星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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勇者(笑)の魔改造が止まらないぜ。

シュウジ「やっはろー、シュウジだ。雫に化けるとはふてぇスライムだ」

ハジメ「的確にユエ達を選ぶあたり、絶対ここの解放者性格悪いぞ」

エボルト「そりゃ善人ばっかでも気持ち悪いだろ」

シュウジ「お前がいうと説得力しかないわ。で、今回は攻略だ。それじゃあせーの、」


三人「「「さてさてどうなる大樹編!」」」


映画で森の中のシーンとかって必ず心理的に追い詰められるよね

 三人称 SIDE

 

 

 

 ブゥヴヴヴヴヴヴヴ!!! 

 

 

 

 やけに耳障りな、まるで扇風機の羽が出すような音が響く。

 

 一つや二つではない。いくつも重なり合ったそれは、光輝たちが戦っている魔物の発する音だ。

 

「うぅ〜キモいよぉ〜! 〝天絶〟!」

「くっ、すまないが耐えてくれ鈴!」

 

 泣きべそをかきながら鈴が結界を張り、光輝が必死にロングソードで魔物に攻撃をする。

 

 それを素早い動きで回避するのは、ちょっとした幼児ほどもある〝蜂〟だった。

 

 強靭な顎と針の尾を武器に、騒音を発する超高速で動く羽で飛び回り、群れで襲いかかってくる。

 

 

 ギチギチと動く節々に黄と黒の体色、尾から溢れる緑色の毒液。女子高生の鈴からすれば本能的に無理なフォルムだ。

 

 ただでさえ巨大なので、光輝もかなり気持ち悪そうな顔をしながらどうにか応戦していた。

 

 

 

 だが、通常の魔物とは異なり見事な連携を行う蜂達は、そんな光輝達を翻弄する。

 

 すぐに生え変わる針をマシンガンのように飛ばし、光輝達の動きが止まると急襲、という流れができている。

 

 強力なアタッカーである雫と龍太郎がいないこともあり、かなりの苦戦を強いられている光輝と鈴だった。

 

「くそぉ! こいつら、まるで魔人族の魔物みたいだ!」

「アホ、逆だ逆。あいつらの魔物が迷宮の魔物に近くなってんだよ」

 

 

 ドパンッ! 

 

 

 思わず叫んだ光輝にツッコミながら、ハジメは光輝の背後を狙っていた巨大カマキリを撃ち殺す。

 

「おりゃぁっ!」

 

 その近くではシアがドリュッケンで、これまた巨大なアリ型の魔物を地面ごと粉砕している。

 

「はぁっ!」

 

 香織も負けじと、大剣と銀羽を駆使して光輝達が苦戦している蜂を数十匹も同時に全滅した。

 

「……スマッシュ」

 

 香織の攻撃で開いた穴にウサギが飛び込み、魔力収束型アーティファクト〝覇拳〟と〝翔脚〟で魔力弾を解放。

 

 桜の花弁のように散開した桃色の魔力弾が解放され、一気に五十以上の蜂が八つ裂きになった。

 

「ユエ達の居場所はわかるか?」

「いんや、どうやらバラバラに転移されたみたいだな。霧の効果で雫の腕輪の位置もわからん」

「そうか……」

 

 シュウジとてサボっているわけではない。

 

 ハジメと背中合わせになり、会話を交わしながら虫型魔物を蹂躙している。

 

 ハジメに負けないネビュラスチームガンの早撃ちと、カーネイジナイフの投擲は見事なものだ。

 

「くっ……!」

 

 その光景を見て、あまりに隔絶した実力差を感じた光輝は悔しげな顔をした。

 

「〝天絶〟! 〝天絶〟っ! もうだめ、押し切られちゃう!」

 

 なんとか踏ん張っていた鈴も、あまりの魔物の多さに弱音を吐いた。

 

 〝天絶〟は枚数が強みであり、強度こそ他の結界魔法に劣るものの、それでも易々とは砕けない。

 

 だが、オルクス表層の魔物などとは比べ物にならないスペックを誇る魔物の針は紙細工のように結界を破った。

 

 

 

 少し前までこの世界有数の強者であったはずなのに、まるでこの世界に来たばかりの頃に戻ったような感覚。

 

 それは焦りを生み、判断力を鈍らせ、結果的に鈴の余裕を奪って結界の展開を遅らせる。

 

 それによって少しずつ魔物の針が鈴と光輝に近くなっていき、じわじわと死の予感が忍び寄ってきた。

 

 

(俺が、俺がもっと強ければ!)

 

 

 外界からの危機的状況による焦りと同時に、心の内側から仄暗い感情が顔を出す。

 

 後ろで淡々と魔物を相手しているシュウジ達と自分達を見比べ、何度劣っていると思っただろう。

 

 

 

 オルクスの時も、王宮での襲撃も、せめて力があれば。

 

 

 

 強大な力を扱うことに酔わない心を、揺るがない信念を持つのが先だといくら思っても。

 

 

 

 そう思わずにはいられないのが、天之河光輝という人間だ。

 

 

 

 

 

──ワイソウカワイソウカワイソウカワイソウ

 

 

 

 

 

「……さい」

 

 

 

 

 

ヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイ

 

 

 

 

 

「……るさい」

 

 

 

 

 

ヨワイヨワイヨワイヨワイヨワ

 

 

 

 

 

「うるさぁあああああいッ!!!」

 

 激昂し、光輝はロングソードを振り抜いた。

 

 

ゴバッ! 

 

 

 すると、左肩付近から立ち上ったドス黒いオーラが剣に伝播し、無数の針となって飛び出た。

 

 それは的確に、かつ暴力的に視界を埋め尽くしていた蜂の魔物の頭部を貫き、殺し尽くした。

 

「え……」

 

 自分の知らない、自分の使った力に光輝は呆けた。

 

 鈴も驚いて光輝の方を振り向いている。致命的な隙だが、先ほどの攻撃を警戒して魔物達も一時的に後退していた。

 

 蜂の約半数を殺した針が消えるのと同時に光輝は脱力し、その場で崩れ落ちた。

 

「くっ……!」

「光輝くん!」

 

 かろうじて倒れることは防ぎ、ロングソードを支えに膝をついた光輝。

 

 

(なん、だ……今のは……!?)

 

 

 全身の血が沸騰するような感覚に、光輝は地面を見ながら洗い息を吐く。

 

 それを見て蜂達は、今が好機と殺到した。

 

 寸前に鈴が気がつき、慌てて結界を張り始めるが、到底間に合わない。

 

 

 ドパンッ! 

 

 

 あわや、動けない光輝と鈴が餌食になろうかという瞬間──赤い閃光が飛来した。

 

「「っ!?」」

 

 それは鈴を組み敷き、光輝に取り憑こうとしていた蜂の頭部を正確に撃ち抜く。

 

「動くなよ、谷口。天之河」

 

 思わず閃光のやってきた方を振り向こうとした二人に、ハジメが冷静に告げる。

 

 

 ドパンッ! 

 

 

 立て続けに、二度目の銃声。

 

 しかしてそれは六発の弾丸をほぼ同時に射出し、赤い雷光を纏って蜂たちを次々と撃ち抜いていく。

 

 それだけではなく、絶妙な軌道で放たれた弾丸は途中で互いにぶつかり、角度を変えて更に飛ぶ。

 

 

 超精密計算の上に成り立った絶技。

 

 

 それを目の当たりにして、動けない光輝達の目の前でハジメはガンスピンをしてリロードし、魔物を殲滅していく。

 

 

 

 結局、ものの一分もかからないうちに残った魔物は全て死骸に変わった。

 

 ドンナー・シュラークをホルダーに仕舞ったハジメは、硬直している光輝に呆れた目を向ける。

 

「おい天之河。何であんな力持ってんのか知らないが、後で倒れるような欠陥技なら無闇矢鱈と使うな」

「え、あ、ああ……」

「さて……」

 

 光輝から蜂の死体に目を移したハジメは、歩み寄った。

 

「チッ、この程度じゃ食っても意味ないな……」

「え"っ。南雲くん、これ食べるの? 正気……?」

「ああ、実は魔物を食うとな──」

 

 固有技能のことをドン引きする鈴に説明するハジメを尻目に、光輝は自分の手を見下ろす。

 

「……何で俺に、あんな力が」

 

 訳がわからない光輝は、なんとなしに左肩に手を置いてそう呟いた。

 

「………………」

 

 それを鋭い目で見ていた、シュウジに気がつくことなく。

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 蜂の魔物を筆頭に虫型魔物と交戦した後、シュウジ達は三十分ほど樹海を探索した。

 

「相変わらず視界が悪いな……」

「シュウジさん、本当にこっちで合ってるんですかぁ?」

「言ったろ、ネタバレは俺の趣味じゃあない。ただまあ、雫達には近づいてるはずだ」

 

 現在、腕輪の信号の探知機能を改良したシュウジの先導の下に一行は進んでいる。

 

 

(……早く雫と合流しねえとな)

《知識と実体験は違うからなぁ》

 

 

 いつものように冷静な面持ちのシュウジだが、実のところ内心では少し焦っていた。

 

 たしかに女神の知識によってこの迷宮の内容を知っているが、実際自分が体験するとまた違うものだ。

 

 そして例の一件以降、シュウジはある種雫の存在が最大の精神安定剤ともなっている。

 

 自分でも色々な意味で雫がストッパーだと自覚しているので、若干の不安を感じていた。

 

 

 

 無論、そんなみっともない内情を親友や、よりにもよって光輝の前でなど断じて見せられない。

 

 なので表にこそ出さないが、全力で複数の探索系魔法を使う程度には本気を見せていた。

 

「っ、来る」

「敵ですハジメさん!」

 

 と、聴覚に優れた二人が新たな敵の接近を告げた。

 

 即座に全員が意識を先頭へと切り替え、シュウジも探知魔法を維持したまま黒ナイフを構える。

 

「…………」

「おい勇者(笑)、魔物の餌にするぞ」

「っ! す、すまん」

 

 ずっと左肩を触ってぼんやりとしていた光輝も剣を抜いた所で、魔物が姿を現した。

 

 

「「「キキーッ!」」」

 

 

 勢いよく飛び出したのは、白くて小柄な魔物の群れ。

 

「こいつらか……」

「ちょっとでかいな。プロテイン飲んでる?」

「猿が飲むか」

 

 出てきたのは、外の樹海にもいる猿型の魔物だった。

 

 しかし一回り体が大きく、かつ棍棒や剣などを携えている。大迷宮製の強化型であるのは明らかだ。

 

「よし、じゃあ半分勇者(笑)と谷ちゃんの受け持ちな。あとは俺らでサクッと」

「了解」

「は、半分も!?」

「行くぞ鈴!」

「あ、ちょっと光輝くん!」

 

 あまり戦果を上げられていない光輝は、無駄にやる気を出して猿型の魔物に突貫した。

 

「てやぁあああっ!」

「キィーッ!」

「キキッ!」

「キャキャッ!」

 

 猿達はすぐさま散開して、光輝の袈裟斬りを避けた。

 

 追いついた鈴が結界を張り、背中合わせにガサガサと音を立てる周囲の木を見回して警戒する。

 

「ギャッ!」

「っ、そこか!」

「キィーッ!」

「っ、右からもっ!」

 

 背後からやってきた猿の棍棒を打ち返した瞬間、右上から剣が突き出されて咄嗟に首を捻る。

 

 間一髪で死を免れた光輝に猿達は悔しげに金切り声を上げると、再び樹々の中に逃げて移動を開始した。

 

「くっ、気を付けろ鈴! どこからやってくるか分からないぞ!」

「うん!」

 

 龍太郎がいない今、光輝と鈴はいつも以上に気を引き締めて戦闘をした。

 

 

 しかし、猿達は狡猾だった。

 

 

 二人の裏をかくようにトリッキーに動き回り、ヒット&アウェイの戦法を取ってきた。

 

 その予測できない動き方に二人は翻弄され、知能の高さでは先ほどの蜂以上に厄介な猿に振り回される。

 

 

 

「キィー!」

「くたばれ」

 

 

 ドパンッ! 

 

 

 一方ハジメ達はと言えば……まあ接戦すらしていなかった。

 

「キッ!」

「おっと、そういうのは俺の十八番だ」

「「ギッ!?」」

 

 特に、心理的に不安を煽る戦い方においてシュウジに猿達程度では敵わない。

 

 猿達以上に神出鬼没に現れ、嵌めたと思った猿達の首を一瞬で撥ねてまた消える、という動きを繰り返す。

 

 その他にも超パワーで粉砕するウサギコンビ、銀羽で動きを止めて大剣で両断する香織と、圧倒的だ。

 

「キ、キキ……」

「キッ!」

 

 敵わないと察した猿達は、鳴き声で意思疎通を図ると動きを変えた。

 

 ハジメ達から一斉に狙いを外し、もっと苦戦している光輝達に戦力を集中させることにしたのだ。

 

 

 

 スパンッ! 

 

 

 

 そうして一番弱そうな鈴を人質に取ろうとした訳だが……背を向けた瞬間、全匹の首が落ちた。

 

 空中に不自然に血が留まり、ポタポタと地面に落ちる。

 

 それは猿達の進行上に綿密に張り巡らされた、透明の糸だ。

 

「前方にご注意だ、エテ公ども」

「キッ……」

「キキキッ!」

 

 仲間達が惨殺されたのを見て、元から光輝達を襲っていた猿達は恐怖する。

 

 そして先ほどの猿達のように、互いに鳴き声と種族特有の繋がりのようなもので打開策を立てた。

 

「「「キッ!」」」

「な、なんだ!?」

「魔物が……!」

 

 突然逃げるように樹々に隠れた猿達に、光輝と鈴は訝しげに声を上げた。

 

 暫しの間、静寂が訪れる。

 

「……ん?」

 

 やがて、微かに聞こえたその音に最初に反応したのはシュウジだった。

 

 音のした方を振り返ったシュウジに、警戒していたハジメ達もそちらに武器を向けた。

 

 徐々に音が大きくなっていき、やがてそれが何かを引きずる様な音であることにシュウジ達は気付く。

 

「今度はなんだ……?」

 

 思わず光輝がそう呟いた瞬間、それは現れた。

 

「キ、キキッ!」

 

 出てきたのは、先ほどと同じ猿の魔物達。

 

 彼らは、武器の代わりに別のものを手に握っていた。

 

 そう、()()()()()()()()()()()()()()を。

 

「ッ! 雫っ!」

「おうコラアホ勇者、二度も引っかかるな」

「あべしっ!?」

 

 一歩踏み出した光輝の首筋に素早い手刀が見舞われた。

 

「あれって、もしかして……」

「また擬態ですか……?」

「ん、人質代わり」

 

 首を押さえてうずくまる光輝を尻目に、シュウジの言葉の意味を考えたシア達がハジメとシュウジを見た。

 

「ハジ、メ……」

「シュー……」

「「……………………」」

 

 全く本人と同じ声で弱々しく呼んでくる擬態した猿に、二人は光線でも出そうな目を向けている。

 

 シュウジ同様に偽物と看破しているものの、今にも爆発しそうな怒気を全身から放つハジメ。

 

 表情こそ普通だが、「あ、これあかん」と一発で分かるほど鋭角な殺気を振りまくシュウジ。

 

「ギギッ!」

 

 そんな二人に猿達は醜悪に笑うと、あられもない姿で傷だらけ(擬態)のユエと美空、雫を手放す。

 

 そうすると、殴りつけた。ボカッと。

 

 そして……

 

「助けて、ハジメ……」

「ハジメ、痛いよ……」

「シュー、お願い……」

 

 

 

ブヂッ! 

 

 

 

「「「「あっ……」」」」

 

 光輝以外の全員が、明確に聞こえたその音に声を上げる。

 

「キキキッ……キ?」

 

 笑っていた猿達は、ようやく気がついた。

 

 自分達に、この樹海そのものを飲み込まんばかりの殺気が向けられていることに。

 

 

 

《ブラックホール! ブラックホール!! ブラックホール!!! レボリューション!》

 

 

 

《フルボトル! ゴリラ!》

 

 

『さあ、終末を始めよう』

「一匹残らず殺し尽くす」

 

 

 数秒後、樹海の一角は消滅し、一帯は焼け野原と化した。

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

「えっと、もう平気ですか?」

「………………ああ。もう落ち着いた」

「よ、良かった……」

「よしよし」

 

 一キロに渡って樹海を破壊した二人は、どうにかシア達の取りなしで落ち着いた。

 

 ウサギに膝枕されているハジメがいつもの声で答え、シアと香織はホッと安堵の息を吐く。

 

 それからそっと、恐る恐るすぐ側を見た。

 

「……………………」

 

 カーネイジでぶった切って作った切り株に座り、無言で黒ナイフをジャグリングするシュウジ。

 

 はっきり言って恐怖の光景だった。話しかければナイフが飛んできそうで、誰も近づけないでいる。

 

 ちなみに手刀を受けただけの光輝は既に回復しており、鈴と一緒にシュウジに戦々恐々としていた。

 

「エボルトさんの呼び掛けで落ち着いたみたいですけど、どうするんですかあれ……」

「こんな時、ルイネさんがいればなぁ……」

「いないものは仕方ない」

「まあ、無理なこと言っても仕方がないだろ」

 

 コソコソと話し合うハジメ達。

 

 以前ならばルイネがいて、巧みに落ち着かせられたが……もう彼女はいない。

 

 仕方がなく、起き上がったハジメが近づいて軽く肩を叩いた。

 

「おい、いつまでしょげてんだ。らしくねえぞ」

「……ん、おお。だよな」

 

 ジャグリングを止めたシュウジは、やや硬い声で返した。

 

 

(八重樫のやつ、こいつの心をここまで掴んでたんだな……)

 

 

 ハジメは嘆息するしかない。どれだけ雫がシュウジにとって大事なのか分かるというものだ。

 

 そもそも、以前ならばあの程度の罠皮肉まじりにジョークを言い、平然と仕返ししていただろう。

 

「ったく、本当に八重樫のことに弱くなったよなお前」

「はは、こういう時だけは前の自分が羨ましいわ」

「グギャ」

 

 弱々しく笑うシュウジの肩にハジメの義手と、ザラザラとした手が置かれた。

 

「「……ん?」」

 

 シンクロした動きで右を見るシュウジとハジメ。

 

「ギャ?」

 

 すると、何? とでも言いたげに首を傾げたゴブリンのような魔物が切り株に座っていた。

 

「魔物っ!?」

 

 ビビリながらシュウジを見ていた光輝がいち早く気付き、剣を鞘から抜く。

 

 

 

 シュバッ! 

 

 

 

「うわらばっ!?」

 

 が、その瞬間飛んできた無数のナイフを避け、背後の木におかしなポーズで磔にされた。

 

「シュ、シュウジさん?」

「何を……」

 

 同じように飛び出そうとしていたシアと香織は、右手を振り切ったシュウジを困惑して見た。

 

 それとは裏腹に、ハジメは訝しげに……そしてウサギは静かな瞳で、ゴブリンモドキと見つめ合っているシュウジを見る。

 

「…………雫?」

「はっ!? 何言ってるんだ北野、ついにおかsんごがっ!?」

「光輝くーん!?」

 

 投擲された黒ナイフの柄頭が顔面にめり込み、光輝は気絶した。

 

 慌てて香織が治療に駆け寄る中で、誰もが驚愕の表情で見守る中ゴブリンモドキが動く。

 

 

 

 スッと暗緑色の手を肩から離したゴブリンモドキは、そのまま立ち上がってシュウジの頭に手を伸ばした。

 

「ギャッ」

「…………」

 

 そうすると帽子を取った。シュウジはなされるがままに、ゴブリンモドキを見る。

 

 ゴブリンモドキは、帽子に側面に飾られた月零石のブローチを外す。

 

 手の中に握りしめたそれを、胸に置いて。

 

 

「ギャ♪」

 

 

 醜い顔に笑みを浮かべた。

 

「雫っ!」

 

 シュウジは、ゴブリンモドキを抱擁した。

 

 ぼろい布に包まれた体を動かし、ゴブリンモドキはシュウジの背に手を回す。

 

 落ち着かせるように撫でる優しい手つきに、面食らっていたハジメ達は既視感を感じた。

 

「本当に、雫さんなんですか……?」

「ええっ、その魔物がシズシズ!?」

「ギャギャ」

「……なるほど、そうなったのか」

 

 問いかけるシアと驚く鈴に雫(?)はダミ声で答え、その反応で確信したハジメは腕を組む。

 

「きゃっ!?」

 

 その時、香織の悲鳴が聞こえた。

 

「ま、また魔物……?」

「ギャァ……」

 

 全員がそちらを見ると、尻餅をついた香織の目の前で、腰に手を当てたゴブリンモドキがため息をついている。

 

 やれやれとでも言いたげなその仕草にまた既視感を感じていると、ゴブリンモドキはハジメを見る。

 

「美空?」

「ギャッ」

 

 名前を呼んだハジメに答え、ゴブリンモドキはぐんと胸を張った。

 

 

 立て続けに、ガサガサと草陰から物音がして、身長140センチ程の小柄なゴブリンモドキが現れる。

 

「ユエ!」

「グギャ!」

 

 三度目だからか、確信を込めた声でハジメが言えば、新たに現れたゴブリンモドキは弾んだ声で反応した。

 

 そのままタタタッ! と走り出し、両手を広げたハジメの胸の中に飛び込んだ。

 

「ユエ、会いたかったぞ!」

「グギャギャッ!」

「美空、もちろんお前にもだ。来るか?」

「グギュゥ、ギャッ」

 

 抗議するように鳴いていたゴブリンモドキは仕方がない、と顔を左右に振って、ハジメに歩み寄った。

 

 

 

 ユエの上から被さるようにハジメと抱擁を交わすゴブリンモドキに、いよいよシアたちは混乱したのだった。

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

やっぱり最初は雫にしないとね。

感想いただけると嬉しいです。
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