シュウジ「はろー、俺だ。前回は試練が終わってみんな目覚め始めたな」
ハジメ&雫「シュウジ(シュー)?」
シュウジ「おっとやべえ、あっちの世界での内容が台本でバレた!ってことでにーげるんだよぉー!」
二人「待てぇ!」
シア「やれやれ、何やってるんだか……今回は前回の続きですぅ。またあの二人がイチャイチャしてますぅ。それじゃあせーの、」
四人「「「「さてさてどうなる大樹編!」」」」
三人称 SIDE
「で? お前らのはどんな感じだったんだ?」
ある程度の人数が起きたところで、ハジメがそう切り出した。
洞の中は、シュウジが設置した雷○虫モドキを入れたカンテラによって照らされている。
「……あのハジメさん、なんで私とウサギさんのウサミミをそんなにモフモフと?」
「気持ちいい……でも、不思議?」
「ん、ああ。実は俺の世界じゃ、お前らにウサミミがなくてな。ただのシアとただのウサギだった」
「はぁ……別に私がシアなのであって、ウサミミが私なわけでは……」
「それは緊急事態。早急にウサミミ成分をハジメに補充させるべき」
「ウサギさん!?」
珍しく深刻な表情で言うウサギにシアが悲鳴をあげ、ハジメ達は笑った。
その後、ハジメは詳しく自分の見せられた世界について説明した。
この世界に召喚されることなく、されどユエ達の加わった上での平和で幸せな、そんな世界。
……最後に出会った、あの老翁のことは言わなかった。言っても理解できないだろうとも思ったからだ。
無論のこと、メインであったシュウジの醜態についても話した。
「ぶふっ、弱いシュウジさん……朝起きれなくて怒られるシュウジさんって……!」
「あははっ! 学校のトイレでトイレットペーパが切れてSOSって、あははははっ!」
「……くふっ」
「ふふ……」
結果はこれである。女性陣がもれなく笑いをこらえていた。
「よぉーし、今日の晩飯は逆ロシアンルーレットたこ焼きだ。俺の食うやつ以外全部激辛にしてやる」
あまりに笑うためか、わりと本気で反撃をしようとするシュウジであった。
「で、ユエは?」
「ん……昔の世界が続いてた。裏切られず、ハジメを婿に迎えて、十二人の子供に恵まれた」
「早すぎだろ!? ていうか1ダースかよ!」
「私はそこまではいかないけど、ハジメと二人でお父さんの店を引き継いで切り盛りしてたかな……あ。時々エボルトがお父さんと入れ替わってコーヒー淹れてた」
「「地獄じゃねえか」」
『なんだとコラ』
順々に、それぞれの体験したものを明かしていく。
雫は大学生になり、生活力がないシュウジとマンションで同棲していて、存分に甘やかす世界。
ユエは先ほど述べた通り、叔父に裏切られず、国も滅びず、ハジメ達と子供に囲まれた世界。
ウサギは全ての戦いが終わり、オルクスの隠れ家でここにいる全員、さらにホムンクルス達と共に暮らす世界。
シアは、家族が誰一人として死なず、ハジメ達と別の出会い方をして、弱いままに共にいた世界を。
「確かにあれも一つの理想でしたけど……けど、違うんです。必死に頑張って、がむしゃらに追いすがってハジメさん達についてきたことを否定したくなかったんです」
「シア、お前……」
「守ってやるって笑うハジメさんも、心配しないでって抱きしめてくれるユエさんも、お姉ちゃんがそばにいるって言ってくれたウサギさんも良かったです。でも、弱さに安住するような生き方じゃ、皆さんと一緒にいる資格はないですから!」
にこやかに言い放つシアを、三人がひしっと抱きしめる。
出会った頃のシアが今の自分を見たら、きっとまるで違うことに驚いただろう。
(ホント変わったなぁ……いい女になったよ)
特にハジメは、自分の中にユエ達とはまた違う形の愛情が膨らんでいくことがわかった。
これはもう誤魔化せないなと、後ろにいる
しばらく抱き合って、やがて離れる。そうしたところで、不意にシアが表情を暗くさせた。
「ああでも、一つだけ現実であったら良かったのにって思ったんですよぉ」
「それって?」
「……うちの家族」
ビクッとシュウジが震えた。
「みんな穏やかで、誰一人としてヒャッハーって叫びながらリストブレイドもディスクも飛ばしてなくて……ああ、いい光景でしたねぇ」
「あ、あのーシアさん?」
「なんですかこのド悪魔」
「ひでぇ!」
ジロリと睨むシアに、しかし何も言い返せないシュウジである。
たじろぐシュウジに自然と視線が集まっていき、次の話す人間が雰囲気的に決まっていく。
「で、お前は?」
「ん、ちょうどいい。次はシュウジ」
「正直、一番気になりますねぇ」
「シュウジ、話して?」
四人と美空、そして隣にいる雫。座ってうなだれている光輝以外の全員からの視線。
一瞬、あの世界で体験した無数の死が脳裏をよぎる。
息を詰まらせ、それに雫が訝しげにするが、シュウジは寸前で取り繕って笑顔で返事した。
「そりゃあ現実と変わらず、俺がお前らを華麗に守っていく世界を……」
「嘘だな」
「ん、嘘」
「絶対に嘘」
「嘘ですっ!」
「嘘だし」
「これはさすがに……嘘かしらねぇ」
「あっるぇー?」
まさかの全否定である。
ここまで容赦なくぶった切られるとは思っておらず、困惑するシュウジにきつめの視線が送られる。
「本当のところは? 早めに白状すれば刑は軽くてすむぞ」
「いやあの、だから俺が……」
「あ?」
「ハジメ達をいろんなシチュエーションで庇って死ぬ世界を繰り返してましたハイッ!!!」
ハジメの睨み一発で撃沈した。ここ数ヶ月、本当に身内に弱くなった男である。
驚くほどペラペラと語られた内容に、全員の目に殺意が宿った。
あっやべえと思うシュウジだが、時既に遅し。
『シュウジ』
「はひっ」
『正座』
「喜んでッ!!」
躊躇なく正座した。無駄に潔い男だった。
そして説教が始まろうかというその瞬間、未だ残っていた繭の一つが輝き始めた。
「ぬがぁああああ! ご主人様の折檻はそんなに生温くないわァッ! 一から出直して来るんじゃな!」
繭を正拳突きでぶち破って目覚めたのは……残念ながら、変態だった。
●◯●
「「「「「「「…………」」」」」」」
光輝以外の七人の目線の温度が氷点下まで落ちる。
今の発言だけで、どんな夢を見ていたのか完全に把握した。だからこそ侮蔑の眼差しを向けた。
その視線を受けてブルリと震え上がったティオは、歓喜の表情を浮かべてハジメ達の方を振り返る。
「ご主人様よぉ〜! ちゃんと戻ってきたのじゃぁ! 愛でておくれ〜!」
飼い主を見つけた犬のごとく、ハジメへと駆け出すティオ。
やっと再会できた! と言わんばかりの笑顔で走りよる美女。一見するとご褒美だが……
ドパンッ!
ハジメの返答は、やはり発砲だった。
的確に眉間を撃ったゴム弾によって、空中で後方三回転宙返りをしながら落ちるティオ。
ハジメは無言で歩み寄り、ピクピクと痙攣している背中をグリグリと踏みにじった。
「この駄竜が。俺に夢の中で何させてた?」
「アハァン! これじゃ! 頑張って仮初の世界から帰ってきたというのに、出迎えが発砲からの踏みつけ! 飴など一切ない鞭のみ! これぞ我が生涯の主人なのじゃ〜!」
「果てろ、クソ駄竜」
「アババババババババッ!!!」
〝纏雷〟を発動した義手で頭を鷲掴み、全力で赤雷を食らわせるハジメ。
白煙を上げながらバタリと力尽きたティオは、それはそれは幸せそうな表情をしていた。
「まったく、あの世界のご主人様は不甲斐なかったのじゃ!」
その後、ダメージゼロで復活したティオは聞いてもないのに夢の中のことを語り始めた。
滔々とサドっ気が足りないと語るティオは、とてもこの試練が提供する理想の世界を味わったとは思えない。
ハジメはうんざりした表情で、懇々と女性陣に説教されてぐったりしていたシュウジに近づいた。
「なあ、あれどういうことだ?」
「バナナをよこせ……それで答えてやる」
「お前はどこのゴリラだ。で、あれどう見ても試練に反してるが」
「ティオさんの変態性を迷宮も測れなかったんだろ」
「この世のどんな理由よりもくだらない理由を教えてくれてありがとう」
シュウジの言葉は正解だった。
この世界でも群を抜いたティオの変態性は、大迷宮をして推し量ることが適わなかったのだ。
具体的にティオの好む「お仕置き」と「ご褒美」を与えられなかった迷宮の敗北だった。悲惨である。
「あ、次は白っちゃんだね」
「む、結構遅かったな」
などと話しているうちに、残っていた三つの繭のうち一つが輝いた。
琥珀が消え、起き上がった香織はティオを放置して傍らに近付いてきたハジメ達を見上げる。
脱出できたことを再確認してホッと安堵の息を吐き、それから一人ずつ顔を見て……
「あ、あぅ……」
そして、ハジメと目が合った瞬間に顔を真っ赤に染め上げて俯いた。
さすがにそんな反応を取られるとは思っておらず、驚くよりも惑いを覚えたハジメは香織を見た。
「香織、どうした?」
「あ、ち、違うのハジメくん! ちょっと、その何というか、とにかくハジメくんがどうこうってわけじゃなくて!」
「いや、別にいいんだけど……どうせ夢が関係してるんだろ? どんな夢だったんだ?」
「ど、どんなって、それは……あぅあぅ」
赤い顔のまま、言葉にならないうめき声あげて両手を振り回す香織。
いつになく取り乱した様子に疑問符を浮かべるハジメ達。
だが、付き合いの長い雫と察しの良すぎるシュウジ、なんだかんだで深い仲の美空は気がついて苦笑した。
「むっつりスケベ」
「んなぁっ!」
そして美空は、無慈悲であった。
「む、むっつりスケベじゃないもん!」
「じゃあ私にしたことハジメに教えるね」
「だ、だめぇ!」
「ちょっとkwsk」
「ハジメくんっ!」
今度は腕を振り上げる香織に、ユエ達も遅れて夢の内容を理解して、何とも言えない顔をした。
「……なるほど。ハジメとあれやこれやしてた」
「多分。美空もいた、よ?」
「はわわっ、エッチです!」
「うぅ〜〜!」
顔を両手で覆う香織は、どうやら
随分と美味しい、あるいは甘酸っぱい夢を見ていたらしい香織を美空がからかう中、ハジメは一堂を見渡す。
「さて。これで俺達のメンバーは全員クリアできたわけだ」
「そこで鬱になってる勇者(笑)を除いてな」
シュウジの嫌味に光輝は一瞬だけ顔を上げ、しかしすぐに俯いた。
(……傷跡にあの力、そして夢の世界──心を支配する邪なる神。もしもあの世界で〝あいつ〟を見たとしたら……やはり、あの獣の正体は)
鋭く睨むシュウジに、いつものことだろうとハジメは判断して、残る二つの繭を見る。
「あとはあいつらだが……まあ、最終的には琥珀をぶっ壊すことを前提にしばらく待ってみるか」
「そうだな。元金ピカ勇者が出れたんだ、その価値はある」
リーダーである二人の判断に、ユエ達も同意するために頷いた。
●◯●
理想世界を脱出するため、魔力をほぼ使い切ったハジメは空腹を申し出た。
そのため、二人が出てくるまでのんびりと食事をしながら待つことになる。
ユエとのやりとりを聞いたシアが同じように甘え、美空にずっとからかわれていた香織がハジメに泣きつき。
シュウジがここにいる人数分腕輪で
そんな風に待つこと、約二時間。
「そろそろ助けるか?」
「んー、そうだな。先に進みたいし、ちょっくら助けてくるわ」
シュウジが立ち上がり、雫と香織が悲しそうな顔をする。
光輝がクリアできたのだ、あの二人のことも信じていた二人も、ハジメ達も少し残念だった。
お仕置きの影響か、少し怪しい足取りでシュウジが一歩踏み出した……その時。
「あ、見て! 琥珀が……!」
「本当だわ……! シュー! 南雲くん!」
「へえ。やるねぇ坂みん、谷ちゃん」
「ああ、思ったよりガッツあるな」
輝きを放ち、少しずつ溶けていく繭。
雫と香織が手を握り合って歓喜の表情を浮かべ、その光に光輝がふらりと少しだけ顔を上げる。
シュウジ達も見守る中、完全に消えた繭の跡から二人が起き上がる。
「ん……ここは、迷宮か?」
「ふぁ……あ、あれ? 鈴、確かマイホームに……」
さすがと言うべきか、元に戻った自分の体を見て龍太郎はすぐに現状把握を始めた。
一方、まだ少し寝ぼけているのか、鈴はキョロキョロと周りを見て……隣にいる龍太郎を見つける。
そして、顔を真っ赤にする。
「りゅ、龍っち!?」
「ん? おお、谷口。お前もちゃんとクリアし」
「んにゃぁあああああっ!」
「へぶしっ!?」
鈴が座った状態から跳躍し、思いっきりジャンピングビンタをかました。
カクンと光輝達三人の下顎が落ちる。さすがにその展開は予想しておらず、シュウジ達も固まって。
そんな中、勢い余って仰向けに倒れた龍太郎の上に乗った鈴は、実に挙動不審な動きをしていた。
「なななななんんっ、なんっで龍っちが!?」
「なんでも何も、俺は俺なんだが……つーか軽いなお前」
ここは重い、というのがテンプレなのだが……龍太郎にしてみれば、鈴はあまりに軽かった。
その発言に
「うっさいうっさい! 鈴は、鈴はまだ──坂上鈴になんてならないんだからっ! ……………あっ」
しまった、と先ほどの香織のように茹で上がった顔をハッとさせ、口元を両手で隠す鈴。
しかし、吐いた言葉はもう戻らない。
その証拠に、既にシュウジ達の表情は野次馬のそれへと変わりつつあった。
「へぇー、ふぅーん」
「な、何さシズシズ!?」
「いーえ、なんでも。ねー香織?」
「ねー雫ちゃん」
ニッコニコな顔を見合わせる二人。
春の訪れを確信するとともに、二人はてっきり恵里のことを夢見るかと思っていたのでホッとしていた。
二人だけではない。美空やユエ、シア達……女性陣が軒並み同じ顔をしている。
鈴の発言は、年頃の女子にはあまりに格好の獲物だった。
「あぅあぅあ……!」
「……なあ、鈴」
「ふひゃいっ!」
慌てふためく鈴に、龍太郎が股の下から声を掛ける。
「坂みんがまた天然ジゴロな発言するのに二万ルタ」
「乗った」
『乗った』
「お前もかよ」
既にパニック状態の思考でありながら、鈴はどうにか龍太郎を見下ろす。
すると、龍太郎は照れ臭そうにそっぽを向いて、頬を指でかきながら。
「さっき、まだ魔物の時にああ言ったけどよ。俺もまあ、なんだ……同じような夢見てたわ」
「ッ────!」
声にならない悲鳴をあげた鈴は、思考がオーバーヒートを起こして気絶した。
ぺしゃりと倒れ込んだ鈴を龍太郎が受け止めた瞬間、部屋の中央に魔法陣が出現した。
あまりにベストタイミングな出現の仕方にユエ達が息を呑む。
「美味しいものを見させてもらったところで、次のステージだ」
「ああ。まあなんだかんだで全員突破だ、この調子で最後まで行くぞ」
不敵に笑った二人が拳を軽く打ち付けあった瞬間、魔法陣の光が爆ぜた。
光輝はクリアはしたものの、なんか事故的な扱いでいい気がする←おい
読んでいただき、ありがとうございます。
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