ハジメ「俺だ。前回はユエ達と再会できたな」
シュウジ「てかあの二人もうくっついてもよくね?」
「まだだ……付き合ってない状態のイチャイチャを書くのだ……」
ハジメ「何か聞こえたな……」
シュウジ「まあ作者の性癖はほっといて。今回はトレントモドキ戦だ。それじゃあせーの、」
二人「「さてさてどうなる大樹編!」」
三人称 SIDE
龍太郎と
「これはまた、ベタなのが出てきたな」
「あれだ、カー◯ィだと序盤に出てくるアイツ」
「あー、わかる」
目の前に立ちはだかるその〝変化〟に、シュウジとハジメはいつものように呑気な会話を交わした。
「いやいやいやっ、こんな怪物を前になんで落ち着いてるんだ!」
一方、同様にそれを見上げた光輝は、すっかり板についたツッコミを炸裂させる。
一行の前に立ち塞がるもの。
それは……横幅十メートル、高さ三十メートルはあろうかという、顔のついた巨大な樹木。
オルクスにてハジメが見た、トレントモドキをそのまま巨大化・強化したような魔物が屹立しているのだ。
先ほどまでは沈黙していたのだが、シュウジが発した「あ、これ中ボスね」の一言により動き出した。
ここから先に行きたくば俺を倒せ! と言わんばかりに木葉を揺らすトレントモドキに、光輝や鈴は圧倒される。
「じゃ、これ勇者(笑)達の受け持ちで」
「ええっ!?」
「ま、また俺達か!?」
「考えてもみろ天之河。俺たちが
親指で巨大トレントモドキを指すハジメに、光輝と鈴、龍太郎は想像する。
容赦なく銃火器をぶっ放すハジメ、ブラックホールで飲み込むシュウジ、魔法で消し炭にするユエ、etcetc……
結果、自分達の出番がなくなることを確信した光輝達は、腹を括った表情で各々の武器を構えた。
「私も参加したほうがいいかな?」
シュウジの頼みで雫は参加せず、同様に魔物化してステータスが激減している龍太郎に、心配そうに香織が申し出る。
『いいや、香織は回復だけ頼む。俺に任せとけ、あんな野郎へし折ってやる!』
スマホのオーガリ◯ガルでそう言った龍太郎は、一歩前に出た。
首から下げている唯一無事だったドッグタグを握り、異空間からドライバーを出す。
それを腰に装着し、同じように取り出したスクラッシュゼリーの蓋を開けるとドライバーに装填して……
『変身!』
レバーを下げた。しかし何も起こらなかった。
「……?」
シーンと静寂し、首を傾げた龍太郎はもう一度レバーを下ろす。何も起こらなかった。
「龍太郎……?」
「龍っち、何やってんの……?」
「ガ、ガァ!?」
あれ!? と言いたげに龍太郎は何度もレバーを下ろすが、うんともすんとも言わないドライバー。
なんともシュールな光景に、トレントモドキも攻撃していいのかわからず、ただ枝を揺らしている。
『シュー、あれってどういうこと?』
「あー、肉体が変質してネビュラガスと反応しなくなったんだな。こいつは要改良だ」
流石のライダーシステムも、変身者の魔物化までは想定していなかったのである。
「ほれ坂みん、これ使え」
『おっ、サンキュ』
異空間から予備のツインブレイカーを二つ、それといくつかのボトルを取り出し、龍太郎に放るシュウジ。
受け取った龍太郎はツインブレイカーを両手に装備して、トレントモドキに向き直ると「グラァ!」と叫んだ。
「いくぞ、龍太郎! 鈴! 香織!」
「ガゥ!」
「うんっ!」
「傷の回復は任せて!」
雫が欠け、龍太郎は魔物化と、やや変則的なパーティーでの戦闘が始まった。
オォオオオオ!
木の幹を震わせて咆哮したトレントモドキも、応戦するために自らの力を使い始める。
鞭のようにしなり、予測させない軌道を描いて振るわれる巨大な枝。刃物のように舞い散り、飛来する葉。
砲弾のように撃ち込まれる木の実や、地面から唐突に飛び出してくる槍のような鋭い切っ先の根。
トレントモドキの攻撃は非常に苛烈であり、これまでの蜂や猿とはまた一味違った。
「くっ! こいつ、強い!」
「グォラァッ!」
「ううっ、攻撃が重いよぉ!」
光輝が遊撃、龍太郎がツインブレイカーとボトルを使って重い攻撃をいなし、鈴がそれをサポートする形で戦う。
特に負担の大きい龍太郎は、普段グリスの堅牢な装甲に丸投げしていた分のダメージも蓄積していく。
「〝回天〟」
が、ノイントの肉体になったことにより魔力が量、質共に向上した香織の魔法によって、瞬く間に治癒された。
『サンキュー香織! オラァ!』
《シングル! ツイン!》
《シングル! ツイン!》
右のツインブレイカーにロックとローズのフルボトル、左のもう一方にガトリングとハリネズミのボトル。
計四本のボトルを装填した龍太郎は、まず右のツインブレイカーをトレントモドキに向けた。
《ツインブレイク!》
鎖型のエネルギーと薔薇のツタ状のエネルギーが射出され、トレントモドキの枝を封じる。
『からのぉ!』
《ツインブレイク!》
立て続けに解放された左のツインブレイカーから、鋭角になった弾丸状のエネルギーが乱射された。
木の実を飛ばして迎撃しようとするトレントモドキだが、いかんせん物量が違いすぎる。
瞬く間に無数の弾丸に飲み込まれ、トレントモドキに数え切れないほどの弾が着弾した。
オォオオオオ……!?
「どうだ!?」
思わず叫んだ光輝の前で、着弾時の爆炎が晴れていく。
すると……流石フルボトル二本分の力と言うべきか、太い枝の一部がごっそりと抉れていた。
「よし!」
「やった! さすが龍っち!」
『お前ら油断すんな! まだ動いてるぞ!』
思わず歓喜する二人に警戒を飛ばし、龍太郎がトレントモドキを睨みつける。
そんな龍太郎の胸に渦巻く懸念通りに、身を削られたトレントモドキは予想外の行動を開始した。
オオォオオオオオオオ!
「そんな、枝が……!」
「再生していく……!」
驚く三人の前で、瞬く間にトレントモドキの枝が元に戻っていった。
このトレントモドキもまた魔物。そして〝樹海現界〟という魔法こそが、この魔物の固有魔法だった。
それを応用して自分の体を復元したトレントモドキは、殺気を孕んだ雰囲気で光輝達を睥睨する。
そして、更に激しい攻撃を始めた。
より重く、精密になっていく攻撃に光輝は攻めあぐね、鈴は結界を維持するために魔力を振り絞る。
龍太郎がボトルを様々な組み合わせで使ってどうにか攻撃を繋いでいるが、明らかに劣勢だった。
「くっ、このままじゃ押し切られちゃうよ!?」
「くそっ!」
突き出された木の根を結界で受け止め、光輝が切り裂きながら悪態をつく。
『光輝!』
そこで、ロックフルボトルとローズフルボトルで枝葉を弾いていた龍太郎がスマホから叫んだ。
『俺が時間を稼ぐ! 〝神威〟を使え!』
「な、それはダメだ! 詠唱が長すぎる!」
光輝は自分の技量とトレントモドキとの戦力差、二つの観点から冷静に分析をして叫び返す。
『香織の回復でどうにか凌いでるが、このままじゃジリ貧だ! 試す価値はある!』
「だが……」
確かに、〝神威〟は光輝の使える技のの中で最も威力のある攻撃だ。〝覇潰〟と併用すれば超威力を生み出せる。
が、果たして逆転するほどの可能性はあるのだろうか。この怪物に効果があるのか。
光輝は我ながら疑わしかった。今剣を握る自分の腕がひどく弱々しいとさえ思える。
ここ数ヶ月の経験が、必要以上に光輝から自信を奪っていた。
(俺は、俺なんかじゃ……)
『光輝、俺を信じろ!』
「っ!」
塞がりかけた光輝の思考に、龍太郎の言葉が突き刺さった。
改めて顔を上げると、必死に結界を維持している鈴と、怪我も厭わず戦う龍太郎がいる。
(俺は──俺は、龍太郎達を信じないのか?)
一瞬だけ、後ろを振り返る。
シュウジの隣でこちらを心配そうに見ている雫と、ハジメの周りにいるユエや美空、ティオ達。
姿が変わっても、言葉を交わすことができなくても変わることのない信頼関係。
シュウジもハジメも、迷宮に入ってから一目で恋人が偽物か否かを見抜いた。
雫に至っては幼馴染なのに、光輝は見抜けないどころか、誰よりも早く刃を向けてしまった。
(わかってる、俺の信頼も信用も一方的だった。悔しいが、北野達ほど強い絆じゃない……それでも!)
それでも、自分だって龍太郎達を信頼して、背中を預けてきたのだ。
それを証明するためにも、光輝は決断した。
「……わかった。頼む!」
『応!』
「うん!」
光輝は、その場でロングソードを掲げて硬直する。
意識を、聖剣(笑)より力の集約が難しいロングソードで〝神威〟を発動することに専念させる。
無論トレントモドキが見逃すはずもなく、木の枝や葉刃、木の実の砲弾が降り注ぐ。
「ここは聖域なりて 神敵を通さず! 〝聖絶〟!」
『やらせるかぁ!』
《シングル!》
見越していた鈴が障壁を、それより一歩前に立った龍太郎がプロペラ状のエネルギーを掲げた。
高速で回転するプロペラが枝や木の実などの重い一撃を防ぎ、それを抜ける葉刃を鈴の障壁が抑える。
「グォォオオ!」
「龍っち!」
その立ち位置である以上、大部分の攻撃を請け負う龍太郎は一瞬にして傷だらけとなった。
すぐに香織が治癒するが、焼け石に水と言わんばかりにトレントの攻撃は休む暇を与えない。
悲痛な叫びをあげる鈴に、振り返った龍太郎はオーガの顔で不敵に笑う。
『言ったろ……お前は、俺が守るってよ』
「龍っち……」
こんな場合だというのに、鈴は胸が高鳴った。
「なあハジメ、このコーヒー甘くね?」
「ああ、完全無糖のブラックのはずなのにな」
『二人とも、わかってやってるでしょ』
雫が呆れた目で見れば、テーブルや椅子などを出して寛いでいた二人は笑った。
『お前は全力で結界を張れ! キツイのは俺が持ってってやる!』
「っ、あとで絶対休んでよね!」
その言葉通り、正面からのみならず、側面からやってくる重撃にすら龍太郎は全力で対応した。
グッとこみあげるものをこらえながら、鈴はヒビの入っていく結界をすぐに貼り直して踏ん張り続けた。
「グゥオオオオ!」
「っぁああ!!」
雄叫びをあげる二人。魔力と精神力を集中させながらも、光輝はそれを見ていた。
(くそッ! 俺にもっと、もっともっともっともっともっと力があったら!)
歯ぎしりをしながらも、詠唱を続ける光輝。
──ヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイ
それを邪魔するように昏い声が木霊し。
(そんなこと……わかってるんだよッ!)
激憤しながら、ついに光輝は詠唱を完了した。
ロングソードに膨大な魔力が迸り、太陽のごとく燦然と輝く刀身を見上げ、グッと光輝は柄を握る。
「二人とも、いくぞ!」
光輝の合図に、二人がすぐさま防御体制を解除して退く。
それまであと一歩というところで止まっていた攻撃が、光輝を殺さんと殺到した。
ヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイヨワイ
「っぁあああああああああ!!」
それを前にして、脳漿に染み渡るような声を振り払うように光輝はロングソードを振り下ろす。
「〝
戦意、闘志、焦燥──そして嫉妬。
全てを込めたその純白の輝きに──解放の瞬間、ギュボッ!! と音を立て何かが入り込んだ。
柱を横倒しにしたような本流が、赤黒く染まっていく。そして針のような形に収束し突き進んだ。
射線上の地面や木の根などを削り、巨大な〝杭〟がトレントモドキをその攻撃ごと飲み込んだ。
「っ、はぁ、はぁ……や、やったか……?」
ごっそりと何かが抜けたような虚無感に襲われながら、光輝は敵を見上げる。
「フラグ立てやがった……」
「…………」
『シュー? カップにヒビが……』
「ん、ああ……」
シュウジ達も見守る中、光と共に土煙が晴れる。
そこには……思わず呟いたハジメの信頼とは裏腹に、龍太郎の一撃以上に削られたトレントモドキ。
「へえ、思ったよりやるな。あいつあんな強かったか?」
『私も驚きよ……光輝、いつの間にあそこまで……』
「……やっぱり感染してるか」
「ん? なんか言ったかシュウジ?」
「いんや、そろそろ復活しそうだなと」
シュウジの言葉に、光輝は慌ててトレントモドキを注視した。
すると、少しずつだが半分以上削れた体を〝樹海現界〟で直しているところだった。
「うそ、だろ……」
自分が
「ま、ここらが潮時かね」
「そうだな。天之河もさっきの一撃の時に無意識かわからんが、〝覇潰〟も使って魔力も空っけつだろ」
「それに、この迷宮のコンセプトはつまるところ仲間の絆。あそこまでやりゃあ大丈夫だねぇ」
『龍太郎達もそろそろ苦しそうだし、そうしてあげてちょうだい』
「仰せのままに、お姫様」
全くもって歯が立たないと思っていたが、思いの外善戦したので十分だろうと判断する二人。
回復こそされているものの、精神的に消耗している龍太郎と鈴も見て、シュウジがカップを置いた。
「よし、じゃあハジメ回収頼む」
「了解」
「へっ? う、うわぁ!?」
「わわっ」
「グオッ!?」
手早くクロスビットで三人を回収し、シュウジが立ち上がってトレントモドキに歩み寄った。
既に損傷の六割を回復していたトレントモドキは、新たに現れた敵に迎撃体制を取ろうとするが……
「じゃ、削れろ」
瞬時、シュウジの手に形成された黒く脈打つ赤い鎌に根元近くまで刈り取られた。
ズゥン、と思い音を立てて後ろに倒れるトレントモドキ。たった一瞬の決着に光輝達はポカンとした。
エボルトから受け継いだ毒物生成の派生技能〝纏毒〟が付与されたそれにより、トレントは再生できない。
「ほい、伐採終了。楽な仕事だったな」
「一撃……俺たちがあんなに苦戦した相手を、一撃で……」
『やっぱ規格外だな……』
「あはは。鈴、自信が打ち砕けそう……」
落ち込む三人の肩に雫が手を置いていく中、ハジメ達はいたって平然とした顔をしていた。
なんともあっさりと終わったことに微妙な雰囲気が漂っている中、突如メキメキという音がする。
「っ、まだ再生するのか……?」
光輝の呟く通りに、毒に塗れた切り株の下にある地面が蠢く。
やがて、切り株をどかして地面から木が生え、文字通り再生するように巨木に成長した。
トレントモドキに酷似した見た目の木は、しばらく沈黙した後に幹を左右に割き、洞を作り出した。
「さあ、行こうぜ。次のステージだ」
振り返ったシュウジの言葉に従い、ハジメ達は諸々片付けて移動しだした。
最後の回復を済ませた光輝達も追随し、最後にシュウジが中に入った瞬間……入り口が閉じていく。
覚えのある展開に今度はうろたえず、完全にしまってから足元に現れた魔法陣に呆れすらした。
「基本転移なんだな……」
「そう。ちなみに次の試練もある意味ばらけるから気をつけてな〜」
核心に触れないシュウジの忠告に、しかしハジメは傍にいたユエと美空、ついでにティオをグッと抱き寄せた。
無意味だとしても、無力に近い三人をもう一度失うなど、ハジメとしては面倒だし……何よりありえない。
『ふふ、男前♪』
『……ハジメ』
『う、うう……急に優しくされると困るのじゃ』
さりげない気遣いに喜ぶ三人。
同じように変異している雫は……同様に、忠告したはずのシュウジと手を繋いでいる。
『また別れるんじゃなかったの?』
「ん、まあ……なんとなくな」
『そう、なんとなくね』
ふっとゴブリン顔で微笑みながら、雫は手を握り返した。
その雰囲気に触発されたか、シアとウサギが「私も」とハジメに飛びかかった瞬間。
魔法陣が莫大な光を発し、洞の中を塗りつぶした。
読んでいただき、ありがとうございます。
さて、この迷宮で一番楽しいところだ。
感想カモーン!