星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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あと少しで11月…教習所の予約でいっぱいだな。

エボルト「俺だ。前回久しぶりに出番があったな」

ハジメ「この章だと、DEBAN村に行きそうなレベルの登場率だったもんな」

シュウジ「それより、早くこの試練の話終わらせてくれ……ビニール袋が手放せない」

ハジメ「もんじゃ焼きはいらねえからな。さて、今回は展開的に言えば中編か? それじゃあせーの、」


三人「「「さてさてどうなる大樹編!」」」



さあ、マインドゲームを始めよう

 

 三人称 SIDE

 

 

 

『っ!?』

 

 

 

 盛大に顔を引きつらせたハジメ達は、慌てて眼下を確認した。

 

 すると、なんということだろうか。黒い津波の如きゴキブリの大群が羽ばたきながら上昇してくるではないか。

 

 猛烈な勢いで突き進む害虫達の中に、更に夥しい量の人型ゴキブリが混ざっている。

 

 彼らは一様に無駄に並びの良い歯を剥き出しにし、獲物であるハジメ達を見上げていた。

 

「エボルト! ブラックホールで根こそぎ吸い取れないのか!」

「あと数十分は無理だ。普通の魔法ならともかく、さっきの長時間の使用とカマキリ共の操作で魔力がない」

 

 ショッキングすぎる光景にハジメが叫ぶも、エボルトは苦々しげな顔で肩を竦めた。

 

 エボルトとて、こんな状況で嘯いたりはしない。

 

 仮にも十年喫茶店を経営していた彼にとっても、ゴキブリは宇宙一の害虫なのだから。

 

 一番の広範囲殲滅が使用不可と知ったハジメは、両肩にオルカンを担いで全力でユエ達に叫んだ。

 

「こうなったら仕方がねえ! 総員、迎撃準備!」

「……っ!」

「来ます、来ますよぉ!?」

月の小函(ムーンセル)起動。出力五十パーセント」

「あれに関しては、妾も指一本たりとも触れとうない!」

「ううっ、あれを斬るのは嫌だよぉ!」

「文句言わないの香織! シューのためにも、やらないと……!」

「全力で回復するから、一匹でも多く殺して!」

「鈴、早く結界張れ結界! 奴らが押し寄せてくるぞッ!!」

「わかってるよぉおお!」

「く、来る……!」

 

 ユエが魔法の準備を、シアがドリュッケンをを構え、ウサギが早々に月の小函(ムーンセル)を起動する。

 

 ティオも指先に光線ブレスの圧縮を始め、香織が涙目で双大剣を構え、雫が楔丸を引き抜いた。

 

 美空が詠唱の準備を始め、光輝が剣を抜き、鈴が全員を守るように障壁を張って、龍太郎がグリスに変身。

 

 

(……さて。この試練の特性上、変身するのは避けたほうがいいな。()()()()()()()()

 

 

 そして、シュウジのようにエボルトが帽子を少し下に傾けた、その時。

 

 

 

 ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛! ! ! 

 

 

 ……そして、奴らが到達した。

 

「うおおおおお!」

「やぁあああああっ!」

「ひいいいっ!?」

「来るなぁああああ!」

 

 各々絶叫しながらも、それぞれの放てる最大の攻撃で迎撃する。

 

 

 ハジメはオルカン×2のみならずシュヴァルツァーを全機出動させ、ゴキブリに範囲砲火。

 

 

 ユエが五天龍を最初から召喚して片っ端から殺しまくり、シアはドリュッケンから炸裂スラッグ弾を放つ。

 

 

 ティオは光線の形状に圧縮したブレスで薙ぎ払い、香織はゴキブリ星人を切り捨て、虫の方には分解の砲撃を。

 

 

 ウサギが〝覇拳〟と〝翔脚〟で、月の小函(ムーンセル)から抽出・超圧縮した魔力爆弾をいくつも投げ、あるいは蹴り出す。

 

 

 龍太郎がフルボトルの力を存分に使って一気に殺し、その攻撃特化の戦闘スタイルを鈴が支える。

 

 

 光輝も斬撃を飛ばす類の魔法を使って応戦した。このような時に、あの力は使えないのが憎らしい。

 

 

「……ふむ。こいつはもうSAN値が地獄まで直送するな」

「言ってないでもっと撃ってくれない!?」

 

 ガトリングフルボトルを装填したトランスチームガンと、ゴリラフルボトルを装填したネビュラスチームガン。

 

 その二丁拳銃で、それなりに応戦するエボルトに、必死で楔丸を振るう雫が叫んだ。

 

「いやぁ、これ無理ゲーだろ。樹海の中に待機させてるフィーラーを樹海の根元から食い破らせて呼び込むっきゃないぞ」

「そんなことしたら俺たちも生き埋めだろうが!」

「デスヨネー」

 

 これまでにない切迫した様子でツッコんだハジメに、なぜか余裕そうにカラカラと笑うエボルト。

 

 

 訝しむ二人だったが、正直そんなことを気にしていられる状況ではなかった。

 

 いくら殺そうともその勢いは留まることを知らず、恐怖を誘う羽音とともに黒波は大きくなる一方。

 

 海にたったひとつの火を落としても意味がないように、これだけの物量の前では焼け石に水だ。

 

「じょ」

「じょじょうじ」

「じょうじょ」

 

 それどころか、人型どもが連携を取り始めた。

 

 まるで意思疎通をするように意味不明な言葉を話し、空中から縦横無尽に仕掛けてくる。

 

 時を置かずしていよいよ抑えきれなくなり、奴らが一斉に一行のいる広場より高く飛んだ。

 

「畜生が!」

 

 まるでドームのように取り囲まれ、ハジメは悪態をついてオルカンを投げ捨てる。

 

 そうするとシュヴァルツァーを招集し、フリードと戦った時のように固まらせて即席の壁とした。

 

 

 ザァアアアア────! 

 

 

 待っていましたと言わんばかりに、まず従来の虫型の方が大軍をなして降下する。

 

 鳥の集団行動かのように一糸乱れぬ動きで、ハジメら十二人を守る金属のサメの防壁にぶつかった。

 

 物凄い勢いでぶつかった黒波は、体液を撒き散らして潰れるものもいれば、鮫達の穴を探して表面を這うものもいる。

 

「ぐっ、だがこの程度!」

 

 あまりの物量に、しかしハジメが怒号を発してシュヴァルツァーを支えるように両手を突き出す。

 

 

 ボゴッ

 

 

 その時、途轍もなく嫌な音がした。

 

「お、おい、南雲。あああ、あれ……」

 

 ガタガタと震えながら、光輝がシュヴァルツァーの一部を指差した。

 

 恐る恐る、ハジメを筆頭にそちらを見上げると……シュヴァルツァーが数機、揺れている。

 

 断続的なその揺れに、つー……とハジメの頬に冷や汗が伝った。

 

 

 まさか、というハジメの予想に反することなく、どんどん揺れは大きくなる。

 

 いいや違う、揺れではない。何か強烈な力によって、外部からシュヴァルツァーが攻撃されているのだ。

 

「おいおい、もしかして……!」

 

 ハジメが思わず呟いたその瞬間、ドグシャァ! と音を立てて黒いボディーをテカる腕が貫通した。

 

 その腕は、仕留めたシュヴァルツァーごと外に戻っていき……代わりに、醜悪に笑ったゴキブリ野郎(真)が顔を出す。

 

 その一部だけでなく、次々とシュヴァルツァーが破壊されて人型が侵入を始めた。

 

「チィ! こういう時のための知能型か!」

「鈴!」

「うぇええええん! 〝聖絶〟ぅ!」

 

 半泣きどころか、この中で一番大柄な龍太郎よりデカい人型にガチ泣きの鈴が障壁を張った。

 

「じょじょ」

「じ、じょじょう」

「じょじょじょじょ」

 

 人型達は防壁の中に入り込み、羽ばたきをやめると自由落下してくる。

 

 

 その巨体の重量を活かし、ドズン! と重厚な音を立てて鈴の結界に着地してきた。

 

 思わず呻く鈴は、どうにか結界を維持しながら上を仰いで──

 

「「「「「「じょ」」」」」」

「──む、り」

 

 自分を見つめる無数の人型に気絶した。

 

 白目を剥き、ふっと後ろに倒れこむ小さな体をグリスが受け止めた。

 

『鈴ぅ!? しっかりしろぉ!』

「ふへへ……もう、ゴールしてもいいよ、ね……」ガクッ

『鈴ぅぅううううう!!』

「ったく、しゃあねえな」

 

 当然結界が消えていくわけだが、エボルトがすかさずステッキの先端を地面に叩きつけた。

 

 残り少ない魔力が使われ、エ・リヒトが展開される。数ミリ足場が落ちた人型達が頭上で転倒した。

 

「ユエ、重ねて防御を」

「ん、絶対の絶対にあいつらは入れない!!」

 

 それはもう力強く頷いたユエは、エ・リヒトに重ねて何重にも〝聖絶〟を展開した。

 

 全部で七重に重ねられた障壁の上で、人型や遅れてやってきた虫型がカサカサと這い回る。

 

 

 この世の何よりホラーなその光景から目をそらし、全員が疲弊した顔で武器を下ろした。

 

「どうにか、一息つけたな……」

「お疲れさん。ユエ、俺の方はあんまり魔力が保たねえから頼む」

「ん、わかった」

 

 ハジメがもはや不要なシュヴァルツァーを〝宝物庫〟に戻し、ユエに任せたエボルトがステッキから手を離す。

 

「なんだか、この迷宮に来てからこんなのばっかりのような……」

「……下手なホラーより、ホラー」

「これまで四つもこんなのを攻略したとか、信じらんないわ……」

「こ、こんなに酷いのは初めてだよ?」

 

 シアとウサギが互いのウサミミを毛づくろいし、疲れ切った顔の美空を香織がなだめる。

 

「やはり、他の大迷宮の攻略を前提としている分難易度が高く設定されてるのじゃろうな」

「なんて傍迷惑な……シュー、かわいそうに」

 

 今頃、エボルトの代わりに意識の裏側で引っ込んでガクブルしてるだろう恋人を憐れむ雫。

 

「う〜〜ん……」

「鈴、起きろ鈴! あ、いややっぱり起こさねえ方がいいか!?」

 

 変身を解除し、鈴を膝枕している龍太郎は全力で混乱していた。

 

 随分と変わった幼馴染から目線を外して、光輝は苦々しい顔で人型ゴキブリを見上げる。

 

「しかしこいつら、改めて見るととんでもなく気持ち悪いな……」

 

 それに関しては全員が同意だった。

 

 ゴキブリが進化したガチムチの大男など、いったい誰が見たいと思うのだろうか。

 

 もしあれに触れられようものなら、一生ゴリラの顔とボディビルダーの体を見られなくなるだろう。

 

「どうしたもんか……やっぱり殺し尽くさないとダメか?」

「っ、ハジメ!」

 

 ハジメが鳥肌をさすりながらも、殲滅戦を続行しようとした時だった。

 

 ユエの鋭い声に、また異変が起こったことを察して全員が結界の外を見る。

 

 

 すると、七重の障壁を突破しようとしていた人型も、這い回っていた虫型も一斉に引いていった。

 

 

 一体なんだと訝しむ一同の前で、ゴキブリの波が空中で球体を形作ると、それを中心に円環を作り始めた。

 

 巨大な円環の外周にさらに円環が重ねて作られ、次に無数の縦列飛行するゴキブリがそのあちこちに並ぶ。

 

 

 次第に幾何学模様が形成されていき、人型達はそれを守るように等間隔に滞空飛行した。

 

「おいおいおいおいおい、嘘だろ……」

「まさか……」

「そのまさかだよ、雫──あれは魔法陣だ」

 

 二人はバッと後ろを振り向き、自分たちと同じで青い顔をしている香織を見る。

 

 

 

 確かシュウジの話では、今は改造されたノイントの肉体には銀羽で魔方陣を作る技があったという。

 

 

 

 あれは、それと全く同じだ。自分達の体を使って、魔方陣を作り出そうとしているのだ。

 

「まずい、あれを壊すぞ!」

 

 障壁を消し、色々な意味で自分を奮い立たせた全員が魔方陣に向かって攻撃を開始する。

 

 しかし、その尽くをゴキブリの大群が守り、それを突破したものは人型が身を呈して受ける。

 

 人型、虫型、どちらの死骸もまるで豪雨のように下に向かって降り注ぐが、決して減らない。

 

「ダメだ、間に合わない!」

「魔方陣が、完成した……!」

 

 そうこうしているうちに、魔方陣が完成してしまった。

 

 直径十五メートル近い、端から端までゴキブリで形成された魔方陣が強烈に赤黒い光を放つ。

 

 

 そして、次の瞬間弾けると、それまで防衛に徹していた人型達が中央の球体に集まり始める。

 

 ハジメ達の前で一匹残らず人型が球体に飲み込まれ、それ自体がグネグネとうごめきながら形を変えて……

 

 

 

「「「じょおおおおおっ!!!」」」

 

 

 

 形容し難い化け物が、生まれてしまった。

 

 可能な限り簡潔に言い表すならば、より虫らしさを取り戻した巨大な人型ゴキブリ。

 

 たくましい腕が6本に増加し、せわしなく動く触覚は十本を超え、羽も三対六枚にまで増加している。

 

 

「「「じょうじ、じょじょう!」」」

 

 

 なにやら巨大モンスターが喋ると、周囲にゴキブリが集まって新しい魔方陣を作りだす。

 

 どうやら、アレは命令を下すボス的存在らしい。あの魔方陣が完成すれば、同じような怪物が作れるのだろう。

 

「チッ、させるか──ッ!?」

 

 魔方陣に対してオルカンを構えた瞬間、足元に突然感じた魔力の奔流に動きを止めるハジメ。

 

 咄嗟に視線を落とすと、足場や枝の通路にはなにもない。

 

 だが……それよりずっと遥か下方で、いつの間にかゴキブリが同じように集まっていた。

 

 また別の魔方陣を作成しているゴキブリ達に、ハジメとつられて下を見た面々は悟る。

 

 

 すなわち、目の前の怪物はブラフで、自分達ははめられたのだと。

 

 

「おっと、アレはまずい! すまんがシュウジ、この地獄のど真ん中で交代だ!」

 

 それを見たエボルトは、何かを察知して無理やりシュウジを引っ張り出した。

 

 みるみるうちにシュウジの目の色が戻っていき、文字通り修羅場に叩き出されたシュウジは顔を白くする。

 

 

 

「エボルト、許さねぇぞテメェエエエエエ!!!」

 

 

 シュウジの心からの絶叫と同時に、下の魔方陣が発動する。

 

 激しく輝き、枝の通路や足場を透過して赤黒い魔力がほとばしり、激しい光がシュウジ達を襲う。

 

「しまっ──?」

 

 爆発と見紛うほどの閃光がその場を包み込み、そして収まっていく。

 

 その時、身構えていた一同は無傷の自分達に首を傾げた。

 

「一体何だったんだ? なあシュウ──」

 

 隣で絶叫した親友を見て、ハジメは。

 

 

 

「──殺す」

 

 

 

()()()()()()()()()()




読んでいただき、ありがとうございます。

今でも実写版ウルトロンの二代目が一番好き。

感想をくだされ。恵みをくだされ。
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