星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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前回投稿ミスった…

遠隔授業で引きこもりすぎてやばい。

ハジメ「俺だ。前回はとんでもない目にあったな」

シュウジ「やっすいアニメのサービス回みたいだったな。てかあの二人くっつけよ」

龍太郎&鈴「「うっさい!」」赤面

エボルト「おっと、怖え怖え。ていうか俺の出番少なすぎない?」

シュウジ「この章は基本三人称に固定してるから仕方ないネ。で、今回は引き続きちょっとエロい回。それじゃあせーの、」


五人「「「「「さてさてどうなる大樹編!」」」」」


快楽の試練。某尼さんはお帰りください

 三人称 SIDE

 

 

 

 数十分ほど経過して、ようやく炎が収まっていく。

 

 

 

 地面に残っているタールにしがみついているもの以外の全てが消え、後には何も残らない。

 

 それもシュウジがブラックホールを移動させ、樹海だった焦土を一周させて消していく。

 

 後には、ハジメがシュヴァルツァーによって壁を作り、難を逃れた大樹のみがポツンと立っていた。

 

「よし、だいたい焼き尽くしたな。シュウジ、残りは?」

「ん、地面に潜んでたのは全部喰った」

 

 ずっと無言だったシュウジが、自分の足を指差す。

 

 ブーツから地面に向け、根を張るようにカーネイジが伸びていた。

 

 ハジメが見る前でそれはブーツの中に引いていき、最後に口の形になってゲップと満足そうな声を上げた。

 

 それを見届け、掲げていた右手をぎゅっと閉じると、ブラックホールも徐々に小さくなって消滅した。

 

 炎が収まるまでの間話さなかったのは、カーネイジとブラックホールの操作に意識を操作していたためだ。

 

「さて、見事に焼け野原なわけだが……一応確認しておくか」

 

 ハジメがシュヴァルツァーと蜘蛛型ゴーレムを併用し、ほとんど黒焦げになった樹海を探索する。

 

 シュウジもカマキリを飛ばし、かつ地面にステッキを突き立て、全員を囲える範囲のエ・リヒトを展開した。

 

「しばらく確認に時間を使うから、休憩しててくれ。念には念を入れる」

「よっと」

 

 ハジメが呼びかけ、シュウジがいくつかのベンチを異空間から召喚する。

 

 そして自分も雫と二人掛けのソファに座り、同じように取り出した椅子をハジメにも提供した。

 

 片や無数のアーティファクトの同時操作、片や数えきれない魔物の統率と超硬度の結界を維持。

 

 なんとも飛び抜けた二人に、休息を言い渡された面々はもう苦笑いするしかない。

 

「……」

「ん?」

 

 しかし、どっかりと椅子に座り込んだハジメは不意に後ろを振り返る。

 

 するとそこには、香織によってすっかりスライムを取り除かれたユエと美空が立っていた。

 

 二人は無言で膝をつき、ハジメに抱きついてくる。

 

 いつものことかと、見ていた誰もそれを気に留めなかったが……

 

「はぁ、はぁ……ハジメ、なんか変だよ……」

「すごく……ハジメが欲しい……」

「は? いや、こんな場所で何を……二人ともどうした?」

 

 二人の息が荒い。

 

 吐息は火傷しそうなほど熱く、瞳が蕩け、絡みつくような腕はハジメの体を地味に弄っていた。

 

 どう見ても発情している二人に、異変に気がついたハジメは誰より情報を持っているシュウジを見た。

 

 狼狽えている雫も隣から見つめれば、つー……と冷や汗を流したシュウジは引き攣った笑みを浮かべた。

 

「やっべー、ちょいと疲れて忘れてたぜ」

「おいシュウジ、これは一体なんだ?」

「簡単に言やぁ、十八禁のスライムだったんだよ」

「チッ、そういうことかよ……!」

 

 ようやく意味を察したハジメは、ぐいぐいと体を押し付けてくる二人をなんとか押しとどめた。

 

 あの魔物そのものが強力な媚薬のような効果を持っており、それをモロに受けて発情しているのだ。

 

 もしやシア達も……と後ろを見る。

 

「ハジメさん、私……私っ!」

「シア、落ち着いて」

 

 二人と同じように薔薇色に頬を上気させ、劣情で霞んだ瞳のシアをウサギが抑えている。

 

 途中から月の小函(ムーンセル)を使い、スライムを弾いていたウサギは比較的影響が軽い。

 

 しかし完全に防げたわけではなく、珍しく表情を険しくしていた。

 

「ハジメくん、美空……ううん、ダメダメっ!」

 

 香織は耐え難い欲望に身悶えしながらも、体内に染み込んだ粘液を〝分解〟してなんとか抗う。

 

 ティオはぼーっと突っ立っており、とりあえず対象から外して、光輝より先に龍太郎と鈴を見るハジメ。

 

 正直なところ、光輝よりも互いに好意がダダ漏れしているこの二人の方が個人的に心配だったのだ。

 

「畜生っ……治り、やがれ……!」

「龍、っち……!」

 

 無意識か、それとも互いに離れたくなかったのか、まだ背負い背負われを続けていた二人。

 

 龍太郎が歯を食いしばって劣情に耐え、背後の鈴を襲うまいとしている。

 

 

 理性の外れ具合で言えば、鈴の方がまずいだろう。

 

 

 体を龍太郎の背中に擦り付け、身をよじっている。明らかに何かをこらえていた。

 

 なまじ好意を抱いているためか、心に決めた男にしか見せてはいけないような顔にすらなっている。

 

「坂上のやつすげえな……で、天之河は」

 

 視線を巡らせ……ハジメは目を剥いた。

 

 

「ぐ、ぅううう!」

 

 

 光輝は露出させた左肩に剣を当て、抜き身の刃を深く食い込ませていた。

 

 顔には滝のように汗が流れ、歯を食いしばり、誰も襲うまいと全力で自分を抑えているのだ。

 

 肩口からはドクドクと血が流れ出している。

 

 痛みで理性を働かせる、という常套手段ではあるが……

 

「まさか、お前がそれをするとはな……恐れ入ったよ、天之河」

 

 素直に、ハジメは小声で称賛した。

 

 もともとツッコミキャラとして株が上がっていたものの、先の試練を突破したこともある。

 

 これならばと、少しだけ最後まで攻略できるかと米粒ほどの期待を持った。

 

 

(あわよくば、王国にまた魔人族とかシュウジが相手した使徒がやってきた時、存分に戦ってくれそうだ)

 

 

 しれっと内心で人身御供の計画を立てながら。

 

「無事かの、ご主人様」

「ん、ティオか」

 

 と、そこでしっかりとした足取りでティオが歩いてきた。

 

 いまだに体を押し付けてくるユエと美空をどうにかあしらいながらも、平然としている彼女を訝しむ。

 

「強力な快楽で、魔法の行使すらできぬ。時間が経てば経つほど正気を失い、快楽のまま溺れることになるじゃろうな。全く厄介極まりないのう、戦闘が長引けばそれだけで全滅は必須じゃろうし」

「あ、ああ……」

「もし乗り越えたとして、そのあと仲間がいた時は交わり、関係が危うくなる可能性もある。まあ、そこがこの試練の狙いなのじゃろうが」

「お、おう……」

「厄介な連中だのう、迷宮を作った解放者達は……しかし、さすがシュウジ殿は判断が早い。自分と雫殿をいち早く守るとは」

 

 ティオが横を見れば、そこにいたシュウジは。

 

「ん、ああ。俺は一応試練を受けてるよ」

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 感心した様子のティオに、ひらひらと手を振って笑うシュウジ。

 

 え? という顔で二人と雫が見ると、シュウジは手を返し……べっとりとスライムが付着した甲を見せた。

 

「さっきカーネイジに食わせた時に、ちょちょいと一掴みね。まあこの程度なら余裕で抑えられる」

「お前……マジか」

 

 ユエ達ですらこうなっているというのに、ケロリとした顔でいるシュウジにハジメは戦慄した。

 

 

 今この瞬間も、シュウジの中では高ぶる本能が渦巻いている。

 

 隣にいる雫を滅茶苦茶にしたいと、自分のものにしてしまいたいという欲望が鎌首をもたげ、舌を出して涎を垂らす。

 

 

 それを抑えるのは、ありとあらゆる拷問への耐性をつけさせられたカインの記憶だった。

 

 その中には快楽への耐性もあり、この何倍も濃度の高い媚薬を飲まされてカインは鍛えられた。

 

 この世界の技能としてではなく、少しずつじわりじわりと、その体に痛みを伴って培われた精神力。

 

 

 〝憑依(ポゼッション)〟、という魔法がカインの世界にはあった。

 

 人間、動物、あるいは物体から記憶を読み取り、それを己の実体験として体感するための魔法だ。

 

 シュウジは幼少期、己を前世の自分……もっとも別人だったが……以上にするため、一度全て記憶を読み取ったことがある。

 

 

 一千年で培った知識、技量、魔法、信念。

 

 その全てを何年もかけて習得し、体に覚えさせることで全ての技術を体得した。

 

「……てことだ。こんな衆目に晒されたところで、俺が無様を晒すなんてことは、そうそうないぜ?」

「そうだな」

 

 その辺りのことを優雅に紅茶を飲みながら説明するシュウジには、ハジメも苦笑いだ。

 

 ティオが「すごいのう」と感心し、雫もジッとシュウジのことを見つめている。

 

「ま、今考えりゃおかしな話だったんだけどな。人間は死に、輪廻の輪に乗る時に全てを浄化される。なのに一千年もの記憶が残ってるってのは……そうなるよう、人為的に仕向けた時だけだ」

 

 〝抹消〟をカインから受け継いだシュウジは、存在の消滅ということをとても重視している。

 

 だからこそ作為的に作られた自分が……都合の良いように作られた人格が、なんとも気持ち悪いと感じるのだ。

 

「おかげでこうして助かってるんだ、悪いことばっかじゃな」

「えいっ」

 

 その時、突然雫がシュウジのスライム塗れの右手を取って自分の胸の間に突っ込んだ。

 

 空気が固まる。笑っていたシュウジも、話を聞いていたハジメやティオも、雫以外全員硬直した。

 

「ん、ふっ……!」

 

 その数十秒の間に雫の胸の間から粘液は染み込んでいき、雫は熱い息を吐く。

 

 時間が経過し、効力を強めたスライムは直ぐにその効果を発揮したのだ。

 

「確かに……これ、きついわね……」

「……いやいやいやいや!? 何やってんのお前!?」

 

 慌てて手の甲からカーネイジを出して粘液を包み込み、右手を引っこ抜くシュウジ。

 

 しかしもう手遅れだ。雫は潤んだ瞳でシュウジを見上げ、ガバッとその首に両手を回した。

 

「雫、なんでこんな……」

「あなたがやる、なら……私もやるの、は……当然でしょ……」

「えぇ……俺が守った意味が……」

「ふふ……ざーんねんでした……♪」

 

 快楽に飲まれそうになりながらも、いたずらげにウィンクする雫。

 

 しかし耐えがたいのか、雫は「あっ」と色っぽい声を出してシュウジの首筋に口を付けた。

 

 思わず変な声が出そうになるのを堪えると、雫はそのまま軽く歯を立てて甘噛みを始める。

 

「おね、ひゃい……ひばりゃく、このはは……」

「……ったく、困った女神様だ」

 

 突拍子もない行動にふっと呆れ笑いを浮かべながら、シュウジは雫の背中を優しく撫でた。

 

「愛じゃのう……」

「……いや、なんでお前も平気なんだよ」

「む? 妾も身体中に快楽が駆け巡っておるぞ?」

 

 などと言いながら、頬一つ赤らめていないティオにハジメは眼を細める。

 

 これだけ強力な快楽に身を侵されていながらも、意志の力一つで正気を保っているのだ。

 

 たとえ末期のド変態でも、そろそろどっかに頭から下を埋めて捨てようかと思っても、やはり誇り高き竜人族。

 

 世界こそ違うものの、同じ龍人のルイネも高潔だったのだ。彼女も根底は……

 

「妾はご主人様の下僕である! この程度の快楽、ご主人様から与えられる快楽(痛み)に比べればなんのその! 妾は決して尻軽ではないぞぉ!」

「そうっすか」

 

 やっぱりダメだった。

 

 目を見開いて拳を掲げるティオを、氷点下以下の目線で見るハジメ。

 

 その次の言葉は……

 

「さすがティオ……いやクラルスさんっすわ。マジパネェっすわ。とりあえず離れてくれます? 半径五百メートルくらい」

「はぅん! 敬語に族名のダブルコンボ! このタイミングで他人扱いとはっ……まずい、快楽に溺れそうじゃ」

 

 高潔な種族とはなんだったのか。

 

 一気にユエ達よりも酷くなったティオからハジメが目を逸らすと、シュウジが腹を抱えて笑っていた。

 

「ぶはははは! よくもまあここまで調教したよなぁハジメ!」

「八重樫、襲っていいぞ」

ひひほ(いいの)?」

「やめてくださいお願いします」

『よっわ』

 

 超弱いシュウジだった。

 

 動き出した雫の手にあれこれされているシュウジから目を外し、自分に抱きつく二人を見下ろす。

 

 が、シアも追加されていた。どうやらウサギの拘束を振り払ってやってきたらしい。

 

 アグレッシブなシアに思わず笑みを浮かべながら、改めて三人に呼びかける。

 

「ユエ、美空、シア。お前らがたかがこの程度の魔物にいいようにはされないだろ?」

「んっ……当然」

「当たり前、だし!」

「もちろん、ですよぉ〜……!」

 

 答えた三人もまた、雫のように必死に快楽に耐えていた。

 

「いいか、これは大迷宮が課したクソッタレな試練だ。お前らが屈するなんて有り得ない。見ろ。あのバカやド変態だって耐えてんだ。ここで万が一にでも負けたら、恥ずかしいぞ?」

 

 あえて挑発的に言うハジメに、情欲と言う名の熱に侵されながらも三人は不敵に笑う。

 

「シュウジ、解毒は?」

「で、できる……舌を動かすのやめろぉ!」

ひーひゃ(いーや)♪」

 

 試練というか、もうただイチャついている二人から早々に目をそらし、ハジメが三人を見る。

 

「というわけだが……どうする?」

「……必要、ない」

「いりません」

「このままでいいし」

「よし。それでこそだ」

 

 決意表明をした三人に優しく笑いかけ、ハジメはこの試練を耐え抜くことを信じて待つことにした。

 

「は、ハジメ、ヘールプ!」

「ふふふ……♪」

 

 隣から聞こえたSOSはシカトした。

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 試練を受けたユエ達三人を抱きしめ、待つことしばらく。

 

「……ん?」

「あらら?」

「あ、あれ?」

 

 突然声をあげた三人は、耐えるために俯かせていた顔を上げる。

 

 そこには拍子抜けしたような表情が浮かんでおり、一見ぽかんとしたそれにハジメは心配になる。

 

「お前ら、どうした?」

「……ん、耐え切ったみたい」

「はい、湧き上がっていた快楽が消えました」

「はー、大変だった……」

「そうか……よかった」

 

 今回ばかりは心底疲れ切った顔をした三人に、ハジメは安堵の表情を浮かべた。

 

 行き過ぎた快楽は苦痛と変わらない。それを精神力で耐え切った三人はさすが、と言うべきだ。

 

 後ろを見ると、ウサギや香織も普通の表情に戻って座り込んでいる。

 

「よく頑張ったな。お前らなら大丈夫だと確信していたが……うん、流石だよ」

「ん……ふふ」

「ふふん、どんなもんよ」

「えへへ、そう素直に言われると照れますね〜」

 

 はにかみ笑いをする三人を抱きしめるハジメ。

 

 試練は終わった以上、すでにそうする必要はないのだが……まあ、気持ちというやつだ。

 

 ユエ達も離れようとすることはなく、むしろ抱きつく腕の力を強めている。

 

「ん……あら、もう終わりなのね」

 

 同じ頃、粘液の効果が切れた雫もシュウジから体を離して坐り直す。

 

 乱れた髪や服装を直し、いつも通りのクールな出で立ちに戻った雫は隣を見る。

 

「ぜぇ、はぁ……」

「あらシュー、随分疲れてるみたいだけど」

「誰のせいですかね」

「わからないわ♪」

 

 ウィンクする雫。強かな幼馴染に香織の苦笑いが止まらない。

 

 汗やその他の液体で汚れた右肩を拭いながら、呆れ笑いを浮かべるシュウジ。

 

「あっちも平気そうだな……で、あっちの三人は」

 

 光輝達の方を見るハジメ。

 

 すると、光輝が尻を突き出し、上半身を地面に擦り付けた体制でピクピクと痙攣していた。

 

 周りの地面や、転がった剣には夥しい量の血が付着している。

 

 どうやら失血しすぎたらしい。

 

「ったく、何やってんだ……おーい香織」

「わかってるよハジメくん」

 

 早速治療に香織が向かい、次に龍太郎達を見る。

 

「うぅ……もうお嫁にいけない」

「……ま、気にすんなよ。俺は気にしない」

「してよぉ……なんでこんな時も男前なのぉ……」

 

 こちらはこちらで、中々にカオスなことになっている真っ最中だった。

 

 赤い顔でさめざめと泣く鈴と、なんとも言えない顔で頬をかく龍太郎。割と危ない絵面だ。

 

「さて、それじゃあ一回着替えてこい。ちょっと見せられない感じになってるぞ」

「ん、わかった」

「この衣装気に入ってたのになー」

「仕方ないですよ美空さん」

 

 ようやく三人が離れ、ハジメは錬成で簡易的な更衣室を用意する。

 

 〝宝物庫〟から予備の服も取り出し、それを渡された女性陣は早速着替え始めた。

 

 治療を終え、貧血でぐったりとしている光輝や龍太郎達も替えの服を手渡され、各々準備する。

 

 ちなみにティオのことはギリギリまで無視していたが、泣きつかれたため仕方がなく同じ処置をとった。

 

「〝浄化(クリーン)〟」

「ありがとうシュー」

「いえいえ。お、戻ってきたな」

 

 解除されたエ・リヒトの外にいたカマキリ達が、次々と戻ってくる。

 

 同様にハジメの方のゴーレムも帰還し、互いの斥候達を回収する二人。

 

「よし、問題ないな」

「こっちも漏れはなしだ。進んでも平気だぜハジメ」

「ああ。っと、どうやらあっちも準備が終わったみたいだな」

 

 タイミングを見計らったように、簡易更衣室からさっぱりとした様子で出てくる面々。

 

 若干一名、自傷した男がふらふらしているものの、全員問題はなさそうだ。

 

 

 龍太郎と鈴の様子が少しぎこちないが、あの試練の後なのだから誰も触れはしない。

 

 そんな三人はユエ達と一緒にこちらにやってくると、一歩歩み出て頭を下げた。

 

「その、面倒をかけた。感謝するよ南雲」

「俺からも礼を言っとくぜ。もしもの時は俺達を拘束するつもりだったんだろ?」

「ほお、目の付け所がいいな坂上。ま、自力で耐え抜いたんだから気にすんな。天之河のはちょっと予想外だったがな」

 

 その言葉に、自然と全員の視線が彼の方に向いた。

 

 ハジメやシュウジを除いて、それぞれ試練に耐え抜くことに必死で、香織が治療するまで知らなかった面々。

 

 よもや()()天之河光輝がそんな行動をするとは、誰にとっても予想外だった。

 

「蛮勇だな。それともイカれたのか?」

「どっちでもないよ、南雲」

 

 光輝は、大量の血で見えなかったのをいいことにやり過ごした、左肩の傷跡に手を置いて。

 

 それから、家具を片付けて静かに後ろに立っていたシュウジに目を向けた。

 

「これくらいしなきゃ、俺は壊れるんだろ?」

「……ま、せいぜい好きにやって踊ってくれ」

 

 答えるでもなく、かといって普段ほど苛烈に皮肉を浴びせるでもなく。

 

 それだけ言って、大樹に向かって歩き出したシュウジにハジメ達は顔を見合わせる。

 

「……ああ、今はそれでいいよ」

 

 

(それでもいつか、俺はこの手で何かを選び、守れるようになりたい……お前みたいに)

 

 

 ただ一人、光輝は口の中でそう呟く。

 

 

 

 

 

 その後、順調に何もない荒野を突き進み、一行は巨大な樹にたどり着き、そこにあった転移陣で新たな試練に向かった。

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

次回は奴らか…

感想カモン!
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