星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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更新するごとにアクセス数が下がっていく…仕方がないとわかっていてもつらたんです。
二日連続更新です。

シュウジ「ほいほい、あらすじのお時間…っておい、これヤバくないか?ハジメ絶望し切ってんじゃん」

エボルト「いい状態とはいえんだろうな。最後の心の支えを自分のせいで失ったとは、ずいぶんな悲劇だ」

ウサギ「キュッ!(我が生涯に一片の悔いなし!)」

エボルト「あ、そう。まあとにかく、このウサギを失ったハジメはどうなるのか」

シュウジ「それじゃあせーの…」

二人&一匹「「「さてさてどうなる迷宮編(キュキュッ)!」」」


変貌

 

 

  そうして、どれだけの時間泣いていただろうか。

 

 

 

  いつしか、涙も声も枯れ果てて、もはや掠れたものしか出なくなっていた。どうやらそれは、感情も同じようで。

 

「………………………………………………………」

 

  項垂れていた僕は、無言で蹴りウサギの亡骸を地面に下ろす。そうすると這うように移動して、投げ捨てたナイフを拾ってきた。

 

  そして、そのナイフで……ゆっくりと、蹴りウサギの皮を剥ぎ始めた。皮肉にも、シュウジのサバイバル教育が役に立つ。

 

  無機質な心境で丁寧に皮を剥ぐと、首を落とし、四肢を胴体から切り取って解体する。そうしてようやく、準備が整った。

 

「……………」

 

  ナイフを置くと、なんの調理もされていない、血の滴る足を持ち上げ……そしてそのまま口の中に入れた。

 

  最初に感じたのは、強烈な獣臭さと、むせ返るような血生臭さ。思わず吐き出しそうになるが、グッとこらえて咀嚼する。

 

  案外、蹴りウサギの肉は柔らかかった。味は最悪だが、我慢してすべて噛み砕くと飲み込む。

 

  すると今度は、久しぶりに食べ物を放り込まれた胃がキリキリと悲鳴をあげた。けれど、これまでの飢餓感と比べたらなんでもない。

 

  胃痛を無視して、どんどん蹴りウサギを食べる。時々吐き戻しながら、涙を流しながらかつて友だったものを咀嚼する。

 

  喉が詰まれば、石の液体で流し込んで、また食べる。食べながら、脳裏に蹴りウサギとの記憶を思い浮かべながら。

 

  楽しかったことを沢山話した、調子に乗って文字を教えた。蹴りウサギは、いつも静かに僕の話を聞いてくれた。

 

  その記憶全てが、一口肉を口に押し込むごとに一つずつ赤く錆びて朽ちていく。もう、心はヒビだらけになっていた。

 

 

 ビキッ!!!

 

 

「ーーッ!ガァッ!?」

 

  そうして涙とともに肉に食らいついていると、突如全身を激しい痛みが襲った。

 

  まるで体の内側から何かに侵食されているような、おぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。

 

  そういえば、魔物の肉は猛毒と同じだったか。魔石から流れる魔力を直接扱い、肉体を強靭にし固有魔法を使うからか、その肉は毒そのものなのだ。

 

  このままでは全身が砕けて死ぬな、とどこか冷静に分析しながら、苦痛に耐えつつ液体を啜る。すぐに治癒の力は働いた。

 

  瞬く間に苦痛は消えていくが、しかし次の瞬間また襲ってきた。それを煩わしく思いながら、ハザードレベルにより上がった痛みへの強さで耐える。

 

「ぐ、ぐぅ……!」

 

  肉の毒で破壊して、液体の力で治す。まるで筋トレをした後起こる超回復を、何百倍ものスピードで何度も経験しているような感覚だ。

 

  体の至る所から鳴るミシッ、メキッという音を聞くこと、しばらく。ようやく本当に痛みが消え、安らぎが訪れる。

 

「………何だったんだ?」

 

  不思議に思いながら、ふと長くなった髪をいじる。すると視界に入る髪が、真っ白になっていることがわかった。

 

  驚いて手を離せば、右腕がふた回りほど太く、筋肉質になっていた。よく見れば、うっすらと赤黒い線が何本か浮き出ている。

 

  シャツを捲ってみると、腹筋が六つに割れており、さらにそこにも何本か赤黒い線が浮き出ていた。

 

  それに心なしか、これまで感じていた不快感が消えている気がする。体に力がみなぎり、軽くなった。

 

  不思議に思いながらも、まあどうでもいいやと無感情に切り捨てて、また蹴りウサギの肉を食べようとする。

 

「ーーう"っ!?」

 

  だが、強烈な吐き気に襲われて、口元を押さえた。嘔吐感を抑えようとするが、堪えきれず地面に吐き出す。

 

 

 ベチャッ……

 

 

  すると、ミンチになった肉とともに、口から何かの塊が零れ落ちた。それが出た途端、スッと吐き気が収まる。

 

  気持ち悪い口内を液体で洗い流すと、自分の吐き出した塊を見た。それはまるで固まった溶岩のような黒ずんだものだった。

 

  手にとって観察してみると、うっすらとその塊の中に何かがあることが見て取れた。

 

「……なんだろうこれ」

 

  とりあえず、地面に叩きつけてみる。すると放射状にヒビが入り、瞬く間に塊は砕けてしまう。

 

  そして、その塊の中から姿を現したのは……白い、なんの装飾もないエボルボトルだった。なんで僕の中からこんなものが。

 

「……そういえば、エボルトはもともとラビットエボルボトルは、元いた世界の人間の体内から精製したって言ってたっけ」

 

  ならきっと、それと同じなんだろう。ネビュラガスの影響なのかなんなのかしらないが、別にどうだっていい。

 

  白いエボルボトルを拭うと、ポケットに突っ込んでまたウサギの肉を食べ始める。ただひたすら、無心に。

 

  十分もすると、頭と骨を残してすべて食べ終えた。念のため、もう一度液体を飲んでおく。そうすると〝錬成〟で頭と骨を埋め、墓標を作った。

 

「……さて」

 

  魔物の肉を食べたせいでかなりの苦痛を感じることになったわけだが、それは一体僕にどんな効果を発揮したのか。

 

  とりあえず、立ち上がってみる。幸い穴ぐらは初期の頃からかなり広くなっていて、ただ立つだけなら問題ない。

 

  すると、目線が以前とかなり違った。僕の身長は165センチ、そこから目算すると、だいたい10センチは伸びている。

 

  まあ明らかに骨も砕けてたし、強制的な超回復みたいなことをしたせいで無理やり伸びたのだろう。

 

「……で、次はこれか」

 

  血で真っ赤になった右手を見る。グッと力を込めると、またあの赤黒い線が浮き出てきた。気持ち悪いな。

 

「……とりあえず、ステータスプレート見てみようか」

 

  懐からステータスプレートを取り出してみると、そこにはこう表示されていた。

 

 

 =============================

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:5(HL:4.6)

 天職:錬成師

 筋力:20(700

 体力:20(1500

 耐性:20(600

 敏捷:20(1300

 魔力:20(900

 魔耐:20(1700

 技能:錬成・魔力操作・胃酸強化・闘術・脚術・空歩・乱撃・加速(特定条件下で発動)・言語理解

 =============================

 

 

「……ステータスが上がってる?」

 

  それに、なぜか括弧が外れかけていた。ハザードレベルも上がっているし、レベルも8だったものが5まで下がっている。

 

  何より……技能欄にある、〝空歩〟という技能。これは恐らく、蹴りウサギの使ったあの空間を蹴る技。

 

  蹴りウサギは、その血肉や謎の白いエボルボトルに留まらず、自分の力まで僕にくれたのだ。頬を涙が伝って行くのがわかる。

 

  ステータスプレートを握りしめながら、僕はズルズルと座り込んだ。そして体育座りになり、膝に額を押し付ける。

 

  僕は、禁忌を犯した。〝南雲ハジメ〟という存在を確立する、最後のブレーキを手放した。もう、後戻りはできない。

 

  またしても、どんどん無気力な気分になっていく。南雲ハジメは、もう死んだ。今の僕はその抜け殻だ。

 

 

 

 バキッ

 

 

 

  その証拠に、心が真っ二つに砕ける音が僕の中でやけに大きく響いたのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

  蹴りウサギを食べ……いや、喰ってから、体感時間で四日ほど。

 

  僕はあの日以来、ずっと同じ体勢のまま頭の中で止まっていた思考を動かしていた。考えるたびに、何かが失われていく感覚を覚えながら。

 

  もう、石の液体を飲むのはやめた。だが高いハザードレベルとウサギを食ったことで強靭となった体は、あまり空腹も痛みも訴えない。

 

  あるのはただ、思考だけ。極限の中で最大の存在を失ったことにより、何かが変わって不必要な感覚を切り捨てていた。

 

「……なぜ、僕ばかりこんな目に?」

 

  もう何百回、何千回と繰り返した問いを口に出す。されど、答えは一つしかない。僕が弱かったからだ。だから奪われた。

 

  なら、強くなればいい。その方法もわかっている。だが〝南雲ハジメ〟の残りカスが、現状維持を望んで未練がましくそれを思考の隅に追いやる。

 

  そしてまたわざとぐるぐると疑問を循環させていると、二日くらいすると収まっていた飢餓感が復活してきた。

 

  もうどこにも、食糧はない。液体を飲むのもやめた。このままではそう長くないうちに死ぬだろう。

 

「……いっそ、それもいいかもしれないな」

 

  諦めたように笑いながら、口に出して〝死〟を肯定する。けれど割れた心の隅で、〝南雲ハジメ〟が〝生〟を願い叫ぶ。

 

  今、僕の心境は二つに割れていた。冷静に状況を判断し、〝死〟を望み始めた自分と、真面目に生きようとあがこうとする自分。

 

  ここ数日は、冷徹な自分が心の大部分を占拠している。しかし少し前から、生きようとする意思を押し込めるのではなく、取り込み始めた。

 

  すなわち、それまでの己を〝死〟なせて、新たな自分に〝生〟まれ変わるという、それまで逃げていた選択。

 

  ようやくそこに目を向けたとき、ふつふつと冷たくなった心に淀んだものが生まれ出した。

 

  それはまるでマグマのように、数日ぶりに一つになった心を熱し、溶かし始める。そして黒く染め上げていった。

 

「……なぜ僕だけが苦しまなくてはいけない。なぜ僕だけが奪われなくてはいけない」

 

  僕が一体、世界(おまえ)に何をしたというのだ。いいや、何もしていない。この身に降りかかる全ては理不尽であった。

 

 

 

 神は平穏を奪った。

 

 

 

 クラスメイトは希望を奪った。

 

 

 

 爪熊は腕を奪った。

 

 

 

 そして弱い僕が、友を奪った。

 

 

 

  思考は加速する。必死に守ろうとした白いものは真っ黒になっていく。新たな自分の誕生の、カウントダウンが始まった。

 

  奪うものとはなんだ。それは敵だ。ならば神も爪熊もクラスメイトも、弱い自分自身も、僕から奪うものは全て敵だ。

 

  ならばなぜ僕は敵に奪われた。弱かったからだ。焦りや怒り、憎しみが油断を誘い、僕を弱くした。

 

「それなら、そんな感情はいらない」

 

  それまであった淀んだ感情を切り捨てる。そんなものにいつまでもこだわってたって、弱いままで奪われるだけだ。

 

 

 

 

 

 キンッ。

 

 

 

 

 

  そうして悪感情を取り除いた瞬間、すっと自分を縛っていた重りが消える感覚がした。これでいい。不要なものを切り捨てたことで一つ、強くなった。

 

 それなら、次だ。

 

「なぜ、僕は……()()、強くあることを望む?」

 

  問いかけを口に出すことで、思考を明確にする。僕が強くなりたい理由。奪われたくない理由は、なんだ。

 

  その回答は一つしかない。生きたいからだ。どんなたいそうな思考を並べたって、結局そこに帰結する。

 

「……ハッ、滑稽だな」

 

  こんな簡単なことを認めるのに、数日も無駄にした。所詮僕は弱い自分に、動かないことに甘んじていたに過ぎない。

 

  それなら、生きたいとただそれだけを望むのなら。感情も願いも決意も信念も、そんなくだらないものは全てどうでもいい。

 

 

 

 

 キンッ、キンッ。

 

 

 

 

 

  それを選択した瞬間、面白いように消えていく、消えていく。自分の中にあった暖かい感情が消えていく。

 

  頼もしい親友の後ろ姿も、最愛の少女の笑顔も、クラスメイトの微笑みも、共に鍛えた仲間のあたたかみも、なにもかも業火にくべる。

 

  さあ、また強くなった。生きるために必要なものを鋭く研ぎ澄ますために、それ以外のものを糧にする。

 

「では、俺が生きることを邪魔するのはなんだ?」

 

  邪魔をするということは、すなわち奪おうとしてくるということ。僕から奪おうとするものは、すべからく敵だ。

 

 

 

 キンッ、キンッ、キンッ。

 

 

 

  捨てるたびに、強くなるたびに、心の中で槌の音が鳴り響く。不要なもので燃える業火で、砕けた心が鍛え直されていく。

 

「じゃあ、敵はどうすればいい?」

 

  そして俺は、最後の問いを口にした。そしてそれもまた、答えは単純明快。

 

「敵は……奪うものは、()()()()()

 

  そう、殺してしまえばいいのだ。そこに憎悪も怒りもない。ただ俺が生き残るために、奪おうとする奴から奪うだけのこと。

 

  強くいるというのは、生きるというのは、そういうことだから。俺はそれを、ウサギの犠牲によって心の髄まで理解した。

 

  さあ、生誕の時だ。俺の生存を脅かすものは全て奪うもの、すなわち殺すべき敵。この世の全ての敵を……

 

「殺して、喰らってやる」

 

 

 

 

 

 キンッ!

 

 

 

 

 

  口に出した瞬間、槌の音がひときわ大きく響いた。同時に、それまで俺の中で居座っていた弱い自分が消え、新たな俺が目を覚ます。

 

  すなわち理不尽を強いるもの、生きるのを脅かすものを全て容赦無く排除する、そんな自分。

 

「……それじゃあ早速、ここを出るか」

 

  言いながら弱っていた体を動かし、液体が溢れた器を乱雑に持ち上げて中身を飲み干す。すると活力が戻ってきた。

 

  口元を拭って笑うと、立ち上がって〝錬成〟を使う。そして自ら閉ざしていた外への道を開いた。

 

  〝錬成〟をしながら道を歩んでいき、そしてついに外に出る。そこは閉じこもる前と変わらず、静かであった。

 

「あったあった」

 

  地面に転がっていたブレードを拾う。他の魔物に持っていかれたかと思っていたが、幸い落とした時と同じ場所にあった。

 

  土を払って、問題なく使えるのを確認するとホルスターに叩き込む。そして獲物を追い求め、新しい俺の第一歩を踏み出した。

 

 

 

「殺してやる」

 

 

 

 そう、もう一度呟きながら。

 

 

 ●◯●

 

 

  生まれ変わってから数日。俺はこの数日の間、あの穴ぐらを拠点に様々なことをこなした。

 

  穴ぐらの外を探索して魔物を殺すことで食料を獲得し、生存する確率を上げるために今ある己の武器を磨いていく。

 

  まず食料だが、蹴りウサギの同族やあの二尾狼を〝加速〟技能とブレード、シュウジ直伝の足技を駆使して殺して手に入れている。

 

  その結果、魔物を食うとその魔物の持っている技能……要するに、固有魔法を手に入れることができるとわかった。

 

  例えば二尾狼を食うと、〝纒雷〟という技能を獲得できた。文字通り魔力による赤い雷を纏う技能だ。二尾狼は尻尾から飛ばしたりしてたが、俺はそれだけだ。

 

  そして魔物を食う時 、〝胃酸強化〟の技能は大変役に立っている。蹴りウサギの時ほど、苦痛を感じなくなったのだ。あいつには感謝しっぱなしである。

 

  技能を獲得できると知った俺は、次に〝魔力操作〟の技能を練習し始めた。これは文字通り、詠唱いらずで直接魔力を使うことができる。

 

  そう、原則いかなる魔法も詠唱は必須。唯一の例外が魔物であり、魔物たちはこの力があるから喋れなくても固有魔法を使えるのだ。

 

  これを使いこなすことで、〝纒雷〟も〝錬成〟も、何も口に出さずとも使えるようになった。わざわざ魔法の名前を言って敵にバレる心配がなくなったわけだ。

 

  魔力操作を自在に使えるようになると、今度は石の液体をフル活用して〝錬成〟の鍛錬を始めた。

 

  体術もブレードも強力な手札ではあるが、やはり俺の一番の武器は〝錬成〟だ。これがあったから爪熊から逃げられた。

 

  何千回と修練をするうちに、〝鉱物鑑定〟という派生技能が芽生えた。これは鉱物を手にとって使うと、ステータスプレートにその鉱物の名前と説明が出るものだ。

 

 例えば緑光石を調べると、

 

 

 ==================================

 緑光石

 魔力を吸収する性質を持った鉱石。魔力を溜め込むと淡い緑色の光を放つ。

 また魔力を溜め込んだ状態で割ると、溜めていた分の光を一瞬で放出する。

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  こんな感じである。その有用性を知った俺は、近くにある鉱物類を片っ端から鑑定して調べるようになった。

 

  たしか地上で読んだ本では、王国直属の鍛治師ですら数人しか持ってないとかいう特殊な技能とか。さらに俺は詠唱もいらないので、かなり使いやすい。

 

  そうやって色々と鑑定しているうちに、二つの鉱石を見つけた。

 

 

 ==================================

 タウル鉱石

 黒色で硬い鉱石。硬度8(10段階評価で10が一番硬い)。衝撃や熱に強いが、冷気には弱い。冷やすことで脆くなる。熱を加えると再び結合する。

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 燃焼石

 可燃性の鉱石。点火すると構成成分を燃料に燃焼する。燃焼を続けると次第に小さくなり、やがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性があり、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵する。

 ==================================

 

 

  この二つを見つけた時、俺は全身に電流が走ったように衝撃を覚えた。

 

  この燃焼石という鉱物、使い道次第では爆薬になる。それをうまく使えば、現状のどの武器より強い武器を作れるかもしれない。

 

  というわけで、すぐにウサギがいた頃の無駄な〝錬成〟、そしてここ数日の修練で相当の習熟度を見せている〝錬成〟を使いあるものの制作に取り掛かった。

 

  そして何千回もの失敗と試作を繰り返し、寝食も忘れてひたすら没頭し、ついに……

 

「完成した……!」

 

  思わず喜びの滲んだ声をあげながら、〝それ〟を掲げる。

 

  〝それ〟は、音速を超える速度で最短距離を突き進み、絶大な威力で目標を撃破する現代兵器。

 

 全長は約三十五センチ、タウル鉱石を使った六連の回転式弾倉。長方形型のバレル。弾丸もタウル鉱石製で、中には粉末状の燃焼石が圧縮して入れてある。

 

 すなわち、大型のリボルバー式拳銃だ。しかも、弾丸は燃焼石の爆発力だけでなく、固有魔法〝纏雷〟により電磁加速されるという小型のレールガン化している。

 

  その威力は最大で、対物ライフルの十倍である。しかもブレードを解体して、ボトル装填装置をグリップに内蔵したので、ラビットエボルボトルを使えば、さらに早くすることも可能だ。

 

「お前の名前は、今から〝ドンナー〟だ。さて、狩りに行こうか」

 

  携帯につけていたストラップの紐を使ってネックレスにした、蹴りウサギの魔石と白いエボルボトルを首にかけ、早速外に出る。

 

  すると穴から出てすぐ、たまたま目の前に蹴りウサギの同族がいたので、そいつに向けて引き金を引いた。

 

 

 ドパンッ!!

 

 

  すると、凄まじい音を立てて目にも留まらぬスピードで弾が射出され、蹴りウサギを粉々に粉砕した。

 

「いい出来だ。さて、エボルボトルの方はどうだ?」

 

  一度ドンナーをホルスターにしまうと、ポケットからラビットエボルボトルを取り出してスロットに挿入する。

 

 

《ラビット!》

 

 

「よし、問題なく認識されたな。威力の方は……」

 

  もう一度ホルスターから引き抜くと、銃口を近くの壁に向けて引き金を引いた。

 

 

 ドッガァァァァァンッッ!!!

 

 

  すると次の瞬間、耳をつんざくような轟音を立てて壁に大穴が開いた。まるで無理やり抉り取ったような痕だ。

 

「ハ、ハハハ。これなら、あの化け物も……脱出だって……やれる!」

 

  俺は思わず獰猛な笑みを浮かべながら、狩った蹴りウサギを手に持って、穴ぐらへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

  さあ……準備が整い次第、宿敵討伐と行こうか。

 

 

 

 

 




ドンナー強化です。変貌する過程が少し違いましたね。
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