

 

 ベキベキベキッ!!! 

 

 

 

 フェルニルに吊り下げられたコンテナが、ドームのように広場を覆う大樹を容赦なくへし折っていく。

 

 光に慄いていた亜人たちは、その音に恐怖して瞬く間に蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 

 彼らは遠巻きに戦々恐々と様子を見守り、そんな民を守るために腰の引けた兵士たちが広場を囲む。

 

 

 

 やがて、彼らの目にもゴンドラが見えるとより一層その恐怖は大きくなった。

 

 そんな中で、フェルニルはゴンドラをパージする。

 

 落ちた巨大なゴンドラは広場の半分を占拠し、そこに更に隣にフェルニルが着陸した。

 

 慌てて亜人達が既に空いた距離を更に開ける中で、超巨大なゴンドラに兵士たちは近づく。

 

 果たしてこの鉄の箱の中に、何が潜んでいるのか。

 

 

 内心怯えながらも、勇敢に包囲を狭めていく彼らの目の前で、ゴンドラの前部が開いて地面に落ちた。

 

 ズン、という重い音と共に沈み込んだ鉄板の奥に、兵士らは手に槍と一緒に汗を握り、喉を鳴らす。

 

 

 

 その場にいる全ての亜人が注目する中で、ゴンドラから出てきたのは──兎人族の少女だった。

 

 一斉に唖然とした表情になる亜人達。そんな彼らに構わず、次々とゴンドラから亜人が続出した。

 

 

 キョトンとした表情でうまく状況を飲み込めない外野に対するように、出てきた彼らは周囲を見渡して驚く。

 

 静謐で清涼な空気、まるで父の腕のように逞しく、安心感を与えてくれる樹々に光る懐かしいフェアベルゲンの灯り。

 

 そして、永遠の別れだと思っていた同胞……更に深くは、家族との再会。

 

 それら全てをじわじわと実感した彼らは、一様に泣き出しそうな顔となっていく。

 

 

 それは、フェアベルゲンの住民とて同じことだ。

 

 不意に、一人の女性がフラフラとした足取りで前に進み出る。

 

 中年の犬人族の彼女は、目の端に涙を溜めながら、恐る恐る失ったと諦めていたその名を呼んだ。

 

「……ザック。ザックかい?」

 

 その声に反応したのは、同じく垂れた犬耳の少年──光輝が気にかけていた、あの労働者の亜人だ。

 

 彼は、女性の姿を視界に捉えると、顔をくしゃくしゃにして涙を流し、ダッと駆け出した。

 

「母さん!」

「ザック!」

 

 跪き両手を広げた女性の胸に犬耳少年が飛びつく。

 

 母親たる女性は、腕の中の息子が夢幻でないことを確かめるようにきつく抱き締めた。

 

 二人の両眼、揃って四つの瞳から、奇跡の再会に歓喜の涙が零れ落ちる。

 

 

 それを皮切りに、住民も帰還者たちも地を揺らさんばかりの歓声を上げて互いに走り寄った。

 

 そして、家族、友人、恋人など知人を見つける度に声を枯らす勢いで無事を喜び合う。

 

 

 

 フェアベルゲンは、大きな喜びに包まれ、かつてない程のお祭り騒ぎとなった。

 

 

 

 笑顔に満ちた亜人達の喧騒の中、フェルニルから降り立ったハジメ達にアルフレリックら長老達が駆け寄ってくる。

 

「少年よ。またとんでもない現れ方をしてくれたな」

「ん、ああ……すまん、ちょっと色々面倒でな」

 

 移動に大部分の魔力と思考能力を割いていたため、非常に大雑把な着陸となった。

 

 そのことにハジメは、流石にこの景色を損ねたことは思うところがあり後頭部をかく。

 

 そんなハジメに苦笑し、アルフレリックは一行を順繰りに見ていく。

 

 

 まず今回初めてここを訪れる光輝ら勇者組、次に情報漏洩防止の為にマスク(ひょっとこ)を被せられている姫とガハルド。

 

 そして最後に……シュウジの腕をガッッッチリと両腕でホールドしている雫だった。

 

「君は……」

「よっ、アルフレリックさん」

「はじめまして、この人の彼女の八重樫雫と言います。以前はこの人がお世話になりました」

「ふむ、北野シュウジの……これは丁寧に」

 

 感心するように声を漏らしたアルフレリックは、彼女というかもはや妻のような貫禄を持つ雫を見る。

 

 自分があれほど警戒していたシュウジを、こんなふうに扱えている……油断ならない、と彼は思った。

 

 ちなみに隣にいるアルテナは、雫の全身から溢れ出る貫禄と、シュウジの自然体に自然と高鳴る鼓動は落ち着いていった。

 

「まあ、よろしく頼むよ。それで南雲ハジメ……」

「わかってる。あれは悪かった、やりすぎだ……ユエ、頼めるか」

「ん」

 

 短く答え、魔法のエキスパートたる彼女は手を掲げて、たった一言。

 

「〝絶象〟」

 

 その瞬間、有機無機問わず全てを癒す神代魔法が木々を瞬く間に治した。

 

 あまりに非常識かつ、簡単に行使されたそれに間抜けな顔となる長老衆。

 

 カムがそばにいただけあって、一番まともな状態のアルフレリックが眉間を揉み解すように指で揉む。

 

「まったく、相変わらず何から何まで飛び抜けている……」

「お祖父様、お気持ちはわかりますが……」

「わかっている……改めて、南雲殿」

 

 フルネームではなく、敬称をつけて呼ぶアルフレリックに、ハジメも真面目な顔へと変えた。

 

「カムから大凡の事情は聞き及んでいる。にわかには信じられないことだが、どうやら本当に同胞は解放されたようだ。この歴史的な瞬間に立ち会えること……そして我らが家族を救ってくれたこと、フェアベルゲンを代表して礼を言おう」

「言っておくが、やったのはハウリア族だ。俺たちは少し手伝ったのと……このバカがまた無茶するのを見てただけだぞ」

「がふっ」

 

 余程あの件が腹に据えかねているのか、言いながらハジメはシュウジの脇腹に肘鉄を入れる。

 

 割とマジのそれにシュウジは咳き込みつつも、目線を上げると女性陣の熱視線(怒り)とかち合うのでそっぽを向いた。

 

 

(……なるほど。カムの言っていたのはこれか)

 

 

 アルフレリックは、先ほどのカムとの会話に納得を持ちつつも、言葉を紡ぐ。

 

「わかっている。ハウリア族がいなければ、そもそも先の襲撃だけでフェアベルゲンは壊滅していたかもしれん。それを含めて、全て真実だと認めよう……ふふっ、最弱だったはずのハウリア族が帝国を落とすとは……長生きはしてみるものだ」

 

 呆れたように、されど何処か楽しそうに笑うアルフレリックのその言葉。

 

 亜人達はそれを聞き、自分たちを、同胞を救い出してくれたのが誰なのかを改めて認識した。

 

 アルフレリックの後ろに背筋を伸ばして立つムキムキマッチョマン(変態)に、畏敬の目線が向けられる。

 

 

 

 ある種英雄を見るようなそれに、カムはニヤリと笑うと片手をあげた。

 

 その瞬間、何処にいたんだと突っ込みたくなるような大量のプレデターハウリア達が現れる。

 

 カムの後ろに彼らは統率された動きで整列し、カムがハンドシグナルで〝休め〟と指示すると姿勢を変える。

 

 軍人もかくやという動きにカムは満足げに頷き、民衆に向き直った。

 

 

「──同胞達よ!」

 

 

 その場にいる者達……兎人族に向けて、演説が始まる。

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

「長きに渡り、屈辱と苦難の中で踠いていた者達よ。聞け、此度は帝国に打ち勝つことができたが、永遠の平和など実現したことがない。このフェアベルゲンの惨状がその証拠だ」

 

 淡々とした口調に、広場にいる大勢の兎人族が……そして他の者ら全員が恐怖に体を震わせる。

 

 今でこそある程度復興されたものの、魔人族と帝国の襲撃の爪痕は深く、その恐怖は亜人達に刻み込まれている。

 

「そう遠くないうちに、その平和は脅かされることだろう。そうなればお前達は昨日までの日々に逆戻り、それどころかさらに被害は拡大の一途を辿るだろう」

 

 拡大。

 

 それはすなわち、これまでや今回の襲撃で奴隷化を免れた者にも()()()()()があるということ。

 

 一時の平穏。その意味をよく理解して、先の暗い未来に顔を落とす。

 

「おまえたちはそれでいいのか?」

 

 挑発的にカムが問いかける。

 

 いいはずがあるまい。尊厳も命も踏みにじられるような日々に戻りたいなどと、誰が思うのだろう。

 

 だが、どうすることもできない。そう言わんばかりに沈黙する同胞に、カムは厳しい視線で声を張り上げた。

 

「いい訳がないと、そんなのは理不尽だと思うのならば……戦え。己を守る為に、隣にいる者を守るために、搾取と諦観を拒絶するために立ち向かえ! 我等はそうした! 心を怒りで満たし、最弱の称号に甘んじるのをやめた!」

 

 その演説に、少しずつハッとした兎人族達が顔を上げていく。

 

「決意だ、決意さえあれば全ては変えられる! それを我らが証明した!」

「あ……」

 

 誰かが声を漏らした。

 

 そうだ。自分たちを救い出したのは、あそこにいる強大な力を持つ人間達ではない。同じ兎人族なのだ。

 

 一人、また一人と顔を上げていき、その瞳にプレデターハウリア達のような戦意と怒りが満ちていく。

 

「帝国での仕打ちを思い出せ。不遇に安住するな。大切な者ならば自分で守れ! 諦観という悪夢に溺れる暇があるならば牙を磨け! 戦う術は我らが教えよう。求め、抗うというのならば、我らはいつでも──お前達を最高の捕食者(プレデター)にしてやる」

 

 そう言って、カムは演説を締めくくった。

 

 そうしてもう一度ハンドサインを出すと、プレデターハウリア達は虚空に消える。

 

 それを見て、数百人のうち一部の兎人族の瞳には既に決意の光があった。カムはニヤリとほくそ笑む。

 

「ボス、お話の最中だというのに失礼しました。丁度人材確保がしたかったもので」

「ああ、それは別にいいけどよ。ていうことだ、頑張れよ武具製造機」

「人のこと3Dプリンター扱いやめて?」

 

 ポン、ととても爽やかな笑顔でシュウジの肩を叩くハジメ。本当に帝国での戦いを根深く怒っているようだ。

 

「いやー、それにしても言うようになったねカムさん。そのうち兎人族全員ハウリア族になるんじゃないの?」

「はっはっは、そうなれば儲けものですな!」

「……ますます父様がハジメさんやこの鬼畜と同じように。そう遠くないうちに温厚な兎人族は絶滅しますよ」

 

 遠い目をするシア。その予想は割と正しいことを彼女は数年後に知ることになる。

 

「ここで立ち話もなんだ。奥に案内しよう。アルテナ、頼むぞ」

「はいお祖父様。さあ皆様、こちらです」

 

 ここでは注目されすぎるので、アルテナが自分に用意された広間に案内する。

 

 その際、最後にもう一度だけシュウジの方を見たが……入る隙のない二人に、諦めたように微笑した。

 

「ほらシア、さっさといくぞ」

「あ……」

 

 そして、ハジメがシアの手を引いて歩き出した。ユエでも美空でも、ウサギでもなく、彼女の手を。

 

 その意味を察せないシアではない。満面の笑みで義手を自分の体で抱え込んだ。ハジメは素晴らしい感触を堪能する。

 

 

 

 カムが「ほう」とニヤニヤとした顔で見守る? 中、幸せ全開のシアはハジメとともに歩き出した。




読んでいただき、ありがとうございます。

いよいよこの作品も終盤に差し掛かってきたなぁ。

感想をください。さすれば自分の意欲が増すでしょう(偉そう)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。