星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、友人に深夜廻をどうにか見せようと画策している作者です

シュウジ「あれは前作共に名作だよなぁ。あ、シュウジだ。前回は迷宮攻略が始まったな」

ハジメ「お荷物を抱えた状態だがな」

光輝「お荷物って…確かにそうだが」

シュウジ「せいぜい笑える失敗をしてくれ。さあ、今回から本格的にスタート。それじゃあせーの、」


三人「「「さてさてどうなる大樹編!」」」


おいでませ樹海in迷宮

 三人称 SIDE

 

 魔法陣に乗っていた者達を包み込んでいた光が、徐々に消えていく。

 

「ここは……」

「……無事に大迷宮に入れたみたいだな」

 

 目を開けたハジメ達の視界に移ったのは、木々の生い茂る樹海だった。

 

 樹海の中にある大樹の、さらに中にある樹海。なんとも奇妙な光景だ。シュウジは知識と齟齬がないことに頷いた。

 

「みんな、無事か?」

 

 光輝が若干ぼんやりする頭を軽く振りながら、周囲の状況を確認して安否を確認する。

 

 龍太郎と鈴が「大丈夫」と答え、雫、香織、美空、ユエ、シア、ウサギ、ティオも特に問題なく鋭い目で周囲を警戒していた。

 

「北野、本当にここが大迷宮なんだよな?」

「さて、どうだろうな。ちょっと穴掘って確かめてみたらどうだ?」

「……お前の反応で大体わかったよ」

 

 皮肉げに笑うシュウジに光輝は嘆息する。相変わらず相性最悪の二人に雫達が苦笑した。

 

 三百六十度全てが木々で囲まれた広場を見渡して、最後に霧に包まれた上空を仰ぐと、やや困惑したような顔をした。

 

「……どっちに向かえばいいんだ?」

「言っとくが道案内はしないよん。攻略本を眺めながらゲームを攻略するなんざつまらない。な、ハジメ?」

「……ああ。とりあえず自力で探す」

 

 やや不機嫌に、低い声で答えたハジメに疑問を抱く。

 

 光輝達の反応に構わず、ハジメは近くの木の幹に手で触れて〝追跡〟の技能を発動する。

 

 魔力的なマーキングが完了し、幹に矢印型の光が張り付いた。

 

 

 

 それを見て、光輝達も自ら進まなければ攻略を認められないことを思い出して表情を引き締めた。

 

 迷宮をクリアして神代魔法を手に入れるため、光輝はやる気も十分に動き出す。他のメンバーもぞろぞろとついていった。

 

「「………………」」

 

 だが、肝心のシュウジとハジメが動かない。

 

「ハジメさん? シュウジさんも、どうしたんですか?」

「二人ともどうしたの?」

 

 歩き出していたシアや香織が振り返り、二人を不思議そうに見る。

 

「シュー? 行かないの?」

 

 シュウジの隣にいた雫も、シュウジの顔を見上げ──

 

「──ああ。それじゃあ、攻略を始めようか」

「え?」

 

 直後、呆けた顔のまま宙を舞った。

 

 香織が目を見開く。親友の首があっさりと跳ね飛ばされた様を見て、まるで時が止まったような錯覚に囚われた。

 

 

 シュバッ! 

 

 

 その間にも事態は進み、ハジメが拘束用アーティファクト〝ボーラ〟を取り出して投げる。

 

 それは美空、龍太郎、ティオをそれぞれ絡めとり、空中に浮かせてその場に固定してしまった。

 

「ふっ!」

 

 すかさずシュウジが両手を振り、拘束された三人目掛けてカーネイジのナイフを射出。

 

 空気を切り裂いて飛翔した脈打つナイフは、寸分違わず三人の心臓を刺し貫いた。

 

 それを見た光輝達は愕然とし、シュウジ達を振り返って──首のない雫を見て息を止めた。

 

「きた、の……なに、を……」

「よく見ろ間抜け勇者」

「え?」

 

 判断力が鈍っている光輝は、緩慢な動きでもう一度地面に倒れた雫を見た。

 

「っ!?」

 

 そして目を見開く。

 

 体からも、地面に転がっている首からも……一滴も血が流れていないのである。首がないのに、だ。

 

 そこでようやくハッとした。そもそも()()シュウジが、雫を躊躇なく殺すのか? と。

 

 シュウジとは決して相入れないと自覚している光輝だが、その愛情の強さだけは認めている。

 

 ならば、この状況は……

 

「まさか……」

「そのまさかだ、天之河。もう試練は始まってるんだよ」

 

 先ほどと同じ声で言い捨て、ハジメは無言、無表情でスタスタとある人物に歩み寄っていく。

 

 その人物は……ユエ。驚いている彼女の額に、ハジメはゴリッと銃口を突きつけた。

 

「ハジメ……どうしっ」

「黙れ紛い物。偽物の分際でユエを真似るな」

 

 絶対零度、激烈な怒りを宿した瞳でハジメが睨み下ろすと、ストンとユエは表情を落とした。

 

 元から無表情だったものの、明らかに()()()()()と思わせるその表情に止めかけていた驚く一同。

 

 シアとウサギ、香織が空中に固定された美空を見ると、同じように感情を感じさせない、能面のような顔だった。

 

「本物のユエや美空はどこにいる?」

「…………」

「ハジメ、そいつら答える機能までは持ってねえぞ」

「そうか。ならいい、死ね」

 

 

 ドパンッ! 

 

 

 シュウジの助言を受け、ハジメは容赦なく引き金を引いた。

 

 全力で発動されたレールガンによって、ユエの後頭部からビチャビチャと何かが飛び散る。

 

 思わず顔を背ける光輝達だったが、恐る恐る見てみると……それは赤錆色のスライムだった。

 

 

 

 一拍置いて、ユエの姿をしていたその〝何か〟はドロリと溶け、同じようにスライム状のものになった。

 

 驚いた光輝達が雫を見ると、同様に形を崩して地面に吸収されていくところだった。

 

「やっぱりか……チッ、流石大迷宮だ。やってくれる」

「あの腐れ神を相手にしてたことだけのことはあるな」

 

 ハジメの悪態に答えながら、シュウジも指を鳴らした。

 

 

 ゴバッ! 

 

 

 カーネイジナイフが爆発し、無数の針に姿を変えて美空と龍太郎を木っ端微塵に引き裂いた。

 

 その光景に総毛立つ光輝らだったが、やはり赤錆色のスライムになって地面に吸収されていった。

 

「のっけからふざけた試練だ」

「はっはっはっ、精神攻撃は常套手段だよホームズ」

「お前はどこの犯罪界のナポレオンだ」

 

 苛ついた様子でホルスターにドンナーを仕舞うハジメと、冷酷な微笑を浮かべたままのシュウジ。

 

「ハジメさん……ユエさんとティオさんは……」

「美空もいない、よ?」

「南雲君、龍っちは!! 龍っちはどこに行ったの!?」

 

 誰よりも早く〝罠〟を見抜いた二人に、恐る恐るシア達が近づいていった。

 

「転移する時、別の場所に飛ばされたんだろうな。僅かに、神代魔法を取得する時の記憶を探られる感覚があった」

「で、擬態能力のあるあのスライムに記憶を植えつけて、後ろからドーン! ってね」

 

 こめかみに人差し指を当て、銃を撃つような仕草で説明するシュウジ。

 

 その言葉に、あれが本物ではないと確信したシア達は安堵の溜息を吐いた。

 

「シュー君、どうして分かったの?」

「ん、これのおかげさ」

 

 香織の投げかけた質問にシュウジは腕輪を見せた。

 

 シュウジが()()()をした時の為に付けられたはずのそれに、女性陣のみならずハジメも訝しげにする。

 

「実はこいつに、雫の腕輪と一定以上離れると信号を出す仕掛けをしといてな。で、見た目こそ一緒だったが明らかに〝アレ〟からじゃなく、別の場所から信号が出てたからすぐに確信できた」

「お前……そんなことしてたのか」

「なんというか……シュウジさんらしいというか……」

「非常、識?」

「ハッハッハッ、それは褒め言葉じゃないぞーウサギ」

「びっくりしたぞ北野……まさかお前が、雫を……」

 

 沈鬱とも、苦々しげとも取れるような表情で、光輝はシュウジに複雑そうな目を向けた。

 

 幼馴染に成り済ました魔物への怒りと、それを瞬時に看破したシュウジへの劣等感が入り混じっていた。

 

「俺が雫を見間違えると思うか、()()()?」

 

 あえて名前を呼び、冷たい声で言うシュウジ。

 

 その目には、雫に擬態したスライムへの絶対的な殺意を込めている。

 

「……いや、お前に限ってそれはないな」

 

 即答した光輝に、鈴や香織は随分と驚いた目で見た。いいや、正確にはハジメ達もだ。

 

 正直、そのやり方を除けばシュウジの事を認めているなど、それこそ光輝本人ですら信じ難い。

 

 であれば無論、そんな内心を他者が知るわけもなかった。

 

 シュウジも面食らったような顔をした。が、咳払いしてどうにか答える。

 

「いくら見た目や仕草を真似ようと、あいつかどうかくらい分かる。それこそ腕輪なんてなくてもな。そうだろハジメ?」

「ああ。なんとなく思ったんだ、〝これは俺のユエや美空じゃない〟ってな」

「ああ、そうなんだ……」

 

 自信満々に惚気る二人。見分け方を聞こうとしていた鈴はガックリと肩を落とした。

 

 

(鈴は……鈴は龍っちが入れ替わってたこと、気がつけなかった)

 

 

 内心では、恋した男が偽物かどうかも分からなかった自分に落胆していた。

 

 まあ、あの二人のそれは本能というか特殊技能に近いものなので仕方がないのだが、恋する乙女心は複雑である。

 

 そんな自分の気持ちを飲み込んで、鈴はテクテクと厳しい目で樹海を見ていたシュウジに歩み寄ると袖を引いた。

 

 

「ん? どうした谷ちゃん?」

「あの……どうして龍っちとみそらんは見抜けたの?」

「んー、一度偽物ってわかればあとは魔法で調べ放題だからな。俺、こう見えてもそういうの得意なんだぜ?」

「そうなんだ……えっと、その。ありがとね、北野っち」

「……ははぁ〜ん?」

「な、何!?」

「いやなんにも。おいハジメ、銀シャリあるっけ?」

「ないぞ」

「ちょっと! 北野っち!」

「逃ーげるんだよぉ⤴︎!」

 

 真っ赤な顔でうがー! と可愛らしく怒る鈴が掴みかかろうとするも、シュウジは笑って受け流した。

 

 その様子を眺めていたハジメだったが、ふと自分の両隣にウサギコンビがいることに気がついた。

 

「お前らもまだ何か聞きたいことがあるのか?」

「……私が拐われても、気が付いた?」

「そりゃ当然」

「じゃあ、私はどうですか?」

 

 不安げに瞳を揺らし、ウサ耳をピコピコとさせながらシアはハジメの顔を見上げる。

 

 その顔を見たハジメはんー、と唸りながら空を見上げて考えた。

 

 なまじ同じように問いかけたウサギが即答されたこともあり、シアは緊張の面持ちで答えを待つ。

 

「まあ、一目見てすぐには無理じゃないか? シュウジみたいにそういう魔法を豊富に知ってるわけでもないしな」

「そう、ですか……」

 

 ここで同じように答えればいいものを、正直に言うのがハジメクオリティー。

 

 ちなみに内心では「シアならわかる」と思ってたりするが……それを表に出さないのもまたハジメクオリティー。

 

 肩を落としたシアをちらりと見て、ウサギはそっと人間の耳の方の耳元に顔を寄せた。

 

「……でも、遅かれ早かれ必ず気付いてくれる」

「っ! た、たしかにそういう意味にも……!」

「? なにを話してんだ?」

「なんでもないで〜す♪ うふふ〜」

「……おかしなやつだな」

「じゃあじゃあ私は!?」

「おいやめろ香織、これ以上は暑苦しいからくっつくな」

 

 急に上機嫌になったシアを訝しみつつも、ハジメの口元は微笑ましそうに弧を描いていた。

 

 

(……やっぱり一番未熟なのは俺、か)

 

 

 和気藹々としているシュウジ達を見て、立ち尽くしていた光輝は悔しそうに歯噛みした。

 

 

(一番最初に取り乱したのは俺だった。それに、ずっと一緒にいた幼馴染に異変が起こったことに気が付けなかった……)

 

 

 今さら必要以上に、ハジメやシュウジのことを羨んだりはしない。

 

 しかしそれでも、ひしひしと自分の中で劣等感が強くなるのを感じた。

 

 それを抑えようと試みるものの、光輝とてまだ高校生だ。中々大きな感情を割り切るのは難しい。

 

 

 

 

 

──ワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイ

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 バッと周囲を見渡す光輝。

 

 しかし、シュウジ達以外には誰もいない。

 

「今のは幻聴か……?」

 

 もしかしたら、自分が暗いことを考えたことによって発動した大迷宮の罠かもしれない。

 

 

 

 突然聞こえた声をそう結論付けた光輝は、この後の攻略で失敗を巻き返そうと思うことで気持ちを整理した。

 

 いかに勇者(笑)とはいえ、オルクスでの一件から前回の襲撃を経て、多少は成長している光輝だった。

 

 それから少しして、全員のテンションが落ち着いたところで改めて攻略を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、女性陣は気をつけてね。この迷宮後の方で〝アレ(G)〟出るから」

「「「「え"っ」」」」

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

完全に最近ハマっているものの影響が光輝に出ている…

感想をくれると嬉しいゾ。
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