シュウジ「まーたやりやがったなこいつ……よう、日曜の夜にこんにちは、シュウジだ。前回はカムさんがメインだったな」
シア「あれは父様じゃありません、もはや別人です」
カム「何を言うシア、私は昔も今も変わらずカムだぞ」
シア「鏡見てから言ってくださいっ!」
ハジメ「いや、お前も時々マッチョ…まあいい。今回は夜の話だ」
シュウジ「そう言うと卑猥に聞こえるから不思議」
ハジメ「やかましい。それじゃあせーの、」
四人「「「「さてさてどうなる大樹編!」」」」
シュウジ SIDE
夜中。
満点の星空に、木々に囲まれたこの場所からでも聞こえてくる喧騒の声。
きっとどこかで祝宴でもしてるんだろう。家族が、友が、愛する人が戻ってきたのだから当然だ。
時々聞こえる悲鳴は、きっと羽目を外した亜人が警備用に飛ばしているシュヴァルツァーにゴム弾を撃たれた声だろう。
あれの性能実験に付き合った(サンドバック)からね、その威力はよーく知ってる。
「ふぃ〜、極楽極楽……」
「やっぱり良いよなぁ」
「日本人の魂だからな。異星人のお前が言うと違和感あるけど」
「おいおい、前の世界で10年、お前に取り憑いてもう17年だ。30年近くいるんだから俺も日本人だろ」
「星ごと滅ぼそうとしてたやつが何か言ってる……」
「愛だよ、愛」
「なぜそこで愛ッ!?」
そんなことを考えながら、俺たちは森人族秘伝の温泉を満喫していた。
久しぶりに外に出ているエボルトと二人……まあ雫が来るまでだが……で互いに酌をしながら、たわいもない雑談をする。
酔わないからお酒飲む意味ないけどネ。ほら、雰囲気って大事だから。
「いつも雰囲気ぶち壊すお前が言うな」
「壊してないです〜、陰険な異星人が体に同居してるから釣り合いとってるんですぅ〜」
「こやつ人を諸悪の権化のように扱いおるわ」
「その通りじゃねえか」
「あ、そうだった⭐︎」
「抹殺のラストブリットォ!」
「はいバーリア!」
訂正、雑談じゃなくていつものノリです(全く悪びれない顔)
などとふざけながら右手を繰り出した瞬間、まるで体が裂けるような激痛が走った。
「ッ……」
「大人しくしとけ。なんでカムの好意に乗ったと思ってんだ」
「……そうしとくわ」
エボルトの手の平から拳を離して、大人しく湯船の中に戻す。
実のところ、カムさんの懸念通りに俺の体は回復しきってない。日常生活と、ある程度の戦闘ができる程度にマシになっただけだ。
「ったく、我ながらなんて厨二チックなボディーだ」
自分の体を見下ろせば……右手にある紋章から伸びた黒い亀裂は、もう体の方にまで侵食していた。
腹筋の端までその先端を伸ばしている亀裂が、まるで残りのタイムリミットを表しているかのようだ。
「……あと何回保つ?」
「三回だ。それ以上は寿命を使い切る前に負荷で死ぬ」
「そっか……で、使った場合残る寿命は?」
「50年を切る、とだけ言っておくぞ」
エボルトの声は真剣で、なおかつその内容は的確だった。
エボルドライバーはブラッド族のテクノロジーだ。そこに混ざり物を足した時どうなるかは、こいつが一番理解してる。
俺もなんとなく自分で察していた。
その回数以上変身すれば……生まれ変わることもできずに、永久に消滅する。
「残りの回数で、全部終われば良いけどな」
「使わないに越したことはねえよ」
「はは、そうもいかねえって」
笑って言えば、エボルトは冗談交じりに皮肉を返して……
……返して、こない。
どうしたんだと隣を見れば、エボルトの赤い瞳が俺の目をまっすぐに見ていた。
「エボルト……?」
「シュウジ。ここからは一切の冗談なしで言うが、俺はお前に死んでほしくない。長年共に生きた相棒として。ついでにあの女神に復讐するためにもな」
「……割合は3:7ってとこか?」
「逆だよ、馬鹿野郎」
コツン、と軽く頭を叩く手は硬く握り締められ、その表情に一切の虚偽はなく。
俺の中にあるカインの記憶が告げる。
今告げられているのは、計算と嘘と欲望に塗れた異星人の、偽らざる本音だと。
「俺は俺が作ったものを壊されるのが大嫌いだ。自分の一部だと思っているものを傷つけられると憎くてたまらない」
「……だろうな。最初に進化した時、ロストボトル浄化されてすげえキレてたし」
「まあな。だから徹底的にそれをした相手を陥れ、絶望させ、その中で殺す」
ピシリ、とエボルトの手の中の猪口がひび割れる。
その言葉に宿るのは、怒り、憎悪、憎しみ……唯一感情を得た、残虐なブラッド星人の根底にあるもの。
その矛先は……俺を狙う《獣》と、無茶をする俺自身だ。
「そんな俺にとって、自分の命の他に一番大事なのはお前だ。この嘘と策謀に塗れたクソのような世界に食わせるつもりは毛頭ない」
「……じゃあ、俺を止めるか?」
はっきりと言おう。
俺を本気で、本当に止められるのは、ハジメでも、雫でも、他の誰でもない──こいつだ。
生まれる前からずっと一緒で、ある意味俺の全てを理解しているこいつだけなのだ。
ハジメや雫達は、仲間で、友達で、愛する人で、家族で、大切な人で、俺の宝物だが、それ以上にはならないようにしてきた。
だって俺の計画が完遂されたら……全部、
「止めないね。《獣》やエヒトを相手するには必要だし、何より俺は人間が必死に意地汚くもがく姿を見るのが大好きなんだ」
「へっ、クズなこって」
「ああクズさ……だからお前が自分で満足するまで見守って、あとは何もできないようにしてやるよ」
「……お前」
「そして、望みを果たして目的を失ったお前が、残りの人生を無為に過ごす様を見るのさ……ククッ、今から楽しみだ」
……こいつ、まさか。
「もしかしてお前、最後に俺のことを……」
「おっと、口を滑らせすぎたな。ともかくお前は、なるべくその力を使うな。もし限界を超えて使おうとしたら、その時だけ止めてやる。計画がおじゃんになるからな」
「……自分が作ったものを壊されるのが大嫌い、か」
「そういうことだ。んっ」
一気に猪口の中をあおったエボルトは、もう一度俺の方を見て。
「いいか、もう一度だけ言うぞ。俺の許容する範囲までは好きにやれ。あとは俺の手の中で転がしてやるから、安心して全部終わるまで道化を演じてろ」
「……ああ、わかったよ」
「ならいい……あーダメだーもうシリアスな雰囲気作るの疲れたわー」
「おい、本来の設定はどうした設定は」
「メタいわボケ」
グデーンとしたエボルトに笑った俺は、ふと自分の魂に魂魄魔法でブロックをかける。
強く強く、魂の根底から繋がっているこいつにも分からなくなるように、奥深くまで固めて。
(……俺の手放す《宝物》にはお前も含まれてるんだよ、エボルト)
そう、こっそりと呟いた。
●◯●
ハジメ SIDE
同じ頃、ハジメ達に用意された部屋の一室。
……流石に今日は疲れた。
あの規模の人数の輸送に加えて、一応警戒のためにコンテナの周りに泳がせていたシュヴァルツァーの操作。
いくら魔力操作の訓練のためとはいえ、我ながらやり過ぎたと思っている。
アルフレリックに最初にああは言ったものの、休憩するには割と良いタイミングだった。
が……
「………………」
視線を感じる。
ユエ達じゃない。さっきまで膝枕してもらって微睡んでいたが、またいつもの
そして、今はこの部屋に俺以外の人間……いや、正確には兎人族は一人しかいない。
シアだ。先ほどから半分微睡んでいる俺でもわかるくらいに、こっちをチラチラ見ては何かを考えている。
……ユエ達が出ていってから、結構経つ。これ以上待ってると俺も寝るし、そろそろ話しかけよう。
「……ユエ達についてかなくてよかったのか?」
「っ! え、え〜と、なんとなく流れに乗り遅れた、みたいな?」
「……ふぅん」
ある程度魔力の回復した体を起こし、薄靄のかかった頭を少しクリアにする。
あのユエが、もはやウサギと同じくらい身体能力がバグってきているシアをわざわざ連れて行かなかった。
「なんとなく、ねえ」
「うっ……そ、それより! みんな出ていってしまいましたし、私達もちょっと散歩しませんか? 私、フェアベルゲンの中って知らないんです」
「ああ……そういやそうだな」
もう当たり前になって忘れてたが、こいつの見た目はフェアベルゲンの中ではかなり特殊なんだった。
特に他に用事もないし、強いて言うなら休みたいが……まあ、
「まあ、いいぞ」
「やったですぅ! 真夜中のデートですね! ……ちょっと卑猥な響きです」
「大丈夫かシア? 香織に毒されてないか?」
「いや、そこで香織さんを引き合いに出すのは……」
もう諦めてるけど、あいつ元ストーカー予備軍だからなぁ……
まあ、それは別にいい。シアもそわそわとしてるし、何やら散歩の他に話したいことがあるだろうから行くか。
「ほれ、行くぞ」
「はいっ!」
立ち上がって手招きすると、シアは嬉しそうに俺の腕に抱きついてくる。
腕を組んだまま部屋を出ると、他愛ない会話をしながら真夜中のフェアベルゲンを散策し始めた。
「……ん?」
そうしてしばらく歩いていると、ふと上が明るいことに気がつく。
顔を上げると、天井の樹々に点々と輝く、青い光のようなものを見つけた。
「あ、あれはモントファルタですね」
「モントファルタ?」
「はい、月明かりみたいな淡い青色に発光する蝶です。あんな風に群れで樹々の高いところに留まるので、まるで星空みたいに見えて人気なんですよ。ただ、とっても稀で……」
「なるほど、滅多に見れない光景ってことか。確かに綺麗なもんだな……」
ここで写真を、と思ってしまうのは俺が現代人だからだろう。
シュウジの作った携帯のカメラ機能なら、この暗闇の中でも鮮明に映すことができる。
だが風景の美しさを尊ぶ日本人として、そうやって残すのは、なんだか違う気がした。
折角なのでひょいひょいと大きな樹の上へ登り、そこで座ってプラネタリウムを見ている気分で鑑賞した。
「……あの、ハジメさん」
「ん?」
「ありがとうございました」
……また、えらくいきなりな感謝だ。
「いろいろ、言葉にしきれないくらい……本当にありがとうございました」
「おう、たっぷり感謝してくれ。大迷宮攻略では頼りにしてるからな」
「そこは普通、気にするなって言うところじゃないですか?」
「言ってほしいのか?」
「それはそれで、なんだか他人行儀で嫌なのでいいですっ!」
強欲なやつだな……ふっ。
「私、何をすればハジメさんに恩返しできますか?」
「礼なら今受け取ったが?」
「そんなの、ただの言葉です。私の感情は、たった一言で収まるような、そんな簡単なものじゃないんです」
「……」
「ハジメさんは、私が何をすれば嬉しいと感じますか? ハジメさんが望むなら、私はなんだって……」
太くて座り心地の良い枝の上で、シアが体をこちらに寄せてくる。
こちらを見る瞳は熱を孕み、吐息はとても熱くて。
言葉にしなくても、こいつが何を言いたいのかが一目でわかってしまった。
「……お前は、いつもみたいに能天気に笑ってろ。ムードメイカーがお前の役目だろう?」
「もうっ、なんですか能天気って! 皇帝の前で私のことも抱きしめたくせにぃ!」
「ああ、あと忘れてた。シュウジのツッコミ役でもあったな。物理的な」
「それは本当に不本意なので返上しますっ!」
いや俺も返上したいわ。もう17年も一緒で慣れたから諦めてるけど。
「ここは、ならば体で支払ってもらおうか……みたいになってもらわないと!」
「お前は俺をなんだと思ってるんだ」
「一途……一途? なヘタレですぅ」
「そこは頷いてほしかった」
いや、自分でもわかってるがな。
地球にいた頃からずっと一緒にいて、居場所だと感じていた美空。
この世界で奈落の底で独りになって、誰よりも支え合ってきたユエ。
俺に生きる希望を与えてくれた、苦しい時に助けてくれたウサギ。
全員が等しく〝特別〟だが、日本で言ったら間違いなく史上最低のクソ野郎呼ばわりされる。
「……冗談抜きに、お礼をさせてください。私はあなたと出会ってからずっと貰いっぱなしで、でもハジメさんもユエさんも、他の誰も彼も笑っていてくれれば良いって言うけど。それでも私の幸せは皆さんと一緒にいることで、笑顔になるのは当たり前なんです」
「だが、仲間だろ? シュウジの言葉を借りれば、ある意味家族とも言っていい。いちいち気にする必要もないけどなぁ」
「親しき中にも礼儀あり、です。いくら考えても、ハジメさん達に恩返しする方法が思いつかなくて……私の体はいらないって言うし……」
「やさぐれんな……」
……ああ、でも。
その感情がわかってしまう。その心境が理解できてしまう。その気持ちに共感することが、できてしまうのだ。
貰いっぱなしだ。守られっぱなしだ。ずっとずっとあいつの背中は俺の前にあって、それが隣に並ぶことはない。
だから、
「……ん?」
「? どうしましたかハジメさん?」
「いや……」
……今、何か義眼に映った?
あれは……慟哭と赤い荒野?
いいや違う。アレはまるで、真紅に染まった空のようなーー
「っ……」
「ハジメさんが私に惚れてくれたら、いくらでも奉仕できますのに。まだ惚れません?」
「……いや、そう聞かれてはいって答えるわけあるか」
「ですよねぇ。仕方がない。これまで以上に旅の中でお役に立てるよう頑張ります」
「そうしてくれ」
肩をすくめたシアに、俺はふと思い出す。
そういえば……フェルニルでの移動中、ガハルドがしつこく交渉しようとしてきた時。
あの時俺は、無意識にシアを抱き寄せていた。それが当たり前のように、元からそうだったように腕の中に収めた。
あの時感じた、少し仄暗い、だが強く胸を焦がすような感情は──独占欲?
……ハッ、だとしたら我ながらなんて自分勝手だ。
あれだけ拒んでいたのに、こいつのことが大切になってるなんて……こんなに、俺の中で大きくなってるなんて。
シュウジの揶揄いも否定できない。あの三人に及ぶほどではないが、それでも間違いなく俺のこの気持ちは……
「…………」
「あ、あの、ハジメさん? そんなに見つめられてしまうと、照れるのですが……」
「……流石に、相応の態度をとるべきだよな」
「へ?」
頬を赤くしているシアに、俺はんんっと咳払いをして。
「あー、シア。一つ頼みがあるんだが」
「! は、はい、なんでも言ってください!」
おっと、途端に詰め寄ってきた。
こいつほんとに積極的だな……でもまあ、悪くない。
「少し、今日は疲れてる。膝を借りてもいいか?」
「ふぇ? そんなことでいいんですか?」
「それがいいんだよ」
「そ、それならどうぞ」
スカートの裾を払って、ペシペシと太ももを自分で叩く。
口がつり上がるのがわかりながら、俺は遠慮なく頭をシアの足に乗せた。
……甘い香りがする。ユエとも美空とも、ウサギともまた違う、安心するような匂いだ。
「ふふ、ユエさんたちが戦ってる意味がなくなっちゃいますね」
「ああ、そんなことでまた戯れてたのか」
「そんなことじゃないです、れっきとした理由です。みんなハジメさんに惚れてほしんですからね〜」
「……諦める気は?」
「ないですぅ〜」
「さいで」
微笑むシアが、俺の頭に手を置く。
そのまま撫で始めて、それがとても心地よく……気がついたら、忘れかけていた眠気が戻ってきた。
このままでいよう……この、妙に安心する時間を、少しだけ。
●◯●
光輝 SIDE
「ぐぅっ……!」
痛い。
痛くて痛くて、痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くてたまらない。
ただその感情だけが、俺の中を満たしている。今にも気狂いしそうな激痛が、俺の心をひたすらに嘖む。
「なんで、こんな……!」
歯を食いしばり、脂汗を大量に流して、ズクズクと奇妙な痛みを発する左肩を全力で鷲掴む。
俺にも男のプライドがある。
こんな無様な姿を香織達や、リリアーナや……
「ふぅっ、ふぅっ、うッ、がぁ……ッ!」
苦悶の声は、少しも苦痛を和らげてくれやしない。
なのに、こうしていればいつか終わる気がして、俺はひたすらに呻くのだ。
ズクッ、ズクッ!
痛みは際限なく増していく。
残る左手でベッドのシーツを握りしめ、まるで胎児のように足を折り曲げ、少しでも痛みが広がるのを阻止しようと足掻いて。
そんなことは意味がないとわかっていながら、それでも俺は肩を……
「ふぅ、ふぅ……はぁ……」
どれだけ時間が経っただろう。
少しずつ、少しずつ痛みが体の端から引いていって、極限まで強張った体は弛緩していく。
やがて、左肩に弱まった痛みが収束して……パタリと目玉が俺の皮膚で出来た瞼を閉じる。
「く、はぁっ!」
その瞬間、一気に感覚が正常に戻って、俺は大きな息を吐きながらベッドに大の字になった。
「クソ、日に日に痛みが強くなってる……」
汗でぐっしょりとした額に手の甲を乗せて、思わず悪態をついた。
「……今日は、もう治ったか」
手と額の間に生まれた影の中から、ちらりと左肩を見る。
そこにはもう、あのグロテスクな目玉はいない。
代わりに、あの時《傲慢の獣》という怪物に食いちぎられた際に残った、歪な傷跡があった。
「……やっぱり、香織達に言うべきか」
これまでずっと誰にも明かさず、治療してもらうこともなく耐えてきたけど、そろそろキツい。
最初は些細な痛みだった。
ちょっと違和感を感じるくらいだったそれは一日経つごとに痛みが増して、少しずつ全身に広がっていった。
今ではもう指の先まで痛みが回っていて、これがとんでもなくまずいナニカであることは俺でもわかる。
あの怪物に丁度ここを喰われたくらいの時間になると、それは毎晩始まって。
もしかしたらもう、俺の体は手遅れに……そう危機感を覚えているのに、何故か誰にも明かせない。
「……違う。俺は明かしたくないんだ」
この痛みが、たとえ俺の命を蝕むものだったとしても。
それでもあの日あの晩、あの場所で負けたことを自分で実感できる証明を……俺は手放したくないのだ。
俺にもっと力があれば。もっと覚悟が、あの邪悪な怪物に打ち勝つほどの何かがあれば。
そうしたらきっと……
「ははっ。力があったって、俺に何ができるっていうんだ……」
南雲は、生きるために力を身につけた。北野はその重い選択を、理想を貫くために力を振るっている。
では、俺は? ずっと誰かの言いなりになって、自分が主役のつもりでいた俺に、どんな決意が、理由が、理屈がある?
「……決まってる」
北野が悪であることを選んだように、俺は一人でも多くの誰かを助ける為に正義という理想を求めよう。
御堂の前で決意した、俺はこの甘すぎる理想を最後まで追い求めるのだと。
愚かでもいい、借り物でもいい。きっとそれが俺にはお似合いだ。
「それでもこの理想は、夢は……きっと、どれだけ儚い幻想でも、決して間違いじゃない」
俺は、そう信じたいから。
だからもしも、体を蝕む痛みが……まるで体を乗っ取るようなこの異物が、俺に可能性をくれるなら。
それなら俺は──この恐怖を、受け入れることさえしてみせよう。
勇者だけ展開が辛辣? ハハハ、なんのことやら。
読んでいただき、ありがとうございます。
さぁて、Gさんの準備をしようか…
感想をいただけると嬉しいです。